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LMC海外レポートspring-EU

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最終更新日:2010年3月6日

砂糖類ホームページ/海外情報


海外レポート

― E U ―

[砂糖制度の主な特徴]
 1.序文 2.生産調整 3.国内価格維持
 4.ビートの加工 5.甘しゃ糖の精製 6.販売協定
 7.栽培者/製糖業者の関係 8.異性化糖に対する政策 9.砂糖政策の機関
 10.政策の実施


砂糖制度の主な特徴

1.序  文

 イギリス、フランス及びドイツの砂糖政策は、EUの砂糖政策と直結している。政策の特定要素においては国別に相違があり、生産者価格はフランス、ドイツよりイギリスが高く、EU加盟国毎にそれぞれ生産割当を受けている。この節においては、特にイギリス、フランス及びドイツに関係している点を強調しながら、EUにおける全体的な砂糖政策を述べる。
 EUにおける砂糖の生産量は、生産者及び製糖業者に保証価格を提供する極めて自給自足的な財政システムによって規制されている。この砂糖制度の主な目標は、これらの価格を決定し、保護することである。次の4つの主な政策的な手段によって、委員会が決定する最低価格若しくは介入価格を保護している。
1) 保証価格で販売するために、生産数量を規制する生産割当。
2) 国内生産量を、市場年度を通して国内市場で円滑に販売されるように保証する在庫基金。
3) 国内市場の砂糖価格と世界市場の砂糖価格の差を埋めることによって、全ての剰余割当砂糖が輸出されるように保証する輸出補助金(EU側では輸出払戻金)。
4) 国内市場に流入する国外の砂糖の数量を規制する輸入関税及び関税割当。
 砂糖制度の主な特徴は、EUによってWTOに提示された約定によっても大きく変更されてはおらず、砂糖の国内価格は、世界価格より遥かに高い水準に設定されている。しかし、将来におけるWTOの交渉は、砂糖産業の保護を低減するようEUに更に圧力をかけることになろう。
 ビートの価格もまた砂糖の介入価格と連動して決定されているため、価格支持の恩恵は、ビート栽培者に対して与えられる。しかし、個々の製糖業者と栽培者の間の契約は、ビートの品質的な面に関わる支払など、僅かに異なる場合がある。

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2.生産調整

 欧州委員会は、それぞれの加盟国に対して、ビート糖の生産割当を与えており、これはさらに国内ビート製糖業者に割り当てられている。ビート製糖業者は、その割当を栽培者に割当てる責任を持っている。
 甘しゃ糖については、同様の生産割当は存在しない。しかし、輸入割当によって原料糖の輸入に課される制限が、効果的にEU内の精製糖の生産を規制している。
 EU内には、ビートに関して生産割当が存在する。基本割当(A割当)及び特別割当(B割当)である。A割当が国内の消費量の水準を概ね反映している一方で、B割当はA割当のパーセンテージとして設定されている。当初、B割当は、剰余生産分の補助金付きの輸出を含めて、より有能な生産者が事業拡大するのを可能にし、不作の際の保険として立案された。実際には、国内B割当は、最大割当として知られる「合同A・B割当」が国内生産量の最高水準を反映するように設定されている。また、A割当に対するB割当の大きさは、国によって異なっている。
 表:EU1は、1997/98年にEUの各加盟国に割当てられた生産割当を示している。イギリスは、A割当の10%しかB割当を持っていないが、5番目に大きな生産割当を持っている。フランス及びドイツは、総割当量に対して大きな割合を示すB割当を持ち、それぞれ第1、2位の大きな割当を持っている。

