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地域だより[2001年9月]

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最終更新日:2010年3月6日

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地域だより
[2001年9月]



東京事務所



日本におけるシュガークラフト界の現状について
〜 新たな体制作りへの取り組み 〜

 ここ最近、シュガークラフトという言葉をよく見聞きするようになってきた。しかし、このシュガークラフトのもっと詳しい内容や国内における取り組みについては、まだ知られていない部分が多いと思われる。
 そのような国内シュガークラフト界の事情等について、東京・四谷にある“ニコラス・ロッジ インターナショナル シュガーアートギャラリー ジャパン”代表の原嶋利江氏にお話を伺ったので紹介する。同ギャラリーは、1995年に、英国シュガークラフト界の第一人者であるニコラス・ロッジ氏によって開設され、本場英国式の専門的なシュガークラフト教室の運営や、世界各国で開催される展示会への参加等の活動を続けており、本校は米国ジョージア州アトランタにある。
 シュガークラフトとは、英国ヴィクトリア王朝時代に、フランスのクリームを主としたケーキデコレーション技術が海を越えて英国に渡り、砂糖を主としたケーキデコレーション技術として独自に発達した英国式お菓子作りの技術である。
 日本には25年程前に英国で勉強した料理研究家 (約5人) によって伝えられ、以後この方々が全国各地で教室等を開いたことによって、広く一般でも行われるようになってきた。その間、故ダイアナ妃のロイヤルウエディングの際やタレントの二谷友里恵さんと郷ひろみさんの挙式の際に花嫁がシュガークラフトによりウエディングケーキを作ったことがニュース等で報道され、これに携わる人口を格段に増やした。わが国のシュガークラフト人口の正確な数は分からないが、現在おおよそ1万人と言われている。
 日本におけるシュガークラフトは主に結婚直前の若い女性や主婦層によって現在行われている程度であり、国内の洋菓子職人たちがこれを行わない理由は大きく分けて2つあると言われている。1つは、日本の職人はフランスで食の勉強をするケースが圧倒的に多いため、英国式であるシュガークラフトは好まれないこと、もう1つはシュガークラフトによるケーキ作りは、フランス式と比較してその製作時間が何倍も掛かるためコスト高となり、量販することも困難で、経営が難しいことが挙げられている。
 さらに、一般の人々への普及活動がなかなか進まず、これを学ぼうとする人々が増えないことがある。この理由としては、業界全体での普及活動が必ずしも活発に行われず、結果として限られた範囲にしか広がらなかったためだと考えられている。
 このため、原嶋氏をはじめとして幾人かの人たちが、横断的繋がりを目的とする事務局作りに努力されているところであり、2年前から日本洋菓子協会主催の展示会に各教室を越えて作品を出展したり、東京の明治記念館を会場として開催されるシュガークラフトコンテストの全国大会に協力したり、常設で全国の作品を見学できる展示場の開設準備を進めたりと新たな取組みを徐々に始めている。これらを通じて多くの人にシュガークラフトの魅力を知ってもらい、製作活動にかかわりたいという人々や、結婚式や誕生日等の記念日にシュガークラフト商品を購入したいという層を開拓し、それに携わる菓子職人も増やしていきたいとのことであった。




さとうきび黒穂病の発生

黒穂病に罹ったさとうきび
黒穂病に罹ったさとうきび
 沖縄県のさとうきびに黒穂病が発生して、今後の被害状況や13年産さとうきび収穫量への悪影響が懸念されている。
 黒穂病は黒穂病菌の寄生によって起こり、茎の先端から80cmほどの黒色鞭状物 (穂のような形状) が出て、これが破れて中から多量の厚膜胞子 (黒穂病菌) が現れて風や雨によって飛散し、移動する。さとうきびの葉などに付着した厚膜胞子は風雨によつて地上や地下の芽に到達し、さとうきびの体内に侵入するものと考えられている。罹病したさとうきびは茎がススキ状になった後、8〜9月頃までに大部分が枯死する。発病時期が遅く収穫期まで生き残ったものは、糖度が極端に低い状態となって原料茎としての価値が失われる。同県における黒穂病の発病は5月から7月の間と11月頃にそのピークであり、第1次の発生は4月から8月の間にかけて地下からの出芽茎に発病し、第2次の発生は10月から2月の間にかけて茎の地上側芽から発病する。
 黒穂病は20数年前の昭和50年から53年にかけて同県に大発生している。とりわけ51年から52年にかけては、栽培面積に占める黒穂病発生面積の割合が25%を超える状況となった。国や同県の指導により、51年から5年間にわたって罹病茎の一斉抜取り防除を実施し、また併せて多発生ほ場の早期更新や培土、はく葉などの肥培管理等を強力に推進したこともあり、防除効果が現れてその後の発病率が低下している。
 同県農林水産部の調査によると今回の黒穂病の発生については、本島中南部での発生率が高くなっている。同地域は、黒穂病の発生が多いとされる泥灰岩土壌が多く、相対的にさとうきびの株出し期間が、8〜10年と長いこと、黒穂病に対する抵抗性の弱さが懸念される農林9号の栽培の割合が多いこと、また本島中南部は多発生ほ場が多く防除の徹底が困難であったことなどがその原因であると考えられている。
 本島以外では農林9号の栽培の割合が多い宮古の多良間島での発生率が高い状況となっている。
 同県農林水産部は黒穂病防除対策として、
 「(1) 肥培管理を徹底し、被害株は早期に抜取り、焼却する。
  (2) 発生ほ場やその周辺からの苗の採取は行わない。
  (3) 発生地域での新植は、苗の消毒を徹底する。」を定め農家や関係者に指導し協力を呼びかけており、併せて黒穂病多発地域においては農林8号、F 172、農林10号などの黒穂病に強い品種の奨励も行っていきたいとしている。


