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EU の農業改革に影響を与えるバイオ燃料の政策と生産状況について(1)〜砂糖・穀物需給への影響を含む〜

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最終更新日:2010年3月6日

砂糖類ホームページ/国内情報

機構から

[2008年5月]

農林水産省農林水産政策研究所 国際食料情報分析官(前調査情報部長) 加藤 信夫
調査情報部調査課 課長補佐 平石 康久

はじめに
1.バイオ燃料政策の目的と特徴

2.これまでのバイオ燃料の生産状況 〜計画どおりに進まないバイオ燃料の生産〜

3.共通農業政策(CAP)および砂糖制度改革との関連
4.10%混合義務化等を実行するためのパッケージ提案(2008年1月23日):COM(2008)19final
5.バイオ燃料の生産と利用
6.バイオディーゼルの原料の状況
7.バイオディーゼルをめぐる厳しい情勢〜混合率と貿易問題〜



はじめに

 EUは、京都議定書において温室効果ガス(GHG(Green House Gas))の排出量を2008〜2012年の間に1990年比で8%削減することになっているが、そのためには、二酸化炭素の排出において大きなウェートを占めている輸送部門1での削減が鍵となっている。このことから、バイオ燃料は輸送部門によるGHG排出削減を可能にする唯一の燃料として期待されている。
  このため、2003年に輸送用バイオ燃料の生産振興に関する法的な枠組みができたところであるが、バイオ燃料の利用は各加盟国でバラツキが見られ、目標を下回るペースであったため、2007年3月の欧州理事会において、加盟国にその利用目標を義務づけることに合意したところである。
 このような中、EUのバイオ燃料の政策と生産状況、およびEUの新たな義務化目標が砂糖・穀物の需給に及ぼす影響について調査を行ったので、その結果をここに報告する。

1 全エネルギー消費量の1/3が輸送部門でそのうち90%が自動車のガソリン消費となっている。

1.バイオ燃料政策の目的と特徴

 〜環境面に配慮した持続可能なバイオ燃料生産を目指す政策〜
  EUのバイオ燃料政策の目的は、(1)温室効果ガスの削減(環境面)、(2)エネルギー安全保障(エネルギー面)、(3)農業・農村開発(地域開発面)の3つに集約される。それぞれの目的の重みは加盟国によって異なり、たとえば、バイオ燃料の主要生産国であるフランスでは、農村部でのバイオ燃料の生産を通じた農業・農村の持続的な発展に政策主眼が置かれている。
 また、EUのバイオ燃料政策の特徴は、バイオ燃料の生産が環境破壊につながらないよう、かつ持続可能性(sustainability)をもって行われることが求められるという点である。2005年12月に開催された欧州環境会議においては、

(1)  欧州におけるバイオ燃料市場の拡大によって開発途上国の自然環境を破壊しないこと(途上国からバイオ燃料を輸入する際には、少なくともEUと同等の持続可能な基準を満たすこと)、
(2) 政府のインセンティブ(補助政策)は、「種から燃料タンクまで」全体で二酸化炭素を削減するような仕組みとすること(バイオ燃料の輸送にかかった二酸化炭素排出量、水、大気汚染なども考慮)、
(3) バイオマスはまず食料や家畜飼料に用い、次に建築や工業品に用い、最後にバイオエネルギーや第二世代バイオ燃料として用いること、とされた。

