[2001年10月]
オランダは、EU の中でも5番目の生産量があるものの、積極的にC糖を生産しEU 域外に輸出補助金なしに輸出するフランスやドイツとは基本的に異なった性格を持ちます。EU の制度見直しに伴なう生産割当の減少により、2000/01年度の収穫面積は減少することが予測されています。オランダの製糖工場は、ここ10年余りの間に12工場から5工場に合理化してきましたが、このような状況下、今後もこうした合理化の動きが予測されます。こうした、オランダの砂糖産業について、英国の調査会社 LMC 社からの報告をもとに企画情報部でとりまとめたので紹介します。
なお、この報告は2001年1月現在のものであり、最新のデータについては巻末資料編をご参照ください。
国内の需給バランス
99/2000年度におけるオランダの砂糖生産量は、フランス、ドイツ、イタリア及びイギリスに次いで EU で5番目に位置し、92/93〜99/2000年度には、平均100万トン (粗糖換算) の砂糖を生産している (図1)。オランダのA割当とB割当の合計数量 (83万9,728トン (白糖換算)) は、EU の中で6番目に位置し、割当外の砂糖はC糖として輸出補助金を受けること無く EU 域外に輸出されている。
A割当は、EU 加盟国の消費水準に設定されているが、B割当は、実質加盟前からの生産の歴史を反映した形で設定されている。オランダの総割当数量の中に占めるB割当の水準は26.4%とEU平均の21.7%より高い水準にある。
2000/01年度の生産割当は、EU 全体で約47万8,000トンの割当量の削減を反映して、過去の水準を下回っている (表1参照)。
表1 加盟国別の生産割当 (2000/01年度)
|
A割当 (トン) |
B割当 (トン) |
合 計 (トン) |
A割当に対する B割当の割合 (%) |
オーストリア |
305,685 |
71,350 |
377,035 |
23.3 |
ベルギー/ルクセンブルク |
657,903 |
141,255 |
799,159 |
21.5 |
デンマーク |
314,988 |
92,796 |
407,784 |
29.5 |
フィンランド |
130,715 |
13,071 |
143,786 |
10.0 |
フランス |
2,884,787 |
774,600 |
3,659,387 |
26.9 |
ドイツ |
2,530,181 |
778,526 |
3,308,706 |
30.8 |
ギリシャ |
284,092 |
28,409 |
312,502 |
10.0 |
アイルランド |
178,292 |
17,829 |
196,122 |
10.0 |
イタリア |
1,280,546 |
240,830 |
1,521,377 |
18.8 |
オランダ |
664,463 |
175,264 |
839,728 |
26.4 |
ポルトガル |
72,539 |
6,035 |
78,574 |
8.3 |
スペイン |
947,345 |
39,473 |
986,818 |
4.2 |
スウェーデン |
329,512 |
32,951 |
362,462 |
10.0 |
イギリス |
1,018,814 |
101,881 |
1,120,695 |
10.0 |
EU-15カ国合計 |
11,599,863 |
2,514,272 |
14,114,135 |
21.7 |
|
出典:F.I.R.S.「統計報告書」(Bulletin Statistique) 2000年8月、 「バーテンズ砂糖経済」(Bartens Sugar Economy) 2001年。
|
図1 オランダの砂糖生産量及び消費量等の推移
図1に示されているように、消費量は微増傾向で推移しているため、純輸出量は生産量の増減の影響を受ける結果となっている。98/99年度には、多雨及び遅霜が影響し、生産量が対前年比19%減少したことから、純輸出量も減少した。99/2000年度には生産量が回復したことから、純輸出量も回復した (表2)。
現在、オランダは砂糖の純輸出国となっている。グラフ1においては、純輸出量は、総輸出量−総輸入量として計算されている。しかし、純輸出量は、93/94年度の55万トン強 (粗糖換算) から、99/2000年度には、約15万トンまで急激に減少している。
