会場の模様 |
7月25日(木)、26日(金)の両日にわたり、独立行政法人農業技術研究機構北海道農業研究センター及び財団法人甘味資源振興会の主催する「第42回てん菜技術連絡研究会」が札幌市内で開催された。道内の試験場、大学、てん菜製造企業等の研究者を中心におよそ150人が参加した。
同研究会は、主催者等の挨拶に続き、てん菜に関する病理、育種、栽培等各分野にわたって研究発表が行なわれ、その後それぞれ質疑応答がなされた(研究発表課題は下記のとおり)。
この研究会は、てん菜を研究する者にとって、新しい知見に触れる場であるとともに意見交換することによって情報を得ることのできる場となっている。内容は、専門的で、学術的なレベルも高く、一般向けではないが、関係者による評価は高い。
研究発表課題 |
テンサイ孔辺細胞からの高効率プロトプラスト培養 |
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Anna Majewska-Sawaka ほか |
植物育種・栽培研究所 [ポーランド] |
テンサイ圃場から分類されたRhizoctoia solani AG2-2W・菌株とその後代単胞子株のRAPD解析 |
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清 多佳子ほか |
北海道大学 |
テンサイ病害抵抗性花粉親系統の育成 |
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岡崎和之ほか |
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テンサイ近縁種Beta maritime acc.FR4-31の示す雄性不稔性について |
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品田 博ほか |
北海道大学 |
採取テンサイ固体レベルにおける少数胚果実の着生・分布様式 |
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大潟直樹ほか |
(独) 農業技術研究機構北海道農業研究センター |
花粉親系統の栽植様式がテンサイ三倍体一代雑種の採取に及ぼす影響 |
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高橋宙之ほか |
(独) 農業技術研究機構北海道農業研究センター |
テンサイの軽量育苗培地の現地適応性 |
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大竹 勝ほか |
日本甜菜製糖(株) |
紙筒からのこぼれ土割合がテンサイの生育と収量性に与える影響 |
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寺沢秀和ほか |
日本甜菜製糖(株) |
粒状ライムケーキのテンサイ作条施用への利用について |
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有田共秀ほか |
ホクレン農業協同組合連合会 |
直播テンサイ畑の発生雑草について |
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石川枝津子ほか |
(独) 農業技術研究機構北海道農業研究センター |
テンサイ褐斑病の圃場抵抗性固体選抜方法の改良 |
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田口和憲ほか |
(独) 農業技術研究機構北海道農業研究センター |
褐斑病防除薬剤の感受性について |
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工藤裕子ほか |
北海道糖業 |
テンサイ褐斑病の防除体系について |
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石丸純一 |
ホクレン農業協同組合連合会 |
テンサイ黒根病の発病と気象要因の関係 |
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渡辺秀樹 |
日本甜菜製糖(株) |
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手作り新聞 「シュガーニュース」
受賞作品 |