表:EU1 加盟国別生産割当〔1997/98〕
(単位:トン、%)
 A割当B割当合 計A/B
オーストリア316,52973,881390,41023.3
ベルギー680,000146,000826,00021.5
デンマーク328,00096,629424,62929.5
フィンランド133,43313,343146,77610.0
フランス2,996,000805,8333,801,83326.9
  本 土2,530,000759,2333,289,23330.0
  海外領土(※)466,00046,600512,60010.0
ドイツ2,637,703811,6103,449,31330.8
ギリシャ290,00029,000319,00010.0
アイルランド182,00018,200200,20010.0
イタリア1,320,000248,2501,568,25018.8
オランダ690,000182,000872,00026.4
ポルトガル72,7277,27380,00010.0
  本土63,6366,36470,00010.0
  アゾレス諸島(※)9,09190910,00010.0
スペイン960,00040,0001,000,0004.2
スウェーデン336,36433,636370,00010.0
イギリス1,040,000104,0001,144,00010.0
EU15ヶ国計11,982,7562,609,65514,592,41121.8
注:※は甘しゃ糖の生産量に対する割当を指す。

 これらの生産割当は、甘しゃ糖に対する割当を受けているフランスの海外領土(DOM)及びアゾレス諸島を除き、ビート糖の生産のみを指している。しかし、粗糖の追加量が精製を目的としてEUに流入している。イギリスの唯一の精製糖業者であるTate & Lyle社はこれを輸入することができ、通常、年間約140万トン(粗糖換算)の粗糖を輸入している。フランスの2つの精製糖工場は、DOMで生産される全ての粗糖、並びにEUの関税割当によって輸入される少量の粗糖を加工しており、輸入された甘しゃ糖から生産された精製糖は、A割当の生産量として取り扱われる。このことについては、国内価格支持に関する節でより詳細に述べる。  当初、ビート糖の生産割当が1968年に創設された時には、5年毎に見直されることが検討された。現在各加盟国に対して割当てられている割当は、1982年に設定されたものであり、それ以後は、EUの拡大に伴う追加の割当を取り扱った時に見直されただけであった。
 最大割当を上回って生産される砂糖は、C糖として知られ、補助金なしで世界市場に輸出しなければならない。近年、C糖の生産は、平均約170万トンに至っている。C糖を輸出せずにすむ唯一の例は、C糖が次のシーズンまで(在庫として)繰越され、次のシーズンのA割当の一部と見なされる場合である。繰越すことができるC糖の数量は、A割当の最大20%に制限されている。繰越される全てのC糖は、全てのA割当及びB割当とともに、在庫補助金を受ける。
 EUは、加盟国が繰り返して各割当を遂行することができない場合には、加盟国の割当を見直す権限を持っている。そのため、加盟国は通常割当を超過しており(注1)、その結果、加盟国は全て輸出するか、若しくは、次のシーズンに繰越さなければならないC糖を生産している。
 しかし、特にフランス、ドイツ及びオランダなどの数ヶ国は、C糖を利益重視で生産している。つまり、これらの国は、輸出用の大量のC糖を意図的に生産しているのである。これらの比較的低コストの生産者にとっては、A割当及びB割当の販売から得られる高収益は、僅かで可変的なコストでC糖を生産することによって資本及び他の固定コストを埋めるのに充分なのである。その一方、イギリスを含めた他の殆どの国の生産者は、ビートが不作である年に備えA割当及びB割当を消化するために、少量のC糖を生産しているのみである。

(注1)顕著な例外は、ポルトガルである。しかし、ポルトガルは、割当を遂行できないことに対して、罰則を与えられていない。1986年にポルトガルがEUに加盟した時に、ポルトガルは本土のビート産業を持っていなかったが、国内のビート産業の開発を促進するために割当を与えられた。ポルトガル国内の砂糖産業は、発展途上の段階にある。

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3.国内価格支持

 価格は、世界市場の水準より遥かに高い水準に設定され、制度は、体系化された価格システムの中で実施されている。毎年、EUは、価格及び賦課金の計画をビート関連業者及び甘しゃ糖の精製糖部門に公表している。

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4.ビートの加工

 ビートに適用される価格及び賦課金の計画は、次の要素を含んでいる。

(1) 白糖の目標価格
 白糖の目標価格とは、白糖について欧州委員会の「希望する」工場出荷価格を表しており、現在、1トン当たり690ECU(1トン当たり745US$)に設定されている。しかし、実際には、これは殆ど現実的な意味を持っていない。これに代わって、国内の砂糖価格を支持するのが介入価格である。