2.これまでのバイオ燃料の生産状況 〜計画どおりに進まないバイオ燃料の生産〜

 輸送部門のバイオ燃料の生産振興上、当初の基本となる欧州委員会の指令は、2003年に出された「EU Biofuels Directive on the promotion of the use of biofuels or other renewable fuels for transport(2003/30/EC)」である。ここでは、加盟各国がバイオ燃料及びその他再生可能燃料の市場導入量について目安となる国家目標(National Indicative Target)を設定することを義務づけ、輸送用燃料におけるバイオ燃料2の比率を2005年末には2%、2010年末には5.75%とするというEUとしての「目標」(義務ではない)を設定した。
  各加盟国は、このバイオ燃料指令の第4.2条に基づき、2006年末までに欧州委員会に対してバイオ燃料の利用の進展状況について報告するよう求められており、その結果、2010年の目標の達成の見込みが立たない場合には、「義務的な目標値の導入」を含む追加の提案をすることになった。また、2003年のエネルギー税制指令により、加盟国にバイオ燃料の生産利用を促進させるための優遇税制措置などを採る権利を与えた。
 加盟国からの報告を受けて欧州委員会は2007年1月に「Biofuels Progress Report」を作成し、その中で、「EUは現在の政策を続ける限り、10年には4.2%の市場シェアしか達成できず、10年の目標値(5.75%)は達成されそうにない」と結論付けた。具体的には、ドイツ、スウェーデンを除きバイオ燃料の利用は低調で、2005年で平均1%であった(表1)。
 各加盟国でのバイオ燃料の利用は低調であるとの報告を受け、2007年3月の欧州理事会で、2020年までに以下を実施することを是認した。


表1 加盟国のバイオ燃料の利用目標と実績
単位:%
資料:欧州委員会


(1)  他の先進国が同等な排出削減を約束し、かつ新興経済国が適切な貢献を行うという条件で、90年比でGHGを30%削減
(2) 他国が国際気候変動交渉で上記の条件を拒否する場合でも、EU単独で最低20%のGHG削減を実現
(3) エネルギー使用において、再生可能エネルギーの割合を最低20%に引き上げ
(4) 輸送部門におけるガソリンとディーゼルの総消費に占めるバイオ燃料の比率を最低10%に引き上げ
(5) エネルギー効率の引き上げにより、エネルギー消費をBAU(Business as usual)レベルで20%削減

 ※2007年3月2日“Presidency Conclusions”

 このようにバイオ燃料の目標を義務化(binding)することは、その生産を持続可能なものとする上で適切としている。
 特に、輸送燃料部門における「10%混合義務化」の達成については、バイオ燃料の生産の持続可能性(sustainability)、食料と競合しない第ニ世代燃料の商業生産、燃料品質基準(バイオエタノールなどの混合率の引き上げの可否)、各加盟国の権限である税制優遇措置3により左右される。この目標の達成のための手段(混合義務、tax incentive(減免措置など)、または混合義務と減免措置等の両方)のうちどれを採用するかは加盟国の自由であるが、EBB(European Biodiesel Board)によれば、今後は税制優遇措置による税収の大幅な下落に対する懸念から、ブラジルのような混合義務付けの政策が主流になっていくのではないかとしている。

「バイオ燃料」の主なものは、バイオエタノール、バイオディーゼル、バイオガス、バイオメタノール、バイオジメチルエーテル(バイオDME)、バイオETBE、バイオMTBE、合成バイオ燃料(FT合成油等、バイオ水素、純植物油とされている。
3 欧州委員会には化石燃料の課税権限はない。

3.共通農業政策(CAP)および砂糖制度改革との関連

 1992年CAP改革では、直接支払いを受ける条件としてセットアサイド(休耕)が義務化された。さらに2003年CAP改革においては、エネルギー作物生産に対する奨励金が導入された。これは、休耕地での非食用作物(エネルギー作物等)の作付けが可能となり、ヘクタール当たり45ユーロの特別奨励金が、150万ヘクタールを上限として支払われるというものである。この奨励金は直接支払いに加算されて支払われ、別途、加盟国による上乗せの奨励金も認められるものである。
  エネルギー作物に対する特別支援スキームは2004年から実施されたが、理事会規則92条に基づき、欧州委員会は2006年12月末までにスキーム実施後2年間のスキーム利用状況をレビューした報告書を提出することとされた。
 「エネルギー作物スキームのレビューに関する報告書」は2006年9月に欧州委員会から欧州理事会に提出されたが、2年間の実績は完全利用からほど遠く、補助対象となった面積は2004年が約30万ヘクタール(最大保証面積の20%)、2005年が約57万ヘクタール(同38%)であった。積極的に活用した加盟国は、ドイツ、フランス、英国であった。
 しかしながら、2004〜06年のEU15におけるエネルギー作物の栽培面積が拡大傾向にあることに加え、新規加盟国への当該制度の適用、てん菜のエネルギー作物への組み込みによる栽培面積の増加などの理由から、特別奨励金の支給上限面積の拡大を行うこととし、2007年から上限面積を、150万haから200万haに引き上げた。
 ところが、2007年における同スキームの申請栽培面積は支給上限面積を大幅に上回る284万ヘクタールに達したことから、欧州委員会では07年の特別奨励金の支払いを30%カット(申請面積の70%に対してヘクタール当たり45ユーロを支給)する方針を打ち出している(2007年10月19日付Agra Europe)。この特別奨励金は、現在検討中のCAPの「ヘルスチェック」4により廃止される可能性がある。
 他方、WTOパネル結果などを受け、EUは2005年秋に砂糖制度改革案に合意した。これにより、バイオエタノール生産向けのてん菜は休耕地で栽培することが可能となり(非食用てん菜にはエネルギー作物に対する補助金が支給)、生産割当から除外されることになった。ただし、てん菜糖企業からの聞き取りによれば、この措置は砂糖を生産するためのてん菜の価格に比較して少額である一方、補助を受けるための基準が厳しいため、てん菜生産者にとってはあまり魅力のない制度であるとの感想も聞かれた。

