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カナダ砂糖産業の概要

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最終更新日:2010年3月6日

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海外レポート
[2001年1月]
 カナダは、ダンピング防止関税を導入している以外、比較的自由な貿易政策をとり、約120万トンの砂糖を輸入しています。また、アメリカとの砂糖及び異性化糖の輸出入の関係は、NAFTA のもとアメリカの砂糖産業の事情を知る上でも重要です。こうした、カナダの砂糖産業について、英国の調査会社 LMC International Ltd からの報告をもとに企画情報部でとりまとめたので紹介します。  なお、この報告は2000年7月現在のものであり、最新のデータについては巻末資料編をご参照ください。

企画情報部


砂糖の需給バランス  ビート及びさとうきび生産実績等
生産量及び消費量  異性化糖の位置付け
砂糖制度の概要
 生産規制 価格支持 販売方法
ビート生産者及び製糖業者
砂糖産業の現状
 製糖業について 砂糖の流通 砂糖産業の現在の問題点


 カナダの砂糖産業には、ビート糖工場が1社1工場、精製糖工場が2社3工場存在する。輸入粗糖を利用した精製糖部門は大規模であるが、ビート糖部門は小規模である。近年、砂糖消費量の90%強を輸入粗糖からの精製糖が占めている (図1)。
 ダンピング防止関税の賦課 (1995年) によって国際相場から国内糖価を保護しているにもかかわらず、カナダの砂糖産業は、自由市場指向である。

図1 カナダの砂糖生産量、消費量及び輸入量の推移
カナダの砂糖生産量、消費量及び輸入量の推移グラフ


砂糖の需給バランス

 生産量は、95/96年度からの3年間にマニトバ州の工場閉鎖などによって減少し、98/99年度には保存ビートの劣化などのため、約9万8,000トン (過去10年で最悪の実績) と落ち込んだ。99/2000年度には、ビート栽培面積が増加したことによって、砂糖生産量は幾分回復した (表1)。

表1 砂糖需給バランス
(単位:1,000トン、粗糖換算)
  95/96年度 96/97年度 97/98年度 98/99年度 99/2000
(見込み)
生 産 量 159 120 105 98 125
消 費 量 1,219 1,225 1,206 1,260 1,300
輸入量 合計
粗糖
白糖
1,205
1,158
47
1,112
1,093
19
1,022
994
28
1,140
1,109
31
1,210
1,200
10
輸出量 合計
粗糖
白糖
29
1
27
21
0
21
17
0
16
16
1
15
16
0
16
在 庫 変 化 117 △15 △95 △38 19
出典:ISO、F. O. Licht

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ビート及びさとうきび生産実績等

 カナダのビート生産量は、農業生産総額の約0.2%を占め、また、農業生産総額は GDP の2.7%を占めるにすぎない (表2)。
 カナダのビート糖業は、BC Sugar 1社のみにより経営されており、97/98年度には、BC Sugarの子会社マニトバ州のロジャーズ・シュガーズ・ウィニペグ (Rogers Sugar's Winnipeg) 工場の閉鎖によって、収穫面積が急激に減少した。しかし、98/99年度以降は、カナダ唯一のビート工場となったアルバータ州のロジャーズ・シュガーズ・テイバー (Rogers Sugar's Taber) 工場が拡張されたことに伴って、収穫面積は増大している。
 ビート生産及び製糖工程における生産性は、ほとんどの農作業が機械化されていることと労働力の熟練度が高いことから比較的高い。さらに、ビートが凍結し保存期間が延びる (糖度は低下) ことから裁断期間も比較的長く、1998年から2000年の3年間で平均190日 (日本の場合、平成11年産最長155日) となっている。

表2 カナダのビート生産量及び産糖量等の推移
  95/96年度 96/97年度 97/98年度 98/99年度  平 均 
収穫面積(1,000ha) 24 23 13 17 19
ビート生産量(1,000トン) 1,027 1,041 650 893 903
単 収(トン/ha) 42.8 45.1 48.5 53.6 48
産 糖 量
(1,000トン、粗糖換算)
159 120 105 98 120
砂糖1トン当たり必要原料
(TB:TS)
6.5 8.7 6.2 9.1 7.6
ビート生産総額
(10万USドル)
33 32 20 21 26
農業生産総額
(10万USドル)
16,393 16,963 16,530 16,988 16,719
農業生産総額に占める
ビート生産総額の割合(%)
0.2 0.2 0.1 0.1 0.0
注1)ビート生産総額は、各年度のビート生産量に、
ビート1トン当たりの農家手取額を乗じることによって算出されている。
出典:カナダ砂糖協会 (Canadian Sugar Institute)、USDA、世界銀行