(2) 白糖介入価格
 白糖介入価格は、EUの価格を支持する全体的なシステムを象徴するものである。これは、欧州委員会が介入機関を通して製糖業者から割当砂糖を購入する工場出荷価格を表している。つまり、白糖介入価格は、底値のことである。C糖については、同様の価格は存在しない(後述)。在庫システムの存在のために、さらに欧州委員会が国内市場から剰余糖を処分する目的で輸出補助金制度を実施しているために、実際には、介入機関は砂糖を購入することはない。現在の1997/98年度の白糖基準介入価格の積算法は、表:EU2に示されている。

表:EU2 白糖基準介入価格の積算法〔1997/98〕
(単位:通貨/トン)
 ECUUS$(注1)
原料費(注2)366.7396.3
輸送・搬入費44.147.7
加工経費243.6263.3
製造費計654.4707.2
糖蜜販売収入相当-22.5-24.3
基準介入価格631.9682.9
注: 1. US$の価格は、1ECU=1.08US$の為替相場を用いて換算されている。これは、ECU及びDMのグリーン・レート及び1998年3月の商業的なUS$/DMの為替相場の間のクロス・レートに基づいている。
2. 工場が81.25%のショ糖を砂糖として抽出できると仮定して、(基準ショ糖含有率16%の)ビート1トン当たり47.67ECUの標準ビート価格から導かれる。

 白糖介入価格の水準は、EUの中でも異なっている。例えば、イギリス、アイルランド、イタリア、フィンランド、スペイン及びポルトガルは、全て、EUの基準介入価格より高い価格を設定されている。これは、これらの加盟国が(例えば、砂糖の消費量が生産量を超えている地域など)生産「不足」地域と見なされているからである。
 これらの国における介入価格は、特別地域割増金の適用によって、基本水準より高く設定されている。これらの地域の割増金は、剰余地域からこれらの不足地域へ砂糖を輸送するコストを反映している。

表:EU3 域内の介入価格〔1997/98〕
(単位:通貨/トン)
 ECUUS$(注1)
基準介入価格(注2)631.9682.9
フィンランド、アイルランド、
ポルトガル、イギリス
646.5698.7
イタリア677.8732.5
スペイン648.8701.2
注: 1. US$の価格は、1ECU=1.08US$の為替相場を用いて換算されている。これは、ECU及びDMのグリーン・レート及び1998年3月の商業的なUS$/DMの為替相場の間のクロス・レートに基づいている。
2. オーストリア、ベルギー、デンマーク、フランス、ドイツ、ギリシャ、スウェーデンに適用される。

(3) 在庫基金
 在庫のコストは、工場、砂糖取引業者及び介入機関に対して、毎月支払われる均一の払戻金によって払い戻される。これによって、年間を通して、砂糖が秩序正しく市場に出回ることが保証されている。この払戻金の支払いは、(介入に対する販売を除いて)製造業者による全ての砂糖の販売に在庫賦課金を課すことによって、欧州委員会によって資金供給されている。したがって、EU内の白糖の支持価格は、介入価格及び在庫賦課金によって形成されているのである(表:EU4を参照)。砂糖の在庫払戻金は、現在、月間1トン当たり3.8ECU(1トン当たり4.1US$)であり、年間の在庫賦課金は、1トン当たり20ECU(1トン当たり22US$)である。

表:EU4 域内の実行支持価格〔1997/98〕
(単位:通貨/トン)
  基準介入価格
(注1)
フィンランド、
アイルランド、
ポルトガル、
イギリス
イタリアスペイン
E
C
U
介入価格631.9646.5677.8648.8
在庫賦課金20202020
実行支持価格651.9666.5697.8668.8
U
S
介入価格 (注2)682.9698.7732.5701.2
在庫賦課金21.621.621.621.6
実行支持価格704.5720.3754.1722.8
注: 1. オーストリア、ベルギー、デンマーク、フランス、ドイツ、ギリシャ、スウェーデンに適用される。
2. US$の価格は、1ECU=1.08US$の為替相場を用いて換算されている。これは、ECU及びDMのグリーン・レート及び1998年3月の商業的なUS$/DMの為替相場の間のクロス・レートに基づいている。