若い人たちに新聞・活字に親しんでもらうことを目的とした北海道新聞社主催の手作り新聞コンクール 「私とぼくの小学生新聞グランプリ」 の入賞作展示会が、8月3日(土)〜9日(金)まで札幌東急百貨店において開催された。そのなかで、鈴蘭小学校(十勝管内音更町)5年生の勝村沙帆さんの作品 「シュガーニュース」 が、チャレンジ賞に選ばれたので紹介する。
今回のコンクールで、牛の病気、環境、福祉問題など社会の出来事に目を向けた応募作品が多い中で、勝村さんが 「砂糖」 をテーマに選んだ理由は、「去年、学校の授業で北海道のてん菜を勉強して、てん菜の試食をしたことがあったことや、学校の裏にてん菜畑があり、てん菜は身近な農作物であったこと。また、大好きなお菓子作りに使う砂糖に興味を持っていたので、身近なことからテーマを選んだ」 ということであった。
勝村さんの受賞作品 「シュガーニュース」 は、砂糖の歴史、種類をはじめ、砂糖の原料であるてん菜やさとうきびの比較を入れた紹介や、てん菜とさとうきびが砂糖になるまでを写真や色鉛筆などを使い分かりやすく説明されていた。さらに、沖縄県からさとうきびを取り寄せ、ミキサーなどを使ってさとうきびから黒砂糖作りにチャレンジした体験を載せるなど、小さな紙面にたくさんの話題を掲載していた。
展示会場 |
勝村さんが新聞制作中に苦労したこととして、「ミキサーを使って黒砂糖作りにチャレンジした時、さとうきびが硬くて砕くのに思っていたより手間がかかったことや、やっと搾り取ったさとうきびのジュースを焦がさないようにするのに気をつかい大変であった。それでも砂糖のことを調べていくうちに、砂糖の原料はてん菜だけではなく、さとうきびやかえで樹液など、いろいろな原料があり、砂糖にもいろいろな種類があることが分かり、興味が広がった」 と感想を述べてくれた。
今回の手作り新聞をきっかけに、より砂糖に興味を持って、大好きなお菓子作りに励んでもらいたい。
(取材協力、写真提供:北海道新聞)
東京事務所
都内の小学生が 「さとうきび栽培」 にチャレンジ
〜大田区立高畑小学校における植付け実習〜
側枝苗植付けの様子 |
当事業団では、小学生向け学習教材 「シュガー博士の研究所〜砂糖のすべてを知る〜」 を作製し、小学校の総合学習や社会科の時間に活用していただこうという取組みをスタートさせた。
東京都と大阪府の公立小学校校長会に了解を得た上で全校に同学習教材を配布し、授業での活用を検討願ったところ、早速、大田区立高畑小学校(松元永光校長)が、「4年生(2クラス=80人)によるさとうきびの栽培を含めた総合学習の課題」 として取り上げていただいたので紹介する。
事前準備として学校側には腐葉土、肥料、鉢及びプランターを用意してもらい、当事業団が側枝苗(100本)、二節苗(10本)、さらに子供たちにさとうきびの全体像の把握と甘さの体験をしてもらうための全茎(5本)を沖縄本島より取り寄せ、夏休み直前の7月17日、同校の校庭において4年生全員によるさとうきびの植付け実習は行なわれた。
当日11時に始まった実習では、まず鹿児島県出身の松元校長から子供たちに対し、「さとうきびの植付け方」、「さとうきびからどうやって砂糖を作るのか」、「さとうきびは南国の生活にどのようにかかわっているのか」 等々について、さとうきびの全茎をかざしながら、ご自身の体験を交えて説明が行なわれた。続いて苗の植付けでは、小振りの鉢を各々手にした子供たちが、先を争うように肥料を混ぜた土をミニシャベルで鉢に盛り、その中に側枝苗を1本植え込み、ジョウロでたっぷりと水をあげていた。なかには、ミニシャベルの順番が待ちきれずに手で土をすくっている子、土の量が少なくて水をかけた瞬間に苗が倒れてしまい大あわての子、割り当ての一鉢を早々に終わらせ予備の鉢に植え付けを始める子など、子供たちの歓声と泥だらけの笑顔とで校庭は一気に元気な空気に包まれた。また、数名の子供たちにより、二節苗を横長のプランターに2本ずつ植え付ける作業も同時に行なわれた。こうして約30分ほどで、すべての苗の植付けは完了し、授業はさとうきびの甘み体験へと進んだ。
初めてかじるさとうきびの味はどう? |
植付けの間に、担任の先生によって全茎は長さ10センチ程度の半月状に包丁でカットされ、子供たちは興味津々の表情でこれにかじりついていた。このようにして1時間あまりに及ぶ今回の授業は終了した。
授業中4年生全員に行なったアンケートの結果をまとめてみると、さとうきびが鹿児島県や沖縄県で栽培されていることを知っていた子供は半数以上いたが、本物のさとうきびをこれまでに見たことがあると答えたのは全体の約1割で、それをかじったことがあると答えた子供はさらにその半分だった。一方、砂糖がさとうきびから作られることは、ほぼ全員が知っていたが、実際にかじってみてさとうきびは甘いと初めて感じた子供たちが4分の3以上にのぼった。
