[2002年7月]
札幌事務所
「ホッ!ととうけい」 で、てん菜と砂糖の特集
北見農林水産情報センター(北見統計情報事務所)は、4月、「ホッ!ととうけい VOL.18 てん菜と砂糖」を発行した。
北海道の統計情報事務所は、北見をはじめ全道各地に農林水産情報センターを設置している。同センターは、地域の関係機関、生産者、消費者に対して、地域農業と地域社会の発展のため、農林水産業・農山漁村・食料に関する統計情報や行政情報を積極的に提供しており、これら情報の受信・発信の拠点となっている。
同センターによると、「てん菜は直接食するものではないので、道内においても生産者を除くと、てん菜やてん菜糖については意外と知られていないのが現状である。しかし、これらは地域社会や北海道農業における非常に重要な産品である。てん菜糖の需要拡大は、道内の一般消費者にこれらを知ってもらうことから始まる」 とのことであった。
このパンフレットは、一般消費者向けに、作物としてのてん菜、てん菜からてん菜糖が作られた歴史、北海道におけるてん菜・てん菜糖の生産の歴史、砂糖の種類、砂糖の豆知識がA3版の両面で、一目で分るようにコンパクトにまとめられており、2,400部が作成され、同センター管内(宗谷、網走、根室の3地域)の市町村、農協、「道の駅」 で配布されている。
「私のしごと館〜しごとシアター」 〜ロケハンが北海道に〜
5月28日(金)〜29日(土)、「私のしごと館〜しごとシアター」 のロケハン(撮影の事前取材)が北海道にやってきた。
「私のしごと館」 は、厚生労働省、雇用・能力開発機構が若い世代の人たち対象にさまざまな職業に関する体験の機会や職業情報を提供するために設置される施設で、京都府、大阪府、奈良県にまたがる関西文化学術研究都市に平成12年2月に着工しており、14年度末の開館予定となっている。
この施設には、映像で仕事を紹介する 「しごとシアター」 が設けられており、そこで取り上げる話題のひとつに、『ケーキひとつ作るのにどれだけの仕事が関わっているか』 というテーマがあり、その中に砂糖に関係する仕事も紹介する企画があったため、今回のロケハンとなった。
ロケハンは、芽室町のてん菜生産農家を中心に、農家をサポートする農業試験場や、土壌分析施設、ビート資料館などで行われ、仕事の連携やこだわりなど取材して回った。
てん菜生産農家の児玉氏宅では、透水性が大事であるという信念を持っており、透水性の確保のために、中耕作業用カルチベーターの爪を独自に改良していることや、畑の様子を見ながらの農作業を進めるなどてん菜栽培のこだわりが取材された。また、農業試験場や土壌分析施設では、製糖企業などとの連携、農家へのサポートなどについて取材された。
砂糖を作るしごとに携わる多くの分野が紹介されることは、関係者にも励みになるので、本番の撮影の成功を期待している。
児玉氏のてん菜畑 |
こだわりの農機具 |
名古屋事務所
甘味に係わる消費者活動の紹介
〜愛知消費者協会名古屋支部〜
平成14年6月4日(火)、愛知消費者協会名古屋支部の会員49名が、消費者活動の一環として岐阜県南濃町の氷糖資料館等を訪れた。
愛知消費者協会は愛知県の消費者団体のひとつで、昭和46年に創立された。5つの支部から構成され、会員数は平成14年現在で約1,900名である。同協会は、消費者の利益保護と消費生活に関する正確かつ公正な情報の提供等を目的としている。例年、会員向けに生活に深く関係のある商品について、その製造工程等を見学する研修会を開催している。今年度のテーマは、同協会としては初めて砂糖が採用され、氷砂糖等の製造および利用方法について岐阜県南濃町にある氷糖資料館を見学することとなった。
名古屋市内から現地への移動中には、同会員が砂糖に対して興味をもてるよう、バスの中で当事業団制作の広報ビデオ 「5つの恋の物語」 が上映された。
氷糖資料館では、館長の西尾勝正氏による果実酒と氷砂糖の関係や氷砂糖と健康についての関係が説明された。続いて、隣接している氷糖工場において、氷糖の製造工程等における見学及び梅酒のおいしい作り方の講習を行った。
研修会の最後には、名古屋支部の制作による 「砂糖に関するアンケート調査」 を行い、参加者の研修効果等を測るなど、極めて熱心な取り組みの研修会であった。
