[1999年11月]
世界第2位の国土面積をもち、世界第1位の人口をもつ中国は、砂糖の生産量及び消費量について、膨大な潜在力をもち、今後、世界の砂糖需給バランスに影響を及ぼす重要な国の1つである。こうした中国の砂糖産業の概要について、英国の調査会社LMC International Ltd.からの報告をもとに企画情報部で取りまとめたので紹介する。
なお、この報告は、1999年1月に報告されたものを使用しているため、巻末資料編に掲載されている最新データを参照されたい。
【砂糖産業に関する全般的な情報】
国内需給バランス
グラフ1は、過去35年の砂糖生産量、消費量及び輸出量の動向を示している。消費量は、1966/67〜1990/91年には常に生産量を上回っていたが、1990年代は、かなり変化に富んだものとなっている。生産量は、1991/92年に800万トンまで増加したが、1994/95年には620万トンまで落ち込んだ。1997/98年には、880万トンまで増加し、最新の報告では、1998/99年には950万トンになると予測されている。一方、消費量は、1990年代には増加が減速している。
グラフ1:中国の砂糖の生産量と消費量
中国政府は、1970年代以降、生産量、価格設定及び販売について規制緩和を行い、徐々に自由市場化を進めている。経済分野での政府政策の抜本的な変革に伴い、規制緩和は1980年代後半に加速した。砂糖についての改革は、自給率100%を目指すものであり、実現可能なものであるという考えに基づくものである。
砂糖に関しては、1990年までは中国は純輸入国であった。改革によりさとうきびやビートの原料価格を引き上げたことによって生産量は増加したが、消費量の増加率はかなり減速した。したがって、中国は、1991/92年と1992/93年には純輸出国となり、国内自由市場価格はほぼ輸出平価まで値下りした。これによって、製糖工場の農民への支払が困難となり、代わりに農民にIOU(借用証書)を発行した。そのため、農民は栽培面積を減少させ、1994/95年には生産量の減少をもたらし、1994/95年及び1995/96年の2年間は純輸入国に戻った。その後、次の2つの要因によって、国内自由市場価格は値上がりした。1つは、1995年初頭に為替相場の調整があったこと、もう1つは、世界砂糖価格が上昇したことであった。中国は1996/97年と1997/98年にも純輸入国となったが、1998/99年には、純輸出国になるものと予測されている。
中国の砂糖生産量の80%強はさとうきび、残り20%はビートが原料である。1997/98年には、砂糖の総生産量は対前年160万トン増加して、880万トン(粗糖換算)となり、1998/99年も僅かの増加が予測されている。
また、中国は国内需要を満たすため及び再輸出(トーリング)をするために砂糖を輸入している。過去においては、トーリングは輸入量のうち100万トンを占めていた。中国への最大の砂糖供給国はキューバであるが、タイと韓国からも大量の砂糖が輸入されている。1997/98年の総量28万7,000トン(粗糖換算)にのぼる輸出の主な相手国は、サウジアラビア(9万トン)、香港(4万5,000トン)及びインドネシア(4万トン)であった。
表1は、1993/94年〜1997/98年の中国の砂糖生産量、消費量及び貿易量を示している。1990年代半ばには、中国は大量の粗糖輸入国であったが、国内の生産量を増加させたことによって、1997/98年には生産量が消費量を超えるに至っており、1998/99年には純輸出国になるものと予測されている。
甘味料の総消費量は、約1,100万トン(砂糖換算)であり、砂糖は甘味料市場全体の約70%を占めている。また、砂糖の1人当たり消費量は、僅かではあるが増加し、近年では6kg代前半で推移している。これは、1994年にオーストラリアの地方産業調査開発法人が中国で行った調査によれば、2つの主な現象によって説明することができる。第1に、中国では、砂糖を使った製品の需要の所得弾力性が全般的に低いことである(1未満)。つまり、余剰所得のうち、これらの砂糖製品に消費される割合が低いということである。第2に、甘味料の最終利用の主な成長部門が炭酸飲料産業であり、この産業の需要は、比較的所得弾力性が高いと見なされている(1超過)。しかし、人工甘味料が炭酸飲料産業で使用される甘味料の大きなシェアを占めるため、砂糖の需要の増加は、人工甘味料の需要の増加とシェアを分け合っている。
