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地域だより[2001年7月]

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最終更新日:2010年3月6日

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地域だより
[2001年7月]



札幌事務所



食べられる芸術品 〜洋菓子作品コンテスト〜

 5月31日 (木) から6月2日 (土) まで、札幌市白石区のアクセスサッポロにおいて、「北海道洋菓子作品コンテスト大会」 (社団法人北海道洋菓子協会主催) が開催された。同大会は、洋菓子職人の技術向上のため毎年行なわれており、今年で20年以上にも及んでいる。また、洋菓子職人にとって同大会で受賞することは名誉なことはもちろん、店の宣伝にもなるとあって、その技術は年々高度化してきている。今回は、道内の洋菓子職人が腕を振るった作品140点ほどが出品され、マジパン仕上げの部、小型工芸菓子の部、小型アントルメ (冷菓) の部、小物ケーキの部と4部門に分かれ競われた。
 会場には、来場者のほか、出品した関係者が賞に入った自分の作品に歓声を上げ、カメラに納める姿も見られた。
 マジパン仕上げの部では、マジパン細工で花や時計、風車などメルヘンチックなものから芸術的なものまで幅広い作品が本物そっくりに再現されており、来場者の目を引いていた。
 マジパンとは、アーモンドの粉に粉糖と卵を混ぜ合わせ練ったもので、これをまるめて固め、上面を削って土台を作り、さらにペースト状のマジパンに色を付け様々な飾りを作り土台に乗せて、マジパンケーキとなる。
 札幌菓子協会の中川常任理事は、甘味離れが騒がれているが、以前に比べれば甘味は少々抑えられてきているとはいえ、菓子業界においては砂糖はなくてはならない材料であると言い切っていたのが、印象的であった。

会場風景 マジパン仕上げ部門の受賞作品
マジパン仕上げ部門の受賞作品

「第17回北海道産品取引商談会」 が開催
〜てん菜糖の出品は初めて〜

 札幌市中央区の札幌パークホテルのパークプラザにおいて、6月7日 (木) と8日 (金) の2日間にわたり、道内外に向け北海道産品の販路拡大を図ることを目的とした 「第17回北海道産品取引商談会」 (北海道、札幌市、社団法人北海道貿易物産振興会主催) が開催され、社団法人北海道てん菜協会により (以下てん菜協会) ここにてん菜糖が初めて出品された。
 会場は、道央、道南、道東、道北と大きく4つに分けられ、農畜産物加工を始め水産物加工、菓子類製造等の道内企業209社のブースが会場狭しと並べられ、約7,000点の道産品が出品された。道内企業は、道内外の百貨店、スーパー、問屋、外食、ホテル等約300社の仕入担当者に対し試食品の提供をしながら、商品の紹介や説明を熱心に行って売り込みを図っていた。
 てん菜協会は、北海道農畜産物需要拡大推進本部 (事務局:北海道農業協同組合中央会) の広報宣伝ブースにおいて、てん菜糖の宣伝を行った。
 てん菜糖は、今回、初めての出品であり、てん菜糖企業3社の1kg袋のビート上白糖及びビートグラニュー糖とともに、推進本部と事業団等のパンフが展示された。
 同協会の宮本事務局長によると、今回この商談会に初めて参加したのは、てん菜糖の需要拡大を図るためであり、今後は、こうした大きなイベントや道内の地元企業を対象としたイベントに積極的に参加し、てん菜及びてん菜糖について理解してもらいたいとのことであった。




