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ロシアの砂糖産業の概要

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最終更新日:2010年3月6日

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海外レポート
[2001年11月]
 ソビエト連邦は、数十年間にわたる共産主義支配及び中央統制経済の後、1991年に崩壊し、国家経済は根本的改革の過程に入り、自由化が推進されています。現在、ロシアは WTO に加盟していませんが、5年間で加盟国の資格を得ることができるオブサーバーとなっています。しかし、長期にわたるマイナス経済成長、急激なインフレーション及び通貨の不安定性を伴った経済の混乱と、砂糖部門に対する政策の不明確さ及び不安定さとが重なり、砂糖産業は大きな打撃を受けています。結果として、国内需要を充たすために輸入に依存しており、輸入量は国内需要量の約3分の2を占めています。
 こうしたロシアの砂糖産業について、英国の調査会社 LMC 社からの報告をもとに企画情報部でとりまとめたので紹介します。なお、この報告は2001年4月現在のものであり、最新のデータについては巻末資料編をご参照下さい。

企画情報部


国内の需給バランス   ビート糖等の生産実績
砂糖の消費量 その他の甘味料
砂糖制度の概要 砂糖産業の現状



国内の需給バランス

 ロシアの砂糖生産量は、92/93年度から2000/01年度にかけて33%減少し、現在163万トン (粗糖換算) となっており、国内消費量の3分の1を下回っている。一方、国内消費量は、1990年代初めの経済混乱期には急激に減少したが、その後徐々に回復し、2000/01年度には580万トンにまで増加している。そのため、主に粗糖をキューバ、ブラジル等から輸入し、国内のビート製糖工場で精製することにより需要をみたしている。輸入量は96/97年度の285万トンから2000/01年度には475万トンにまで増加している。ビート製糖工場は、一般的に製糖期終了後、輸入した粗糖から精製糖を製造している。
 輸入された粗糖は、精製後、国内に供給される他、近隣の旧ソビエト連邦の共和国に再輸出される。93/94年度までは再輸出量が100万トンを占めていたが、その後急激に減少し、現在は約55万トンとなっている。
 砂糖生産が減少した理由は、主に、砂糖産業に対する政府の財務補助が大幅に削減されたこと等による、ビート栽培面積の減少、単収の低下、含糖率の低下、運転資金不足が挙げられる。また、投資の増加、設備の改善、密輸の規制等の奨励策がほとんど実施されていないことが、砂糖生産の減少に拍車をかけているものと思われる。

図1 ロシアの砂糖生産量及び消費量等の推移
砂糖生産量及び消費量等の推移グラフ

表2 砂糖の需給バランス
(単位:1,000トン、粗糖換算)
  95/96年度  96/97  97/98  98/99 99/2000 2000/01
生 産 量 2,216 1,817 1,278 1,341 1,660 1,630
消 費 量 5,164 5,267 5,370 5,635 5,700 5,800
輸入量 合 計 3,300 2,849 4,096 4,916 4,685 4,750
粗 糖 1,684 1,959 3,518 4,565 4,435 4,650
白 糖 1,616 889 578 351 250 100
輸出量 合 計 189 120 38 103 450 550
粗 糖 32 23 0 6 0 0
白 糖 157 98 38 97 450 550
在庫量の変化 +163 △721 △34 +519 +195 +30

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ビート糖等の生産実績

 99/2000年度には95/96年度に比べ、収穫面積が17%、単収が11%減少し、ビート生産量は27%減少した。さらに砂糖生産量は25%減少した。
 ロシアの砂糖産業は資本不足等により、単収及び含糖率が低く、TB:TS比 (ビート生産量/産糖量) も世界水準をはるかに下回っており、中央ヨーロッパの他の旧共産主義国に比べても技術水準が低い。95/96〜99/2000年度における平均白糖産出率はha当たり1.7トンであり、チェコ共和国の6.0トン強及びハンガリーの5.5トンに比べ大きく下回っている。西ヨーロッパ諸国と比べるとさらに違いは明白であり、ドイツでは5.2トン、フランスではロシアのほぼ4倍の6.7トンとなっている。
 ロシアの製糖工場の平均規模は、1990年代初めには、チェコ共和国を上回り、ポーランドと同程度であった。しかし、チェコ共和国、ポーランド及びハンガリーでは、1990年代に合理化が開始され、製糖工場のビートの平均加工能力は98/99年度には1日当たり、それぞれ3,900トン、3,000トン、5,500トンにまで増大している。ロシアにおいては、明確な合理化は実施されておらず、98/99年度の製糖工場数は10年前と同数であり、ビートの平均加工能力は1日当たり2,800トンで10年前に比べ1%しか増大していない。