今回行なったアンケートの結果によると、砂糖の原料や調理上の効果等の理解が進んだと思われる他、「今まで、砂糖は害があると思っていたが、脳の活性には大切な栄養源であることが少しは理解できたと思う」、「砂糖は身近にあるものなので、何からできているかなど考えたこともなかったが、今回の研修会でよく分かった」 等の意見が聞かれ、砂糖と健康の関係について改めて見直している参加者の様子が伺われた。
見て味わって楽しむバラの花菓子
〜バラの花に魅せられて〜
満開に咲いているバラの花園 |
兵庫県姫路市に、見る楽しさと、味わう楽しさが同時に体験できるばら園があるというので、6月初旬に、兵庫県農林水産部の紹介によりに訪れた。
このばら園では、約700坪の敷地内に、約800種、35,000本のバラを栽培している。バラは手入れが困難な植物であることでも知られているが、同園主の日々の努力により、訪れる客を魅了してやまない。同バラ園で来場者はいろいろな形のバラの魅力を楽しむことができる。訪れる客の楽しみのひとつに、ここでしか味わえない自家製のお菓子がある。
左から バラのシャーベット、バラのトースト、バラのゼリー、バラの花びら菓子、バラの紅茶 (ジャム入り) |
このお菓子は、新鮮なバラの花びらやその香りを逃がさないように、バラの花びらにグラニュー糖と卵を加え作られているため、食したときにバラの味と香りが口いっぱいに広がる。また、このお菓子は、砂糖の保存効果が発揮され、2年以上の長期間おいしく食すことができる。バラのお菓子以外には、このお菓子を砕いてのせたトーストや、グラニュー糖を使用し作ったバラのゼリー、シャーベット、バラの紅茶(ジャム入り)などがある。
同園主に、砂糖についてのイメージを尋ねてみると、『甘いものは安らぎを与える、疲れたときには好んでとるようにしているが、亡くなった主人は糖尿病であったので控えるように注意していた』という答が返ってきたので、あらためてパンフレット等で砂糖について詳しく説明したところ、『糖尿病という名前のイメージが悪いので、名前を変更してもらえばいいのにね』 という感想をもらった。
最後に同園主は、『今後はこのバラの花菓子については積極的に情報発信し、1人でも多くの人に見て味わって楽しんでもらいたい』 と情熱的に語っていた。
砂糖を活用して村おこし 〜岡山県新庄村〜
ブナ酵母で作ったスティックパン |
岡山県真庭郡新庄村には村内最高峰 (標高1,218m) の毛無山があり、その中腹には県内でも珍しいブナ林の原生林が広がっている。同山のブナはかつて古来の精錬法 「たたら製鉄」 の薪炭材として利用されていた歴史があるが、現在では岡山県が県有地としてこのブナ林を保護しており、同村においてもその自然環境の保護に努めてきた。
このような環境の中、『ブナ林の原生林を利用して何か村の新名物にできないか』 と小倉博俊村長を始めとする同村役場で検討した結果、ブナの落ち葉及び腐葉土等から酵母を採取することを発案し、平成13年度に岡山県工業技術センターに分析依頼したところ腐葉土等からパン製造酵母が発見された。
今年度、この結果を受けて同村では、経済産業省所管の補助事業を活用することによって、毛無山の天然ブナ酵母で製造したスティックパンの試作研究を行っている。現在、試行錯誤の過程にあり本格的な販売促進に至っていないが、新たな村おこしの1つの材料として同村の環境特性を生かし、他の産地にはまねのできない地域特産品の完成を目指している。
開発プロジェクトチームの責任者によれば 「このスティクパンの材料は小麦粉、塩、及び上白糖であり、上白糖を使用することにより菓子パン独特の甘さを効果的に引き出すとともに、素朴な味わいや個性的な風味を追求しており、砂糖の使用がスティクパンの味を大きく左右すると言っても過言ではない」 とのことである。
樹齢100年前後の毛無山ブナ林を歩く |
この他同村には、砂糖をふんだんに使用した人気の地域特産品として 「熊笹エキス入りせんべい」 (2種類) があり、岡山県内外から購入を求めてくるファンを魅了している。