菓子処・北陸 〜福井県〜 鯖江市 「菜花糖 (さいかとう)」

 北陸地方には、江戸時代初期のころから、金沢を中心に多くの菓子文化が発達した。福井県も、当時から文化水準は高かったが、鯖江藩主間部詮勝 (まなべあきかつ) が幕府老中となってからは、江戸との往き来がさらに活発になり、種々の文化が栄えると同時に多くの銘菓が生み出された。今回紹介する菜花糖はその中の1つであり、鯖江市の伝統菓子である。同市は、戦国時代は織田信長が朝倉攻めに使った北陸道と岐阜街道の交差する位置にある。
 菜花糖は、その形から、河原に一面に咲いている菜の花を模して作ったといわれ、江戸時代後期に入った文化文政時代、鯖江藩調進所 (ちょうしんじょ) であった大黒屋5代目が考案し、浄土真宗の門徒が家々に植えていた柚子を使って作ったのが始まりといわれている。
当時、この地域では果物といえば柿や柚子くらいしかなく、多くの家に柿や柚子の木があったと伝えられており、現在でも多くの家々には柚子の木があるという。当時の大黒屋は、鯖江から徳山村 (現在の福井、滋賀、岐阜の県境にあった) へ向かう岐阜街道道中にある誠照寺 (じょうしょうじ) の門前で商っていた。菜花糖は、当時としては贅 (ぜい) の限りを尽した菓子で、藩主間部氏をはじめとする上流階級の茶の湯の席等に用いられていた。
 菜花糖の原材料は、上白糖、柚子、もち米、クチナシ色素である。もち米を芯にして、まわりに柚子を使った蜜を重ね絡めて作られ、できあがりの大きさは、金平糖ほどになる。
 菜花糖を作る手順は、まず蜜を仕込む工程として柚子を漬け込む。原料となる柚子は、鯖江近郊で収穫されたものだけを使っている。洗浄した柚子の皮をむいて下ろし金ですり下ろし、上白糖と混ぜて瓶 (かめ) に満たして、柚子の皮が持つ渋みやえぐみを丸くするために3年間寝かせる。
 蜜を仕込む上で最も難しい点は、品質が一定していない柚子を3年間もの長い間寝かせるため、細心の注意を払わなければムラができてしまう恐れがあるが、漬け込んだ蜜の状態は3年後になって初めて分かり、漬け込みに失敗した蜜は、古くなった固形ワックスのようになってしまう。
 仕込みにあたって使用する柚子は近郊の家々に直接出向いて相対で調達し、1年に150〜200kgを用意する。
 菜花糖の芯となるもち米は天日干ししたものを使い、1度に15kgをもみ殻のまま加工する。もち米をポン菓子の要領ではじかせて花びらの様な形にするが、このままではもみ殻が着いたままなので、手で1粒1粒もみ殻を取り除いて使用する。
 次に、まわりに絡める蜜を練る作業に入る。3年間寝かせた蜜を瓶から取り出し、クチナシで黄色く色目を付けて105度で8時間練る。蜜をもち米の芯と釜の中で練り絡ませたものに上白糖をまぶして、45度の乾燥釜で10日間乾燥させてでき上がりとなるが、工程は全て手作業で、最後の乾燥が終わるまで8時間交代で続ける大変な作業である。
 現在、大黒屋の9代目になる小石川氏によると、「以前は、鯖江の和菓子屋さん何軒かが菜花糖を作っていたが、手間暇が掛かる割にそれほど高い値段で売ることはできず、利益が出ないため、だんだんと減っていき、現在では当店だけとなってしまった」 とのことである。
 原材料の柚子は、皮だけをむき中の部分はきれいに残るため、店頭にて希望者に配布している。初冬を迎えるころ、皮を取り去り白い部分だけになった柚子が並ぶのは、町内の風物となっている。
 小石川氏は、「昔、鯖江にこんな菓子があったという事が伝えられれば、それで良いと思っている」 と鯖江市の伝統菓子を守って行く思いを語っていた。
(注) 調進:藩の注文品を整えて納めること、それを請け負うところ。