表2 ロシアのビート生産量及び産糖量等の推移
  95/96年度  96/97  97/98  98/99 99/2000 平 均
収穫面積 (1,000ha) 1,085 1,071 933 810 900 960
ビート生産量 (1,000トン) 19,110 16,167 13,900 10,819 14,025 14,804
単 収 (トン/ha) 17.6 15.1 14.9 13.4 15.6 15.4
産糖量 (1,000トン、粗糖換算) 2,216 1,817 1,278 1,341 1,660 1,662
ビート生産量/産糖量 (TB:TS) 8.6 8.9 10.9 8.1 8.4 8.9
ビート生産総額 (注1) (100万US$) 589 498 428 333 432 456
農業粗生産額 (100万US$) 10,600 13,521 16,442 19,363 n/a 14,982
農業粗生産額に占める
ビート生産総額の割合 (%)
5.6 3.7 2.6 1.7 n/a 3.0
注1. ビート生産総額は、毎年のビート生産量に農民が支払われている1トン当たりのビート価格をかけることによって算出される。

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砂糖の消費量

 表3は、砂糖の用途別消費量を示している。家庭内消費が全体の約3分の2を占め、次に砂糖菓子向け、焼き菓子向けが続いており、飲料向けは全体の5%を占めるにすぎない。総消費量は、95/96年度の475万トンから99/2000年度には524万4,000トンに増加している。1人当たり消費量も、総消費量と同様に増加傾向にあり、99/2000年度には約36kgと世界平均 (約20kg) と比較しても多い。これは、砂糖菓子及びフルーツ缶詰生産、自家製アルコール飲料の生産などが他の国々よりも多いためである。

表3 砂糖の用途別消費量
(単位:1,000トン、粗糖換算)
  95/96年度  96/97  97/98  98/99 99/2000
家 庭 用 2,900 61.1% 3,020 62.3% 3,093 62.6% 3,142 60.6% 3,286 62.7%
実需者向け  
 飲 料 235 5.0% 230 4.7% 233 4.7% 257 5.0% 246 4.7%
 焼き菓子 450 9.5% 443 9.1% 449 9.1% 495 9.6% 475 9.1%
 砂糖菓子 491 10.3% 486 10.0% 492 10.0% 543 10.5% 520 9.9%
 乳製品 261 5.5% 259 5.3% 262 5.3% 289 5.6% 277 5.3%
 缶詰及び保存食品 303 6.4% 300 6.2% 303 6.1% 335 6.5% 321 6.1%
 その他の食品 62 1.3% 59 1.2% 59 1.2% 70 1.3% 66 1.3%
 食品以外の利用 48 1.0% 48 1.0% 49 1.0% 52 1.0% 52 1.0%
小 計 1,850 38.9% 1,826 37.7% 1,847 37.4% 2,042 39.4% 1,957 37.3%
合 計 4,750 100% 4,846 100% 4,940 100% 5,184 100% 5,244 100%
1人当たり消費量
(kg/人)
32.1   32.7   33.4   35.2   35.9  

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その他の甘味料

 ロシアでは、人工甘味料の消費量 (砂糖換算) が甘味料全体の3%強を占めている。表4に示されているように、飲料向けが全体の46%を占めており、最大の需要先となっている。
 人工甘味料のうち、アスパルテームが最も多く、主に、飲料、乳製品及び焼き菓子に利用されている。アスパルテームの消費量は、2000/01年度には、95/96年度に比べ約1万トン増加し、3万8,100トン (実量191トン) になると推定されている。
 異性化糖は、価格面において砂糖と競合できないため、ほとんど使用されていない。

表4 人工甘味料の用途別消費量
(単位:1,000トン、粗糖換算)
  95/96年度  96/97  97/98  98/99 99/2000
家 庭 用 6 5.6% 10 6.8% 14 7.8% 16 8.8% 18 9.9%
実需者向け  
 飲 料 42 39.6% 68 47.6% 88 50.1% 87 48.2% 84 46.3%
 焼き菓子 0 0.2% 0 0.1% 1 0.4% 1 0.6% 1 0.7%
 砂糖菓子 1 0.7% 1 0.6% 5 2.9% 7 3.7% 7 3.8%
 乳製品 2 2.2% 4 2.9% 6 3.6% 7 3.7% 7 3.6%
 缶詰及び保存食品 1 0.8% 1 0.7% 1 0.8% 2 1.1% 2 1.2%
 その他の食品 13 11.8% 14 10.1% 14 7.8% 13 7.1% 13 7.1%
 食品以外の利用 42 39.2% 44 31.2% 47 26.7% 49 26.9% 50 27.5%
小 計 101 94.4% 133 93.2% 163 92.2% 165 91.2% 164 90.1%
合 計 107 100% 142 100% 176 100% 181 100% 182 100%
1人当たり消費量
(kg/人)
0.7   1.0   1.2   1.2   1.2  