 在庫払戻金は、A割当及びB割当、並びに次の年度に繰り越されるC糖に対して支払われる。砂糖制度の最新の見直しにおいて、欧州委員会は、C糖への在庫払戻金の支払いを停止しようと試みた。しかし、この提案は、いくつかの加盟国には受け入れられなかった。最終的な妥協案において、欧州委員会は、次の年度に繰越されるC糖についての在庫払戻金の継続は認めたが、繰越すことができる砂糖の数量を減少させる権利を留保した(前述のとおり、許可される最大数量は、現在、A割当の20%である)。

(4) 生産賦課金
 砂糖制度は、EUの農業予算に対して、財政補助を受けず実施できるように立案されている。剰余割当砂糖の処分の費用は、A割当及びB割当に対する生産賦課金によって埋め合わせられている。したがって、製糖業者(若しくは生産者)が砂糖(若しくはビート)の対価として実際に受け取る価格は、砂糖の販売価格から生産賦課金を差し引いた価格となる。
 白糖介入価格の2%の基本賦課金が、全てのA割当及びB割当に適用される。加えて、可変の賦課金がB割当に適用される。B割当に対する賦課金は、割当砂糖の補助金付き輸出のコストによって異なるが、介入価格の37.5%を超えてはならない。A割当及びB割当の生産賦課金が輸出の実施を資金供給するのに不充分である場合には、(通常、償還賦課金と呼ばれる)追加の賦課金を課すことができる(注2)。製糖業者及びビート栽培者は、例えば、42.2%:57.8%(製糖業者:栽培者)という比率によって、砂糖の販売から得られた収益を分配するのと同じ方法で生産賦課金を分配する。
 これらの生産賦課金は、製糖業者の収益に対して重要な意味を持っている。製糖業者がB割当の販売について受け取る価格は、A割当の販売について受け取る価格より低くなる。これは、B割当がA割当より高い生産賦課金を課せられるからである。C糖は、輸出払戻金を受けることなく、輸出される時には、世界の砂糖価格を受け取ることになる。したがって、製糖業者の平均収益は、A割当、B割当及びC糖の間の総生産量の分配に強く影響を受ける。

(注2)償還賦課金は、1987/88年度に初めて支払われたが、1990/91年の終了時まで続いたこの賦課金は、1991/92年及び1992/93年には課されなかったが、1993/94年(1トン当たり0.80ECU)及び1994/95年(1トン当たり0.37ECU)に再び課された。

(5) 加工マージン
 ビートの製糖業者は、制度的に決定された加工マージンを受け取る。これは、欧州委員会によって、白糖介入価格のパーセンテージとして決定される。加工マージンは、現在、介入価格の38.6%、つまり1トン当たり243.6ECU(1トン当たり263US$)である。また、砂糖制度は、製糖業者は糖蜜の生産量の販売から得られる収益の100%を取得するが、ビートパルプから得られる収益の100%は(生産者は販売される前にパルプを乾燥する費用を製糖業者に支払っているが)ビート生産者が取得するものと規定している。

(6) 輸送経費
 加工マージンと同様に、輸送経費は欧州委員会によって設定されており、現在、白糖介入価格の7%、つまり1トン当たり44.1ECU(1トン当たり47.6US$)である。この経費は、製糖業者に対して支払われ、ビートを工場に搬入するためにかかるコストを埋め合わせることが意図されている。

(7) 基本ビート価格
 割当砂糖を生産するために加工されるビートは、ビート基準価格によって受け渡される。この価格は、製糖歩留り、加工マージン、ビート輸送経費及び糖蜜の販売から得られるビートの製糖業者の収益を考慮した後に、白糖介入価格に基づいて決定される。ビート基準価格は、現在、1トン当たり476.7ECU(1トン当たり515US$)であり、16%の根中糖分を基準としている。根中糖分の高い(若しくは低い)ビートに対して支払われる、割増金(若しくは割引金)の固定率が設定されている。
 砂糖制度の「財政の自給自足」の原則のために、生産者は実際にはビート基準価格を受け取ってはいない。そのかわり、生産者はビート最低生産者価格に基づいた、より低い価格を受け取っている。毎年、欧州委員会は、(それぞれA割当及びB割当に加工される)A割当及びB割当のビート最低生産者価格を決定しており、この価格は、生産賦課金を差し引いたビート基準価格として計算されている。このようにして、A割当の最低価格は、ビート基準価格の98%に等しいものとなるが、B割当の最低価格は、B割当に課せられる生産賦課金によって異なる。
 実際のビート受け渡し価格は、製糖業者及び生産者の間で個別に交渉されており、最低価格を上回る傾向がある。これには、ビートの根中糖分が基準の16%を上回ること等、ビートの品質に対するボーナスなど多くの理由が存在する。さらに、生産者及び製糖業者は、介入価格を上回って得られた追加の収益を分配するための交渉も行う。