上手にできた
(1) 上手にできた
漬込みに失敗
(2) 漬込みに失敗
乾燥釜
(3) 乾燥釜
完成品
(4) 完成品

東海農政局による消費者の部屋
〜「甘味」 を正しく理解していますか? 〜

 5月31日(木)から6月22日(金)まで、名古屋市にある東海農政局では 「天然から作られた甘味、砂糖と異性化糖の紹介」 をテーマに、甘味を正しく理解してもらうため、現物の展示とサンプル製品の配布を行った。
 東海農政局と事業団の共催は今回で5回目を迎えた。砂糖・異性化糖製品、原料作物の模型、製品の種類・製造方法を図解したパネル等の展示を行ったほか、砂糖と異性化糖製品の身近な用途を実感してもらうために、季節柄話題となりやすい梅酒・梅シロップの作り方や飲み方の展示を始め、砂糖と異性化糖製品を利用したサンプル製品の配布を業界団体及び砂糖・異性化糖企業の協力により行った。
 例年は秋に開催していたため原料作物の実物展示ができたが、今年度は6月の開催となったので、初めて原料作物の模型展示を行った。
 来場者は会場に展示されているてん菜・さとうきびの模型を見て、あまりのリアルさに思わず手を出してしまうなど一様に驚くと共に、パネル、パンフレットから甘味の果たす多彩な役割を改めて認識しているようで、消費者の部屋の成果が十分に感じられた。




山陰の自然が育んだ、日本海の香りただよう銘菓

境港のカニ入り菓子
境港のカニ入り菓子
 山陰の自然が育んだ、日本海の香りただよう銘菓 漫画家水木しげる氏の出身地で有名な鳥取県西部の境港市は、西日本有数の漁業基地で、松葉ガニなど日本海の豊富な魚介類が水揚げされているが、この街には、エビ、カニなどの魚介類を用いたせんべいがあり、同県が認証した地域特産品 (「とっとりブランド認証食品」 (注)) として注目されている。
 この魚介類入りせんべいが同県の地域特産品として認証されたのは平成8年度であり、9年7〜9月に開催された 「山陰夢みなと博覧会 (190万人が参集)」 に出展されたところかなりの好評を得、その後、同県の農林水産祭等各種イベントにも出展され、観光客の話題になっている。
 このせんべいの原料は、小麦粉、鶏卵、魚介類のほかに約3割の砂糖が使用されており、特にグラニュー糖を用いた製品は、食感がよく、さっぱりとした甘みが好評である。また、エビやカニ入りせんべいには、免疫力強化、整腸補助、血糖値調節などの効果があるとされるキチンやキトサンが含まれている。

(注) 消費者の地域特産品に対する品質の関心が高まる中、地域特産品としての信頼できる表示の適正化を図るための 「地域特産品認証制度」 に基づいて、鳥取県が特産品として認証した食品。全国統一の認証マーク (Eマーク) が付されている。




第11回西日本食品総合機械展等の開催について

 製菓・製パン機械を始めとする食品機械から厨房機器までを集めた西日本地区最大級の食品関連機器の総合展 「第11回西日本食品総合機械・西日本厨房機器展」 が、6月6日 (水) から8日 (金) までの3日間、福岡市のマリンメッセ福岡において開催された (主催:日刊工業新聞社)。
 同展は平成2年に第1回目を開催して以来、数多くの後援・協賛団体の協力を得て発展、今回は第11回目にあたり、各業界から要望の強かった食品材料を一同に集めた 「西日本食品材料ソフト技術展」 も併せて行われ、21世紀の食環境の整備構築を目指す展示会として、138社・団体が参加し、入場者数は前回を上回る27,244名であった。
 今回の同展における特徴の1つは、昨年、消費者などの間で大きな問題となった加工食品の製造工程での異物混入問題である。会場に来ていた多くの人々も食品に対する安全性には関心が高く、食品の衛生・管理システムについては各社ともに、これまで以上に安全性や環境面に配慮し、消費者のニーズに対応した機械・機器を展示していたように思われた。また、特別セミナーでも食品の安全性や環境問題について、より詳細に専門的に行われていた。
 2つ目の特徴は、展示された機械・厨房機器が既存の業界向けだけを意識したものではなく、どちらかというと、高い付加価値を持ち実務的・機能的に造られており、新規開業・店舗拡大を目指す異業種に向けを意識した機械・機器が多かったように思われた。いずれにしても、近年の不況から、なかなか脱しきれない厳しい経済環境の中での出展だけに、各業界とも何とか閉塞感を打ち破ろうと、インパクトのある展示会となっていた。
 また、今回、初めて電力・ガス会社からも出展を行い、省エネ・高効率・安全・クリーンな食品工場・厨房環境の提案などもを行われた。
 なお、同展の併催事業としてイベント、セミナー、特別展示なども多く行われ、お菓子に関しては、(社) 福岡県洋菓子協会の主催で行われた洋菓子技術コンテスト・お菓子の実演・販売、九州銘菓の展示及びトーク・ショウなどが行われた。