また、同村では平成13年12月27日に、念願の環境マネジメントシステムであるISO14001の取得に成功し、このシンボルグッズとなったのが、同村が企画・製作したさとうきびの搾りかす(バガス)繊維を原料としたポケットティシュである。(本誌2001年10月号掲載)
このように砂糖は地域特産品製造の重要な原料となっているほか、環境意識向上に向けた取り組みが行なわれており、砂糖が村に与える効果は大きいものがある。多方面での用途に使われている砂糖であるが、今後も村の経済を潤す一要因として活用されていくことを期待したい。
講演会「甘味を考える」
〜第12回西日本食品総合機械展から〜
食品メーカーや外食産業を対象にした 「第12回西日本食品総合機械展・2002西日本厨房機械展」 (日刊工業新聞社主催) が5月22日(水)から3日間、福岡市博多区のマリンメッセ福岡で開かれた。調理器具や包装資材メーカー、和洋菓子メーカーなど約130社が参加し、新世紀の食環境の整備を目指す展示会として多くの入場者で賑わった。併せて期間中に各種セミナー・イベント・特別展示などが数多く行われ、その中で 「甘味を考える」 と題して和菓子に造詣の深い講師2人による講演があったのでその概要を紹介する。
講演は、「和菓子のたのしみ方」 など、お菓子について多数の著書がある元・別府短期大学部教授の江後迪子氏と、佐賀県小城町の和菓子会社社長の村岡安廣氏が 「甘味を考える」 をテーマに交互に話をする形で行われた。
左が江後迪子氏、右が村岡安廣氏 |
江後氏は、最初に日本の甘味の歴史について紹介した。古文書などの文献によると砂糖以前の甘味は 「あまづら」 と 「蜂蜜」 であり、「あまづら」 は福岡県の太宰府でたくさん採れていたようで、朝廷への貴重な献上品であった。日本に砂糖が伝わったのは、奈良時代、唐の鑑真が薬として中国から持ってきたのが最初といわれており、その後、南蛮貿易の隆盛に伴い、日本に砂糖が大量に持ち込まれた。輸入港である長崎から小倉までの長崎街道は別名シュガーロードと呼ばれたそうである。
続いて、村岡氏は、肥前のお菓子について述べ、肥前がシュガーロードと呼ばれる長崎街道に位置し、砂糖が身近な存在であったことが、同地のお菓子に大きな影響を与えたと述べた。この時代、献上品の砂糖の約4割は肥前の佐賀藩からのものであり、肥前は砂糖が入手しやすい環境にあったとのことである。また、肥前のお菓子は長崎にもたらされた南蛮菓子、中国菓子の影響を大きく受けていることを、各地の銘菓をあげて説明した。
この後、村岡氏は、菓子作りの立場から、戦後砂糖を多く使ったのは防腐剤の役割を砂糖に求めたためではないか。それに対し例えば最近の羊かん作りでは、本来の小豆なり豆の味を楽しんでもらうために砂糖の量を減らす傾向にあると述べた。さらに、これからはますます素材の持ち味を生かす方向となり、健康志向も加わり、砂糖を使う量は減るのではないかと思われるが、砂糖の持つ力(効用)を生かさなければお菓子は作れないので、素材とのバランスをどう調整するかが、今後の菓子屋の課題であり、菓子作りに一定量の砂糖は絶対に必要との見解を示した。
次に、江後氏は、砂糖は酸性食品であるなどの幾つかの砂糖の有害説を挙げ、科学的根拠が明らかでないものもあり、これは現代人の食生活のゆがみの象徴的な存在として砂糖が悪玉にあげられているのではないかと述べた。バランスのとれたきちんとした食生活をしていれば、砂糖の摂取を問題とする必要はなく、もっと砂糖を正しく理解することが必要であるとの考えを示した。
最後に今後の甘味、特に菓子業界について江後氏は、キーワードとしてA健康志向と自然志向、(1) ソフト・ウエット志向、(2) 小型化とファッション性、(3) 味の多様化、(4) 風土に根差したものを挙げ、菓子作りに携わる人は、その地域の特産品を使った新製品の研究・開発に力を注いで欲しいとの希望を述べた。
村岡氏は、和菓子業界の現状として売り上げが落ち込んでいることを述べ、これからは、(1) 原料を厳選して使用する等、お客様のイメージを高めるこだわりの商品、(2) お客様にとって安くて便利な商品、この2極化がすすむとの認識を示し、次の時代に甘味をどう残せるかということをしっかり考えていきたいと結んだ
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