アメリカ合衆国は、世界最大の砂糖及び異性化糖の生産国であるとともに消費国でもある。アメリカ合衆国は、また世界最大の原料糖の輸入国の1つでもある。
アメリカ合衆国の砂糖産業は、さとうきびとビートの双方から砂糖を生産し、コーンから異性化糖を生産している点で他の国とは異なっている。ビートは14州で栽培されており、さとうきびは本国の3州(フロリダ、ルイジアナ及びテキサス)及びハワイで栽培されている。異性化糖産業は、主に国の中西部に集中している。
砂糖産業は、最低価格(ローン・レート)計画及び関税割当制度(TRQ)による数量の規制を通して、国内の砂糖価格を維持している。しかし、この政策には多くの反対があり、砂糖の生産者と消費者の間の緊張は高まっている。砂糖の生産者の中にも、精製糖業者は、砂糖プログラムに対して、甘しゃ糖及びビート糖の生産者とは異なるスタンスを取る傾向がある。過去においては、各生産者団体は、砂糖プログラムの共同防衛を実現するために、意見の相違を調整することができた。しかし、産業の構造及び所有権における最近の変化は、砂糖産業の中で競合する力のバランスに変化をもたらし、より大きな政策の変更への道を開くことになろう。
砂糖産業に関する全般的な情報
1.国内の需給バランス
アメリカ合衆国は、長年にわたる構造的な砂糖の輸入国である。砂糖の生産量が過去10年間で(特にビート部門で)大きく増加しているにもかかわらず、国内の消費量と生産量の間には大きな格差が存在する。これは、(表:アメリカ合衆国1に示されているデータでは、この期間の消費量は微増となっているが)この10年間に砂糖の消費量は、平均年間2%に近い増加率で、大きく増加したためである。表:アメリカ合衆国1が示しているとおり、国内の消費量と生産量との格差は、ビートが豊作だった1994/95年〜1996/97年の期間においては、粗糖換算で平均200万トンを上回っている。
アメリカ合衆国への実際の輸入量は、国内の消費量と生産量の格差以上になっている。これは、アメリカ合衆国の精製糖業者が殆ど毎年再輸出するために25万トン〜60万トンを精糖しているためである。この事業は、精製糖業者が再輸出するために精製する砂糖をTRQ外で輸入することを許可しているアメリカ合衆国の再輸出プログラムの保護の下に実施されている(注1)。
(注1)再輸出を許可する際の条件によって、精製糖業者は、再輸出プログラムによって輸入された原料糖の数量に相当する数量の精製糖を輸出しなければならない。しかし、精製糖業者は、相殺法によって、国内市場及び輸出市場の構造をうまく利用することができる。つまり、国内の原料糖から生産された精製糖を輸出し、この数量を後に輸入された原料糖から精製された砂糖の数量と置き換えるのである。再輸出プログラムのもう1つの特徴は、代替条項である。これは、精製糖業者が、輸入され、精製された砂糖と同一の砂糖を輸出する必要がないことを意味している。代わりに、精製糖業者は、この砂糖を国内において生産された同じ数量の精製糖に代えることができる。ただし、この代替の砂糖が、再輸出プログラムの要件によって輸出されることを条件とする。この代替条項は、カナダへの輸出に対して広く利用されており、これによって精製糖業者は、輸入原料糖から生産された比較的高価な精製糖をカナダとの国境近くで生産された価格の安いビート糖に代えていた。しかし、カナダに流入するアメリカ合衆国の砂糖に対する高率の関税の賦課のために、アメリカ合衆国とカナダの間の砂糖の流れは急速に低下している。
砂糖の生産量は、1980年代の初頭以降大きく増加しており、1980/81年の原料糖換算で530万トンから増加して、1994/95年にはピークの720万トンに達している。しかし、生産量は、1990年代の後半には停滞し、実際に過去2年間は減少している。その結果、輸入量は増加し、輸出量は減少している。
表:アメリカ合衆国1 砂糖の需給バランス〔1994/95−1996/97〕
| 1994/95 | 1995/96 | 1996/97 |
生 産 | 7,201 | 6,686 | 6,510 |
消 費 | 8,524 | 8,636 | 8,664 |
輸 入 粗糖 白糖 合計 |
1,586 43 1,629 |
2,524 38 2,562 |
2,621 47 2,667 |
輸 出 粗糖 白糖 合計 |
1 688 690 |
10 362 372 |
7 233 241 |
在庫変化 | (383) | 239 | 273 |
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2.ビート、さとうきび及び砂糖等の生産実績
アメリカ合衆国は、大規模なビート糖及び甘しゃ糖の産業を有している。1994/95年〜1996/97年の期間には、アメリカ合衆国の砂糖の生産量の55%は、カリフォルニア、ノースウェスト、グレートプレーン、レッド・リバー・バリー及びグレートレークスなどの地域で栽培されているビートによるものであった。甘しゃ糖の生産量は、フロリダ、ハワイ、ルイジアナ及びテキサスの4州に集中している。
アメリカ合衆国のビートは主に、独立的な栽培者若しくは共同でビート工場を所有している栽培者によって栽培されている。農場の平均規模は、州によって異なり、上向き傾向にある。全ての地域におけるビート栽培農場の平均ビート収穫面積は、約65〜70haである。ミネソタ及びノースダコタのレッド・リバー・バリーの農場は、全ての地域の中で最も大規模であり、1992/93年には農場当たり平均約100haを収穫しているが、1,000haを超える大規模農場もある。
対照的に、民間の甘しゃ糖工場の多くは、いわゆる「管理さとうきび(注2)」を生産するために独自のさとうきび栽培地を所有している。フロリダのさとうきびの約2/3が甘しゃ糖工場の栽培地で生産されているのに対して、ハワイのさとうきびの全ては管理さとうきびとして栽培されている。ルイジアナのさとうきびの殆どは、独立的な若しくは共同の農場経営者によって栽培されており、テキサスのさとうきびの全ては、テキサスで唯一の甘しゃ糖工場を共同で所有している農場経営者によって栽培されている。
表:アメリカ合衆国2a及び表:アメリカ合衆国2Bは、それぞれの部門についてのいくつかの重要な技術的な実績の推移を示している。ビート部門の生産は白糖であるが、砂糖の生産量は2つの部門を比較することができるように、原料糖換算で示されている。農地及び工場の実績を組み合わせた砂糖の生産量に基づいて、さとうきび部門はビート部門を超えた実績を示しており、ビート部門の1ha当たり6.0トン〜7.0トンと比較して、さとうきび栽培地に関しては年間1ha当たり7.5トン〜9.0トンの砂糖を生産している(注3)。
ビート部門とさとうきび部門の間に相違が存在するばかりではなく、それぞれの部門の中にも大きな相違が存在する。これらの相違は、さとうきび部門で特に大きく、砂糖の生産量がルイジアナの年間1ha当たり5トン強からハワイの12トン強までさまざまである。ビート部門においては、この範囲はそれほど大きくはなく、砂糖の生産量はレッド・リバー・バリーにおいて5トンと最低であり、カリフォルニアにおいて8トンと最高である。