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生産量及び消費量

 カナダでは、国内産ビート白糖及び輸入粗糖からの精製糖が生産されている。
 96/97〜98/99年度のカナダの砂糖消費量は、120万トンをわずかに上回る水準で安定し、用途別には、飲料用及び乳製品用等が増加している。
 飲料向けの需要の半分以上が、異性化糖によって供給されており、そのシェアは、96/97年度の52%から98/99年度には58%に成長している。
 カナダの1人当たり砂糖消費量は、約40kgで安定的に推移している。近年、一部は異性化糖に切り換えられているが、国内砂糖価格が世界市場価格を反映し比較的低価格であるため、米国で見られるような大規模な代替を促進することはなかった。

表3 砂糖生産量の推移
(単位:1,000トン、粗糖換算)
  95/96年度 96/97年度 97/98年度 98/99年度 99/2000年度 平均
国内産等
  うち粗糖
白糖
159
0
159
120
0
120
105
0
105
98
0
98
125
0
125
120
0
120
精製糖 1,158 1,093 994 1,109 1,200 1,111
注)精製糖は、すべて輸入粗糖から生産されている。
出典:ISO、F. O. Licht

表4 砂糖の用途別消費量
(単位:1,000トン、白糖換算)
  96/97年度 97/98年度 98/99年度
家 庭 用 284 23.2(%) 272 22.6(%) 281 22.3(%)
工 業 用
 飲料用
 焼き菓子
 砂糖菓子
 乳製品
 缶詰及び保存食品
 その他(食品以外含む)

279
162
132
86
111
171
(%)
22.8
13.2
10.8
7.0
9.1
14.0

282
163
132
88
110
159
(%)
23.4
13.5
10.9
7.3
9.1
13.2

299
171
139
93
114
162
(%)
23.7
13.6
11.0
7.4
9.1
12.9
合 計 1,225 100.0 1,206 100.0 1,259 100.0
1人当たり消費量(kg/人) 40.5    39.8    41.1   
出典:LMC

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異性化糖の位置付け

 カナダには、異性化糖工場が3工場 (オンタリオ州所在) あるが、すべて米国の会社コム・プロダクツ・インターナショナル (CPI:Com Products International) 系列で、CPI のカナダ子会社 CASCO によって経営されている。カナダにおける異性化糖消費量の約70%は飲料部門である。
 カナダの砂糖消費の特徴は、飲料部門における砂糖と異性化糖の使用バランスがその相対的な価格によって影響されていることである。砂糖価格が異性化糖より安くなったときには、砂糖の使用比率が高くなり、砂糖消費量は増加する。
 近年、カナダは異性化糖の輸入量が増加したが、従来、純輸出国である。カナダの異性化糖取引の大半は、米国が相手国である。

表5 異性化糖と砂糖の生産量及び消費量(粗糖換算/乾物ベース)
(単位:1,000トン)
  95/96年度 96/97年度 97/98年度 98/99年度
生 産 量 砂  糖
異性化糖
異性化糖の占める割合(%)
159
259
62
120
286
70
105
304
74
98
339
78
消 費 量 砂  糖
異性化糖
異性化糖の占める割合(%)
1,219
183
13
1,225
231
16
1,206
245
17
1,260
261
17
輸 入 量 砂  糖
異性化糖
異性化糖の占める割合(%)
1,205
21
2
1,112
45
4
1,022
112
10
1,140
86
7
輸 出 量 砂  糖
異性化糖
異性化糖の占める割合(%)
29
102
78
21
113
84
17
116
87
16
90
85
在庫変化 117 △15 △95 △38
出典:LMC

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砂糖制度の概要

 カナダは、1995年のダンピング防止関税の賦課によって、国内の砂糖産業を保護しているが、基本的には開放された自由な砂糖制度を運営している。これらの関税は、2000年11月の失効期日以降も継続すべきかどうかがカナダ国際貿易裁定委員会 (Canadian International Trade Tribunal) において再検討され、2005年11月6日まで継続されることとなった。

生産規制
 過去には、ビート生産は国内3者安定化プログラム (NTSP:National Tripartite Stabilisation Programme) に従い、政府によって設定されたビート価格支持の水準に影響を受けていた。しかし、生産量に対する直接的な規制はない。この価格支持プログラムが撤廃された96/97年度の末から、農家に対する所得保障制度が導入されている。

