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南アフリカの砂糖産業の概要

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最終更新日:2010年3月6日

砂糖類ホームページ/海外情報


海外レポート
[2002年1月]
 南アフリカの砂糖産業は、1990年代の半ばに受けた干ばつの影響から回復し、2000/01年度における砂糖の生産量は約290万トンとなっています。国内消費量は安定して推移しているため、生産増加分のほとんどが輸出に回されており、近年では、国内で生産される砂糖のほぼ半分が輸出されています。現在、砂糖産業は (1) 関税、(2) 工場とさとうきび生産者の収益分配、(3) 単一機関 (SASA) による輸出、により保護されていますが、国内価格が高いことから近隣諸国からの半加工製品や違法な輸入が問題となっています。なお、この報告は2001年4月現在のものであり、最新のデータについては巻末資料編をご参照下さい。

企画情報部


国内の需給バランス   生産実績
その他の甘味料 砂糖制度の特徴
生産規制 価格支持
さとうきび生産者と甘しゃ糖業者との関係
砂糖産業の現状   現在の問題点



 さとうきびは、約90%が KwaZulu-Natal 州で、残りの約10%は Mpumalanga 州で栽培されている。図1が示すように、さとうきび生産量は92/93年度、93/94年度に深刻な干ばつのために、主に KwaZulu-Natal 州において大幅に減少したが、96/97年度にようやく干ばつ前の水準にまで回復した。  南アフリカにおいて、さとうきびは大小様々な規模の農家で栽培されている。小規模農家は約4万5,000人であるが、その生産量は国内生産量の20%未満を占めるに過ぎず、国内生産量の約3分の2は約2,000人の大規模農家によって生産されている。残りは、甘しゃ糖工場の所有地で生産されているが、甘しゃ糖工場はさとうきび栽培を放棄して製糖業務に専念する傾向にあるため、その生産量は減少傾向にある。

国内需給バランス

 南アフリカは、世界で第11位の砂糖生産国(2000/01年度現在)であり、最大規模の粗糖輸出国(2000/01年度現在、第8位)となっている。表1に示すように、97/98〜2000/01年度における国内産糖量は平均で約270万トン(粗糖換算)、国内消費量は約130万トンであり、余剰砂糖として国内生産量の約43%に当たる約120万トンが輸出された。
 また、スワジランドから輸入される半加工製品の影響を受けて、国内産糖が輸出に回される傾向にあるため、輸出量は増加している。南部アフリカ関税同盟 (Southern African Customs Union:以下 SACU という) 注1) によって、スワジランドから南アフリカへの輸入は非関税となっている。しかし、南アフリカの砂糖産業は、スワジランドが SACU の産業協定に違反しており、スワジランドから南アフリカへの半加工製品の輸出量は歴史的な水準に保持されるべきであると告発した。これを受けて、1998年に両国は協定に合意し、現在スワジランドが南アフリカに輸出できる半加工製品のの数量は約20万トンに制限されている。合意内容には、南アフリカの砂糖消費量の増加に応じて、スワジランドからの輸出量が増加することが盛り込まれている。

図1 南アフリカの地域別さとうきび生産量の推移
南アフリカの地域別さとうきび生産量の推移

表1 砂糖の需給バランス
(単位:1,000トン、粗糖換算)
  97/98年度 98/99年度 99/2000年度 2000/01年度 平 均
産 糖 量 2,525 2,844 2,524 2,926 2,705
消 費 量 1,302 1,376 1,230 1,300 1,302
輸入量 合 計 0 0 0 0 0
粗 糖 0 0 0 0 0
白 糖 0 0 0 0 0
輸出量 合 計 1,023 1,098 1,033 1,500 1,164
粗 糖 816 889 733 1,150 897
白 糖 207 209 300 350 267
在庫量の変化 +200 +370 +260 +126  

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生産実績

 さとうきび生産量は、98/99年度には97/98年度に比べ増加したが、99/2000年度には単収の低下により97/98年度を下回るまでに減少した。しかし、歩留まりが改善したため、産糖量は97/98年度とほぼ同量の約250万トンとなった。産糖量の内訳は粗糖と白糖がほぼ半分ずつとなっているが、粗糖として分類されている砂糖のうち約16万トンは国内で直接消費されているブラウンシュガーであり、残りの粗糖のほとんどが輸出用となっている。
 表3は97/98〜99/2000年度における砂糖の用途別消費量を示している。家庭消費量が全体の約65%を占め、実需者向けは全体の約35%となっており、飲料、缶詰及び保存食品、砂糖菓子の順となっている。99/2000年度の砂糖消費量は98/99年度に比べ減少しており、1人当たり砂糖消費量も約33kgから約29kgにまで減少している。
 この理由としては、
 (1) 1人当たりの実質 GDP の低下、
 (2) スワジランドから半加工製品の形で輸入される砂糖による影響、
 (3) ジンバブエからの記録されない輸入の増大による影響
が挙げられる。

