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韓国砂糖産業の概要

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最終更新日:2010年3月6日

砂糖類ホームページ/海外情報


海外レポート
[2001年5月]
 韓国は、てん菜やさとうきびを生産していないことから、全量輸入糖に依存しています。主な砂糖関連政策は、輸入精製糖への高関税と輸入ライセンス制度ですが、異性化糖の生産量が甘味料需要の約20%を占め、精製糖の余剰生産については輸出されています。こうした韓国の砂糖産業について、英国の調査会社・LMC International Ltd. からの報告をもとにとりまとめましたので紹介します。

企画情報部


砂糖の需給バランス   異性化糖の位置付け
砂糖関連政策の概要 砂糖産業の現状



 韓国においては、てん菜糖、甘しゃ糖は全く生産されていないため、砂糖の生産は輸入糖に依存している。一方、異性化糖は内外の原料を利用し生産されている。輸入された粗糖は、国内の精製糖会社3社 (Cheil Sugar and Chemical (第一製糖)、Samyang Corporation (三養社) 及び TS Corporation (大韓製糖)) によって精製されている。また、粗糖はグルタミン酸ナトリウム (MSG) とリジンの製造のためにも輸入されている。


砂糖の需給バランス

 グラフ1は、95/96年度以降の韓国の砂糖消費量と輸入量の動向を示しており、表1は、同期間の韓国の需給バランスを示している。韓国は国土の3分の2が山岳地帯であることに加え、気候がシベリアからの大陸性気候であり、てん菜やさとうきびの栽培に適していないことから、国内需要のすべては輸入糖に依存しており、輸入された粗糖は精製され、その約22% (約30万トン) が輸出されている。1999年度の仕向先は、香港、インドネシア、中国、フィリピン、マレーシア等となっている。また、韓国は MSG とリジンの生産のために、毎年、約30万トンの粗糖を輸入している。
 消費量は約100〜110万トンで比較的安定している。アジア金融危機によって、消費量は98/99年度に大きく減少したが、その後通常の水準近くまで回復している。1人当たり消費量は、アジアの金融危機が起きた98/99年度を除き22〜24kg/人で安定している。

グラフ1 砂糖の消費量と輸入量

砂糖の消費量と輸入量

表1 砂糖の需給バランス
(単位:千トン、粗糖ベース)
  95/96年度 96/97 97/98 98/99 99/2000 2000/01
生 産 量 0 0 0 0 0 0
消 費 量 1,077 1,118 1,016 850 1,070 1,089
輸入量 合 計
粗 糖
精製糖
1,371
1,371
0
1,446
1,446
0
1,376
1,376
0
1,354
1,354
0
1,375
1,375
0
1,330
1,330
0
輸出量 合 計
粗 糖
精製糖
279
0
279
264
0
264
338
0
338
318
0
318
300
0
300
309
0
309
在 庫 変 化 16 64 23 186 5 −68

表2 砂糖の用途別消費量
(単位:千トン、粗糖ベース)
  95/96年度 96/97 97/98 98/99 99/2000 2000/01
家 庭 用 536 557 506 433 546 554
工 業 用
 飲 料
 焼き菓子
 砂糖菓子
 乳 製 品
 缶詰及び保存食品
 その他食品
 食品以外

47
41
141
59
116
125
11

49
42
146
61
121
130
11

45
39
133
56
110
118
10

36
31
108
44
92
97
8

45
40
135
56
116
123
10

46
41
139
57
117
126
10
合 計 1,077 1,118 1,016 850 1,070 1,089
1人当たり消費量 (kg) 24 25 23 19 24 24

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異性化糖の位置付け

 韓国の異性化糖生産は、1950年代の終わりに、スウィートポテト等の国内原料を中心に生産が開始された。1970年代初頭、トウモロコシの輸入が大量に許可されたことにより異性化糖産業は急激に発展した。また、1980年代の砂糖価格と異性化糖価格の格差 (約2倍) も飲料を中心とした異性化糖の生産増に大きく貢献したものと思われる。現在、韓国には異性化糖工場が4社5工場ある。すべて民間経営であり、韓国最大の Daesang (Miwon グループ最大) が生産量の約30%を占めている。Samyeng Genex Co. が27%強の第2位であったが、1999年12月に Doosan Grain Co. と Corn Products Korea が合併し、Doosan Corn Products となったことによって28%を占め第2位となった。Shin Dong Bang Corporation が残りの16%を占めている。
 表3は、95/96年度以降の異性化糖と砂糖の消費量を示している。異性化糖は砂糖と異性化糖の合計消費量の約20%を占め、異性化糖消費量の約4分の3は、飲料部門が占める。

表3 異性化糖及び砂糖消費量の推移
(単位/千トン、精製糖/乾物ベース)
  95/96年度 96/97 97/98 98/99 99/2000 2000/01
消 費 量 砂 糖
異性化糖
異性化糖の
占める割合 (%)
990
274
22
1,028
290
22
934
281
23
782
274
26
984
281
22
1,002
283
22
人口 (100万人) 45 46 46 47 47 48
1人当たり
消 費 量
砂 糖
異性化糖
合 計
22
6
28
24
6
31
22
6
28
18
6
24
23
6
29
23
6
29

