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地域だより[2003年8月]

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最終更新日:2010年3月6日

砂糖類ホームページ/国内情報

地域だより
[2003年8月]

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札幌事務所


北海道農業研究センターの一般公開
〜てん菜及び砂糖についての展示〜

 平成15年6月28日 (土)、(独)農業技術研究機構北海道農業研究センターでは、寒冷な気候に適した品種の開発状況や広大な土地を活かした最近の研究成果を知ってもらうことを目的に、普段訪れる機会の少ない同センターの一般公開を毎年行っている。当日は、同センター内の研究施設や構内のバス見学、研究内容の展示や体験コーナーなどの多様な催しが行なわれた。今年は天候にも恵まれ、家族連れなど約2,450名が訪れた。
 同センター畑作研究部てん菜育種研究室では、今回はじめて、専用の展示コーナーを設けて、てん菜及び砂糖について紹介した。
 展示内容は、「てん菜」及び「砂糖と健康」をテーマにした「Q&A」形式のパネル展示、てん菜(実物)及びてん菜からえられるビートライム、ビートパルプ、甜菜酒などの展示や砂糖、パンフレットを配布した。用意された砂糖やパンフレットの一部は早々に無くなった。
 また、展示コーナーでは、中司室長自ら、来場者に砂糖の種類について説明し、「砂糖が白いのは、漂白剤を使っているのか」、「砂糖を食べ過ぎると糖尿病になる」、「三温糖と上白糖の違い」などの疑問に対して、懇切丁寧に答えていた。
 中司室長に今回の展示について話を伺ったところ、「まだ、まだ、消費者は砂糖に対して誤解がある。機会があるごとに訴えていかなければならない。今後も根気よく続けて行きたい」ということであった。
展示コーナーの様子
展示コーナーの様子
説明風景
砂糖の種類についての説明風景





てん菜直播栽培展示圃の現地研修会について
〜直播てん菜の安定的な生産を図るために〜

担当者による圃場の説明
担当者による圃場の説明
 (社)北海道てん菜協会は、直播てん菜の安定的な生産を図るため、北海道立農業試験場(十勝・中央・北見)に委託し、適切な栽培技術を確立し、直播の導入条件を解明することを目的とした各種試験を行ってきた。
今年度は、平成15年度北海道の普及推進事項「てんさい直播栽培技術体系の確立と導入条件」で提案された新たな技術の普及を推進するため、道立十勝農業試験場に委託し、その技術を導入したてん菜直播栽培展示圃を設け、関係者に提供していく事業を実施している。
 同協会では、平成15年7月2日(水)、設置した展示圃場で、研修会を開催し、てん菜の指導者及び技術者等、43名が参集した。参加者は、あらかじめ手渡された資料をもとに担当者から説明を受け、さらに、各農家から栽培方法や経営内容等の説明と質疑応答を終えると、各自圃場を視察した。
 同協会としては、今後、展示圃から得られる栽植本数、収穫精度、収穫作業能率、根重、根中糖分などのデータをもとに、関係者を集め、導入した栽培技術や経営局面等から検討会を予定しており、その成果が期待される。
各自圃場の視察
各自圃場の視察
 今回、展示圃に導入する新技術は、以下のとおりである。
(1) てん菜の出芽率の向上を高めるため、1) 播種前の砕土率(20mm以下)を90%以上とする。2) 播種機の後部幅鎮圧輪を狭幅鎮圧輪(幅115mm)とする。ちなみに、慣行は230mmである。
(2) てん菜収穫時の収穫損失(掘り残し損失)を少なくするため、てん菜収穫時に使用する収穫機械(ハーベスタ)の粘土土壌及び石礫地用の掘取り刃(スーパーフレキシブル)を使用する時では、速度1.5m/s以上で、石礫地用掘取り刃(フレキシブル)では、速度1.7m/s以上になると掘残し損失が増えるので、それぞれ1.5m/s、1.7m/sを作業速度の上限とする。
(3) 直播狭畦栽培(45cm畦幅)の栽培法における最適な栽培密度は、3倍体品種で、9,000本/10a、2倍体品種で、10,000本/10aである。ちなみに、狭畦栽培の栽培法による増収効果を糖量ベースで比較すると、2倍体品種が7%、3倍体品種で3%増である。
(4) 狭畦栽培てんさいの防除機を装着するトラクターの車輪と車輪の間隔が、畦幅と合わない場合は、防除通路(無播種畦)を設ける。そのときの圃場全体の減収率は1%程度である。
 なお、設置された展示圃は、新得町、清水町、池田町、更別町のてん菜の直播を営む農家の圃場である。
(参考)
展示圃農家一覧
町 村 土 性 導入技術
新得町 湿性火山灰土 砕土率、狭幅鎮圧輪
清水町 砂質系沖積土 砕土率、狭幅鎮圧輪
池田町 粘質系沖積土 砕土率、狭幅鎮圧輪+錘10kg
池田町 粘質系沖積土 狭畦栽培、防除通路、砕土率、狭幅鎮圧輪
更別町 乾性火山性土 砕土率、狭幅鎮圧輪
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千葉出張所