1998年末にかけて、中国政府は、新経済政策を発表した。国内砂糖産業に対して、投資の増加、インフラの改善、砂糖消費の促進、密貿易の規制、人工甘味料の生産・販売の規制、砂糖価格のガイドラインの設定、在庫設備の許容量の増大等を目標としたものであった。
表1:砂糖の需給バランス |
(単位:1,000トン、粗糖換算) |
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1993/94年 |
1994/95年 |
1995/96年 |
1996/97年 |
1997/98年 |
生 産 量
消 費 量
輸 入 量 合計
粗糖
白糖
輸 出 量 合計
粗糖
白糖
在庫量の変化 |
6,882 7,855 1,374 1,310 64 1,272 37 1,235 △872 |
6,204 8,126 3,204 2,820 384 541 25 516 741 |
6,794 8,238 1,929 1,891 37 673 20 652 △188 |
7,205 8,250 915 859 56 436 20 416 △566 |
8,800 8,286 405 330 75 287 63 224 632 |
|
生産実績等
さとうきび生産は、広西、広東、雲南及び海南等の各省(中国の南方国境近く)で栽培されている。規模は一般的に小規模であり、ほとんどの農家は0.3〜0.5の栽培面積である。平均規模2.2、最大20に達する大規模農場は、国営農場局による主要開拓地計画に基づいて、大規模農家によって経営されている。
ビートの生産は、黒龍江省、内モンゴル自治区、新彊省及び甘粛省など、主に中国北部の各省等に集中している。さとうきびの場合と同様に、ビートの生産は小規模な農家で行われている。潅漑設備のある、新彊省、甘粛省及び寧夏省では、平均栽培面積は、1農家当たり0.13〜0.25であり、また、一般に家族単位によって栽培されており、農地の25%を占めている。黒龍江省、吉林省及び遼寧省など降水量の多い地域では、平均農地規模は、生産量が最も少ない北部地帯でも2とはるかに大きい。最大の農場は、さとうきび同様、主要開拓地計画に基づいた農場である。
図2:甘蔗とビートの生産地域
表2に示されているように、甘しゃ糖の生産量は、この期間に驚異的に増加しており、1997/98年には、1994/95年より約250万トン増加して、736万トン(粗糖換算)に達した。収穫面積は、この期間に1.4%増加したにすぎないが、単収は、1994/95年の水準から27%増加し、1997/98年には1当たり74.2トンになり、TC・TS(1トン当たり必要原料)の数値は、10.7まで向上している。しかし、これは、さとうきびの生産技術の進歩によるものではなく、主に良好な天候条件によるものであった。さとうきび畑のほとんどは潅漑されていない。
表2:さとうきびの生産量に関する情報 |
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1994/95年 |
1995/96年 |
1996/97年 |
1997/98年 |
平 均 |
収穫面積 (1,000ha)
収穫量 (1,000トン)
単 収 (トン/ha/年)
砂糖生産量 (1,000トン、粗糖換算)
1トン当たり必要原料 (TC:TS)
さとうきび生産総額*1 (US百万ドル)
農業生産総額 (US百万ドル)
農業生産総額に占める さとうきび生産総額の割合 |
1,045
60,926
58.3
4,857
12.5
1,700
137,293
1.2% |
1,025
65,417
63.8
5,367
12.2
1,808
161,551
1.1% |
1,062
66,876
63.0
5,844
11.4
1,792
168,147
1.1% |
1,060
78,600
74.2
7,355
10.7
2,086
187,679
1.1% |
1,048
67,955
64.8
5,856
11.7
1,846
163,668
1.1% |
|