表2 南アフリカのさとうきび生産量及び産糖量等の推移
  97/98年 98/99年 99/2000年 平 均
収穫面積 (1,000ha) 311 321 316 316
さとうきび生産量 (1,000トン) 22,155 22,930 21,223 22,103
単 収 (トン/ha) 71 71 67 70
産糖量 (1,000トン、粗糖換算) 2,525 2,844 2,524 2,631
さとうきび生産量/産糖量 (TC:TS) 8.8 8.1 8.4 8.4
さとうきび生産総額 (1,000US$) 516,679 494,145 392,944 467,923
農業粗生産額 (1,000US$) 5,566,122 4,999,577
農業粗生産額に占める
ビート生産総額の割合 (%)
9 10 n. a.
注1) n. a. =データ未入手。

表3 砂糖の用途別消費量
(単位:1,000トン、粗糖換算)
  97/98年度 98/99年度 99/2000年度
家 庭 用 842 64.7% 895 65.0% 805 65.4%
実需者向け
 飲 料
 焼き菓子
 砂糖菓子
 乳製品
 缶詰及び保存食品
 その他の利用
 (食品以外の利用含む)

164
19
97
22
107
51

12.6%
1.4%
7.5%
1.7%
8.2%
3.9%

171
20
102
23
112
53

12.4%
1.5%
7.4%
1.7%
8.1%
3.9%

149
17
91
21
100
47

12.1%
1.4%
7.4%
1.7%
8.1%
3.8%
小 計 460 35.3% 481 35.0% 425 34.6%
合 計 1,302 100% 1,376 100% 1,230 100%
1人当たり消費量 (kg/人) 31.7   33.0   29.0  

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その他の甘味料

 南アフリカでは、砂糖の消費量が甘味料全体の90%以上を占めており、サッカリンやアスパルテームなどの人工甘味料の消費量は全体の7%となっている。最近、アセスルファム-K も消費されはじめているが、他の甘味料に比べてごくわずかな量にとどまっている。また、トウモロコシは多量に生産されているが、異性化糖は生産、消費ともされていない。



砂糖制度の特徴

 南アフリカの砂糖産業は、政府の認可と砂糖業界関係者によって規定される協定により規制されている。砂糖産業協定は、砂糖法により規定され、砂糖産業関係者を共通の制度的枠組みに拘束しているが、砂糖産業関係者に協力を求めるものであり本質的には任意の協定である。砂糖産業協定には、
 (1) さとうきびの生産と各工場への搬入
 (2) 砂糖と糖みつの単一機関を通しての販売
 (3) 砂糖産業による収益の保持及び甘しゃ糖業者とさとうきび生産者間の収益分配を規制する一連の措置
が含まれる。
 この協定は、南アフリカさとうきび生産者協会と南アフリカ砂糖圧搾業者協会の代表者を構成員とする南アフリカ砂糖協会 (SASA:South Africa Sugar Association) により調整され、運用される。これらの協定は、砂糖産業関係者に利益をもたらすものであるため、これまで遵守されている。また、南アフリカ政府は、砂糖法を執行する通商産業省 (DTI:Department of Trade and Industry) を通して砂糖産業を監視している。
 1994年までは、SASA が国内販売、輸出とも全ての砂糖を販売していたが、1990年代終わりに実施された制度改正の一環として、国内販売の一部が砂糖生産者にゆだねられた。最新の砂糖産業協定 (2000) では、国内販売用の精製糖、ブラウンシュガー及び高品質の砂糖の販売は砂糖生産者が担うことになっている。また、制度改正前は、SASA が国内卸売価格をターバンでの貨車渡し価格として設定し、ターバンまでの輸送経費を負担していた。現在は、甘しゃ糖業者と精製糖業者が、10年間の世界市場価格に20%のプレミアムを付けた価格に基づいて、国内基準価格をドル建てで設定している (ドル建て基準価格設定システム)。また、現在の関税は、国内基準価格と世界市場価格との差額に基づいて設定されている。
 政策の改正は、
 (1) 既存の規則により制約を受けている砂糖産業、
 (2) 砂糖産業に国家の再建等への貢献を求めている南アフリカ政府、
 (3) 関税と市場アクセスに関する義務を遂行することを求めている世界貿易機関 (WTO) からの働きかけ
が関与し実施された。
 また、SASA は国内砂糖需要の増進を図るため、砂糖の栄養面における効用等を、出版物、ワークショップ、キャンペーン等を通じて広報活動を行っている。