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5.甘しゃ糖の精製

 輸入された粗糖は、フィンランド、フランス、ポルトガル及びイギリスの4加盟国において精製されている。これらの各国は、白糖換算で約178万トンのEUに対する輸入割当総量から原料糖のトン数を割り当てられ、さまざまな国から供給されている。
1) 国内で生産される粗糖−主にフランスの海外県(DOM)から移入されている。
2) ロメ協定の砂糖議定書によって、アフリカ、カリブ及び太平洋(ACP)グループの諸国から輸入される約130万トンの原料糖、及び1983年の協定によって、インドから輸入される1万トンの白糖(この砂糖は全て、非関税で輸入され、EUの原料糖に対する介入価格を適用されている)。
3) フィンランドのEUへの加盟に先立つWTOの約定である約8万トンのフィンランドの原料糖輸入割当。この割当は、ブラジル及びキューバに割り当てられており、低減された1トン当たり98ECU(1トン当たり106US$)の輸入関税を課されている。
 これらの原産地が割り当てられた後に、なお不足がある場合は、「特別特恵砂糖(SPS)」割当によって追加の原料糖が輸入され、ACP諸国及びSPS計画によってさらに1万トンの白糖割当を持っているインドに割り当てられる。1996/97年期については、SPS割当は白糖換算で約26万トンとなっている。このSPS砂糖は、低減された輸入関税(1トン当たり69ECU、つまり1トン当たり75US$)でEUに輸入され、EUの精製糖業者に支払われる1トン当たり12ECU(1トン当たり13US$)の「調整補助金」を差し引いた原料糖介入価格を適用させている。
 原料糖介入価格は、(前述の)白糖介入価格から輸送経費及び加工マージンを差し引き、原料糖から白糖に精製する際の歩留りを調整することによって計算される。この原料糖介入価格は、特恵協定によってEUに輸入される原料糖の価格を決定する基礎として用いられている。
 EUのさとうきび精製糖部門に適用される価格のスケジュールは、輸送経費、加工マージン及び生産者賦課金の支払いに関して、ビートとは異なっている(表:EU5を参照)。これらの要素は、以下で述べる。

表:EU5 原料糖介入価格の導き方〔1997/98〕
(単位:通貨/トン)
 ECUUS$
基準白糖介入価格631.9682.9
輸送経費8.59.2
精製マージン54.258.6
原料糖介入価格(精糖ベース)569.2615.1
注: 1. US$の価格は、1ECU=1.08US$の為替相場を用いて換算されている。これは、ECU及びDMのグリーン・レート及び1998年3月の商業的なUS$/DMの為替相場の間のクロス・レートに基づいている。
2. 粗糖換算で原料糖介入価格を導くためには、これらの価格に0.92が乗ぜられる。

(1) 輸送経費
 粗糖の輸送経費は、白糖介入価格の1.3%に設定されている。これは、1997/98年においては、1トン当たり8.2ECU(1トン当たり8.9US$)に設定されている。

(2) 精製マージン
 精製マージンは、白糖介入価格の8.6%に設定されている。これは、1997/98年においては、1トン当たり54.3ECU(1トン当たり58.7US$)に設定されている。

(3) 生産賦課金
 ビート糖部門とは異なり、精製糖部門への資金供給は、甘しゃ糖の生産者及び精製糖業者によるものではなく、欧州委員会によって負担される。コストは、輸入原料糖から製造された砂糖が、域内で生産されるビート糖を世界市場へ押し出すため高くなっている。
 これらの原料糖の輸入に対する欧州委員会のコストは、押し出すビート糖の輸出に資金供給するために必要な輸出補助金に充てられる。