価格支持
 国内のビート価格及び砂糖価格に対する価格支持はなく、市場要因に従っているものの、国際貿易裁定委員会による裁定に従って、1995年7月以降、不当廉売と輸出補助金に対抗するため、米国、デンマーク、ドイツ、オランダ、イギリス及び韓国からの精製糖の輸入に対し、ダンピング防止関税と相殺関税が賦課された。米国の砂糖輸入の影響は最も大きいため、69%〜85%の関税が課された。そのため、米国からの輸入は、急激に減少している。
 また、関税は白糖の方が粗糖よりも高くなっている (表6参照)。しかし、ダンピング防止関税が課されるまで、白糖の輸入のほとんどは、表6に基づく関税率で米国から輸入されていた。米国・カナダ自由貿易協定の一部として、白糖への関税はダンピング防止関税に引き継がれている。

表6 カナダにおける関税等の貿易政策
  粗糖 白糖
現行関税率 22.1カナダドル/トン
(14.8USドル/トン)
30.9カナダドル/トン
(20.8USドル/トン)
GATT約束
関税
 基本税率
 最終税率
28.4カナダドル/トン
24.1カナダドル/トン
41.7カナダドル/トン
35.4カナダドル/トン
ミニマムアクセス
(トン、粗糖換算)
適用なし
輸出補助金の削除
 数量(1,000トン)
 率(%)
適用なし
適用なし
履行期限 2000/01
出典:LMC、WTO
注)1USドル=1.48カナダドル

 また、1995年以降、一般特恵関税 (General Preferential Tariff) (注1) 諸国からの粗糖については、非関税となっている。

注1)粗糖などの特定の生産物に対して、より低い関税率をブラジル、コロンビア、コスタリカ、キューバ、ドミニカ共和国、エルサルバドル、グアテマラ、メキシコ、ニカラグア、フィリピン及びタイ等の発展途上国に与える特恵貿易協定。

 96/97年度以前は、政府は NTSP を施行しており、農家は平均市場価格が支持水準より下がった場合に、格差を補償することにより支持価格に等しい収入を保証された。このプログラムは、1987年に施行され、農家、連邦政府及びビート生産州 (アルバータ州とマニトバ州) によって資金供給されていた。NTSP は、主に価格支持制度であったが、このプログラム終了後は、農場全体の所得保障制度に置き換えられた。
 NTSP に代わる純所得安定口座 (NISA:Net Income Stabilization Account) は、生産する商品とは無関係に、農民の所得全体を保護することを目的とする。農民及び連邦政府と州政府によって拠出されている資金を通して、所得が特定水準を下回ったときにのみ、農民は資金を引き出すことができるというもので、所得が減少するリスクを緩和する安全策として運営されている。
 カナダ国内の砂糖市場は、比較的自由であるため、国内砂糖価格は、世界砂糖価格の水準に従う傾向がある (表7)。カナダの砂糖は、世界相場の変動にさらされる危険があるとはいえ、国内市場が開放されているため、精製糖価格は世界で最も安価となっている。

表7 ビート及び砂糖価格
(単位:USドル/トン)
  ビート 白 糖
卸売価格
 国内価格
 輸出価格

466
573
小売価格
 国内価格
811
出典:LMC


 砂糖の販売は、BC Sugar と Tate & Lyle によって行われている。
 カナダにおいては、開放市場であるため、上記2社は、輸入糖と競合状態にある。しかし、1995年のダンピング防止関税の賦課によって、カナダ砂糖産業の立場が強化されることとなった。

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ビート生産者及び製糖業者

 ビート生産者とカナダ唯一のビート製糖業者である BC Sugarの間の収益分配協定に従い、ビートは栽培されている。最終的な収益は歩留りと販売された砂糖の収益に従うとはいえ、農家の収益は蔗糖含有率に基づいている。
 アルバータ州は、カナダのビート栽培の中心区域であり、少量がマニトバ州で栽培されている。
 98/99年度の減産は、主に、在庫ビートの劣化によるものであり、25%のビートが使用できなくなった。さらに、利用可能なビートも蔗糖含有率が低下した。その結果、ロジャーズ・シュガーの工場歩留りは悪化した。その結果、ロジャーズ・シュガーは、アルバータ州のビート農家の代表であるアルバータ・ビート栽培者協会 (Alberta Sugar Beet Growers) と約300万カナダドル (200万USドル) の単年度契約を締結し、ビート生産者所得を補償することを1999年4月に発表した。
 政府は、砂糖産業を規制していないが、輸入糖への関税の賦課を通して保護を提供し、上述の NISA を通じてビート生産者の所得保障計画に拠出している。
 カナダで生産されている砂糖は一般に糖度99.9%以上であるが、カナダ食品薬品規則 (Canadian Food and Drug Regulations) は、精製糖の品質基準を蔗糖含有率で最低99.8%としている。