注・1 さとうきびの生産総額は、さとうきび生産量に農場経営者のさとうきび1トン当たり手取額をかけたもの。 |
表2aは、1994/95年〜1997/98年の中国のビート生産量を示している。ビート収穫量は、この期間に増加して、1996/97年には1,673万トンのピークに達し、1997/98年には1,497万トンまで減少した。黒龍江省で面積が減少した結果、過去4年で10万減少した。一方、潅漑が行われている新彊省等の国内ビート収穫高に占める割合は増加し、それが平均単収を高めている。
中国のさとうきび産業は、技術的水準に関しては、工場の設備が不十分であるにもかかわらず、ほぼ世界的水準にある。平均単収及びショ糖含有率の高さ、さとうきびの繊維含有率の低さ、トラッシュ率の低さ等がその要因である。
一方、ビート部門は、その効率性において、さとうきび部門より遅れており、単収と歩留りなどの重要な点で、世界的水準を大きく下回っている。これは、ビートの栽培地域がビート生産の北端に位置しているため、栽培期間が比較的短いためである。単収は、一部地方の天候が不順であるため、国際水準より低い。利用されている種子の多くは、単胚品種ではなく、多胚品種である(世界的には、過去数10年間に単胚品種に関して品種改良が行われた。)一方、工場側では技術的な能力は低いが、労働力やエネルギーなどのコストが国際的水準よりも低かったため、技術的な不足にもかかわらずこれまでい生き残ることができた。
砂糖原料作物の生産総額は、農業総生産額の2%未満を占めるにすぎない。
表2a:ビートの生産量に関する情報 |
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1994/95年 |
1995/96年 |
1996/97年 |
1997/98年 |
平 均 |
収穫面積 (1,000ha)
ビート収穫量 (1,000トン)
単 収 (トン/ha/年)
砂糖生産量 (1,000トン、粗糖換算)
1トン当たり必要原料 (TC:TS)
ビート生産総額*1 (US百万ドル)
農業生産総額 (US百万ドル)
農業生産総額に占める ビート生産総額の割合 |
708
12,526
17.7
1,032
12.1
456
137,293
0.3% |
695
13,984
20.1
1,403
10.0
518
161,551
0.3% |
656
16,726
25.5
1,505
11.1
616
168,147
0.4% |
612
14,968
24.5
1,460
10.3
549
187,679
0.3% |
668
14,551
21.9
1,350
10.9
535
163,668
0.3% |
|
生産量及び消費量
中国で生産される砂糖は、輸入粗糖から生産されるものを除いてすべて耕地白糖である。中国には、独立した精製糖工場はなく、輸入されたすべての粗糖は甘しゃ糖工場で精製されている。
中国で生産される精製糖の最も一般的な品質は、等級1として格付けされており、糖度約99.65度、色価100〜180ICUMSA(国際砂糖分析法統一委員会)単位である。国内の約70の製糖工場は、品質の良い優れた等級の砂糖として格付けされる砂糖(60〜80ICUMSA単位)を生産することができる。約10の工場は、いわゆるプレミアム砂糖を生産することができ、これは1997/98年の総生産量の2%弱を占める。
表3:砂糖生産量の内訳 |
(1,000トン、粗糖換算) |
|
1994/95年 |
1995/96年 |
1996/97年 |
1997/98年 |
平 均 |
合 計
―白糖
―精製糖 |
6,204
5,023
1,181 |
6,794
5,242
1,552 |
7,205
5,551
1,654 |
8,800
7,191
1,609 |
6,734
5,272
1,462 |
|
注. 白糖にはごく少量の粗糖を含み、精製糖には輸入粗糖から生産される精製糖を含む。 |
表4は、中国における砂糖の消費量の内訳を示している。工業用の2大ユーザーは、清涼飲料と砂糖菓子であり、それぞれ約200万トンと130万トンを消費している。