このように都会の子供にとって、さとうきびは 「南国で育つ砂糖の原料」 という知識上の植物であり、その実体はなじみの薄いものであるように感じられた。しかし、今回、高畑小学校の4年生は、さとうきびの甘さを自ら感じたことによって、その天然の甘みから砂糖が作られていることを学習教材による知識に加えて理解してくれたのではないだろうか。
子供たちが植え付けをした苗がこの夏休み以降大きく育ち、今年の冬にはこれらのさとうきびを絞った糖汁による手づくり砂糖が首尾よく完成することを心より願っている。
横浜事務所
地域情報モニター “砂糖工場” を見学
当事務所の地域情報モニター(10名)等を対象に7月26日(金)、精製糖工場見学会を実施した。これは去る6月19日(水)に開催した地域情報モニター会議において、同モニターから、砂糖に対する理解をより深めるために、精製糖工場を見学できないかとの強い要望があり、塩水港精糖株式会社及び太平洋製糖株式会社のご協力により実現したものである。以下その様子を参加者の声を交え紹介したい。
当日は、猛暑にもかかわらず、同モニター9名をはじめ20名(小学生2名を含む)が参加し、塩水港精糖株式会社の 「横浜・さとうふるさと館」 及び太平洋製糖株式会社の 「精製糖工場」 を見学した。参加者は同ふるさと館において、原糖から精製糖ができるまでの工程をビデオで見た後、国内の砂糖消費量、国内産糖の生産量、原料糖の輸入先国などの説明を受け、原糖倉庫や稼動している工場の製造工程等の現場を見学した。
参加者からは、工場内の暑さに感嘆ともため息ともつかない声が流れ、「この暑さのなかでの作業の苦労は如何ほどか」、「製品を作る人へ感謝したい」 等の感想があった。
また、見学後には 「自然食品である砂糖をもっとPRしたい」、「現在の食文化の中で、もし砂糖がなかったら味気ないものになってしまう。食生活に上手に取り入れたい」、「今まで砂糖の使用量を控えてきたが、エネルギーの補給やストレスを和らげるためには砂糖は大切なもの」、「健康のためにも砂糖を上手に活用していきたい」 等の感想もあった。
さらに、小学生の子供を連れた参加者は、「子供が夏休みの自由研究テーマに砂糖を取り上げていたため、親子で参加できて有意義だった」 といった意見も聞かれた。
その他様々な感想や意見が聞かれ、今回の工場見学を終えた参加者たちは、普段何気なく使用している砂糖の大切さについて改めて認識を深めたようだ。
大阪事務所
シュガートレイン
〜遊園地にさとうきび畑を巡る鉄道が開通〜
南国の植物に囲まれて走る「シュガートレイン」 |
大阪府吹田市の万博公園内にある遊園地 「エキスポランド」 に、常設のアトラクション 「シュガートレイン」 がオープンし、連日大勢の親子連れで賑わいをみせている。
同アトラクションは、ハワイで観光名所となっているマウイ島ラハイナのシュガートレインをイメージしたもので、同遊園地内で子供たちに人気があるフリースペース 「わんぱく天国・おろちランド」 内に設けられたものである。
「シュガートレイン」 は、定員が大人36人、子供18人の合計54人で、先頭車1両、炭水車1両、客車3両の車両が、全長400メートルのコースを平均速度5km/h、運転時間4分45秒で周るもので、途中、車窓から、さとうきびをはじめとする南国の植物を眺めたり、トンネルをくぐったりと、プチ・リゾート気分を満喫できる周遊空間となっている。
「シュガートレイン」 の名称の由来となっている約200本のさとうきびは、50cmほどに生長した苗を、鉢植えの状態で沖縄県の読谷村から取り寄せたもので、7月上旬に駅舎のホーム正面に植付けが行われた。
背丈はまだ70〜80cmの高さしかないが、沖縄と違い、さとうきびにとっては厳しい気候のなかで、今後、どこまで生長していくのか楽しみである。
シュガートレインと駅舎の全景 |
植えられたさとうきび |
神戸事務所
ふくらんだりかたまったりする砂糖の不思議
〜青少年のための科学の祭典2002 ひょうご第8回大会〜
親子でカルメ焼き体験に挑戦する来場者 |
8月3日(土)から9月8日(日)までの約1ヵ月間、兵庫県内6ヵ所の会場において 「青少年のための科学の祭典2002 ひょうご第8回大会」 (「青少年のための科学の祭典」 ひょうご大会実行委員会、(財)日本科学技術振興財団・科学技術館、(財)ひょうご科学技術協会他主催)が開催されている。
この催しは、(財)日本科学技術振興財団により、青少年に科学の魅力を実体験できる機会を提供することにより青少年の科学への興味を呼び起こし、科学的思考を身につけてもらおうというねらいで平成4年度に開始されたもので、当初は東京、名古屋、大阪の3会場だけで行われたが、その後、年を追って開催範囲が拡大し、今年度は全国の都道府県における74ヵ所で大会が開催されている。