表2は、その他の EU 加盟国及び EU 域外の諸国との貿易を含むオランダの貿易データを示している。97/98〜99/2000年度においては、19万〜32万4,000トンの砂糖を輸出しているが、そのほとんどが EU 域内で販売されたものである。オランダの輸入量は、97/98年度には4万7,000トンであったが、98/99年度が生産減であったことから、98/99年度には9万6,000トン、99/2000年度に生産量は回復したものの、98/99年度の減産が影響し、輸入量は11万1,000トンにまで増加した。オランダは不作の際の保険として、C糖を生産している。そのため、過去5年間では、95/96〜97/98年度及び99/00年度にはC糖を生産したが、98/99年度にはC糖の生産は行っていない (次年度への繰越分を含む)。
表2 砂糖の需給バランス
(単位:1,000トン、粗糖換算) |
|
97/98年度 |
98/99年度 |
99/2000年度 |
生 産 量 |
1,109 |
896 |
1,260 |
消 費 量 |
661 |
706 |
716 |
輸入量 |
合 計 |
47 |
96 |
111 |
粗 糖 |
5 |
8 |
7 |
白 糖 |
42 |
88 |
104 |
輸出量 |
合 計 |
324 |
191 |
266 |
粗 糖 |
1 |
1 |
1 |
白 糖 |
323 (149) |
190 (0) |
265 (166) |
在庫量の変化 |
171 |
95 |
389 |
|
注1. 輸出量白糖の ( ) 書きは、C糖の輸出量である。 99/2000年度にはうち8万トンを次年度に繰り越している。 |
ビート糖等の生産実績
表3は、97/98〜99/2000年度におけるオランダの砂糖生産等のデータを示している。ビートの収穫面積は、97/98年度の11万4,000haから99/2000年度の12万haにまで増大し、同時に、ビート生産量も増加し、99/2000年度には710万トンに達している。しかし、98/99年度には天候不順のため、単収が大幅に低下したことから、ビート生産量は大きく減少した。さらに、同年度はビートの品質も低下したことから、砂糖生産量も大幅に減少した。
オランダのビート生産総額は、3年間の平均で約3億4,400万USドルであるが、年度によって増減があり、98/99年度には急激に減少したが、99/2000年度には3億7,400万USドルを超えるまで増加した。ユーロ対ドルの為替変動にも関わらず、ビート生産総額が増加したのは、ビート生産量がそれ以上に増加したためである。ビート生産高は、オランダの農業生産総額の平均約3%を占めている。
表3 オランダのビート生産量及び産糖量等の推移
|
97/98年 |
98/99年 |
99/2000年 |
収穫面積 (1,000ha) |
114 |
113 |
120 |
ビート生産量 (1,000トン) |
6,270 |
5,413 |
7,128 |
単 収 (トン/ha) |
55.0 |
47.9 |
59.4 |
産糖量 (1,000トン、粗糖換算) |
1,020 |
824 |
1,118 |
ビート生産量/産糖量 (TB:TS) |
6.1 |
6.6 |
6.4 |
ビート生産総額 (注1) (1,000US$) |
328,886 |
288,852 |
373,778 |
農業粗生産額 (1,000US$) |
10,822,923 |
11,371,970 |
11,881,460 |
農業粗生産額に占める ビート生産総額の割合 (%) |
3.0 |
2.5 |
3.1 |
|
注1. ビート生産総額は、毎年のビート生産量に農民が支払われている1トン当たりのビート価格をかけることによって導かれている。 |
生産量及び消費量
オランダで生産されている砂糖は、すべて国内産ビートから生産されている。
表4は、97/98〜99/2000年度におけるオランダの砂糖消費量と用途別砂糖消費量を示している。オランダの1人当たり消費量は、EU の平均35kgと比較して高い水準にあり、97/98年度の42.1kgから99/2000年度には45.1kgに増加している。
また、家庭消費量は14.7%で、97/98年度の14.5%からわずかに増加している。飲料向けは、99/2000年度に国内消費量の18.1%を占め、次に16.9%を占める焼き菓子向けが続いている。砂糖菓子と乳製品は、それぞれ13.7%となっている。その他の利用 (食品以外の利用含む) が97/98年度の15.3%から99/2000年度には14.5%まで減少しているため、実需者向けに占める飲料、焼き菓子等の食品向けの相対的なシェアは増加している。