1人当たりの消費量は、1980年の4.5・から1990年代半ばには約6.2・に増加した(世界平均約20.5・)。1988年までは、年間1人当たり消費量は、GDPより僅かに速く上昇していた。その後、砂糖の消費量は、経済不況のため、1989年には低下し、以前の増加率を回復していない。1989年以降、GDPの成長率は回復し、1970年代及び1980年代よりその成長率は速くなったが、1人当たりの砂糖消費量は、1988年〜1997年の間には毎年約1%ずつ減少している。
中国は、世界で最大の人工甘味料(サッカリン、チクロ及びステビオサイド)市場であり、唯一最大のユーザーは清涼飲料部門であり、1994年〜1998年の間にシェアが増大している。
サッカリンは、安価であるため、その消費量は、清涼飲料において拡大するものと予測されている。その他の主な利用は、漬物、ペースト及び電気メッキである。チクロ、ステビオサイド、アスパルテーム及びスクラロースなどのその他の人工甘味料も市場占有率を高めることが予測されている。
中国当局は、清涼飲料や砂糖菓子を製造している多数の小規模工場を工業部門に含めている。しかし、他の多数の国では、少量の利用者は家庭消費に分類されている。
表4:砂糖消費量の内訳 |
(1,000トン、粗糖換算) |
|
1994/95年(%) |
1995/96年(%) |
1996/97年(%) |
1996/97年(%) |
家庭消費量 |
2,033 |
27.2 |
1,970 |
26.1 |
1,905 |
25.1 |
1,852 |
24.3 |
工業用
飲料
焼き菓子
砂糖菓子
乳製品
フルーツと食品
その他の用途(食品以外の利用も含む) |
5,441 1,734 882 1,196 314 523 792 |
72.8 23.2 11.8 16.0 4.2 7.0 10.6 |
5,608 1,872 864 1,250 333 508 781
|
74.0 24.7 11.4 16.5 4.4 6.7 10.3 |
5,677 1,966 835 1,290 342 493 751 |
74.9 25.9 11.0 17.0 4.5 6.5 9.9 |
5,779 2,051 816 1,342 358 480 732 |
75.7 26.9 10.7 17.6 4.7 6.3 9.6 |
合 計 |
7,474 |
|
7,578 |
|
7,582 |
|
7,631 |
|
1人当たり消費量(kg/人) |
6.2 |
|
6.2 |
|
6.2 |
|
6.1 |
|
|
異性化糖の位置付け
でん粉糖は、価格では砂糖と競争することができない。でん粉糖の中でも異性化糖は中国ではほとんど需要がないため、ほとんど製造されていないが、主にとうもろこしまたはいもから生産されており、小規模である。異性化糖のユーザーは、異性化糖が製造される水質を懸念するほか、デリバリーの不確実性などから、液体貨物輸送に対する信頼度が低い。このことから、ユーザーは余分な在庫を持たなければならずコストがかさむ。さらには、タンク車両が性能の良い温度調整機能を備えていない場合には、輸送途中の品質劣化を招きかねない
表5:異性化糖及び砂糖の生産量と消費量 |
(1,000トン、粗糖/乾物換算) |
|
|
1994/95年 |
1995/96年 |
1996/97年 |
1997/98年 |
生産量 |
砂糖
異性化糖
異性化糖の比率 |
6,204
15
0.2% |
6,794
23
0.3% |
7,205
31
0.4% |
8,800
43
0.5% |
消費量 |
砂糖
異性化糖
異性化糖の比率 |
8,126
15
0.2% |
8,238
23
0.3% |
8,250
31
0.4% |
8,286
43
0.5% |
輸入量 |
砂糖
異性化糖
異性化糖の比率 |
3,204
−
0.0% |
1,929
−
0.0% |
915
−
0.0% |
405
−
0.0% |
輸出量 |
砂糖
異性化糖
異性化糖の比率 |
541
−
0.0% |
673
−
0.0% |
436
−
0.0% |
287
−
0.0% |
在庫変化 |
|
741 |
△188 |
△566 |
632 |
|
砂糖以外の甘味料
アスパルテームを除いて、人工甘味料は、砂糖よりはるかに安価である。中国で生産、消費されている主な人工甘味料は、サッカリンである。サッカリンの生産量は、1980年の102万トン(砂糖換算)から1997年の700万トン(砂糖換算)に増加している。そのうち、約50%は国内市場で消費され、約50%が輸出された。