2007年、欧州委員会はCAPの中間検証作業として実施する「ヘルスチェック」を行うことを発表し、2009年以降の政策実施に向けて、現行のCAPを評価・検証し、2008年末までに最終決定されることになっている。主な検証項目は、(1) 直接支払い制度の効率化・簡素化、(2) 気象変動、バイオ燃料需要拡大、水質管理、生物多様性の保護に関する新たな政策の検討、(3) 国際化の進展やEU拡大を踏まえた市場対策の見直し、となっている。

4.10%混合義務化等を実行するためのパッケージ提案(2008年1月23日):COM(2008)19final

 欧州委員会は1月23日、欧州理事会において昨年3月に合意した地球温暖化対策および再生可能エネルギー利用促進対策を具体化する広範な政策パッケージを提案した。
  このうち、再生可能エネルギー利用の促進については、「再生可能資源のエネルギー利用促進に関する欧州議会および欧州理事会指令」案(COM(2008)19final)の中で、輸送燃料におけるバイオ燃料の10%混合などの義務目標(binding target)を各加盟国に実行させるための指針が盛り込まれている。
 この義務目標に対しては、関係機関などにより広く支持されているとしている。支持の理由は、(1)中小企業の地域雇用機会の増加、(2)地域・農村開発、(3)経済発展の刺激とEU企業の地球規模でのリーダーシップ力の向上、(4)気象変動問題への取り組み、(5)EUのエネルギー安全保障、というポジティブな成果が期待されることであった。
 他方、ネガティブな意見としては、食用にも利用されるバイオマス資源の需要がさらに高まれば、食料不足や環境への悪影響が懸念されるというものであった。
 この懸念に対応するため、3つの持続可能性基準(sustainability criteria)を設けた。すなわち、(1)炭素固定能力が高い土地でバイオ燃料を生産しないこと、(2)生物多様性が高い土地でバイオ燃料を生産しないこと、(3)バイオ燃料はGHGの最低排出抑制量を達成すべきであること(転作による炭素量減少は計算に含めない)である。生物多様性が高い土地とは、自然林、自然保護指定地域、生物多様性が高い草地であり、他方、炭素固定能力が高い土地とは、特定の湿地帯や連続的に森林とされている地帯としている。欧州委員会は、2010年12月末までに、具体的な持続可能基準について報告することになっている(以上、第15条)。
 なお、第16条において、欧州委員会には第三国で生産されるバイオ燃料が、環境に配慮した持続可能性基準(第15条3項、4項のバイオ燃料生産の制限地域規定)との適合性を証明するために、二国間又は多国間合意を行う権限が付与されている。この任意の国別又は国際的な合意事項には、15条2項で規定されているバイオ燃料の利用によるGHG排出量の最低削減率(35%)基準達成を判断するデータと持続可能性基準の適合性を判断する根拠が含まれる。
 本提案の法的意味については、この提案は「EU条約第175条第1項」(環境に関する条文。関連条文は第95条)を基に作成されている。この環境に関する条項は、環境の質的保全・保護と改善、人間の健康の保護、天然資源の慎重かつ合理的な利用について規定している。このため、本提案は法的にも環境政策の一環であるといえる。
 なお、本指針では、原則としてバイオ燃料やその原料の貿易を阻害するような措置を採ることを禁止する一方、域内と域外の再生可能エネルギーの提供者が同じ条件のもとに取り扱われることを求めている。特に域内加盟国に対して水準の高い目標を課していることから、第3国での(バイオ燃料の持続性に関する)法的枠組みについて特に注意すべき(同水準の要件を満たすべき)としている。
