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第25回国際甘味料シンポジウム概要

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最終更新日:2010年3月6日



[2008年12月]

【調査・報告】
 
調査情報部情報課課長
大泉 和夫
調査課課長代理
(現鹿児島事務所所長代理)
天野 寿朗

 平成20年8月3〜7日、米国ハワイ州において、米国砂糖連盟(American Sugar Alliance:ASA)の主催による第25回国際甘味料シンポジウムが開催された。生産者、製糖メーカー、精製糖メーカー、甘味料ユーザー、これらの関係団体、砂糖関係議員、調査会社、学識者、行政、マスコミなど、米国、日本の他、メキシコ、豪州、フィリピン、ヨーロッパ各国から約200名が参加する中、砂糖を取り巻くさまざまな課題について、関係者によるプレゼンテーション・討論が行われたので、その概要について紹介する。

シンポジウムの模様

1.米国2008年農業法について

(1) 砂糖関連政策
  米国の2008年農業法(2008年食料・保全・エネルギー法:The Food,Conservation,And Energy Act Of 2008、2008年6月18日成立)における砂糖関連政策は、従来の基本的な仕組み、すなわち、①ローンプログラムによる価格支持・融資、②販売割当による生産・流通管理、③関税割当による輸入管理、が引き継がれるとともに、新たに、④砂糖・エタノールプログラム―が導入されることになった。また、①ではローンレートの引き上げ、②では砂糖消費量の約85%を国内産糖で調達、③では輸入管理の強化―など保護主義的性格がますます強まったと言える(「米国新農業法における砂糖関連政策について」(砂糖類情報2008年7月号、/world/report_d/report_d0807b.htm)参照)。
  予算については、17%のみが直接的な農業補助に、残る83%は栄養供給の事業、国土保全などの非直接的農業補助に割り当てられることになった。非直接的農業補助は、結果的に農業振興に貢献することになるが、都市部議員の理解を得て法案を議会で通過させるために必要な方策であった。4年後の次期農業法に関する議論においては、非直接的農業補助の分野、特に、環境保全に関する比重がさらに高まることが予想される。
  シンポジウムでの討論では、米国の次期政権について、「農務長官に誰が就任しても農業政策に大きな差異はないが、環境保護庁長官に誰が就任するかに注目すべき」との意見が出されていた。

(2) 2008年農業法に対する評価
  米国砂糖産業は、2008年農業法を歓迎している。砂糖は、米国では重要な品目と位置付けられていること、上・下両院の砂糖関係議員の努力やASAによるロビー活動の結果などから、砂糖産業のすべての要望が通り、農産物全品目の中で最も恵まれた結果になった。
  砂糖・エタノールプログラムは、米国砂糖産業から、砂糖の輸入増加による供給過剰分を解消する有効な手段であると期待されているが、原油やとうもろこしの価格高騰など深刻な状況下での導入となり、タイミングがよかったと言える。
  米国内では、2008年農業法において砂糖産業は「明らかな勝者」と見なされており、また、生産者にとっては、とうもろこしや大豆などの作物の価格は上がったが、てん菜・さとうきびの価格は上がらず、コストだけ上昇という状況が続く中、2008年農業法は「希望の光」との見方がなされている。

(3) 砂糖・エタノールプログラム
  2008年農業法における砂糖関連政策の目玉として導入されたのが砂糖・エタノールプログラムである。
  基本的な仕組みは、国内需要を超える砂糖の輸入が生じた場合、余剰輸入相当量の国内産糖をエタノール生産に回すというものである。
  プログラムの詳細な規定はまだ決まっていないが、米国農務省(USDA)による実施方法は次のとおり。

USDAは、毎年9〜10月に輸入数量のうち余剰数量を決定する。
余剰数量分について、製糖工場の売渡価格とエタノール工場の買入価格の入札を実施する。
製糖工場の最低売渡価格とエタノール工場の最高買入価格が落札価格として決定される。
余剰数量全量が落札されなかった場合、残量について再度入札を実施する。
製糖工場とエタノール工場とで取引が行われる。
USDAは、取引が規定どおり遂行されたことを確認した上で、その差額を補てんする。

(4) プログラムはメキシコからの砂糖の輸入急増を想定
  2008年1月から実施の北米自由貿易協定(NAFTA)による貿易自由化で、メキシコから米国への無税・無枠の砂糖の輸入急増が懸念された。
  米国砂糖産業が想定した悪循環のシナリオは、次のとおり(図1)。

図1 想定された悪循環のシナリオ
米国からメキシコに異性化糖が輸出される。
メキシコ国内の飲料向け砂糖が米国からの輸入異性化糖に置き換わる。
メキシコで余剰砂糖が発生し、それが米国に流れ込む。
メキシコから大量に砂糖が輸入されたら、米国は余剰砂糖をダンピングして、メキシコに押し返す。
メキシコもダンピングして米国に押し返す。

 その後プログラムが導入され、米国砂糖産業は、貿易自由化でメキシコからの砂糖の輸入が大幅に増加しても、プログラムにより砂糖の供給過剰分をエタノール工場が吸収し、国内生産量を減少させないので、ダメージを回避できると期待している。