ビート部門及びさとうきび部門の双方とも、近年、収穫面積においては減少傾向を示している。ビート部門における栽培面積の減少の要因は、ミシガンを中心に起こっているが、オハイオ、ネブラスカ及びアイダホにおいても栽培面積は減少している。この減少の要因は、穀類の価格が高いために、栽培者がビートから価格の高い別の農作物に転換していることによる。さとうきび部門における主な減少は、さとうきびの栽培地が長年にわたって不動産及び高付加価値作物に転換されているハワイにおいて起こっている。
(注2)これは、さとうきび生産の根幹を成すものであり、甘しゃ糖工場における最低処理量を保証するためのものである。
(注3)さとうきび部門については、栽培面積の100%は毎年収穫されていないため、年間1ha当たりの甘しゃ糖生産量を示している。それぞれの年の甘しゃ糖生産量をさとうきびが栽培されている総面積で割ることによって計算されている。
表:アメリカ合衆国2a ビートの生産量及び生産額〔1994/95−1996/97〕
| 単 位 | 1994/95 | 1995/96 | 1996/97 |
収穫面積 | 千ha | 584 | 573 | 536 |
生産量 | 千トン | 28,897 | 25,425 | 24,204 |
単 収 | トン/ha/年 | 49 | 44 | 45 |
産糖量 | 千トン/粗糖換算 | 4,153 | 3,578 | 3,666 |
原料処理量/産糖量 | トン | 7.0 | 7.1 | 6.6 |
A ビート生産額 | 千US$ | 1,234,164 | 1,068,088 | 1,211,272 |
B 農業生産額 | 千US$ | 132,960,260 | 139,040,400 | − |
A/B比率 | % | 0.9 | 0.8 | − |
表:アメリカ合衆国2B さとうきびの生産量及び生産額〔1994/95−1996/97〕
| 単 位 | 1994/95 | 1995/96 | 1996/97 |
収穫面積 | 千ha | 357 | 354 | 338 |
生産量 | 千トン | 26,676 | 26,449 | 25,123 |
単 収 | トン/ha/年 | 75 | 75 | 74 |
産糖量 | 千トン/粗糖換算 | 3,159 | 3,220 | 2,929 |
原料処理量/産糖量 | トン | 8.4 | 8.2 | 8.6 |
A ビート生産額 | 千US$ | 855,640 | 860,073 | 783,712 |
B 農業生産額 | 千US$ | 132,960,260 | 139,040,400 | − |
A/B比率 | % | 0.6 | 0.6 | − |
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3.生産量及び消費量の内訳
表:アメリカ合衆国3は、1994/95年〜1996/97年の甘しゃ糖及びビート糖の国内生産量を示している。表はまた、アメリカ合衆国において、国内で生産されたまたは輸入された甘しゃ糖から、精製糖がどれだけ生産されているかを示している。
国内のさとうきび及びビートから直接生産された砂糖のうち、ビート糖の生産量は平均約54%を占めている。1992/93年〜1994/95年の期間においては、ビート糖の生産量は約56%を占めていたが、不作であった1995/96年には50%強まで落ち込んだ。精製糖の生産量は、1994/95年〜1996/97年の期間に増加している。しかし、この増加は、国内の原料糖の生産量が減少したため、輸入粗糖によるものである。輸入された原料糖から生産される砂糖の数量は、表に示されている3年間で精製糖の総生産量の33%から約50%に増加している。
表:アメリカ合衆国3 砂糖生産量の内訳〔1994/95−1996/97〕
| 1994/95 | 1995/96 | 1996/97 |
国産糖 生産量 |
粗 糖 | 3,159 | 3,220 | 2,929 |
ビート糖 | 4,153 | 3,578 | 3,666 |
合 計 | 7,201 | 6,686 | 6,510 |
精製糖 生産量 |
国産粗糖 | 3,159 | 3,220 | 2,929 |
輸入粗糖 | 1,586 | 2,524 | 2,621 |
合 計 | 4,744 | 5,744 | 5,550 |
表:アメリカ合衆国4は、アメリカ合衆国の砂糖の消費量、及びさまざまなエンド・ユーザーの部門間の内訳を示している。表によれば、総消費量は、1994年〜1996年の期間に約5%増加した。消費量は、一部は人口が増加したため、一部は1人当たりの消費量が増加した(1996年は、1994年より2.5%増加している)ために増加している。
砂糖の家庭消費量及び産業部門の消費量の割合は、表に示されている3年間で変化しておらず、家庭消費量は1990年代初頭までに増加した状態を維持している。
アメリカ合衆国における1人当たりの消費量の増加には、3つの主な要因が存在する。第一に、ダイエットへの関心が低脂肪食品の需要を増大させていることである。味覚、満腹感及び食感を維持するために、多くの食品の中で脂肪が砂糖に代えられている。第二に、消費者は、徐々に、砂糖を含んでいるできあいの食事及びパン類などのコンビニエンス・フードを選択するようになっていることである。最後に、アメリカ合衆国の砂糖産業及び砂糖協会は、健康食品としての砂糖のイメージを向上させることに努めており、消費行動を変えるのに成功しているところである。砂糖協会は、砂糖は「純粋で自然のものであり」かつ「安全」であることを強調している。
砂糖協会は、砂糖に対する消費者の行動を注視しており、市場調査によって砂糖の宣伝及び販売促進キャンペーンが消費者の砂糖への認識を大きく改善したと報告している。
おそらく、表:アメリカ合衆国4の最も顕著な特徴は、飲料部門において砂糖のシェアが極めて小さいことである。これは、全ての飲料の殆どが異性化糖若しくは人工甘味料で甘味を付けられているということを示している。異性化糖は、現在、全ての甘味料の利用の34%を占めており、1990年の32%から増加している。異性化糖の消費量の70%以上が、飲料部門において消費されている。
驚くべきことに、甘味料市場における人工甘味料のシェアは、1990年以降1%低下している。アスパルテームは、最も広く消費されている人工甘味料であり、1990年以降シェアを増大させている。サッカリンは、もう1つの主な人工甘味料であり、人工甘味料市場の46%を占めている。サッカリンは、特に家畜の飼料産業及び電気メッキ産業など食品以外の産業部門において、主に利用されている。アセスルファム-Kは、アメリカ合衆国での使用はいまだに認可されていない。
表:アメリカ合衆国4 砂糖消費量の内訳〔1994−1996〕
|
1994年 | 1995年 | 1996年 |
千トン | % | 千トン | % | 千トン | % |