 欧州委員会ではこれまでの再生可能エネルギーの利用を向上させるためには、これまでの経験上、期限付き目標を含む法的枠組の採用が必要としている。「バイオエネルギー」には、(1)電力、(2)暖房・冷房、(3)輸送の3分野が含まれる。3分野のうち電力における再生可能エネルギーからの利用促進は欧州委員会指令2001/77/EC、輸送分野におけるバイオ燃料の利用促進は2003/30/ECで規定されているが、暖房・冷房分野における再生可能に関する法的な枠組みは存在していない。そこで、欧州理事会は、EUは再生可能エネルギーの20%の利用義務期限を2020年とし、全分野での再生可能エネルギーの利用を進めたうえで「20%」目標を達成すべきと結論づけた。
 以上の理由から、再生利用可能エネルギーの20%利用義務は、各加盟国にGDPに応じて増加分は均等となるように柔軟性を持って配分5したが(各加盟国は自国の状況に応じ電力、冷暖房、輸送の各部門での利用を組み合わせて目標値を達成可)、バイオ燃料の10%混合義務については各加盟国に一律に義務づけた。
 輸送部門を義務付けし、厳しくした理由は、(1)輸送部門はGHGの排出量が最も早く増加している部門であること、(2)バイオ燃料は、EUで最も重大な問題となっているエネルギー安全保障問題の一つである輸送部門の石油依存度問題へ挑戦する必要があること、(3)バイオ燃料は他の再生可能エネルギーと比較して価格上昇が大きいこと(具体的な義務を課さないと発展しない)、さらには、バイオ燃料は貿易が容易でどこからでも入手可能であり、国産と輸入の組み合わせでも目標を達成してもよいことになっている。
 なお、現在、EUにおける再生可能エネルギー利用のシェアは8.5%であり、2020年までに20%を達成するためには大幅な引き上げが必要である。 
 この指針を受け、各加盟国は国別行動計画(分野別の目標を含む)を作成しなければならないことになっている。
 バイオ燃料の特別な規定(第18条)では、バイオ燃料の10%の最低混合基準を達成する観点から、EUのEZ590/2004で規定されている混合率を超える混合率を認めている。さらに、各加盟国は2010年末までに、付属書V(B7:7%混合バイオディーゼル)の規格に合致するバイオディーゼル燃料(バイオディーゼル)を配給する給油所を少なくとも2カ所設置し、付属書Y(B10:10%混合バイオディーゼル)に合致するボリュームベースで最低5%のバイオディーゼルを混合するバイオディーゼルを2014年までに少なくとも2カ所の給油所で利用可能にするとしている。
 また、同条4項では、廃棄物、非食用のセルロース系原料、リグノセルロース原料から生産されるバイオ燃料を他の原料から作られるバイオ燃料の生産の2倍とするとしている。

(参考) 欧州委員会指令を含む政策の変遷

2003年
2003/30/EC: バイオ燃料市場の促進。2010年までに5.75%
2003/96/EC: 加盟国でのバイオ燃料の優遇税制措置の採用を認める
2003/17/EC: 燃料規格の規制。重量ベースでバイオディーゼルの混合を5%までに制限(これはバイオ燃料の利用目標の障害となるため、Biofuel Strategyでも指摘されているように、この燃料基準は2010年までに5.75%に改正される。)

2004年 
加盟国における2005年の導入目標の設定

2005年 
加盟国のバイオ燃料導入の達成状況の報告
Biomass Action Plan(バイオマス行動計画)の策定
欧州環境会議

2006年 
欧州委員会による評価・勧告の実施
EU Strategy for Biofuels:2006年末までに2003年の指針を見直し

2007年
1月 Strategic Energy Policy of Biofuels:バイオ燃料の利用割合の義務化提案
3月 バイオ燃料利用の義務化などのパッケージに合意(欧州理事会)