兵庫県でも平成6年1月に第1回大会を開催したのを皮切りに、徐々に会場数が増え、8回目の今年は豊岡、丹波、姫路、淡路、播磨、神戸の6会場で開催されている。
ひょうご大会のうち、8月10日(土)、11日(日)の両日、姫路市書写の姫路工業大学書写キャンパス5号館で開催された姫路会場の祭典(入場者数:約4,000名)における出展ブースの1つとして、県立山崎高等学校科学部による砂糖を実験素材とした 「さとうでお菓子を作ろう」 という企画が実施されたので、その模様を紹介する。
この企画は、昨年からこの祭典に参加している山崎高校科学部の部員が、科学を体験するための素材として身近な食品である砂糖を選んだもので、来場者は 「カルメ焼き」 と 「べっこう飴」 作りを体験しながら、熱による砂糖の変化や重曹(炭酸水素ナトリウム:NaHCO3)の熱分解による二酸化炭素の発生を観察することができるというものである。
具体的な実験方法(カルメ焼き)は、
(1) 市販の調理用アルミカップに砂糖を入れ少量の水で溶かす。
(2) ホットプレートにアルミホイルを敷き、その上に (1) のカップをおいて加熱。
(3) 糖液が沸騰し、泡立ちの後全体が黄色っぽくなったら火から降ろして冷ます。
(4) タイミングを見て水飴に混ぜた重曹を加え、同じ方向にかき混ぜる。
(べっこう飴の場合は、(3) で 「つまようじ」 を糖液にさしこみ、(4) そのままアルミカップを氷などで冷やす。)
という誰でも簡単に取り組めるものであった。
手作りのカルメ焼きが完成 |
会場には親子連れが午前中から数多く詰め掛け、なかなか膨らまないカルメ焼きや、油断するとすぐヒビがはいってしまうべっこう飴作りに苦戦しながらも、楽しそうに実験に取り組んでいた。来場者のある母親は「砂糖、アルミカップ、ホットプレートなど、身近にある素材や道具を使っての体験学習なので、親しみやすく、家でまたやってみようという気になります」と話していた。
この催しに参加するため山崎高校の科学部員は、約半年前から準備を進めてきたが、当初使うことにしていた卵白(通常カルメ焼きを作る際、重曹と混ぜて使用する。重曹から発生する二酸化炭素をカルメ焼きの中に「閉じ込め」て膨らみを助ける役割を果たす。)や加熱用に想定していたカセットコンロが、会期直前になって食中毒ややけどを防止する観点から使用できないこととなったため、短期間に代わりの方法を考え出すのに苦労したという。
結果的には卵白の代わりとして水飴に重曹を混ぜる方法を考え出し、カセットコンロの代わりとしてホットプレートを使用して当日の催しの実施にこぎつけたとのことであった。
あめ状になった液糖を氷水で冷やし、 「べっこう飴」を作る子供たち |
山崎高校科学部顧問の春名洋介教諭は、「この催しは、来場する青少年が科学に親しむ機会としてだけではなく、スタッフとして参加している生徒たちが、運営の企画、会場の設営、当日会場での来場者への説明・対応等の作業について、学習する機会を持てるという面でも意義があると考えています。今の子供たちは、日常生活において 『失敗を体験する』 機会があまりないと思うのですが、今回のような催しを通じて、何かに失敗した時にその原因を分析し、それを克服する手だてを工夫することによって問題解決能力を養ってもらえればと思います」 と語っていた。
砂糖を料理に用いる場合、甘味をつけるという働きだけではなく、結晶性を利用してカルメ焼き、ウィスキーボンボン、金平糖などの菓子を作ったり、あめ状にして芋などに絡めるなど、さまざまな性質を利用することができるが、こうしたあまり知られていない砂糖の特性の一端にも触れられるという点で、今回の催しは興味深いものであった。
今後も砂糖の特性について触れることのできるこのような機会が各地で設定され、多くの人が砂糖をより身近なものとして感じてもらえるようになることを期待したい。
福岡事務所
鹿児島県南西諸島におけるさとうきびのハーベスタ収穫は、生産農家の高齢化を背景に収穫作業の省力化を図るため年々増加しており、平成12年産においてハーベスタによる収穫量の割合は39%に達している。しかし、ハーベスタによる機械収穫の進展に伴ってトラッシュ(夾雑物)が多くなり、製糖効率の悪化が懸念されることから、ほ場から製糖工場までのどの段階でどのように処理することが適当なのか、数々議論がなされている。