家庭用消費 | 3,548.0 | 42 | 3,648.6 | 42 | 3,707.8 | 42 |
加工用消費 飲 物 パ ン 類 菓 子 類 乳 製 品 缶詰製品とジャム 他の用途(食品外含む) 小 計 |
153.8 1,924.9 1,294.8 446.7 317.5 770.2 4,907.9 |
2 23 15 5 4 9 58 |
166.7 1,878.5 1,352.9 445.7 275.1 914.1 5,033.1 |
2 22 16 5 3 11 58 |
193.3 1,965.3 1,316.5 438.8 313.6 902.3 5,129.7 |
2 22 15 5 4 10 58 |
合 計 | 8,455.9 | 100 | 8,681.7 | 100 | 8,837.5 | 100 |
1人当たりの消費量(kg/1人) | 32.4 | 33.0 | 33.2 |
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4.異性化糖の位置付け
表:アメリカ合衆国5は、砂糖に対する異性化糖の生産量、消費量及び貿易の関係を示している。この情報は、グラフ:アメリカ合衆国1に要約されている。この調査において論じられている他の諸国(オーストラリア、イギリス、フランス、ドイツ)とは異なり、アメリカ合衆国は、大量の異性化糖が生産、消費されており、異性化糖の世界の供給及び需要の70%以上を占めている。さらに、カナダ及びメキシコにアメリカ合衆国が近接しているため、これらの諸国の間では異性化糖の貿易が実施されている。
アメリカ合衆国における異性化糖は、コーン(トウモロコシ)から生産されている。表が示しているとおり、異性化糖の生産量は、1994/95年以降増加している。異性化糖の生産量の中でも異性化糖(果糖55%)の生産量は、異性化糖(果糖42%)と比較して増加しており、現在、異性化糖の総生産量の60%以上を占めている。
異性化糖の国内消費量もまた、異性化糖が特に飲料産業などのいくつかの産業における砂糖の市場シェアを浸食し続けているため、砂糖の消費量と比較して増加している。
表:アメリカ合衆国5は、メキシコへの販売が増加した結果、アメリカ合衆国が1981年以降初めて、1996/97年に異性化糖の純輸出国となった事実を示している。異性化糖の主な輸出先国の1つであるメキシコが、アメリカ合衆国から輸入される異性化糖に高関税を課しているため、メキシコへの輸出の見通しは不確かである。さらに、メキシコの砂糖産業は、国内で製造されたものでない異性化糖を排除するために、より安価な砂糖を飲料産業へ提供するための契約を締結している。アメリカ合衆国の異性化糖のもう1つの輸入国であるカナダは、異性化糖の輸出量の20%を占め、アメリカ合衆国にとって異性化糖の純輸出国である。
表:アメリカ合衆国5 異性化糖・砂糖の生産量及び消費量〔1994/95−1996/97〕
| 1994/95 | 1995/96 | 1996/97 |
生 産 量 |
砂糖 a | 7,201 | 6,686 | 6,510 |
異性化糖 | 7,061 | 7,342 | 7,635 |
%(異/砂) | 50 | 52 | 54 |
消 費 量 |
砂糖 B | 8,524 | 8,636 | 8,664 |
異性化糖 | 7,068 | 7,344 | 7,477 |
%(異/砂) | 45 | 46 | 46 |
輸 入 |
砂糖 c | 1,629 | 2,562 | 2,667 |
異性化糖 | 100 | 131 | 145 |
%(異/砂) | 6 | 5 | 5 |
輸 出 |
砂糖 d | 690 | 372 | 241 |
異性化糖 | 93 | 129 | 304 |
%(異/砂) | 12 | 26 | 56 |
在庫((a+c)-(B+d)) | -383 | 239 | 273 |
注:1. |
異性化糖の生産量は固形換算で表されているが、砂糖のデータを他の表に合わせるために、ここでは原料糖換算で砂糖を表している。 |
グラフ:アメリカ合衆国1
砂糖及び異性化糖の平均需給バランス(1994/95-1996/97)
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砂糖制度の主な特徴
1.序 文
アメリカ合衆国の砂糖市場は、1930年代以降特定の形で規制されており、砂糖政策は、現在、砂糖プログラムによって規制されている。1981年の農業食品法によって現在の形に確立された砂糖プログラムは、その後3度にわたって修正されている。そのうち最新の法律は、1996年の連邦農業改良法(FAIR)である。
アメリカ合衆国農務省(USDA)によって実施されている砂糖プログラムは、高い国内砂糖価格を通して栽培者及び製糖業者を支持することを目指しており、アメリカ合衆国政府予算を使用することなく運営できるように考案されている。このプログラムは、最低水準のビート、さとうきび及び砂糖の価格を保護することを目的としており、価格を安定させるためのものではなく、したがって世界の価格が高くなった場合にこれらの支持の水準を超えて価格が上昇するのを防止する機能は持っていない。
砂糖プログラムには、次の主な政策的手段が存在している。
(i)ローン・プログラム
最低保証価格で砂糖を購入することによって、国内砂糖価格(及び間接的にビート及びさとうきびの価格)を支持する。
(ii)関税(輸入)割当制度(TRQ)
国内に流入する砂糖の流れを制限することによって、これらの支持価格を上回る国内砂糖価格を維持する。
FAIR法における導入された砂糖プログラムに関する改正が国内価格支持の水準をいくぶん低下させたとは言え、国内の砂糖生産量の大きな増加がない限り、それらの改正は国内砂糖価格に深刻な脅威を与えるものとは思われない。
さらにWTOは、2000/01年までに関税保護の水準を下げることを義務付けている。アメリカ合衆国政府がWTOに提出した約定は、世界価格が極めて低い水準である場合以外は、国内の砂糖価格にはいかなる脅威も与えない。
アメリカ合衆国の砂糖生産者のさらに大きな懸念は、1994年1月に締結された北米自由貿易協定(NAFTA)によってメキシコからアメリカ合衆国へのアクセスが増加したことである。アメリカ合衆国がメキシコからの輸入を制限することを求めているというが、追加条項は、現在両当事者間の論争の的となっている。
高い国内砂糖価格がもたらす予期せぬ結果の1つは、砂糖プログラムによって規制されない大規模なコーンを基礎とした甘味料産業の発達であり、これによって砂糖はカロリー甘味料市場のほぼ半分を失う結果となっている。
以下のページにおいて、国内の砂糖産業を規制している規則について説明する。次の4つの項目でこれらの規則及び改正を論じる。
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2.生産調整