表4 砂糖の用途別消費量
(単位:1,000トン、粗糖換算) |
|
97/98年度 |
98/99年度 |
99/2000年度 |
家 庭 用 |
96 |
14.5% |
103 |
14.6% |
105 |
14.7% |
実需者向け |
|
飲 料 |
123 |
18.6% |
129 |
18.3% |
130 |
18.1% |
焼き菓子 |
109 |
16.5% |
118 |
16.7% |
121 |
16.9% |
砂糖菓子 |
89 |
13.4% |
96 |
13.5% |
98 |
13.7% |
乳製品 |
88 |
13.3% |
95 |
13.5% |
98 |
13.7% |
缶詰及び保存食品 |
55 |
8.4% |
59 |
8.4% |
60 |
8.4% |
その他の利用 (食品以外の利用含む) |
101 |
15.3% |
106 |
15.0% |
104 |
14.5% |
小 計 |
565 |
85.5% |
603 |
85.4% |
611 |
85.3% |
合 計 |
661 |
|
706 |
|
716 |
|
1人当たりの砂糖 消費量 (kg/人) |
42.1 |
|
44.7 |
|
45.1 |
|
|
出典:CEFS、LMC |
異性化糖(イソグルコース)の位置付け
表5は、オランダの砂糖及び異性化糖の生産量と消費量を示している。異性化糖は、生産割当によって制限されているため、砂糖生産量の0.8%、砂糖消費量の12%を占めるにすぎない。
オランダは、年間9,000トン強 (乾物ベース) を生産、約8万1,000トンを消費しているが、不足分は輸入によって賄われている。生産される製品はすべて42%ものである。
異性化糖は、テイト・アンド・ライル (Tate & Lyle) 社系列のアミラム・グループ (Amylum Group) 傘下のアミラム・ネーデルラントN.B. (Amylum Nederland N.B.) 社の工場 (オランダ唯一) で生産されている。工場は、Koog aan de Zaan に所在し、その年間生産能力は割当水準である9,125トンである (表6参照)。
オランダはまた、チコリーからイヌリン・シロップを生産している (EU にはキクイモから生産される地域もある)。しかし、収益性が低いことから、B割当としての生産はほとんど無く、6万4,000トン (乾物ベース) のA割当もしばしば達成していない (表7参照)。
表5 異性化糖と砂糖の生産量及び消費量 (白糖換算/乾物ベース)
(単位:1,000トン) |
|
97/98年度 |
98/99年度 |
99/2000年度 |
生産量 |
砂糖
異性化糖
%異性化糖
|
1,020
9.1
0.9
|
824
9.1
1.1
|
1,159
9.1
0.8
|
消費量 |
砂糖
異性化糖
%異性化糖
|
608
82
13.5
|
650
81
12.5
|
659
81
12.3
|
輸入量 |
砂糖
異性化糖
%異性化糖
|
43
72.5
168.6
|
88
72.1
81.9
|
102
71.6
70.2
|
輸出量 |
砂糖
異性化糖
%異性化糖
|
324
―
0.0
|
191
―
0.0
|
266
―
0.0
|
|
出典:CEFS、LMC |
表6 イソグルコースの生産割当 (2000/01年度・乾物ベース)
(単位:トン) |
|
A 割 当 |
B 割 当 |
合 計 |
ベルギー |
54,427 |
14,967 |
69,394 |
フィンランド |
10,615 |
1,062 |
11,677 |
フランス |
15,280 |
3,977 |
19,257 |
ドイツ |
27,846 |
6,558 |
34,404 |
ギリシャ |
10,144 |
2,389 |
12,533 |
イタリア |
15,975 |
3,762 |
19,737 |
オランダ |
7,159 |
1,686 |
8,845 |
ポルトガル |
7,800 |
1,837 |
9,637 |
スペイン |
73,350 |
7,824 |
81,174 |
イギリス |
20,854 |
5,562 |
26,416 |
合計 |