2005年時点の各加盟国の再生可能エネルギーのシェアとそれまでの利用促進努力を勘案した数値に5.5%を上乗せし、20%の目標を達成するために、さらに各加盟国のGDPに応じて追加配分する。

写真1 ドイツの風力発電の風車

5.バイオ燃料の生産と利用

 EUにおいては、バイオディーゼルの方が生産の取り組みが早く、生産量も多い。バイオディーゼルについては、2002年の1,139千トンから2006年には4,890千トン、バイオエタノールは、2004年の420千トンから2006年には1,245千トンと伸びている(2002年は1000トン未満)。
  バイオエタノールの国別生産状況は図1のとおり、過去3年間でドイツの伸びが著しく、最大の生産量を誇っている。次いで、スペイン、フランス、スウェーデンの順となっている。バイオディーゼルの生産についても、ドイツが2位のフランスの3倍強の生産を誇り、第一位となっている。
 エタノールの利用については、直接混合の割合が1/4と少なく、英国、スウェーデンなどの一部の国に限定的に利用されている状況にあり、多くはETBEの形で利用されている。
 この背景としては、EUの「燃料品質基準」(98/70/EC)において、エタノール混合ガソリンの「蒸気圧」(Vapour Pressure)のウェーバーの範囲(許容範囲)が限定的となっていることが挙げられる。UEPA(European Association of Ethanol Products)によれば、ガソホールの蒸気圧基準は60kPaに制限されているが、エタノールを混合すると蒸気圧が上昇するので、少なくとも8kPaのウェーバー(68kPaまで認める)が必要となる。現在は、英国とスウェーデンなどの冬季厳寒国のみに、ガソホールの蒸気圧が最大70kPaまで認められている(10kPaのウェーバー)ことから、これら国では直接混合が普及している。
 UEPAによれば、石油業界がガソリン自体の蒸気圧をブタンを除去するなどして52kPaに下げれば問題ないが、石油業界はその手間とコストをかけようとしないと非難を行っている。
 EBIO(European Biodiesel Fuel Association)によれば、加盟国の厳しい財政事情により、エタノール混合ガソリンの燃料税の減免措置から混合率の義務化にシフトする傾向が強まっている。ドイツ、フランス、オーストリア、ポルトガルでは10%混合に移行しているとのことであったが、ほとんどの国では、エタノールの混合率は5%にとどまっている。これは5%までは表示義務が生じないため、表示にかかるコストや労力が発生しないことが背景にある。
 バイオエタノールの原料については、UEPAの2005年のデータによれば、でん粉(作物)から46%、てん菜・糖みつから36%、ワインアルコール(介入在庫)から15%6、その他(果実類)が3%となっている。
 欧州委員会の説明によれば、バイオエタノール生産向穀物の2007/08年の生産量は、450万トン(前年は350万トン)でEUの穀物生産量のわずか1.7%にとどまっている。その内訳は、小麦200万トン、大麦130万トン、その他(トウモロコシ、ライ麦、てん菜は統計なし。)となっている。

ワインの消費は全体として増えているが、高級品の消費が伸びる一方、廉価なテーブルワインの消費は低迷していることが背景にある。聞き取りによると、テーブルワインの生産地域はフランスのモンペリエを中心としたエリアであり、特にラングドクレシオン地域で特に余剰が激しい。ワインからのエタノール生産はいったん脱水工場に渡されてから、エタノール蒸留工場に渡されている。