アメリカ合衆国の砂糖プログラムは、ビート、さとうきび若しくは砂糖の生産量を規制するものではなく、また、異性化糖の生産を規制するものでもない。さらに、砂糖の生産への規制がないことは、砂糖プログラムの潜在的な弱点である。以下に説明するように、これは、国内消費量と生産量の間の格差がアメリカ合衆国農務省が150万米トンより低く(136万トン)TRQを設定せざるをえない程度まで差が縮まった場合に、政府の最終的な価格支持機構の1つ(ローン・プログラム)の機能が消滅するためである。
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3.国内価格支持
FAIR法の改正によって、アメリカ合衆国農務省が用いる主な政策的な手段は、現在、ローン・プログラム及びTRQ制度となっている。FAIR法以前には、アメリカ合衆国農務省は、販売割当(marketing allotments)を用いるという国内砂糖価格を規制するもう1つの手段を持っていた。これは、生産者が国内市場で販売できる砂糖の数量を制限するものであった。しかし、販売割当に関する法律は、もはや砂糖産業に関する法律の一部ではなくなっている。
(1) ローン・プログラム
政府機関である商品金融公社(Commodity Credit Corporation:CCC)によって実施されているローン・プログラムは、国内砂糖価格がローン・レートとして知られる所定の支持価格を下回らないようにするために政府が用いることができる最終的な手段である。ローン・レートは、砂糖を生産している全ての州に対して、原料糖及び白糖の双方について毎年決定される。1997/98年のシーズンにおいては、甘しゃ糖及びビート糖についての国内平均ローン・レートは、それぞれ18.0_/lb(1トン当たり397US$)及び22.9_/lb(1トン当たり505US$)であった。ローンは、9ヶ月単位で与えられ、10月1日から6月30日まで適用される。しかし、毎年アメリカ合衆国の会計年度の末(9月30日)までには決済されなければならない。
ローン・プログラムによって、ビート及びさとうきびの製糖業者は、砂糖の生産量の一部若しくは全てを抵当に入れて、商品金融公社からローンを受けることができる。その後、製糖業者は、ローンを返済するか、若しくは返済を実施せずに砂糖を没収されるか、いずれかを選択することができる。したがって、ローン・プログラムは、製糖業者が砂糖に対するローン・レートより低い価格を受けることがないように保証するものである(注4)。しかし、FAIR法の改正により、ローン・プログラムに2つの重要な変更が行われた。
(i)商品金融公社に返済された砂糖は、原料糖については1_/lb、精製糖については1.07_/lbの罰金を課される。
(ii)ローンは、TRQが150万米トン(136万トン)を超過する水準に定められている場合にのみ、償還義務を負わない(つまり、製糖業者はローンを返済せずに現物返済を選択できる)。これは、TRQが150万米トンより下がった場合には、商品金融公社は、ローンを返済させることを意味している。この場合、商品金融公社は、買手として機能することを停止し、単なる貸付の提供者となる。さらに重要なことに、このことは、TRQが150万米トンより下がった場合には、ローン・レートに砂糖価格を支持する機能を持たないことになる。
返済に課せられる罰金の賦課は国内価格支持の水準には僅かの影響しか持たない一方で、TRQが150万米トンより下がった場合の償還義務のないローンから償還義務のあるローンへの切り替えは、価格支持が最も必要である時、例えば国内の砂糖の生産量が大きくかつ砂糖価格が下落することが予測できる時に、アメリカ合衆国における価格支持を損なうことになろう。
ビート、さとうきび若しくは砂糖の生産に対する規制がないことによって、アメリカ合衆国農務省は、TRQを150万米トンを下回る水準まで、国内の砂糖の生産量が増加しないようにする手段を持っていない。しかし、TRQは現在200万トンを超えており、国内の砂糖消費量は2%以上の年間増加率で増加することが予測されるため、将来においてはTRQは150万米トン(136万トン)を上回って推移するものと広く信じられている。
(注4)ビート及びさとうきびの栽培者もまた砂糖の支持価格の恩恵を受けることができるようにするために、ローンを受けている製糖業者は、購入する全てのビート若しくはさとうきびに対して政府の発表する最低支持価格の支払を実施しなければならない。ビートの場合は、最低支持価格は、栽培者のビート契約に規定されている収益分配協定に基づいて決定される。さとうきびの場合は、最低支持価格は、各州毎に規定されており、1997/98年のシーズンについてはテキサス州の1トン当たり23.7US$からフロリダ州の1トン当たり28.4US$の範囲である。
(2) 関税割当(TRQ)
TRQは、特恵関税でアメリカ合衆国に輸入される砂糖の数量を制限するために、毎年設定される(注5)。TRQの規模は、国内の消費量と生産量との格差、つまり輸入必要量にほぼ等しい。TRQを設定するに当たって、アメリカ合衆国農務省が最も重視することは、製糖業者が砂糖の没収を選択することができる、つまりローンにおいて砂糖プログラムのノーコストの要件に脅威を与えるレベルまで、国内砂糖価格が下がらないようにすることである。
しかし、1990年農業法案は、TRQは、当初原料糖換算で125万米トン(113.4万トン)に定められ、ウルグアイ・ラウンドの期間中に125.6万米トン(113.9万トン)に引き上げられた。この法案ではこの最低限度数量を下回って決定されてはならないことを規定している。したがって、アメリカ合衆国の市場におけるこの政策的手段の有効性は、国内の消費量と生産量の格差がTRQの水準を下回った場合には、損なわれることになる。
1996/97年の会計年度においては、アメリカ合衆国農務省は、TRQを設定する新しい手続きを実施した。それぞれの会計年度の開始に当たって、アメリカ合衆国農務省は、現在、翌年の需給バランスの予測に基づいて割当全体を設定するが、その割合を輸出国に割り当てるのみである。その後、在庫状況を見ながら、在庫量がひっ迫すれば徐々に引き上げられる可能性がある。したがって、生産量が予測されたよりも高く、在庫量が増加すれば、割当全体の水準は下方修正される可能性がある。アメリカ合衆国農務省は、割当全体を下方修正する基準点を設定している。つまり、予測されるシーズン末の在庫量:在庫率が15.5%より高くなれば、割当は法定の最低水準値に引き下げられる。
(注5)TRQは、2部で構成されている。つまり、2.2万トンの世界規模の精製糖の割当(内訳は、カナダが1.03万トン、メキシコが2,954トン、残りは先着順で輸出国に割り当てられる)及び毎年その数量が変化し、40ヶ国に割り当てられ、それぞれが割当のシェアを事前に決定される、国別に指定される原料糖の割当である。
(3) 輸入関税及びWTO約定
TRQは、アメリカ合衆国の2段階の関税システムの一部を形成している(注6)。TRQ内で輸入される砂糖は、ゼロ若しくは名目関税を課される。TRQ外で輸入される砂糖は、表:アメリカ合衆国6に概略示されているさらに高い特別関税を課される。