さとうきび優良農家の紹介 (石垣島から)
〜 さとうきび畑に活力を与える 〜

 石垣島のさとうきび作は、採草地やタバコ、野菜、果樹など競合する畑作物が多く、ここ数年さとうきび収穫面積は減少傾向にあったが、地域のさとうきび糖業関係者の面積回復への努力が実を結び、12年産の収穫面積は1,273haと前年産を127ha、11%上回る結果となった。
 今月号はこの収穫面積拡大に寄与した優良農家を紹介する。
 沖縄県石垣市字白保の通事(とうじ)秀二郎氏 (39歳) は、両親と3人でさとうきび作と稲作とを営む専業農家である。さとうきびの収穫面積は、本人の努力により9年産で4ha弱であったのが、12年産にはその2倍以上の10ha弱になり、また、水稲の作付面積も2.5haで、そのほとんどが借地によって営まれている。

荒蕪地や遊休地に活力を与える
 通事氏の特徴的なことは、さとうきび畑として借り受ける農地は荒蕪地や遊休地が多く、これに自らユンボ (パワーショベル) 等の機械を使用して深く耕起し、有機肥料を施し、好条件の畑に復元してさとうきびを栽培することにある。
 その借地は、賃貸借契約が短期間なこともあり、1〜2回収穫した後、貸し主に返還するケースも多いそうで、貸し主に戻る時は土が肥えて整地が行き届いた好条件の畑となって帰ることになるため、貸し主にとっても喜ばれている。

さとうきび作にこだわり農業機械を自ら工夫
 通事氏のこだわりは、農業機械の工夫と徹底した土作りである。機械へのこだわりは、借地は荒蕪地や遊休地が多く、しかも作付け面積の規模が大きいことから、大型トラクター (120馬力) を導入し、この畑にマッチした耕うんや整地用などの農業機械を自らが改良して使用している。
 また、土作りへのこだわりは、耕起時に有機肥料を投入することである。

作付け品種及び作業計画の工夫
 さとうきびの品種は収穫時期が一時に集中しないように、早熟型の農林8号、中熟型の農林9号、晩熟型のF172の3品種をほぼ2対4対4の割合によって作付けを行っている。収穫作業については、小規模畑は手刈りで行い、大規模畑はハーベスタで行っているが、ハーベスタでの収穫ロスをなくすため畑の外周部は手刈り (まくら刈り) で対応している。
 大規模経営であるため年間を通して繁忙期が長く、併せて稲作も行っていることから、特に1月から2月にかけて水田は整地と田植え、さとうきびは収穫と春植えの準備など作業が重なり非常に忙しくなるが、あらかじめ作業計画を立て、それぞれの作業が遅れることのないように対処している。天候による遅れも柔軟に対応しており、雨天が続けば水田の作業やさとうきびのまくら刈りを行い、晴天が続けば春植え準備のための整地作業を優先するなどトータルとして作業に遅れが生じることのないようにしている。

今後の経営目標は
 今後の経営目標は家族労働のみでさとうきび収穫面積が10ha以上、収穫量が1千トン以上を目指しているが、借地面積を安定的に保有することは難しい面があるため、作型を夏植えから春植え・株出し体系に徐々に転換して、収穫面積の増加に努力したいとしている。
 また、地域のさとうきび農業の振興と農家所得の向上のため、ハーベスタによる収穫委託費の低減を希望しているとのことである。
 これまでのさとうきび作りに関する通事氏の取り組みによって、わずかながらも確実に石垣島の荒蕪地や遊休地が肥沃で整地が行き届いた好条件の畑となって甦っている。今後のさらなる活躍が期待されている。

さとうきび
  9年産 10年産 11年産 12年産 13年産
見込み
収穫面積合計 (a) 393 238 403 996 730

夏植え (a) 393 208 362 735 460
春植え (a) 0 30 41 251 80
株出し (a) 0 0 0 10 190
生産量合計 (トン) 417 237 336 915 675
10a平均収量 (トン) 10.6 10.0 8.3 9.2 9.2
平均甘しゃ糖度 (度) 13.9 13.4 14.0 13.4  
他の農作物
作物品目 11年度 12年度 13年度
見込み
稲 作 作付面積 (a) 50 250 250
生産量 (籾・トン) 3 15 15

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