生産規制

 1985年に、国内市場と補助金付きで輸出される世界市場向け砂糖生産割当 (A割当) と世界市場向け砂糖生産割当 (B割当) を区別する割当制度が導入されたが、この制度は、砂糖産業関係者にさとうきび栽培面積拡大を停滞させている原因であると指摘され、1998年4月までに割当制度は廃止された。また、94/95年度までは、さとうきび生産者は土地区分により、さとうきびを指定された甘しゃ糖工場に納入しなければならなかったが、この制度も既に撤廃されている。



価格支持

 政府は、さとうきび及び砂糖の国内価格を直接的には支持していない。しかし、国内の砂糖価格は輸入関税により間接的に支持されており、国内価格は世界市場価格よりも高くなっている。さらに、単一の販売機関である SASA の国内販売及び市場分配に対する規制により、国内販売割当を輸出割当が砂糖会社に定められ、国内価格は砂糖会社間の競争により値下がりしないようになっていた。市場分配に関しては2000年から規制されていないが、SASA は各シーズン毎に輸出予定量を決定することで、国内価格を支持している。国内生産量の約50%が国内で販売されていることを考慮すると、国内価格の支持は砂糖産業にとってきわめて重要であると思われる。
 国内価格が世界市場価格より高く維持されることで、SASA が規制する収益分配方法に基づいて設定されるさとうきび価格も間接的に支持されており、97/98〜99/2000年度におけるさとうきびの平均価格は、トン当たり21USドルとなっている。また、特恵価格で輸出できる砂糖は、関税割当協定に基づいて米国に輸出する粗糖のみとなっている。その割当量は、米国の輸入需要に従って毎年変化するが、南アフリカは2.3%の最低割当を保証されており、99/2000年度は約2万4,000トンであった。
 表5は、南アフリカの関税について示している。南アフリカは、ウルグアイラウンドでの交渉に従ってミニマム・アクセスを6万2,037トンにまで増やしており、SACU の加盟国から輸入される砂糖はミニマム・アクセスの一部とみなされている。2000年5月から用いられている、ドル建て基準価格設定システムによって算出される現在の関税は、粗糖、白糖ともに WTO によって定められた範囲内である。粗糖が輸入されることがほとんどないため、関税は精製糖の輸入に対して計算されており、粗糖に対する従価税を求めるためには基準価格制度が用いられている。

表4 さとうきびと砂糖の価格 (97/98〜99/2000年度平均)
(単位:US$/トン)
  さ と う き び 精 製 糖 粗糖/ブラウンシュガー
さとうきび価格 21
卸売価格
 国内販売
 特恵輸出
 自由市場輸出




422

231

386
465
192
小売価格
 国内販売


564


表5 現在の貿易政策に関する情報
  粗  糖 白  糖
現在の関税率 (注1) 54% 47%
GATT の義務  
関 税
 基本関税率
 最終関税率

124%
105%

124%
105%
ミニマム・アクセス
 (トン、粗糖換算)
62,037
輸出補助金削減
 数 量(トン)
 率 (%)

187,000
36%
最終期限 2000/01年度
注1:ドル建て基準価格設定システムに基づいて計算された従価税

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さとうきび生産者と甘しゃ糖業者との関係


 南アフリカは、砂糖と糖みつの販売による純収益を生産者と甘しゃ糖業者の間で分配する、収益分配システムを実施している。純収益は、砂糖産業の総収益から SASA により負荷される借入金利、販売費用及び管理費用を差し引くことによって算出され、収益分配は99/2000年度には64.4%が生産者に割り当てられており、残りの35.6%を甘しゃ糖業者が受け取っている。この固定収益分配率は、甘しゃ糖業者の精製コストを考慮し、1994年に改正されており、それ以前は、輸出分の精製コストは甘しゃ糖業者とさとうきび生産者の間で分配されていた。また、現在、輸出用に精製される粗糖の輸送価格は精製糖業者が支払っている。
 個々の生産者は、99/2000年度まで、サンプリングされたさとうきびのショ糖含有率にのみ基づいたさとうきびの品質に対して支払いが行われていたが、2000年4月1日より、さとうきびの価値を示す、砂糖と糖みつの回収可能数値 (RV) に基づいた支払方法が実施されている。