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砂糖関連政策の概要

生産規制
 韓国には、精製糖の生産割当も粗糖の輸入割当もない。

国内の価格支持
 砂糖の国内価格は、政府によって直接的または間接的に、世界価格よりはるかに高い水準に支持されている。  政府は砂糖価格を直接定めてはいないが、国内市場における精製糖の卸売価格と小売価格のガイドラインを定めている。精製糖会社は、砂糖の販売価格を変更する場合は政府に通知しなければならない。政府は、2つの主な政策によって、高い国内砂糖価格を維持している。
 第1の政策は、輸入精製糖に高い関税を課していることである。1993年までは精製糖の輸入は許可されていなかったが、GATT ウルグアイ・ラウンドの決定に従って、砂糖の輸入を自由化した。
 1994年1月1日、韓国政府は精製糖の輸入を解禁し、60%の関税を課した。1996年7月には、精製糖に対する関税を50%に削減した。しかし、この水準は、韓国の WTO 譲許税率を下回るため、将来、その譲許税率の範囲内で関税を引き上げる予定である (表4)。

表4 砂糖の輸入関税と WTO 義務
  粗  糖 精 製 糖
現行関税率 3% 50%
WTO 譲許税率
関税率
 基本税率
 最終税率
24%
18%


94.6%または222ウォン/kg (注1)
85.1%または199.8ウォン/kg (注1)
ミニマムアクセス 適用なし
輸出補助金の削減
―数量 (千トン)
―率 (%)

適用なし
適用なし
最終期限 2000/01年度
注1) いずれか高い方適用

 粗糖に対する関税は、1998年の初頭に5%から3%に削減され、特恵関税は4.5%から2.7%に削減された。特恵関税は、2国間の政府間協定に従ってタイなどに適用されている。
 第2の政策は、輸入ライセンス制度である。精製糖会社3社及び MSG とリジンの生産会社のみが、粗糖の輸入ライセンスを与えられている。登録されている輸入業者は、精製糖を輸入することもできるが、精製糖の関税が高い (50%) ことから輸入を行っていない。
国内のメーカー販売価格と小売価格は、2000年現在、1トン当たりそれぞれ586USドルと639USドルであり、世界市場価格を上回っている。国内市場のドル建て価格は、1998年以降は値下がりしているが、10%の付加価値税と3%の教育税を撤廃したことも、砂糖価格の値下がりに寄与した。表5は、1995〜2000年の国内市場と輸出市場における砂糖の価格を示している。
輸出用の精製糖の価格は、世界市場価格に依存しており、使用される粗糖は、3%の粗糖関税を免除され、政府の介入は全くない。

表5 精製糖のメーカー販売価格及び小売価格
(単位:USドル/トン)
  1995年 1996年 1997年 1998年 1999年 2000年
国内市場
 メーカー販売価格
 小売価格
834
909
799
872
795
872
668
742
673
747
586
639
輸出市場
 輸出価格
n. a. n. a. n. a. n. a. n. a. 280
出典:業界筋

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砂糖産業の現状

 精製糖会社3社の中で最も古い第一製糖は、第二次世界大戦の終了時に創業し、創業当初の Samsung グループの一部として設立された。他の2社は、1970年代と1980年代に、砂糖の需要の増大を満たすために創業された。
 精製糖企業の総生産能力は、将来への余力を持たせるため当時の消費量を大きく上回って設定されたが、異性化糖の生産が増加したことから設備が過剰となり、精製糖輸出が行われている。
 第一製糖は1,800トン/日の精製能力を持ち、国内生産量の48%を占めている。三養社は、1,500トン/日の能力 (国内生産量の32%) を持つ第2位の精製糖会社である。大韓製糖は3社のうち最も規模が小さく、900トン/日 (国内生産量の20%) の能力を持っている。3社はすべて45 ICUMSA (国際砂糖分析法統一委員会) 単位以下の砂糖を生産している。

砂糖の流通
 韓国の流通システムの特徴は、精製糖会社が工場から消費者にいたる流通システムの大部分を管理することによって、支配的な役割を果たしていることである。
 国内市場には、代理店が存在するが、日本にあるような特約店などは存在しない。代理店は特定メーカーの製品のみを販売するケースが多く、市場は政府から輸入ライセンスを与えられている精製糖会社3社によって支配されていると言ってもよい。
 精製糖会社は、国中の販売網を持ち約50%を食品産業部門のユーザーに販売している。販売経路としては、大手ユーザーや大手小売業者 (デパート、大型スーパー、ディスカウントストアー、コンビニエンスストアー、流通センターなど) 向けには直販、中小ユーザー、中小小売業者などには、代理店を通して販売している。

砂糖産業の現在の問題点
 砂糖消費量は、アジア金融危機の影響を受けた98/99年度を除いて、年間約100万トンで安定的に推移しているが、砂糖産業の重要な問題点は、異性化糖との競争である。最近5年間において、異性化糖は、韓国甘味料市場で20〜24%のシェアを占めており、これは、1990年代初頭には見られなかった高水準である。しかしながら、99/2000年度と2000/01年度においては、主に砂糖消費が回復したことにより、異性化糖のシェアが低下している。

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