会場風景 洋菓子技術コンテスト会場
会場 洋菓子技術コンテスト




さとうきび梢頭部収穫機の開発・実用化に向けて

 社団法人沖縄県糖業振興協会 (以下沖縄糖振協) は、現在さとうきび梢頭部収穫機 (ケーントップハーベスタ) の開発・実用化に向けた取り組みを行っている。
 近年さとうきび農業は、機械化の進展に伴ってハーベスタによる収穫割合が増加している。ハーベスタでの収穫は、収穫時に梢頭部や葉柄などのトラッシュを同時に除去しながら行われているが、これらの除去が充分ではなく、梢頭部などのトラッシュが多く含まれた状態で、さとうきび原料が甘しゃ糖工場に搬入されている。梢頭部は砂糖の結晶を妨げる要因になるなど甘しゃ糖工場の製糖工程や砂糖の歩留まり、品質等に大きく影響を及ぼすことから、梢頭部をほぼ完璧に除去できうる機械化システムの確立が課題となっている。
 このことを背景に、沖縄糖振協は平成12年度砂糖生産振興事業を活用し、沖縄県農林水産部の協力を得てケーントップハーベスタの開発に取り組んでいる。ケーントップハーベスタは、南大東島の畜産主体の複合経営農家が、梢頭部を牛の飼料として供給することも一目的として考案した梢頭部収穫機を原型にして、機械の構造や走行性、収穫作業効率性等に改良を加えて開発されたものである。新たに開発されたケーントップハーベスタの機体は全長が約9.7m、全幅2.5m、全高3.3mで、梢頭部の刈取り部、搬送部、裁断部及び収納部からなっており、エンジン出力は78馬力となっている。
 南大東島では今年3月に、このケーントップハーベスタの走行・収穫性能試験が繰り返し行われている。この試験において、ケーントップハーベスタは操作性が良く安定性、走行性に優れ、収穫性能も梢頭部収穫率がかなりの高率を示すなど好成績となっており、沖縄糖振協は開発当初の目標はほぼクリアできたものとしている。ケーントップハーベスタによる梢頭部収穫はさとうきびの収穫に先んじて行われ、機械がさとうきびの畝をまたいで走行し梢頭部のみを刈り取って裁断し、裁断された梢頭部は収納袋に収集される。その後に行われるハーベスタによるさとうきびの収穫は、大部分の梢頭部が除去された状態で行われ、これが甘しゃ糖工場へ搬入されることになる。
 沖縄糖振協は今後、さらに機械の作業性能や作業精度の向上のため開発を行っていきたいとしている。
 また、南大東島に比べて、ほ場が中・小規模の石垣島や宮古島など他の離島や本島に適合した、低価格で取得可能な小型や超小型のケーントップハーベスタの開発も検討したいとしている。低価格でのケーントップハーベスタの普及が可能となった場合、(1) 梢頭部が事前に除去されるため、小型ハーベスタや刈取り機などの機械収穫体系が進行してコスト低減が図れる (2) 工場での製糖歩留まりや品質の向上が期待される (3) 梢頭部を飼料として畜産農家に販売できるため、農家所得の増加が期待できる (4) 梢頭部を飼料として利用することにより、さとうきびほ場と採草地の競合が緩和されるなどの効果が期待されている。

走行・収穫性能試験
南大東島ケーントップハーベスタの走行・収穫性能試験
梢頭部を収穫したあとのさとうきび
ケーントップハーベスタで梢頭部を
収穫したあとのさとうきび
梢頭部が細かく裁断されてる様子
ケーントップハーベスタによって収穫された
梢頭部が細かく裁断されてる様子




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