砂糖産業の現状


 表6は、南アフリカの砂糖会社及び甘しゃ糖工場を示しており、15の甘しゃ糖工場が4社に所有されている。最大の砂糖会社は Illovo Sugar 社であり、7つの甘しゃ糖工場を所有し、国内生産量のほぼ半分に当たる、年間120万トンの砂糖を生産している。次に Tongaat-Hulett Sugar 社が続き、5つの甘しゃ糖工場を所有し、国内生産量の28%を生産している。Union Co-operative (Union Co-op) 社は、Midlands 地域の Kwazulu-Natal 州に本拠地を置いており、さとうきび生産者によって共同で所有されている。  南アフリカの甘しゃ糖工場は年間220〜265日間操業しており、製糖期間が長いことから利益を得ている。さとうきびの品質は一般的に高く、13.4〜15.2%のショ糖含有率である。4社のうち、Union Co-op 社が最も品質の良いさとうきびを圧搾しており、TC:TS 比が低く、操業期間も265日間と最長となっている。
 2000年6月に Transvaal Suiker Beperk (TSB) 社とその所有する2つの甘しゃ糖工場の所有権が入札にかけられ、統合の動きが生じたが、国家競争委員会によってこの入札は反競争的であると判断され、妨げられた。
 南アフリカの砂糖会社は、近隣国にある工場をも所有している。Illovo Sugar 社は、スワジランド、モザンビーク、タンザニア、マラウイ及びモーリシャスの甘しゃ糖工場の株と土地を所有しており、Tongaat-Hulett Sugar 社はスワジランド、ジンバブエ及びモザンビークの甘しゃ糖工場と土地を所有している。
 表7は、精製糖工場を所有する会社と精製糖工場を示している。現在、操業している精製糖工場は6ヵ所で、3社に所有されており、Tongaat-Hulett Sugar 社の Durban 工場以外は、全て甘しゃ糖工場に付属している。精製糖工場も甘しゃ糖工場と同様に Illovo Sugar 社と Tongaat-Hulett Sugar 社が大きく、この2社で精製糖生産量の80%以上を生産している。

表6 甘しゃ糖工場の現状 (99/2000年度)
表6 甘しゃ糖工場の現状 (99/2000年度)

表7 精製糖工場の現状 (99/2000年度)
表7 精製糖工場の現状 (99/2000年度)

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現在の問題点

 現在、南アフリカの砂糖産業では、国家政策環境及び域内市場環境が重大な問題点となっている。
 国家競争委員会は、国内競争を促す通商産業省 (DTI) の措置を求めることで、砂糖産業に対し影響力を行使することができ、TSB 社の買収が妨げられたことはこの一例である。また、砂糖の実需者が、SASA による世界市場価格を上回る価格支持に異議を申し立てた結果、SASA は、国内で消費される菓子やチョコレートに利用される砂糖に対して価格を世界市場の水準に調整することを同意した。
 南アフリカ地域では砂糖産業の統合が進んでおり、近隣諸国からの輸入量が問題となっている。南アフリカは、近隣諸国と比較して大規模で価格の高い市場であり、世界市場よりも収益が高い魅力的な市場となっている。すでに、スワジランドから半加工製品の形で輸入される砂糖やジンバブエからの違法な輸入が問題となっている。
 現在、南部アフリカ開発共同体 (SADC:Southern African Development Community) 注2) において砂糖は輸入制限品として分類されており、2000年6月に SADC 砂糖議定書を締結し、加盟国間の砂糖貿易を規制している。しかし、SADC 内での貿易自由化が長期的な目標とされており、南アフリカへの砂糖輸入の圧力が強くなりつつある。

注1) SACU 加盟国:南アフリカ、スワジランド、ボツワナ、ナミビア、レソト
注2) SADC 加盟国:南アフリカ、タンザニア、ザンビア、ボツワナ、モザンビーク、アンゴラ、ジンバブエ、スワジランド、レソト、マラウイ、ナミビア


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