中国で消費されているその他の主な人工甘味料は、1997年の13万4,000トン(砂糖換算)(世界の総消費量の59%)であったステビアの葉を原料とするステビオサイド、チクロ及びでん粉糖(主にグルコース・シロップ、マルトース及びデキストロース)である。
【砂糖制度の主要な特徴】
中国の甘味料政策は巨大で複雑である。砂糖部門に適用される法律には国の法律や省の法律があり、この重層性が砂糖制度の理解を困難なものにしている。この状況は、公式な規則と実態との間のギャップによりさらに複雑になっている。
生産規制
中央統制的な国家計画の下で、砂糖は国が決定する製糖工場別の生産目標割当にしたがって生産され、農家は原料作物を指定された工場に納入しなければならなかった。価格及び奨励金制度は、国家政策の枠組みの中で地方政府によって決定されていた。
ほとんどの国営企業は、実際には、省、郡または町村政府などの地方政府機関によって管理されている。さとうきびまたはビートの集積区域を定めているのは郡政府である(通常は町村の境界線によって定められる)。
原料(さとうきび及びビート)の僅か7%が大規模農場で栽培されているにすぎず、残りの大部分は零細農家によって栽培されているため、最新の市場情報から隔離され、市場に適応するのが遅い。
国内の価格支持
過去数10年にわたり、中央政府の統制によって、世界市場価格とは無関係な水準で国内市場価格を安定させていたが、1991年には自由化され、国内市場価格は世界価格の影響を受けるようになり、価格は市場要因を反映した形となっている。
さとうきびとビートの原料価格は、各省政府と地方政府が原料価格を設定しているにもかかわらず、市場条件の動向によっては無視されるケースが多い。
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表6:さとうきび、ビート及び砂糖の価格 |
(米ドル/トン) |
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さとうきび |
白 糖 |
粗 糖 |
原料価格
卸売価格
―国内自由市場価格(税別)
―特恵輸出
―自由市場輸出
小売価格
―国内自由市場販売
価格(税別) |
27.3
─ ─ ─
─
|
36.8
─ ─ ─
─
|
─
435.0 327.9 ─
591.0
|
|
国内の白糖価格は、1998年6月には、2,600元(313米ドル)/トンと、5年来の安値まで値下がりした。これは、当時の国際価格(FOBベース)より約10.5%高いとはいえ、甘しゃ糖の生産コストを下回っていた。市場価格が生産コストを下回ったため、製糖工場の運営は厳しかった。製糖工場の財政的問題を認知して、政府は1998/99年から原料価格を設定するための交渉を許可する方式を発表した。これは、製糖工場等の砂糖販売価格に基づいて、製糖工場等が原料価格を設定することを許可するものである。これによって、さとうきび原料価格は、230元/トンから180元/トンに下げられ、ビート原料価格は、280元/トンから230元/トンに下げられている。
実際、国内市場価格は、世界市場価格に左右される。中国が純輸入国であった数年間は、国内価格は輸入平価(輸入関税込み)にほぼ等しく、中国が純輸出国になると国内価格は輸出平価に応じて変化している。
政府は、輸入規制(ライセンス制と輸入関税)と公式在庫の修正を通して、国内市場価格を維持している。1994年以前は、輸出規制もまた国内市場価格に影響を与えていた。砂糖の輸出は、いまだに輸出ライセンスを必要とするが、国内市場が供給過剰になると、輸出は自由に許可されている。1998年には、砂糖の輸出を促進するために、政府は、輸出製品に課される付加価値税(17%)の50%払い戻しを発表し、実際の税率を8.5%まで引き下げている。
関税局によって課されている輸入関税は、現在、最恵国待遇国に対して12%に設定されている(実際には、これは中国が貿易しているほぼすべての国に適用されている)。注1しかし、国家計画委員会は、中国の輸入需要に応じ、無税または関税免除の輸入割当量を設定しており、各省管轄の企業と国家貿易機関に割当を与えている。砂糖を輸入するためにはライセンスが必要であり、さらに外国貿易経済協力省の特別許可が必要である。