(5) プログラムに対する懐疑的な見方も
  一方、プログラムの実効性には懐疑的な見方もある。
  エタノール工場では、エタノールの製造工程中に砂糖を投入することになるが、このことが、エタノール製造の副産物(DDGS:Distiller’Dried Grains with Solubles,とうもこしの蒸留かす)の品質にどう影響を与えるか不透明である。砂糖投入により、収益の25%を占めると言われているDDGSの品質が左右されるとなれば、エタノール工場は、砂糖投入にちゅうちょするだろう。また、砂糖投入のための新たな設備投資が必要になる。さらに、とうもろこしに比べ原料高になり、生産コストは上昇することになる。
  財政的には、製糖工場の最低売渡価格とエタノール工場の最高買入価格の差が大きく開けば、USDAによる補てん額が大きくなり、財政負担が増大する可能性がある。
  プログラムの詳細な規定の整備の他に、DDGSへの影響などプログラムの実施に当たってはさまざまな課題を解決する必要がある。

2.米国の砂糖需給

(1) NAFTAによる大きな影響は、今のところ見られず 
  次の3つの理由から、米国の砂糖需給はひっ迫しており、当面、供給過剰になることはないと見られている(図2)。

出典:USDA(ERS)Sugar and Sweeteners Outlook,May27,2008
図2 米国の砂糖の生産量・輸入量・消費量の動向

ア.砂糖以外の甘味料から砂糖へのシフト
  とうもろこし価格の高騰により、異性化糖の価格が上昇し(図3)、米国内およびメキシコの一部では異性化糖よりも砂糖の方が価格が安くなるという現象が生じた。このため、異性化糖を使っていた一部のユーザーが砂糖に切り替えるという現象も見られた。
  また、「砂糖は、砂糖以外の甘味料と異なり、自然食品である」との宣伝に消費者が反応し始めたことが要因のひとつとなって、砂糖の消費量が拡大した。

出典:USDA(ERS)Sugar and Sweeteners Outlook,May27,2008, Sugar and Sweeteners Yearbook
注:価格は42%ものの価格
図3 異性化糖の消費量・価格の動向

イ.甘味資源作物の生産量減少
  米国内で甘味資源作物の生産量が減少したことに伴い、砂糖の生産量も減少している。
  ミネソタ州などでは、てん菜からとうもろこしや小麦などへの転換、ルイジアナ州では、さとうきびから大豆への転換があったことにより、甘味資源作物の生産が減少した。
  なお、フロリダ州では、環境保護団体がさとうきび生産について、環境に悪影響を与える(農地区画が湿地帯の自然な水の流れを妨げる、化学肥料の投入が水質を悪化させるなど)と批判したことを受けて、USシュガー社は、もともと厳しい経営に陥っていたこともあり、ほ場・製糖設備をフロリダ州政府に売却、今後6年間かけて生産規模を縮小し、その後廃業するという計画を発表した。

ウ.メキシコから米国への砂糖輸出拡大の可能性は低い
  メキシコから米国への砂糖輸出は、①メキシコ国内では異性化糖の価格高により砂糖に切り替わったケースも見られ、砂糖が米国に流れてこないこと、②逆に、砂糖価格が米国より高いメキシコへの輸出が増加している(可能性が高い)こと、③輸送燃料価格が高騰していること―などの理由で、拡大の可能性は低い。
  したがって、前述の砂糖・エタノールプログラムは、これらの理由により、輸入糖による余剰が発生せず、輸入糖が米国内の砂糖需給に悪影響を与える可能性は低いことから、当分実施されるとは考えにくい(図4)。

出典:USDA(ERS)Sugar and Sweeteners Outlook,May27,2008, Sugar and Sweeteners Yearbook
注:2007/08年度推定値
図4 米国の砂糖の需給状況

(2) 市場統合により、米・メキシコ双方の砂糖市場にメリットを
  NAFTAによる市場統合により、メキシコから米国への砂糖流入が危惧されたが、反対に、米国からメキシコへの砂糖輸出という予測しなかった事態が生じている。
  前述のとおり、米国より砂糖価格が高いメキシコへの輸出増加のチャンスが生じていることなど、米国砂糖産業にとってメキシコ市場は魅力的となっている。今後、メキシコ国内において、非効率な国営製糖工場の民営化が進み、また、製糖工場の統廃合が推し進められれば、市場原理によって米国とメキシコの統一市場の形成が進むと考えられるからである。
  シンポジウムでは、アメリカン・シュガー・リファイニング社の副会長、ドン・カーソン氏から、「NAFTAによって関税は撤廃されたが、さらに両国内における砂糖政策の相違を統一し、真の統一市場とすべきである」という意見が出されており、ここに米国砂糖産業の“攻め”の姿勢がうかがえる。
  一方、こうした意見はあるものの、今後、メキシコからの砂糖流入の可能性がまったくなくなるものではないので、依然として米国砂糖産業にとってメキシコ産砂糖は潜在的に脅威である。