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砂糖産業の現状

製糖業について
 カナダの製糖業には、BC Sugar と Tate & Lyle が参画している。BC Sugar は、ロジャーズ・シュガーとランティック・シュガー (Lantic Sugar) を所有している。
 ビート糖業部門では、ロジャーズ・シュガーが、テイバー (アルバータ州) に所在するカナダ唯一のビート工場を経営し、98/99年度に6,000トン/日の原料処理能力を増設した。一方、同社は米国市場への砂糖のアクセスを制限する米国の決定に従って、1997年にウィニペグのビート工場を閉鎖した。
 輸入粗糖からの精製糖は、45 ICUMSA (国際砂糖分析法統一委員会) 単位以下を満たすように生産されている。
 BC Sugar は、カナダの精製糖工場のうち2つ (ランティック・シュガーのバンクーバー工場とモントリオール工場) を所有している。
 ランティック・シュガーは、ニュー・ブランズウィック州の年間24万トンの生産能力を持つセント・ジョン精製糖工場を2000年6月末に閉鎖した。この工場の閉鎖は、当初1999年12月31日に予定されていたが、2000年5月31日に延期され、モントリオール工場の拡張計画が遅れたために、さらに2000年6月末日まで延期されていた。モントリオール精製糖工場の能力は、2000年7月年間20万トンから44万トンに倍増された。
 Tate & Lyle はトロントのレッドパス・シュガー精製糖工場を所有しており、1998年に砂糖生産能力を年間30万トンから約50万トンに拡張した。

砂糖の流通
 精製糖は、食品製造業者と食品サービス業者及び小売用に、様々な形態で生産されている。精製糖生産量の80%強が工業用となっているが、パッケージの形態、サイズも糖種も様々である。
 中でも、グラニュー糖が家庭用においても工業用においても、最も一般的に利用されている。グラニュー糖には、様々な結晶サイズがあり、国内消費用として、2kg、4kg 及び10kg 袋などがあるが、食品製造業者は、一般に20kg、40kg及び1トンの袋を利用している。一部の食品製造業者、清涼飲料業者及び菓子製造業者は、液糖を使用している。その他、デマララ (demarara) 糖、粉糖、褐色の砂糖、黄色の砂糖などがある。
 テイバー工場は、砂糖の約60%を食品及び飲料製造用に液糖で販売しているが、約15%は固形で工業用に、約15%は直接消費用に販売しており、残りの10%は米国に輸出している。

砂糖産業の現在の問題点
 カナダ砂糖産業の現在の主な問題点は、米国、EU 及び韓国からの精製糖の輸入に課されているダンピング防止関税と相殺関税に関するカナダ国際貿易裁定委員会の見直しの結果である。
 もう1つの貿易問題は、カナダの砂糖含有製品 (SCPs:sugar-containing products) の米国市場へのアクセスである。USDA は、2000年3月にカナダからの SCPs の輸入にライセンス制を課す意図を発表し、続く2ヵ月間に関係当事者からの意見を求めた。これらの対策は、2000年10月1日から効力を持つ予定で、USDA は意見を審査していたが、ほとんどの意見はライセンス制の導入に反対と伝えられている(注2)。
 また、米国との貿易関係においては、ここ3年間、カナダから 「糖蜜 (stuffed molasses)」 が大量に米国に流入しており、米国にとっては大きな問題となっている。USDA はこの商品の輸入が、年間約12万5,000トンに達すると推定しており、米国砂糖価格の値下がりの原因の1つとなっている。
注2) 米国とカナダの SCPs の貿易は、長く議論されている問題である。1997年にカナダは NAFTA に従い不法であると主張し、米国砂糖含有製品再輸出計画に抗議した。1997年9月に、2ヵ国が合意に達したことによって、カナダは、米国砂糖含有製品再輸出計画への抗議を撤回したのと引き換えに、SCPsについて割り当てられた92.2%の関税割当 (Tariff -Rate Quota) を受け、従来の関税割当枠中に、カナダに限定した特別枠を設け、1万300トンの精製糖と5万9,250トンの砂糖含有製品の市場アクセスが保証された。この合意は、いずれか一方の当事者の6ヵ月前の通知によって終了することができる。




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