注1:1996年には、この関税はWTO交渉にしたがって30%から12%に引き下げられた。しかし、同時に、輸入業者の権利(17%の付加価値税払い戻しを受ける)が撤廃されたため、賦課税は本質的には変化しなかった。
国による耕作準備に対する農民への補助金の提供、規模拡大に対する援助及びほ場から製糖工場へのさとうきびの輸送援助は、1991年から中断している。しかし、広西省(主要な砂糖生産地域)には、原料を確保するため農民投資の一部をカバーし続ける製糖工場が多数ある。政府はまた、砂糖産業に研究開発援助等を行っている。
販売面の規制
1990年以前には、白糖の国内販売は、国家貿易会社によって行われ、その最大のものは、砂糖・ワイン・タバコ法人であり、商務省所管の大手貿易会社として機能していた。これらの会社は、生産目標割当内の砂糖のみならず国家税制の緩和に伴って可能となった生産目標割当を超えて生産された砂糖(自由市場砂糖)についても、ユーザー販売を行っていた。
1990年になると、この方式に代わって製糖工場自身が生産した砂糖の販売に責任を持つよう政策が変更された。国家貿易会社は引き続き購入を製糖工場に申し出たが、多くの製糖工場は自らの販売ルートを開拓した。販売ルートは地域によって異なり、生産者が砂糖協会を設立しユーザーに販売している地域もあれば、砂糖・ワイン・タバコ法人などの国家貿易会社が依然として支配的である地域もある。また、製糖工場等の大半がいまだに地方政府によって所有されているため、民間主導というよりも中央統制及び省政府レベルの改革が中心となっている。
農家の大半は、依然として原料を直接近くの工場に販売しており、原料価格と奨励金は、地方政府の影響を受け続けている。
砂糖の輸入とトーリングは、国家貿易機関を通して振り分けられている。1987年には、国家貿易機関の輸入に対する独占が撤廃され、民間輸入業者が輸入ライセンスを得ることができるようになった。しかし、これによって翌年大量の輸入を招いたため、国内の砂糖産業への影響を懸念した政府は、1989年に再び国家貿易機関を独占輸入業者とした。1994年には、政府は再び輸入を自由化しようとしたが、同様の問題に直面し、再び国家貿易機関の独占に戻された。
1993年以前は、砂糖の輸出量は、割当制度によって規制されていた。1993年に、政府は、輸出割当とライセンス制を撤廃し、1994年には白糖の輸出に対する(輸入に対する17%の付加価値税に等しい)税金払い戻し制度を撤廃した。大半の地域では、販売価格が十分に魅力的であるため、税金払い戻し制度はほとんど魅力のないものとなっている。例外は、新彊省や雲南省など、外国の取引先に近接して所在する砂糖の生産地域である。
現在の関税率の水準がすでにはるかに低いため、関税率に関するガット最終約束は、中国の砂糖業界に大きな影響は及ぼさない。
表6:現在の中国における貿易政策 |
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ビート |
白 糖 |
現行関税額 |
12% |
12% |
GATT協約 |
|
関税 |
|
基本税率 |
100% |
100% |
最終税率 |
76% |
76% |
ミニマムアクセス (トン、粗糖換算) |
適用されず |
輸出補助金の削減 |
|
―数量(1,000トン) |
35 |
|
―支出(%) |
14 |
|
最終期限 |
2004/05 |
|
出典:LMC;WTO |
栽培者と製糖工場の関係
製糖工場が地方政府によって所有されている場合には、原料作物の供給に関する契約は農家と製糖工場で交渉され、その所有者である地方政府が各農場に契約内容を指示している。町村に所在する各農家は、割り当てられた農地を耕作し、決められた製糖工場に原料を供給する契約を締結している。この契約に従って、製糖工場または地方政府は、耕作準備、規模拡大へのサービスの提供及び原料輸送サービスなどを農家に提供している。
原料の納入範囲は、砂糖の制度による奨励金によって制限されている。つまり、農家は、この奨励金によって最終的には恩恵を被っているため、原料をその農地を所有する郡の製糖工場に納入することとなる。
