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米国で砂糖消費が拡大〜「Natural」をキーワードに展開する消費拡大活動〜

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最終更新日:2010年3月6日

砂糖類情報ホームページ


[2009年7月]

野菜業務部 予約業務課 課長(前情報課長) 大泉 和夫
鹿児島事務所 所長代理(前調査課課長代理) 天野 寿朗

1.米国における砂糖の消費回復の背景
2.「Natural」をキーワードとした消費拡大の取り組み
3.砂糖協会の関心事項
4.砂糖協会からの提案


 

 米国の甘味資源作物生産者団体、製糖メーカー、精製糖メーカーを会員とする砂糖協会(The Sugar Association)は、砂糖の消費拡大活動を積極的に行っている。米国砂糖連盟主催の第25回国際甘味料シンポジウムに参加した際に、同協会の代表、アンドリュー・ブリスコー氏に話を伺うとともに、その後収集した関係情報を基に米国における砂糖の消費回復の背景、同協会による砂糖の消費拡大活動について取りまとめた。わが国の砂糖の消費拡大にも参考になると思われるので、その内容を紹介する。

1.米国における砂糖の消費回復の背景

 米国の甘味料の消費量の推移を見ると、一時期は砂糖の消費量が減少していた時期もあったが、ここ数年間の消費量は、砂糖は増加傾向にあり、一方、異性化糖は減少傾向にあるということが言える(図)。
 米国における砂糖の消費回復の背景として、ブリスコー氏は、次のような要因を挙げた。

(1)消費者の自然志向の高まり

 昨今の米国内の消費者には、健康意識の高まりに伴い、食品に対して「自然(Natural)」を求める傾向が芽生えている。甘味料においても、代替甘味料から砂糖への回帰が行われた。

(2)とうもろこし価格、異性化糖価格の上昇

 飲料を中心に広く用いられている異性化糖の価格が、2008年半ばに、とうもろこし価格の高騰に伴い上昇した。この結果、異性化糖の価格優位性が低下し、米国内では100以上のユーザーが異性化糖から砂糖へ切り替えた。

(3)アトキンス・ダイエットの衰退

 炭水化物の摂取を制限するという、いわゆる「アトキンス・ダイエット」と呼ばれるダイエット法が米国内で一時期ブームになった。砂糖も炭水化物の一種であることから、摂取を抑制すべき対象とされ、一時的に砂糖の消費減少にも影響したと考えられるが、やがてこのブームも下火となった。
資料:砂糖USDA(ERS),Sugar and Sweeteners Outlook,February27,2009
異性化糖USDA(ERS),Sugar and Sweeteners Yearbook,September 3,2008
図 米国の砂糖・異性化糖消費量推移

2.「Natural」をキーワードとした消費拡大の取り組み

 米国における砂糖の消費回復の背景には、砂糖協会が実施した消費拡大活動の効果もある(砂糖協会による消費拡大活動の効果測定については、砂糖類情報2008年2月号でその詳細を紹介しているので参考にされたい)。
 砂糖協会による具体的な取り組みは次のとおりである。

(1)さまざまな宣伝活動

 砂糖の消費拡大のために、さまざまな手段を用いた積極的なイメージ戦略などの宣伝活動を行っている。
(1) ソフトなイメージを前面に出し、消費者の気持ちに訴える。祖母が孫にケーキを焼く様子を描いた様子をテレビ広告などで使用することにより、家族的なイメージを打ち出した。
(2) 「1さじ15キロカロリー」のキャッチフレーズを広めるため、ステッカーを作成して配布(「1さじ15キロカロリー」の販売促進活動を行うまで、米国では多くの人がその5倍ぐらいのカロリーがあると信じていた)。
(3) 砂糖協会のホームページで、砂糖を使用した製品の販売促進を目的としたオンラインショッピングを運営。
(4) 砂糖協会スタッフや外部の科学者、栄養士などが作成した普及啓発の資料を同協会のホームページで提供。

(2)砂糖批判に対する反撃

 肥満の原因は砂糖であるという、いわゆる砂糖悪玉論に対しては、砂糖と肥満とは直接の相関関係はなく、あくまでもトータルのカロリー摂取量が身体に影響するという論調を展開しつつ、科学的根拠に基づいた反論を行っている。
 例えば、砂糖が肥満を引き起こすという主張があたかも定説であるかのように受け取られ、「肥満を避ける」という目的で、代替甘味料が使用されることが多いが、砂糖協会は、代替甘味料を使い、「Sugar Free」とうたった飲料などを摂取することで、むしろ、摂取カロリーが高まると反論している。その裏付けとして、テキサス大学サンアントニオ健康科学センターの「低カロリー甘味料を使用した飲料の摂取が、逆に肥満を引き起こす可能性を高めている」という科学論文(米国糖尿病協会第65回科学会議における報告)を引用している。
 また、前述のアトキンス・ダイエットについても、砂糖協会は、「米国内では、砂糖の一人当たりの消費は減少傾向であるにもかかわらず、肥満がまん延していることから、砂糖の摂取と肥満の相関関係は結びつかない」と主張し続けた。アトキンス・ダイエットのブームが下火となったのも、このような働きかけによる効果があったと見ている。