そのようなおり、7月18日〜19日に開催された鹿児島県のさとうきび試験成績発表会(主催さとうきび試験研究協会・鹿児島県農業試験場)の場で 「ハーベスタの導入とトラッシュ処理対策」 と題したシンポジウムが開催された。その中で話題提供として3人の方がトラッシュ処理対策、特に梢頭部除去の方法について講演されたので、その内容を紹介する。なお、さとうきびの品種開発、病害虫対策等に係る最新の研究調査成果の発表を行うことを目的とした同発表会は毎年開催されており、今年は農水省、県、大学、関係団体、糖業関係者等112名が参加した。
梢頭部を水に浮かべて除去
−水流式選別装置−
水流式サトウキビ梢頭部・土砂除去装置 徳之島支場 |
鹿児島大学農学部の宮部教授の司会で始められ、まず鹿児島県農業試験場徳之島支場主任研究員の溜池雄志氏が 「水流式梢頭部、土砂除去装置による選別について」 と題し、同装置の研究開発状況を紹介した。
水流式選別とは、梢頭部込みで収穫された原料を風選後に水の流れを使って、水に浮くもの(梢頭部)、沈むもの(原料茎)に分けて回収する方法であることをスライドを使って説明した。実際には浮上物の中に原料茎が含まれるため、水選を2回することが効果的である。2回水選後の浮上原料茎は収穫時期、品種により異なるが原料茎全体の2〜3%であること、また、水につかることによりさとうきびのショ糖分溶出が心配されるが、試験の結果、水中への流出ショ糖量は全ショ糖量の0.5%程度で特に問題になるものではないと述べた。しかし、土砂が汚泥となって排出されるので、この汚泥の処理対策が必要となること、また、使用水の水質が悪化し排出基準を超える水質汚濁が認められるため汚水処理が必要となることを問題点としてあげた。
今後の検討課題として水流式選別装置を大型製糖工場に導入するには、本体装置と付帯装置として排水浄化設備が必要となることから、原料処理量を勘案して、これらの装置・施設の規模、システムについて実用化に向けたコスト試算が必要であると述べた。
梢頭部を集中的に選別
−精脱葉施設−
精脱葉施設 種子島中種子町 |
次に種子島農業公社事務局長の浮田浩一氏が 「精脱葉施設による選別方式について」 と題して、平成12年から種子島中種子町で稼動している精脱葉施設(平成12年度事業団助成事業)について紹介した。
種子島では、最初に手作業で梢頭部を刈り取った後にハーベスタ収穫を行ない製糖工場に搬入している。この梢頭部除去を効率的に行うのが精脱葉施設である。梢頭部のついたままハーベスタ収穫を行なった原料を脱葉施設に集め風選後、ベルトコンベア上の原料から手作業で梢頭部を取り除くものである。梢頭部選別に当たっては、梢頭部と原料部分の境目の判別が難しい場合もあるが、製糖工場の指導のもと判別基準を徹底しており、トラッシュ率はほ場で梢頭部を刈り取り工場へ持込まれた原料と大差がないとのことである。施設導入の利点としてトップ(梢頭部)未除去のほ場でも収穫作業が可能なことからハーベスタの稼働率の向上が図れること、ほ場での作業員を減らすことができることなどをあげた。
今後の見通しとして、手刈り作業は人手の確保が困難となってくることから、精脱用施設の利用が増えると思われるが、梢頭部を家畜飼料として利用している畜産農家との連携関係も大切であり、既存の人力によるトップ除去と組み合わせた施設導入、利用が有効であると述べた。
ほ場で梢頭部をカット
−梢頭部収穫機−
梢頭部収穫機 (試作機) 徳之島支場 |
最後は鹿児島大学農学部助手の末吉武志氏が 「さとうきび梢頭部収穫機の開発の現状」 と題して、鹿児島県農業試験場徳之島支場と鹿児島大学農学部が行っている梢頭部収穫機の研究開発について紹介した。
徳之島支場が研究開発している梢頭部収穫機については、試作機によるほ場実験の結果について説明した。試作機は、小型ハーベスタを改良したもので走行部、分草部、切断回収部からなり、機体の左右を上部の梁で接合し、梢頭部刈り取り後のさとうきびが倒伏しないように通路を確保する構造となっている。鹿児島県南西諸島地域のほ場条件、栽培条件に適応し、効率的に稼動できる梢頭部収穫機になるよう改良を行った。ほ場実験によると梢頭部回収量はほ場の全梢頭部量の約3割であるが、切断位置の調整が可能であることから回収率は増加すると考えられること、また、反面、梢頭部収穫機による処理を行うことによりさとうきびの折損、引き抜きが梢頭部収穫を行わない場合に比べ多いことなどが説明された。草丈が低く倒伏の少ないさとうきびに対する適応性は十分に認められることから、今後の課題としてさらに回収率の向上と収穫損失の低減を図るよう機械の改良等に取り組む必要があると述べた。
シンポジウムはその後に質疑応答が行われ閉会した。ハーベスタ導入に伴うトラッシュ対策はさとうきび生産地の糖業関係者にとって重要な検討課題であり、既に導入されている精脱葉施設についてはより効率的な運営が、開発中の水流式選別装置と梢頭部収穫機については実用化に向けての取り組みが期待される。