国家事業制度の一環として存在する工場は自主独立権を有し、地方政府は、原料確保を含めて日常の業務にはほとんど介入することはない。国営農場に共通した制度は、家族義務契約を締結することによって、農家は国営農地において所定面積を割り当てられ、農家はサービスの提供を受ける。サービスとは、原料収穫と輸送計画に対する農家への援助であり、そのため、収穫物が他の地域の工場に納入されることはまずない。
原料価格に関しては、政府がさとうきびとビートの指標価格を提示しているにもかかわらず、それらの指標価格は砂糖市場価格に見合わない場合には、しばしば無視されている。
また、原料売買の関係者は、品質検査と砂糖含有率の改善を促進する奨励金の利点を認めているが、品質取引を実現する試みはあまり進展していない。
砂糖政策の機関
国内の砂糖価格は、自由化されている。しかし、政府は、場合によっては砂糖価格に直接介入用意があることを示唆し、実際に、供給過剰時に国内市場への砂糖の流入を制限するために、強制的な在庫の創設を指示している。
200万トン以上の砂糖が密輸入されたため、1996年以降、トーリングへの投資規制が強化されている。トーリングは、外国貿易経済協力省による認可が必要で、再輸出契約についても外国貿易経済協力省と中国国家軽工業評議会の認可が必要である。
砂糖の輸出には、ライセンスが必要である。政府は供給過剰時に砂糖の輸出を奨励するために、1998年、砂糖輸出に賦課される付加価値税の50%を払い戻す(実質付加価値税は17%ではなく8.5%賦課される)新政策を導入した。
【砂糖産業の現状】
さとうきびの圧搾と精製産業の構造
甘しゃ糖工場(408工場)及びビート工場(87工場)の所有形態と規制は複雑である。工場のほとんどは政府機関が所有している。
外国投資家は、甘しゃ糖部門においては8工場の株式を支配しており、ビート部門においても、特に新彊省などには関心が高まっている。
国有工場は、主に軽工業局の地域機関を通して管理されている。しかし、広西省などの重要な砂糖生産地域は、独自の砂糖法人を設立し管理を行っている。この砂糖法人は、省政府と軽工業局地域機関の影響を受けている。
製糖工場の大半は、地方政府を通し地方(省、町村)レベルで規制されている。製糖工場は、地方当局に大きな税収入を生み出すため、ほとんどの場合、地方または町村政府が強い影響を与えている。工場経営者は、資本投資の決定に当たり、限られた自由をもつのみである。
砂糖の流通
砂糖市場は急速に自由化されているが、在庫量は主に国内取引省の規制下にあり、生産地域の倉庫設備の大部分は地方機関によって管理されている。生産者またはユーザーは在庫量を制限されているため、製糖工場が原料代の支払を行うための現金を確保するためには、シーズン最盛期には安価で砂糖を売らざるを得ないという財政的な問題に直面している。在庫の問題は、先物市場等が存在しないことによって、さらに困難になっている。
ユーザーが砂糖を工場から購入する際には、顧客に納入するまでの輸送コストをどちらが支払うかについての交渉が問題となる。しかし、実際の輸送計画は、主に製糖工場側の責任となっている。
砂糖産業の現在の問題点
中国の砂糖産業の現在の問題点は、上述の通り、供給過剰、価格の下落、製糖工場の農民に対する支払能力の欠如及び砂糖の在庫許容量の問題とコストである。
さとうきびの原料指標価格の20%の削減は、広東省や福建省などさとうきびから米、野菜などの作物に転作するものと思われる。一方、雲南省などさとうきび用の潅漑がされた高地ではこのような問題はないことから、さとうきび生産地域の西方へのシフトを加速することになろう。
同様にビート部門でも、黒龍江省では、ビート価格の値下りがビート栽培面積の更なる減少を招いている。
ビート、さとうきびに共通する大きな問題は、原料の供給量を確保するために、原料代を栽培者に先に支払わなければならず、これが製糖工場の深刻な資金繰りの問題を招いていることである。農民はIOUを与えられるが、工場はしばしば支払を延滞する。1998年4月の時点で、農民に対する工場の債務は、約80億元(10億米ドル)となっている。
貿易会社による在庫設備の賃借料の請求額は、工場が自身の倉庫を建設するコストをはるかに上回っている。したがって、砂糖製糖工場は、独自の在庫設備建設資本の貸付けを切望している。