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砂糖制度の概要

生産規制
 ソビエト連邦崩壊前の中央統制経済体制では、砂糖は国家が決める生産割当に従って生産され、価格は国の政策に基づいて地方政府が決定していた。
 砂糖産業の中央統制経済体制から資本主義への移行により、生産量は急激に減少した。ビート生産のための資金不足により、ビートの輸送及び貯蔵施設に問題が生じており、ビートの収穫後における損失が大きいこともその要因の1つとなっている。砂糖産業の構造改革も、資金投資の不足により限られたものになっており、また、外国からの投資を促進するための政府による施策も遅れている。
 政府は、1997年3月に、砂糖生産支援プログラム「SUGAR」を立ち上げた。このプログラムの主な目的は、砂糖生産を増大させ、砂糖の輸入を最小限に抑えることにあるが、砂糖産業、政府ともにプロジェクトのための資金が不足している。

関税割当制度
 中央統制経済体制下では、国内価格は世界市場価格と無関係に安定していた。1991年に国内砂糖市場が自由化された後、国内価格には世界市場価格が密接に関係することとなり、現在、国内価格は世界市場価格に関税を加えたものに等しくなっている。95/96〜99/2000年度における、ビートの平均価格はトン当たり31USドルであり、白糖の国内市場への平均卸売価格はトン当たり383USドル、平均小売価格はトン当たり465USドル (税別) であった。また、平均輸出価格はトン当たり252USドルであった。
 政府は、国内の砂糖産業を保護するために関税を導入している。関税は、粗糖より白糖に対して高く設定されており、基本的にはビート製糖期間の9月〜1月を中心に関税を引き上げ、製糖終了後、関税を引き下げる措置がとられている。このことにより、国内ビートを保護する働きとともに、粗糖での輸入を促進し、国内の製糖工場の稼働率を高める働きを持っている。
 最近では、2000年6月15日から12月16日まで、粗糖に対して40%、白糖に対して45%の季節関税が適用された。その後、粗糖及び白糖に対する関税はそれぞれ5%と25%に引き下げられたが、2001年1月1日に白糖に対する関税は30%にまで引き上げられた。白糖に対する関税は、世界市場価格が低い場合にも国内砂糖産業を保護するため、トン当たり90ユーロの最低輸入関税が適用されている。
 また、政府は輸入割当数量を365万トンに設定しており、2000/01年度の割当の権利を得るための入札が2000年11月後半に行われた。割当数量は、115万トン (2000年12月15日〜2001年3月31日)、150万トン (2001年4月1日〜6月30日)、60万トン (2001年7月1日〜9月30日)、40万トン (2001年10月1日〜12月31日) の4期間に分割された。



砂糖産業の現状

製糖業について
 ロシアの砂糖産業は、5,000ヵ所の国家所有ビート農場と93ヵ所の製糖工場で構成されている。ビートは伝統的に西部地域で栽培されており、Central、Volgo-Vyatsk、Central-Chernozem、Povolzyhsk、North Caucasus、Urals 及び Western Siberia の6つの主な生産地域がある。最大の生産地域は Central-Chernozem 地域であり、95/96〜2000/01年度には、毎年、平均約650万トンのビートを生産した。

砂糖の流通
 農家はビートを工場に納入し、工場で生産された砂糖の72%を受け取っている。そのため、砂糖は製糖工場と農家によって販売され、民間の取引業者によって主として50kgの袋詰めで流通される。実需者が特定の品質の砂糖を必要とする場合には、製糖工場と直接契約することもできる。

砂糖産業における現在の問題点
 ロシアの砂糖産業の発展には、海外からの投資により、必要な資本、技術、技術的な専門知識及び管理者を導入する必要があると思われる。
 中央ヨーロッパ諸国では、将来、欧州連合 (EU) に加盟することが大きな目標となる。しかし、ロシアには EU への加盟という目標はなく、砂糖政策は、自由市場を望む改革派と市場保護を必要と考える保守派との間で流動的な状態にある。また、WTO 加盟国ではないため GATT 義務を遵守する必要がなく、政府は自由に政策を変更することができる。そのため、政策は不安定となり混乱している。




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