最低TRQは、アメリカ合衆国の砂糖の消費量の10%以上を占めているため、TRQは、WTOによって要求されている市場アクセス要件を満たしている。したがって、アメリカ合衆国は、原料糖換算で113.9万トンに最低輸入数量(ミニマムアクセス数量)を定めることができた。これには、111.7万トンの原料糖及び2.2万トンの精製糖が含まれている。
(注6)2段階の関税システムは、ガットの規則を順守するために、1989年に導入された。アメリカ合衆国に対するオーストラリアによって起こされた訴訟によって、従来の輸入割当システムがガットによって違法なものと見なされた時に、この修正は導入された。
表:アメリカ合衆国6 現行の貿易政策
| 粗糖 | 白糖 |
現行の関税率(注1・2)
ガット公約 関税 基本税率(開始年) 最終税率 ミニマムアクセス 輸出補助金削減 −量(千トン) −金額(%)
ガット最終期限 |
358.7 US$/トン
398.5 US$/トン 338.7 US$/トン 1,117,195トン
|
378.5 US$/トン
420.5 US$/トン 357.4 US$/トン 22,000トン |
適用外 適用外
2000/01 |
注: |
1. |
割当外の輸入は、これらの関税を課される。一方的貿易禁止は、キューバからの砂糖がアメリカ合衆国に流入することを防いでいる。 |
2. |
カナダ(1997年から)及びメキシコは、割当内砂糖については関税を支払っていない。 |
出典:アメリカ合衆国農務省関税スケジュール、1994−2008;WTO;LMCデータベース。 |
アメリカ合衆国は、過去において輸出業者にいかなる輸出補助金も与えていなかったため、WTOにいかなる輸出補助金の約定も提出する必要がなかった。
(4) 北米自由貿易協定(NAFTA)
おそらくアメリカ合衆国の砂糖産業に対する最も急迫した脅威は、1994年のNAFTAが実施されたことによって、メキシコによってもたらされるものである。NAFTAによって、メキシコとアメリカ合衆国との砂糖貿易の障壁は、2008年までの15年間に全て取り除かれる予定である。これは、メキシコから市価の高いアメリカ合衆国への輸出を増大させることになろう。
NAFTAによって、メキシコは、2000年まで、アメリカ合衆国へ2.5万トンの原料糖若しくは白糖を非関税で輸出することができる。2000年〜2008年の期間には、メキシコが砂糖の純余剰分を生産した場合には、メキシコは最大25万トンまでアメリカ合衆国に非関税の輸出ができる(注7)。純余剰生産量がない年においてさえ、メキシコは、7,258トンまでアメリカ合衆国に非関税の輸出ができる。これは、アメリカ合衆国の関税割当によって許可されている最低船積数量である。
(注7)当初の協定は、国内の砂糖の予想生産量から国内の砂糖予測消費量を差し引いた数量を純余剰生産量と規定していた。この純余剰生産高についてアメリカ合衆国の砂糖生産者は、異性化糖による砂糖の代替の増大のために、砂糖の消費量のみでは砂糖の生産量と比較して低すぎると異議を申し立てた。したがって、純余剰生産量の要素である国内の消費量に異性化糖の消費量を加える追加条項が作成された。これは、メキシコが純余剰生産量を達成するのをより困難にしている。
NAFTAの条件は相互的なものであるため、メキシコもアメリカから輸入をしなければならない。しかし、アメリカ合衆国は純剰余生産国でないため、おそらくこれは実現しないであろう。
(5) さとうきび、ビート及び砂糖の価格
表:アメリカ合衆国7は、1994/95年〜1996/97年の期間のビート、さとうきび及び砂糖の平均価格を示している。これによって、国内の白糖価格は、平均して、同期間に国際市場に輸出された白糖の価格の2倍以上であったことがわかる。国内の原料糖の価格でさえ、平均の世界の白糖価格よりかなり高かった。
表:アメリカ合衆国7 さとうきび、ビート及び砂糖の価格〔1994/95−1996/97平均〕
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さとうきび | 白糖 | 粗糖 |
さとうきび価格 | 32 | − | − |
ビート価格 | 45 | − | − |
卸売価格 国内価格 特恵輸出 自由市場輸出 |
− − − |
614 − 316 |
412 − − |
小売価格 国内価格 |
− | 912 | − |
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4.販売協定
最近のFAIR法による販売割当の廃止以降、アメリカ合衆国政府は、もはや国内の販売協定にはいかなる規制も実施していない。砂糖の生産者は、誰にでも好きな(自由な)価格で、砂糖を販売することができる。
FAIR法以前には、アメリカ合衆国農務省は、次の状況において、個々の製糖業者が国内市場で販売することができる砂糖の数量を制限する販売割当を実施することができた。この政策的な手段が実施される状況は、国内の砂糖の生産量が極めて多く、かつ国内の砂糖価格がローンの砂糖が没収される価格まで下がることを防止する試みによってTRQがその法定の最低数量となった時であった。
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5.栽培者/製糖業者の関係
ビート及びさとうきびの収穫及び輸送に関して、生産者と製糖業者との関係は、アメリカ合衆国の各州によって大きく異なっている。例えば、ルイジアナ州においては、栽培者はさとうきびの殆どを自ら収穫しているが、フロリダ州においては、収穫は甘しゃ糖工場の責任で行われている。ルイジアナ州においては、さとうきびの栽培者は、さとうきびの収穫量に従って、負担した輸送コストを支払う。ビートの栽培地域においては、栽培者は最寄りの受け入れ集積場若しくは工場にビートを輸送する責任を有している傾向があるが、彼らは、製糖業者によって距離に基づいて換算される経費を受けている。
アメリカ合衆国全域において、栽培者及び製糖業者は、砂糖の販売から得られる収益を分配している。いくつかの場合においては、彼らはまた、糖蜜及びビート部門ではビート・パルプから得られる収益も分配している。これらの契約は、栽培者と製糖業者の間で個別に交渉されており、これらの契約の多くにはいくつかの類似点があるが、ビート部門にもさとうきび部門にも統一的基準となる契約は存在しない。
実際的には、ビートの生産者は、砂糖の純販売価格(砂糖価格マイナス販売コスト)の約50%〜55%を受けており、さとうきび部門は約60%〜65%を受けている。
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砂糖政策の機関
アメリカ合衆国における砂糖の政策決定プロセスは、アメリカ合衆国政府の行政部門及び立法部門、並びに政策の影響を受ける関係団体が関わっている。