243,450 |
49,624 |
293,074 |
|
出典:「バーテンズ砂糖経済」(Bartens Sugar Economy) 2000/01年度。 |
表7 イヌリン・シロップの生産割当 (2000/01年度・乾物ベース)
(単位:トン) |
|
A 割 当 |
B 割 当 |
合 計 |
ベルギー |
169,685 |
39,961 |
209,646 |
フランス |
19,366 |
4,561 |
23,927 |
オランダ |
63,935 |
15,058 |
78,993 |
合計 |
252,986 |
59,580 |
312,566 |
|
出典:「バーテンズ砂糖経済」(Bartens Sugar Economy) 2000/01年度 |
砂糖産業の現状
製糖業について
表8は、オランダの98/99年度におけるビート糖会社及び工場の生産実績等を示している。1970年代初頭には、オランダには、Cosun 社と CSM 社が持つ12工場が存在した。1950年代初頭に締結された割当協定に従って、生産量はこれら2社の間で分割され、それ以降、この2社でオランダの全ての砂糖を生産している。
オランダの砂糖産業はかつて12工場あったが、5工場に合理化された。図2は、87/88〜99/2000年度の工場数と平均規模の変化を示している。95/96年度に Roosendaal に所在する Cosun 社の Suiker Unie U. A. 工場 (能力6,500トン/日) が閉鎖された。しかし、他の5工場の平均能力が減少しなかったことから、平均規模は増大した。
オランダの99/2000年度のビート工場は、1万〜1万6,000トン/日の加工能力を有し、平均は14,100トン (日本は最大裁断能力8,619トン/日) である。Vierverlaten 工場と Groningen 工場はオランダ北部に、Puttershoek 工場、Dinteloord 工場及び Breda 工場は南部に所在する。
98/99年度の平均操業日数は88日であり、EU の平均87日と同程度である。
表8 ビート製糖会社の現状 (98/99年度)
会 社 名 |
Cosun (Koninklijke Cooperatie Cosun U.A.) |
CSM Suikerfabriek |
工 場 数 |
3 |
2 |
工場所在地 |
Oud Gastel (Dinteloord) |
Breda |
Groningen |
Vierveriaten |
Puttershoek |
|
砂糖製造期間 |
9〜12月 |
9〜12月 |
操業日数 (年間日数) |
88 |
産糖量 (1,000トン、粗糖換算) |
895.688 |
ビート生産量/産糖量 (TB:TS) |
6.04 |
平均ショ糖含有率 (%) |
15.6 |
図2 平均工場規模と工場数の推移 (87/88〜99/2000年度)
砂糖の流通
EU と同様に、オランダは家庭用及び実需者向けにクリスタル糖、液糖等を生産している。オランダの砂糖生産者は、砂糖を直接ユーザーに配送しているが、小規模ユーザーと小売用のほとんどは、民間の仲介業者を経由して販売している。
砂糖産業における現在の問題
EU の生産割当制度は、オランダと EU の砂糖生産を制限している。さらに、輸出補助金を受けた生産量は、将来確実に減少し、国内の生産割当は削減され、長期的には支持価格が低く設定されることが予測される。
砂糖制度は、さらに、世界の最貧国48カ国の非関税アクセス (武器以外の全て) の提案によって脅かされている。(米やバナナとともに) 砂糖は、8年間の移行期間の後で、非関税アクセスが保証されることになる。これは、砂糖輸入の急激な増加を招き、国内生産は大幅に減少することが予測される。
砂糖産業はこれに対処するため、主に東ヨーロッパへの進出を目指し、食品以外の部門に拡張する計画を持っている。現に Cosun 社は1997年に、Ormoz (スロヴェニア) の工場の株式を取得している。
また、EU 域内の事業能力を向上させることに努めている。例えば、CSM 社のスカンジナビアの子会社である Malaco Leaf 社は、2001年半ばに Malmo 工場を閉鎖して、生産を Galve 工場及び Slagelse 工場 (デンマーク) に移転する予定である。
「海外レポート」インデックスへ
|海外情報INDEX|SUGARのトップへ|ALICのページへ|