(4) 輸入関税及びWTO約定
 実際には、輸入関税に関して何らかの免除を受ける輸入以外は、EUへの輸入は存在しない。原料糖に対する現在の関税は、(2000年までに関税を175%に低減するというWTO約定によって)約219%となっている。この関税を伴う輸入は、極端に低い水準の世界価格においてのみ可能である。最近まで、この関税は、可変輸入課徴金(VIL)として実施されていた。VILによって、輸入された砂糖は、輸入された砂糖の陸揚げ価格と欧州委員会の白糖の目標価格との差を反映する金額の関税を課されていた。このシステムを通して、輸入された砂糖への関税は、低い水準の世界価格においては増加し、より高い水準の世界価格においては低下した。VILは、1994年のガット・ウルグアイ・ラウンドの決定によって、固定の従価関税に転換された。(下に示す)表:EU6は、WTOに提出されたEUの関税約定を示している。

表:EU6 現行の貿易政策

 白糖粗糖
現行の関税率

ガット公約

関税
基本税率(開始年)
最終税率(最終年)

ミニマムアクセス(注2)

輸出補助金削減
 −量(千トン)
 −金額(%)

ガット最終期限
382 ECU/トン
427 US$/トン



424 ECU/トン
339 ECU/トン
472 ECU/トン
527 US$/トン(注1)



524 ECU/トン
419 ECU/トン
1,418,209


340
36

2000/01
注: 1. 1ECU=1.12US$の為替相場に基づく。この関税率は、1997年7月の時点で、1997/98年についてガットによってEUに対して規定された関税率である。
2. これはEU-12に対するものであり、砂糖議定書に従ったACP輸入割当を表す。
出典:LMC、WTO。

 表:EU6はまた、WTOに対してEUによって提出された他の重要な約定を示している。それは、ミニマム・アクセス及び輸出補助金である。
 EUの輸入割当は、ミニマム・アクセスに対するWTOの要求として提出された。
 最終的なガットの文書においては、割当砂糖についての輸出払戻金は、公式に補助金であるものとして認定された。その結果、EUは、これらの補助金の対象となる砂糖の数量及びこれらの補助金への支出の総額に関する約定をしなければならなかった。このガットの約定によって、EUは、実施期間において、ガットの基準期間(1986年〜1990年)と比較して、数量換算で21%、支出換算で36%、砂糖の輸出補助金を削減することが要求された。
 この期間において削減される輸出補助金に相当する数量は、34万トンであり、割当内の輸出の約11%を占めている。しかし、EUの輸出は既にガットの基準期間である1980年代の後半の水準から減少していたため、これはEUに大きな問題を引き起こすものとは考えられていない。

(5) 砂糖及びビートの価格
 表:EU7は、1994/95年〜1996/97年のビート及び砂糖の平均価格を示しており、砂糖産業がEU内での砂糖の販売において受ける価格支持の程度を示している。これは、白糖の国内卸売価格が同期間に国際市場に輸出された白糖の価格の平均3倍以上であることを表している。
 EUは純輸出者であるが、砂糖議定書によって、毎年、約170万トンの原料糖を輸入している。生産者の販売の69%は、国内市場に対してなされており、更に15%(B割当)が輸出補助金付きで世界の水準より高い価格で輸出されている。したがって、国内価格に与えられる支持は、EUの生産者にとって極めて重大である。
 輸入原料糖から生産される全ての精製糖は、A割当として取り扱われるため、イギリス及びフランスの精製糖業者は、全てを国内価格で受け取ることができる。