砂糖政策は、政府の行政部門によって立案され、最終的に大統領に報告されている。特にアメリカ合衆国農務省が政策を提案し、この提案は引き続き、初めに下院(議会)で、次に上院と立法部門によって討議される。政策は、主に小委員会レベルで討議され、その後、地域の大きな技術専門家の団体によって支持された議員で構成されている農業委員会レベルで討議される。この討議の段階において、最終法案がさまざまな団体と議員の間のある程度のコンセンサスを得る形で、生産者及びユーザーを代表する関係団体との間に多くの対話が行われる。
この法案が下院で承認されると、上院もまた承認を与えなければならない。あらゆる意見の相違が、両院合同審議委員会において交渉される。この段階でもまた、砂糖関係団体は、主に委員会の委員に対して議会活動を行うことによって意見を述べる機会を持つことができる。
最終段階は、法案について、法案全体を承認若しくは拒否する権限を有する大統領の承認を得ることである。大統領の承認が得られれば、法案は、政策となり、アメリカ合衆国農務省によって実施される。ここでもまた、政策の実施の際に、関係団体は、実施の詳細についての討議に参加することができる。
最近まで、農業法案によって、砂糖プログラムは、5年毎に1度討議されるのみであった。したがって、このプログラムの反対者は、5年毎のプログラムの討議の時に、砂糖プログラムを修正する機会を1度持てる。しかし、この手続きは、砂糖プログラムの継続に反対したMiller-Schumer法案が砂糖プログラムを根本的に弱体化させる提案に僅か8票差で敗れた1996年の最後の農場法案が通過して以降変化している。この動きではずみをつけて、砂糖プログラムの反対者は、現在、毎年下院に法案を提出してプログラムに反対している。
砂糖産業に関与する3つの主な関連団体が存在する。甘しゃ糖及びビート糖の栽培者及び生産者、精製糖業者及び砂糖のユーザーである。全体的に、生産者は、精製糖業者(注8)及びエンド・ユーザーよりも砂糖プログラムを維持することに成功していることによって明らかなように、最も強い議会活動の力を持っている。これは、概ね砂糖産業に関わる人口−栽培者及び製糖業者−によって左右されている。彼らは、自身が砂糖産業の将来に直接的な利害関係があると考えている。これは、彼ら自身を組織化し、支持を盛んに要求することがさらに大きな効果を生んでいることを意味しており、これはまた、彼らが下院及び上院の議員に対する重要な票源であることを意味している。財政的には強いとは言え、砂糖のエンド・ユーザーは数的に劣っており、生産者とは違い地理的にも支配的とはなっていない。このことが議員に対する彼らの影響力を希薄にしている。
砂糖産業の内部においては、組織及び交渉力にはいくつかの相違が存在している。例えば、さとうきび産業は、ビート産業よりその代表が細かく分かれており、かついくつかの地域団体は生産者と製糖業者の双方を代表している。ビート産業は、栽培者及び製糖業者の国内団体によって代表されている。
(注8)精製糖業者は、2つの理由から国内の砂糖生産者に与えられている支持に反対している。第一に、TRQが精製糖業者が輸入することができる原料糖の数量を制限しており、操業率を低下させていることである。第二に、砂糖プログラムが最低レベルを下回らないように原料糖の価格を維持しているため、ビート糖の生産量が増大し、精製糖の価格を下げなければならなくなった場合に、精製糖業者のマージンは、浸食される可能性があることである。
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砂糖産業の現状
1.ビート製糖業
表:アメリカ合衆国8は、現在ビートを加工している工場を示している。各企業別の工場、所在地、企業全体の処理能力等を示している。
今日、操業している29工場のうち18工場は、民間所有であるが、残りの11工場は、栽培者が所有する協同組合によって経営されており、その殆ど全てがレッド・リバー・バリーに所在している。その他の地域の各工場は、1993年までは、1社若しくは2社の民間所有の企業が加工部門を支配するようになっていた。1993年以降は、協同組合は、ビート加工において徐々に重要な役割を演じるようになった。Amaigamaed Sugar Companyによって経営されていたパシフィック・ノースウェスト地域に所在する4工場は、1997年に、現地の栽培者の協同組合であるSnake Riverによって引き継がれた。
1970年代以降はワシントン州には工場がなかったが、生産者の協同組合であるColumBia Riverは、ビートを現地で加工するためにこの州に新しい工場を建設している。ビートが生産されているワシントン地域は、国内でも最も生産性の高い地域の1つであり、栽培者は自らのビートを加工することを決定している。
1990年代には、アメリカ合衆国内で操業しているビート工場の数は、始めの34ヶ所から、現在では29ヶ所に減少している。しかし、ビート製糖業の総加工能力は、1日当たりの原料処理量(tbd)で、16.5万トンから17.8万トンに増大している。平均の能力は、維持されているが、工場数は、合理化−老朽化した小規模な工場の閉鎖、大規模な能力の高い、若しくは立地条件の良い工場の拡大−によって減少している。その結果、1工場当たりの平均原料処理能力は、1993年の4,900トンから今日の6,100トンに増加している。
カリフォルニアにおいては、2ヶ所の工場が1990年以降閉鎖された。ビートの栽培面積が、病気(注9)、干ばつ、都市化及びより収益性の高い代替農作物との競合の結果、縮小しているために、工場閉鎖は増加している。Holly Sugarが1996年に唯一の競合企業であるSpreckels Sugar Companyを引き継ぐまでは、ビートの生産量の減少によって、カリフォルニアのいくつかの地域におけるビートの加工企業の間には激しい競争があった。さらに最近では、農場経営者が代替農作物に切り替えているためにビートの供給が減少している結果、オハイオ及びテキサスにおいて工場の閉鎖が起こっている。
ビート糖工場は、ほぼ5社で運営されている。Imperial Hollyは、一番工場数が多い(11ヶ所)が、ビート糖の生産量は、総生産量の30%未満である。他方で、アメリカン・クリスタルは、僅かに5ヶ所のビート糖工場で、ビート糖の総生産量の25%を生産している。
(注9)カリフォルニアには、北部の州の多くに共通している厳しい冬の凍結がないため、多くの病害虫が冬季にも発生する。
表:アメリカ合衆国8 ビート糖企業:現在の所有状況及び1996/97年の生産データ |
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2.甘しゃ糖産業
表:アメリカ合衆国9a、9b及び9cは、アメリカ合衆国において現在さとうきびを加工している企業、その所有する甘しゃ糖工場及び1996/97年の主な実績の指標を示している。現在、28社が所有する33ヶ所の甘しゃ糖工場が存在している。ビート加工部門とは異なり、さとうきび部門全体には、さまざまな所有者が存在しており、殆どの企業は僅か1、2ヶ所の甘しゃ糖工場を所有している。これらの工場のうちの19工場は、ルイジアナに所在し、工場はさとうきび生産者によって共同で所有されている。