3.ドーハラウンド決裂に対する関係者の見方

 今回のシンポジウムでは、ドーハラウンドの7月末の決裂直後の開催ということで、各国の関係者から、決裂に対する率直なコメントが述べられた。

(1) 途上国・先進国間の力関係に変化
  フィリピン砂糖連盟の代表、ハリー・コップ氏は、交渉決裂の要因として、①途上国側が、先進国側の農業分野における「大幅譲歩」について、先進国側が期待するほど評価しなかったこと、これは、中国、インド、ブラジルなどの途上国側のリーダー国は、貿易の主体が今や工業製品であり、農業分野で妥協しても工業分野での利益は少ないと見たことによる、②2001年以降、米国と日本の貿易額が減少する中、中国、インド、ブラジルなどの途上国間の貿易額が大きく拡大するなど、世界貿易に占める途上国のシェアが急上昇していること―を挙げた。
  また、アグラ・インフォーマ社(米国の調査会社)のエコノミスト、ジェイムズ・ワイズマイヤー氏は、米国のリーダーシップが低下したことが交渉決裂の要因の一つであると述べている。
  従来、米国は、グローバリゼーションによる自由貿易を推進する立場の急先鋒にあった。このため、米国は、WTO交渉においては他国・他地域に対して、輸入障壁のハードルを下げ、市場開放を強く求め続けてきた。
  しかし、ワイズマイヤー氏は、リーダーシップの低下の背景として、米国自身がグローバリゼーションによる自由貿易に対応する体制づくりを忘れていたことに気付き、米国内に、自由貿易に対する疑問が芽生え、否定的な見方をする人が増えてきたことを示した。そのため、米国が反省すべきこととして、①他国の事情を理解すること、②行政、議会が農業の現場を知ること―を挙げた。 

(2) 途上国にとって、自由貿易はフード・セキュリティへの脅威
  前述のコップ氏や今回のシンポジウムの主催者であるASAのエコノミスト、ジャック・ロニー氏は、主要農産物価格の高騰に端を発した途上国におけるフード・セキュリティへの関心の高まりが自由貿易の促進に歯止めをかける形になったこと、これが交渉決裂の背景の一つであると述べている。この場合のフード・セキュリティは、「いざというときのための国内生産による食料確保」ではなく、「いま現在の、国内生産か輸入かを問わない食料の確保」という意味である。
  最近、農産物価格の高騰の中、食料輸出国で、自国内への供給を優先し、輸出を制限するという動きが見られた。食料難に直面する食料輸入国である途上国は、こうした動きに反発するとともに、フード・セキュリティこそ重要であり、自由貿易がフード・セキュリティを脅かすことに気付いた、これが交渉決裂の背景の一つであるとの見方である。

(3) 先進国間でも異なる主張
  豪州の生産者代表、アルフ・クリスタウド氏は、自由貿易を推進し、WTOを重視する立場で意見を述べている。WTO協定締結に失敗した場合、全世界の不利益は甚大であり、特に途上国が大きな不利益を被ると見ている。また、長期的な貿易問題の解決には、FTAではなくWTOによる全世界的な協定締結が不可欠であり、より開かれた貿易環境の形成によりすべての国々が利益を享受すると主張している。
  英国の製糖メーカー、ブリティッシュ・シュガー社の相談役、サイモン・ハリス氏は、WTO交渉はいずれまた再開されるので、予断を許さない状況であると述べている。特に、世界の砂糖の4分の3を供給している途上国の関税削減率は大幅に軽減されるのに対し、相当な関税削減を求められる先進国の砂糖産業は不利な立場に追い込まれるであろうと予測している。
  また、表面的にはいかにもWTOによる自由貿易協定を遵守するかのような形をとってはいるものの、実質的には隠れた補助金とも言える、別の形での新たな保護政策として、豪州の「砂糖産業再編プログラム」(注1)やブラジルの「農業クレジット事業」(注2)を挙げ、これらに対する懸念を述べている。

(4) 米国砂糖業界は交渉決裂を歓迎
  米国砂糖産業は、今回の決裂に対して歓迎の意を表している。もし今回の交渉がまとまり協定締結となれば、関税割当数量の削減など米国内の砂糖の保護レベルを下げることにつながり、失うものが多いことが予想されたからである。米国砂糖産業にとっては、国内補助レベルの低下を回避し、これまでの政策が持続することこそ好都合である。

(注1)豪州の「砂糖産業再編プログラム」
砂糖価格低迷、自然災害による被害などの対策として、さとうきび生産者に対する所得補償、さとうきびから他作物への転換、工場再編など施設整備に対する補助金。予算規模は2004年から2009年までの5年間で440豪ドル(約400億円)。

(注2)ブラジルの「農業クレジット事業」
①営農融資:農畜産物の生産や加工にかかる経費を対象とした融資、②販売融資:農畜産物の最低生産者価格を基礎として農畜産物を担保に行われる融資、③施設機械の導入、農場整備、協同組合の組織改革等にかかる経費を対象とした融資―で、いずれも貸出金利は、普通銀行より大幅に低い。これらの事業の融資総額は650億レアル(4兆4,800億円)

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