図1 各加盟国におけるバイオエタノールの生産の推移
資料:欧州委員会

図2 加盟国(上位10ヵ国)におけるバイオディーゼルの生産の推移
資料:欧州委員会

図3 バイオエタノールの利用形態
資料:EBIO

図4 バイオエタノールの原料の種類
資料:UEPA

6.バイオディーゼルの原料の状況

 EUでは1990年代前半から菜種、ひまわりを休耕地で栽培してきており、主産地はフランス、ドイツ、英国である。バイオディーゼルの原料の9割以上が菜種であり、その他、ひまわり、パーム油が使われている。菜種油をディーゼル向けに450万トン利用しており(2006/07年)、生産された菜種油の2/3がバイオディーゼルの生産(750〜800万トン)に利用されている(2007/08年)。菜種種子の生産増にもかかわらず、EUは菜種種子と菜種油の純輸入地域(それぞれ、500万トン輸入)となると欧州委員会は予測している。ウクライナ、ロシアからの菜種の輸入は増加し、新規加盟国(ブルガリア、ルーマニア、ポーランド)でも油糧種子生産のポテンシャルがある。
  EU油脂・油糧粕協会(FEDIOL)によれば、植物油の輸入により、バイオディーゼル生産後に残る粕は飼料として利用されるので、飼料需給の緩和が期待される。今後は菜種油のシェアは減少し、輸入大豆油が増える見込みである。
 また、パーム油については、500万トンを輸入(2006年)しているが、2020年にはさらに50〜100万トンの需要拡大しか見込まれないであろう。需要の500万トンのうち、100万トンは発電用(パーム油を燃やす)であるが、現在の高価格が続けば、需要が縮小し、2007年は30万トン、2008年は需要がゼロとなる見通しである。残りの400万トンのうち、食用(マーガリン、ビスケットなど)が70%程度で安価な食用油として利用され、30%程度が工業用、3.5%がバイオディーゼル用(17.5万トン)となっている。
 世界の植物油価格については、中長期的には現状価格水準が維持され、2008年の価格はパーム油を除き上昇する。パーム油の価格が落ち着く要因として、アジアでのパーム油と大豆油の需要が拡大するが、ブラジルには大豆油の生産余力があり、パーム油の生産も拡大することが見込まれているからである。

7.バイオディーゼルをめぐる厳しい情勢〜混合率と貿易問題〜

 まず、「混合率の上限問題」がある。現在のディーゼルの規格(EN590)は、バイオディーゼルの5%混合までしか認めていないため、10%まで混合率を引き上げる方向で検討が進められているが時間がかかっている。バイオ燃料関連団体は混合については30%まで問題なく、フランスでの聞き取りによれば50%混合でも問題ないとする意見もあった。
  さらに「休耕義務の暫定的な廃止」は、農家は自由に食用作物またはエネルギー作物を作付することができるが、エネルギー作物の生産確保のためには、価格の引き上げ、すなわち補助金が必要である(EBB)。
 現在、関係者の間で大きな問題となっているのは、「B99(B100に化石系燃料を1%以下混合した燃料)」の問題である。米国では、2004年からバイオディーゼル製造者に対して、バイオ燃料に少しでも化石系燃料が含まれていれば優遇措置(1ドル/ガロンの減免)の対象とした。現在、この制度を利用してEU市場に無税で輸出され、EU域内でもバイオ燃料として優遇措置が適用されている。ある情報筋によれば、2007年1〜11月の間に100万トンを超えるB99がEUに輸出されていると推測している(前年同期には、75,000トン〜85,000トン)。
 これに対して、EBBとしては、本件はまずはEU内で法的見地から対応を検討すると述べている。他方、「バイオディーゼル」の輸入量を正確に把握するため、バイオディーゼルの新たなタリフライン(HS3824.9091)が設けられる方向で検討が進んでおり、またWCO(世界税関機構)ではバイオディーゼルの規格の検討が行われている。
 「Splash and Dash」という貿易問題もクローズアップされている。これは、アルゼンチン産の大豆油やマレーシア産のパーム油を米国が輸入して、これを鉱物油に混ぜてたものがEUに輸出されているというものである。また、「エタノール調製品」の輸入急増問題もクローズアップされている。バイオエタノールは関税分類上、第22類の下で輸入されている7が、ブラジル、パキスタン、ウクライナ等からエタノールを輸入し、他の化学品を混合して、第38類の各種の化学工業生産品として無税で輸入されている。

燃料用エタノールの少なくとも13%(約17億リットル)が輸入(2006年)。スウェーデンと英国が主な輸入国。スウェーデンは需要の3/4がブラジルからの輸入。輸入関税は undernatured(220710)が、 19.2ユーロ/hl、denatured(220710):は10.2ユーロ/hl。


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