最大の企業は、ユナイテッド・ステート・シュガー・コーポレーション(USSC)であり、その2つの工場は合わせて約60万トンの原料糖を生産している。表に示されているように、さらに、工場の規模には地域的な相違がある。例えば、フロリダ工場の平均加工能力は、1日当たり7,000トン未満であり、ハワイ、テキサス及びルイジアナより規模が大きい。ハワイの工場は、温暖な天候のため、テキサス及びルイジアナの工場より平均して多くの砂糖を生産しており、24ヶ月の期間にわたってさとうきびを生産することができ、1年中収穫することができる。
表:アメリカ合衆国9a 甘しゃ糖企業:現在の所有状況及び1996/97年の生産データ |
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表:アメリカ合衆国9b 甘しゃ糖企業:現在の所有状況及び1996/97年の生産データ |
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表:アメリカ合衆国9c 甘しゃ糖企業:現在の所有状況及び1996/97年の生産データ |
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表:アメリカ合衆国10は、この報告書が書かれている時点において、アメリカ合衆国で操業されている砂糖の精製糖工場及び各精製糖工場を所有している企業を示している。
アメリカ合衆国においては、現在、10ヶ所の精製糖工場が操業されており、そのうちの9ヶ所は単独型精製糖工場である。精製糖工場は、7社によって運営されている。精製糖産業の2つの支配的なグループは、(Tate & Lyleによって所有されている)Domino Sugar Corporation及びImperial Holly Corporationであり、それぞれ3ヶ所及び4ヶ所の精製糖工場を所有している。
Imperial Holly Corporationは、Savannah Foods & Industriesを買収した1997年に、精製糖部門において支配的となったばかりである。当初は、合併がSavannah Foods & IndustriesとFlorida Crystalsの間に提案されていたが、原料糖の供給を確保するSavannahのニーズによって加速された。これは、Savannahが原料糖を購入しているフロリダのClewiston甘しゃ糖工場に新しい付属の精製糖工場を建設する予定であるというUnited States Sugar Corporationによる発表に続くものであった。しかし、提案されていたSavannah Foods & IndustriesとFlorida Crystalsの間の合併は、Imperial Holly Corporationの申し出によって覆された。
この合併を別として、過去5年間においては、精製糖産業の所有権の構造は、大きくは変化していない。殆どの変化は、精製糖産業が大きく合理化された1993年以前に起こっている。しかし、1993年以降は、ハワイの小規模なAiea工場及びルイジアナのSupreme精製糖工場の2工場が閉鎖されている。
アメリカ合衆国の全ての精製糖工場は、平均して年間約250日間、砂糖を精製している。
表:アメリカ合衆国10 甘しゃ糖企業:現在の所有状況及び1996/97年の生産データ |
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3.異性化糖の位置付け
表:アメリカ合衆国11は、現在、異性化糖の生産に携わっている企業の所在地及び1997年の生産量を示している。アメリカ合衆国において異性化糖を生産しているのは僅かに8社であり、合計18ヶ所の工場が存在し、3社が業界を支配している。つまり、Archer Daniel Midland(ADM)、Cargill及び(Tate & Lyleによって所有される)Stayleyの3社である。これらの3社によって10ヶ所の工場が所有されており、いくつかの工場は、年間、固形換算で100万トン以上の異性化糖を生産する能力を持っており、3社併せた生産量は、総生産量の67%を占めている。
過去数年間にわたって、企業構造に殆ど変化はない。1997年に生じた唯一の変化は、Johnstown工場を所有していたGolden Technologies1社の閉鎖であった。これ以前には、1996年にProGoldが生産を開始している。ProGoldは、Golden Growers'Cooperative、American Crystal及びMinn‐Dak Farmers' Co-operativeの合弁会社である(注10)。
異性化糖産業の最も顕著な変化は、生産能力の拡大である。1994年〜1997年の期間には、異性化糖を生産する潜在能力は、年間約300万トン増加し、年間の総生産能力は約1,100万トンとなった。約760万トンの国内消費量及びメキシコへの僅かな数量の輸出を考慮すると、これは異性化糖産業が300万トンを超える余剰能力を持つことを意味し、稼動率が低下しているため、部門コストが増加している。国内市場の供給過剰による異性化糖価格の低下とともに、各企業の収益は低下している。
(注10)1997年末に、ProGoldは、顧客との価格決定交渉における異性化糖生産者の交渉の立場を強化するために、Wahpeton工場における全ての管理及び販売業務をCargill Incに譲渡することを発表した。ProGoldはこの工場の所有権を保持するが、Cargillが独自の販売力を用いてProGoldの異性化糖を販売することになる。
表:アメリカ合衆国11 異性化糖企業:現在の所有状況及び1997年の生産データ |
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4.部門間の提携
アメリカ合衆国の甘味料産業の興味深い特徴は、甘味料産業のさまざまな競合する部門へのいくつかの企業の参入である。最近のImperial HollyによるSavannah Foods and Industriesの買収は、重要な事例であり、これによってビート加工及び甘しゃ糖の精製に関与する会社が生まれている。Imperial Hollyは、現在、白糖市場の約35%を支配している。
いくつかの製糖業者はまた、異性化糖の生産にも関与している。異性化糖が1970年代に液糖の重大な代替物として初めて認知された時、製糖業者は新しく急速に拡大している異性化糖産業に競って参入した。しかし、1980年代半ばまでには、同産業への製糖業者の参入は衰え、国内構造は著しく変化した。実際に、アメリカ合衆国の異性化糖部門と砂糖部門間の全ての提携は切断され、コーンスターチ業者が生産能力を支配した。異性化糖部門に関わり続けた1社は、イギリスに本社を置く多国籍企業であるTate & Lyleであり、ビートの加工(Western Sugar Company)、甘しゃ糖の精製(Domino Sugar Corporation)及び異性化糖の生産(A E Staley)の各部門の生産工場を所有している。さらに、ビート糖の協同組合であり、ProGoldの46%の株式を保持するAmerican Cristalによって新たな参入が行われ、1996年に生産が開始されている。