表:EU7 ビート、さとうきび及び砂糖の平均価格
(単位:US$/トン)
  ビート白糖粗糖
ビート価格60
卸売価格
 −国内販売
 −B割当
 −C割当




818

280



小売価格
 −国内販売


1,357

注:1.これは、A割当の平均価格にのみ相当する。

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6.販売協定

 市場に対する独占的な販売者は、存在しない。それぞれの生産者は、内販及び輸出ともに砂糖を独自に販売する。しかし、より価格の高い欧州市場に供給することができる砂糖の数量は、1つの市場占有の形態を表している生産割当によって厳しく規制されている。
 輸出される割当砂糖(A及びB)は、(WTOの条件によって、徐々に削減されているとは言え)輸出払戻金の対象である。割当砂糖を輸出しようとする業者は、この払戻金について入札しなければならず、輸出許可は最も低い払戻金を入札した業者に与えられる。
 入札は、毎週実施されており、業者は、輸出許可を与えられた後、6ヶ月以内に砂糖を輸出することになる。
 輸入の大半は、砂糖議定書及びSPS割当の保護の下で、精製糖用の原料糖としてEUに輸入される。

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7.栽培者/製糖業者の関係

 栽培者/製糖業者の協定の重要な要素であるビートの価格決定及び製糖業者のマージンは、前述のとおり砂糖制度によって規制されている。
 ビートの実際の取引価格は、製糖業者と栽培者の間で個別に交渉され、最低価格を上回る傾向にある。これには、16%を上回るビートの根中糖分、ビートの品質の他の側面に対するボーナスなどの多くの理由がある。さらに、生産者と製糖業者は介入価格を超えて得た追加収益を分配するために交渉する。
 栽培者は、農場における収穫などの作業を責任をもって行うことになっているが、徐々にそれらの作業を下請業者に委託することが多くなってきている。また、オランダにおいては、収穫の約90%及び播種の75%は、下請業者によって実施されている。フランス及びイギリスにおいても播種及び収穫作業を契約によって行うことが広まっている。
 いくつかの国においては、生産者がビートの工場への輸送を手配し、工場によって経費を支払われているが、工場が輸送の手配の全てを管理している国もある。イギリスにおいては、例えば、輸送経費は砂糖の介入価格によって計算され、固定コストで、トン/kmを基本にして生産者に支払われているが、このシステムは栽培者の輸送コストを常に完全に埋め合わせているとは限らない。フランスの製糖業者は、荷扱い、積込み及び輸送のコストを含めて、農場と工場の間の全てのビートの輸送を手配し、支払を行っている。

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8.異性化糖に対する政策

 EUは、20年以上も前に異性化糖を生産した世界最初の地域の1つであった。砂糖の生産者は、新たな生産物によってもたらされる競争の脅威を逸早く察知し、砂糖制度を保護するためにEUに国内のイソグルコース生産割当を導入させることに成功した(イソグルコースは、異性化糖が欧州規則で認知されている名称である)。表:EU8は、EUの生産国についての現在のイソグルコースの生産割当を示している。
 国内のイソグルコース割当は、砂糖制度によるものと同じ方法で正確にA割当及びB割当に内訳されている。割当の数量は、果糖含有率によって定められており、42%の異性化糖に換算される。この規定は、42%のシロップの含有率増加の大きな抑止力として機能しているため、より高い果糖含有率を持つ異性化糖が生産されることは殆どない。
 A割当及びB割当を超えて生産される異性化糖は、Cイソグルコースと呼ばれ、数量は僅かであり、輸出補助金を受けずにEUの外部に輸出されている。

表:EU8 異性化糖生産割当〔1997/98〕

 A割当B割当合計
ベルギー571672
フィンランド11112
フランス16420
ドイツ29736
ギリシャ11213
イタリア17420
オランダ729
ポルトガル8210
スペイン75883
イギリス22627
合計25251303

 チコリー及びキクイモなどの原料から生産される果糖(イヌリン・シロップ)もまた、EUの割当を受けている。これらの割当は、現在の生産量の水準を遥かに超えて設定されており、したがって生産量の増加は可能である。表:EU9が示すとおり、フランス、オランダ及びベルギーのみがEU内のイヌリンの生産割当を持っている。しかし、フランスは、唯一のイヌリン・シロップの工場が小麦グルコースの製造に転換されたため、1996/97年にはイヌリン・シロップを生産しておらず、1997/98年にも生産しない予定である。

