[2003年7月]
【NY市場の動き】
1.5月のNY市場
NY市場へのファンド筋の介入は、4月の手仕舞い売りにより事実上終結した。相場は5月に入ってもファンド筋の売りが行われたことにより引き続き下落したが、業者筋の買い支持により7セント台の小幅なレンジで推移した。
市場を取り巻く環境について見ると、相場の強材料としては、
(1) ブラジルの03/04年度の砂糖輸出量が前年の1,100万トンから940万トンに減少すると見られていること
(2) オーストラリアの03/04年度の砂糖生産量が干ばつの影響で減少すると見られていること
(3) インドネシアや中東諸国等に現物買いの動きが見られること
等が挙げられるが、一方、相場の弱材料としては、
(1) 世界の砂糖需給構造は依然として供給過剰が続くと見られていること
(2) タイの02/03年度の砂糖生産量が760万トンに達すると見られているが、同国からの砂糖の輸出は前年度に比べ進んでいないこと
(3) 世界最大の砂糖輸入国であるロシアにおいて、国内価格の割安感により海外からの輸入意欲が低いと見られていること
等が挙げられる。
このような市場環境の中で、中心限月(7月限)は、1日の7.38セントから、ファンド筋の売りにより下落傾向で推移し、5日には約6ヵ月ぶりに6セント台を記録した。月後半に入ると、投機筋の買い等により一時相場は反発したものの、月を通じて7セント台の小幅なレンジで推移した。
この結果、5月の相場は、現物価格が、前月平均の7.92セントから当月平均7.41セントに下落し、定期相場が、前月平均の7.51セント(5月限)から当月平均7.03セント(7月限)へとそれぞれ下落した。また、5月の一日当たり平均推定出来高は、前月の3万4,660枚から大幅に減少し、2万3,295枚となった。また、米国の商品先物取引委員会(CFTC)が公表した買い越し残は、ファンド筋の手仕舞い売り等により、5月27日には2万7,553枚に減少し、さらに6月10日の公表では一転して5,999枚の売り越し残となっている。
(単位:セント/ポンド) |
NY相場 |
現物価格 |
定期価格(当限) |
3月 |
4月 |
5月 |
3月 (5月限) |
4月 (5月限) |
5月 (7月限) |
最低 |
8.10 |
7.46 |
7.14 |
7.46 |
7.17 |
6.68 |
最高 |
9.18 |
8.29 |
7.69 |
8.44 |
7.85 |
7.38 |
平均 |
8.50 |
7.92 |
7.41 |
7.86 |
7.51 |
7.03 |
|
2.今後の動き
今後の動向に関しては、タイ及びブラジルからの砂糖の輸出量が注目される。
5月16日のリヒト社の発表によると、タイの02/03年度のさとうきび生産量は、好天に恵まれたことから、当初見通しの6,100万トンから7,100万トンに増加するとしている。このため砂糖の生産量は、当初の見通しの640万トンから760万トンに増加するものの、同国からの白糖及び粗糖の輸出ペースは、昨年よりそれぞれ大幅に遅れていると指摘している。
また、03/04年産のさとうきびが増産となっているブラジルでは、現在、エタノールの増産計画が進められており、同国からの砂糖の輸出量は前年の1,100万トンから940万トンに減少すると見られている。このことについて、国際砂糖機関(ISO)のチーフエコノミスト、グドシニコフ氏は、同国のさとうきび生産者がエタノール向け供給の拡大に固執した場合、小規模な砂糖不足になる可能性があると指摘し、世界最大の砂糖輸出国であるブラジルの動きが引き続き世界の市場に大きな影響を与えるだろうとの見方を示している。
このような状況から、今後の相場動向について、砂糖の市場関係者は、世界的な供給過剰傾向が今後の相場を圧迫するものの、輸入業者が相場の下落を待っていることから、相場は現在のレンジを維持することになると見ている。
〔農産流通部〕