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砂糖の流通
精製糖は実需者、小売消費者及び食品サービス消費者の3つの部門に、それぞれ65%、20%〜25%及び10%〜15%向けられている。クラフト・フーズなどの大規模な実需者は、生産者と直接交渉し、精製糖工場から直接砂糖の納入を受けている。
精製糖業者は、しばしば工場で砂糖を包装し、小売部門に直接販売している。例えば、USSCは、フロリダの小売部門に直接販売することができるように、工場に包装設備を設置している。
しかし、アメリカ合衆国の砂糖産業の興味深い特徴は、現在までは、生産者が自社ブランドの砂糖を地域で販売しているのみであることである。全国規模で販売されているブランドはない。いくつかの精製糖業者は、国内の他の地域の小売部門若しくは食品サービス部門に砂糖を直接流通させているが、特別に砂糖を包装している。USSCは、これを改革しようとしており、ピルスベリーのブランドで、アメリカ合衆国全域に、食品雑貨部門用に全てのUSSCの砂糖を流通するように、小麦粉及び砂糖の国内流通業者であるピルスベリーと交渉している。これは、既存の全国的に認知されたブランド名を利用するという利点をUSSCに提供することになる。
全般的に、精製糖業者は、短時間でユーザーへの砂糖の納入を保証する「ジャスト・イン・タイム」納入システムを用いて、砂糖を流通させている。精製糖業者は、バラ荷鉄道車両及びトラックを用いて、工場から直接多数のユーザーに砂糖を納入している。しかし、精製糖の生産場所から500マイル以上離れた市場にもジャスト・イン・タイムの砂糖の納入を保証するために、数社は、納入場所のより近くに砂糖を保存するために、数カ所の中継倉庫を所有している。
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砂糖産業の現在の問題
アメリカ合衆国が直面しているいくつかの重要な問題が存在する。つまり、代替甘味料との競争、砂糖産業内の競争、精製糖業者への原料糖の供給の確保、並びにメキシコ及びカナダからの輸入の脅威である。
精製糖産業に対する主な競争相手は、異性化糖である。砂糖プログラムによって砂糖業界を保護するため市価が高く維持されていたため、1970年初頭に大規模なコーン(トウモロコシ)を基礎とする甘味料業界の発展を促進した。EUとは異なり、異性化糖の生産は、砂糖プログラム(若しくは他のプログラム)によって規制されていない。したがって、この部門の成長は、政府の規制外である。
コーンの低コスト及び高い砂糖の価格によって、異性化糖の生産は、アメリカ合衆国においては商業的に採算が取れるのである。事実、異性化糖の加工マージンは、非常に大きいため、スターチ業者は砂糖より遥かに安く生産することができ、従ってエンド・ユーザーは、いつでも異性化糖に切り替えることができるのである。
1970年初頭に初めて生産されて以降、異性化糖は殆ど全ての液体利用において砂糖から切り替えられており(注11)、現在は、国内のカロリー甘味料の消費量の45%以上を占めている。全てのエンド・ユーザーが砂糖から異性化糖に切り替わるとは思われないが、高い支持価格の継続は、砂糖の利用を粒状の形で消費される部門にだけ制限することになろう。
ソフト・ドリンクにおける人工甘味料の利用もまた、大きく増加している。しかし、異性化糖がソフト・ドリンク市場の100%を占めているため、増加している人工甘味料の利用は、砂糖ではなく、主に異性化糖のシェアを侵蝕していることになる。
近年、砂糖産業以外の部門間の競争が、しばしば、精製糖企業の加工マージンを圧迫している。国内のビート糖業者が1990年代初頭に拡張したため、白糖価格は、原料糖価格に比べて下がっており、精製糖業者の利益は減少している。
精製糖業者におけるもう1つの増大する懸念は、原料糖の供給を確保することである。TRQによって輸入されている原料糖の供給は一定しておらず、精製糖業者は、国内の生産者からの原料糖の堅実な安定した流れを確保することを切望している。これは、原料糖の生産ラインを所持しない独立的な精製糖業者にとっては特に重大である。さらに多くの甘しゃ糖工場付属の精製糖工場を建設しようとする全般的な傾向のために、単独型精製糖工場が利用できる国内の原料糖の供給は圧迫されている。
1990年代のアメリカ合衆国における砂糖部門の極めて重要な問題は、メキシコ及びカナダとの3ヶ国間の自由貿易地域の確立に従った越境貿易の程度である。メキシコがアメリカ合衆国に、非関税で、大量の原料糖を輸出することができるようになることによって、精製糖部門は、NAFTAに従ったメキシコとの関係から利益を得ることができるであろう。同様に、最低量の白糖をメキシコ以外の諸国からアメリカ合衆国に流入することを認めているアメリカ合衆国の約定を考慮すると、原料糖部門に打撃を与えることが考えられる。しかし、この砂糖が白糖としてアメリカ合衆国に流入する場合、アメリカ合衆国の精製糖業者の国内販売を減少させるため、メキシコはまた、精製糖業者にとっても潜在的な脅威となる。
問題はまた、1989年のカナダ・アメリカ合衆国自由貿易協定(CUSFTA)の締結によってカナダからアメリカ合衆国に流入する精製糖及び含糖製品の数量によっても生じている。アメリカ合衆国が主張するのは、アメリカ合衆国への精製糖の輸出を1989年以上に増加させないというカナダとの「紳士協定」であるにもかかわらず、カナダの砂糖はアメリカ合衆国に殺到している。さらに、アメリカ合衆国が統一関税スケジュールを採択し、特定の含糖製品を割当によって制限しない種別に再分類したため、カナダにおけるこのような製品の製造業者は、アメリカ合衆国への輸出を大きく増加させた。
この状況は、アメリカ合衆国の精製糖部門に対して大きな問題を引き起こしており、アメリカ合衆国行政は、カナダがアメリカ合衆国に輸出できる砂糖の数量を制限することとした。多くの交渉の後に、1997年9月に両国の間で協定が合意された。アメリカ合衆国は、22千トンの精製糖のTRQのうちの10,300トン及び特定の砂糖を含む製品に対する59,250トンのTRQをカナダに対して割当てた。メキシコに割当てられている追加の2,954トンの精製糖は別として、精製糖TRQの残りは、先着順に適用される。
(注11)異性化糖は、液体でのみ生産されているため、機能的な理由から粒状の砂糖を必要としているエンド・ユーザーの部門においては、砂糖と競合しない。
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