(3)砂糖に関する表示の是正

 米国では、清涼飲料のラベルには、人工甘味料を含む砂糖以外の甘味料も「Sugars」と表示されているので、砂糖協会は、食品医薬局(FDA)に対して個別の甘味料名を記載することなどによる正確な表示を要求している。また、同協会は「○○%、砂糖が少ない」などの表現もやめるよう要求している。そのほか、代替甘味料であるにもかかわらず「砂糖から作られている」という宣伝に対する訴訟も行っている。
 さらに、精製糖の表示は人工的なイメージを連想させる「Refined Sugar」ではなく、自然なイメージを醸し出す「White Sugar」に改めたほうがいいと主張している。

(4)「砂糖はNatural」をアピール

 米国では、消費者の健康意識の高まりに伴い、食品に対して自然志向が強くなっており、多くの食品メーカーが自然食品の販売を促進している。また、「Natural」をうたった商品が高値で売れる傾向があり、「Natural」を前面に出した商品群が食品産業における成長分野になっている。
 砂糖協会は、砂糖は自然食品であるということを強調するため、「Natural」をキーワードに消費者・ユーザーに砂糖の利点をアピールしている。
 また、FDAに対し「Natural」という言葉の定義(合成されていない、製造プロセスが最小限など)を明確にした上で、甘味料では、砂糖だけが代替甘味料とは異なり、「Natural」であることを認めてもらうよう働きかけている。

砂糖はスプーン1さじ15キロカロリーをアピールするためのステッカー

3.砂糖協会の関心事項

 このように、「Natural」をキーワードとして消費拡大活動を展開する砂糖協会であるが、米国内では異性化糖をはじめとする砂糖以外の甘味料業界も多額の経費をかけて積極的に販売促進活動を行っている。
 例えば、米国の異性化糖業界は「コーンシロップはNatural Food」との宣伝を1年半かけて行っており、2〜3千万ドルの費用を投入している。砂糖協会では、砂糖消費に影響する可能性もあるこうした活動を注視している。
 また、スプレンダ(代替甘味料)業界も、砂糖の消費拡大に対抗するため、この1年間に約3千万ドルの費用を投じた販売促進活動を行っている。
 砂糖協会では、このような状況に対処するため、会員の砂糖業界に対して予算(1トン当たり2ドルの賦課金で、年間約2千万ドルの宣伝活動費)を確保するよう働きかけている。

異性化糖業界による普及啓発ステッカー

4.砂糖協会からの提案

 以上のように、砂糖協会は、戦略的に普及啓発活動を展開し、科学的根拠を用いて砂糖の良さをアピールしながら、米国での消費拡大を図っている。この実績を背景に、ブリスコー氏から、今後の日本における砂糖の消費拡大に向けてのコメントとして、次のような提案をいただいた。

(1)プロモーション活動後は効果測定を

 砂糖を他の甘味料と差別化し、「Natural」で低カロリー(「1さじ15キロカロリー」)を徹底して啓発すること。こうした販売促進活動を行う際には、消費者を対象とした意識調査により必ず効果測定を行うことが重要である。

(2)科学的根拠をもとにした普及啓発

 砂糖の消費拡大活動を行うに当たっては、砂糖が肥満など健康に悪影響を及ぼすと言わせない姿勢、また、甘味料を使用した商品の表示の明確さを追求する、といったことが重要である。砂糖協会では科学的根拠をもとにこれらの取り組みを進めているので、反論を受けることがない。日本においてもこれらの科学的根拠をもとに消費拡大を図るべきである。

(3)生産者などからの資金拠出による消費拡大活動

 砂糖協会は、生産者や製糖メーカーなどから拠出された資金を使っており、常に成果を求められるため、消費拡大活動に必死で取り組まざるを得ない。これは、より実効性のある活動につながり、結果も好ましいものになる。
食生活における砂糖の位置付け・評価は、それぞれの国の歴史的背景などもあり、必ずしも一様ではないことから、砂糖の消費拡大活動に関しても画一的な手法を見出すことは容易なことではない。
 しかし、砂糖協会が米国内で行っているさまざまな活動が、結果的に消費拡大に寄与していることを考えると、こうした提案は我が国の砂糖の消費拡大のためには、参考になるものと思われる。
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