表:EU9 イヌリン生産割当〔1997/98〕
(単位:千トン、固形換算)
 A割当B割当合計
ベルギー17641217
フランス20525
オランダ661682
合計26262323

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9. 砂糖政策の機関

(1) 主な機関
 3つの主な機関−欧州委員会、欧州閣僚理事会及び欧州議会−及びこれらの機関に所属する委員会がEUレベルでの政策決定に携わっている。政策の決定及び実施のプロセスは、しばしば対立する目標を持ったさまざまな加盟国間の結合という状況のために、おそらくこの報告書において調査されている他の諸国より複雑である。政策決定のプロセスに影響を与えるのは、国家政府、国内及びEU規模の関係団体及びEU自身など、政策によって影響を受ける関係機関である。
 欧州委員会は、ほぼ国内行政に相当するある種の中立的な「非政治的」制度を創設するためのEU内の試みを代表している。欧州委員会は、立法措置を提案する唯一の機関であるが、立法措置の提案のためのアイデアは、欧州閣僚理事会、欧州議会、国家政府若しくは関係団体など、他から生まれることもある。欧州委員会は、意思決定を援助するために政策の決定及び実施に参加する各種の委員会によって支援されている。このような各種の委員会は、その委員が生産、加工、貿易及び消費の各部門から参加しているため、関係団体によるこのプロセスへの参加に、公式な参加場所を提供している。
 欧州閣僚理事会は、EUの主な立法機関であり、それぞれの加盟国の利害が対立する場でもある。それぞれの加盟国は、討議される分野の政府閣僚を欧州閣僚理事会に派遣している。欧州委員会と同様に、欧州閣僚理事会は、各種の委員会によって構成されている。それらの委員会の中で最も重要な委員会は、それぞれの加盟国を代表する常任の代表者によって構成されるCOREPERである。この委員会は、欧州閣僚理事会レベルではなく、委員会レベルで討議することによって、欧州閣僚理事会の作業準備をしている。通常、欧州閣僚理事会はCOREPERの勧告を承認するためにのみ召集されている。農業部門は、その意思決定の量が大きいため、別の委員会である特別農業委員会(SCA)を持っている。欧州議会は、国家というよりはむしろ政治団体を代表するそれぞれの加盟国からの代表者によって構成されており、3つの全ての機関の中でも最も党派性の強い機関である。しかし、その役割は、立法措置に関する助言及び監視という役割に制限されている。
 前記の3つの主要機関以外にもう1つの重要な機関が存在する。特定の問題に関して欧州閣僚理事会及び欧州委員会によって諮問される諮問委員会である経済社会委員会(EcoSoc)である。理論的には、この委員会は、ざまざまな種別の経済活動及び社会活動の情報が取り入れられる場所であり、経営者、労働組合及び他の職業団体の代表者から構成されている。しかし、彼らの意見が求められる場合でも、実際にはあまり重視されていない。したがって、この委員会の役割及び影響は、極めて限られたものである。

(2) 政策決定プロセス
 立法のプロセスにおいては、欧州閣僚理事会が最も強力な機関であるが、法律そのものを提案することはできない。欧州閣僚理事会は、欧州委員会から受け取った提案を討議するのみである。しかし、欧州委員会が提案を承認すると、欧州閣僚理事会は、政策決定プロセスに取りかかり、COREPERまたはSCAと提案の討議を行う。同時に、欧州閣僚理事会は、欧州議会及びEcoSocによる検討のために提案を配布し、意見を求める。これは、関係団体が意見を提出する機会を与えている。しかし、欧州閣僚理事会は、彼らの意見を考慮し、提案を修正することはできるが、強制されることはない。欧州閣僚理事会が最終法案について決定すれば、公式に採択し、法律として登録することになる。

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10.政策の実施

 砂糖に関しては、欧州委員会は、欧州閣僚理事会によって決定された政策を実施する権限を与えられている。欧州委員会は、諮問委員会と協力して、実施する方法を規定する法律を作成する。討議に参加する全員が合意した場合には、欧州委員会は政策実施に関して決定する権限を持つ。合意が得られなかった場合には、その権限は欧州閣僚理事会に差し戻され、最終決定がなされる。

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