「食品新時代の幕開け〜あたらしい風をおこそう〜」
〜第8回国際食品素材/添加物展(ifia JAPAN 2003)〜

 平成15年6月11日(水)から13日(金)までの3日間、東京都有明の東京ビッグサイトにおいて第8回国際食品素材/添加物展(ifia JAPAN 2003)が食品化学新聞社の主催で開催された。「食品新時代の幕開け〜あたらしい風をおこそう〜」と題された今回の催しには、国内外の食品添加物・素材メーカー等、約300社が出展し、過去最大の規模となった。また、今回からは、従来 ifia JAPANの企画であった「健康食品・機能性食品部門」が「第1回ヘルスフードエキスポ(HFE JAPAN 2003)」として独立し、「健康食品新時代へ向けて発信」をテーマとして、ifia JAPANの隣接会場において大々的に同時開催されたこともあって、開催期間中を通じての来場者数は約24,800名と過去最高を記録した。
 今年の特徴としては、「食の安心科学ゾーン」に加え、新しく「アメリカパビリオン」、「韓国パビリオン」が特設されたことと、前述の通り「健康食品・機能性食品ゾーン」がHFEとして拡大・強化されたことが挙げられる。一方、出展社によるワークショップセミナーやプレゼンテーション、シンポジウムなどの人気企画は例年通り実施され、「食の安心科学」、「おいしさの科学」などのテーマが多かったように見受けられた。
 出展傾向としては、昨今の健康志向や安全性を反映した素材、添加物が中心で、今回特に目立った点としては、昨年のポリフェノールに続いて、緑茶カテキンや大豆イソフラボンを取り扱ったものが多かったと感じられた。さらに、加工食品に欠かせない食品添加物についても、新しい製剤や技術の出展が多数見られた。
 今回、当展示会に参加した精製糖メーカーのうち、大日本明治製糖(株)、新三井製糖(株)及び東洋精糖(株)の3社が出展製品についてプレゼンテーションを行った。その中の新三井製糖(株)の製品「さとうきび抽出物」は、従来の分蜜糖製造工程では洗浄により除去していた成分を独自の製法により抽出し粉末にしたもので、消臭・呈味改善効果を持ち、かつ100%天然の食品であるということであった。
 また、その他甘味料のメーカーでは、(株)林原商事が自社ブースのモニターでトレハロースのPRビデオを放映しており、多くの来場者が足を止めて見入る様子が伺えた。
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今も残る昔懐かしい味噌パン

店主の竹内義雄氏
店主の竹内義雄氏
 長野県の野辺山に昔懐かしい味噌パンが、地域限定商品として息づいている。約50年前に砂糖、小麦粉、味噌を原料に駄菓子としてスタートした味噌パンも、現在では松本とここ野辺山の2店舗のみで製造・販売されているだけである。今回は昔ながらの手造り味噌パンの味を守っている、塩川ベーカリーを訪ねたので紹介する。
 店主の竹内義雄氏によると、味噌パンがいつから作られたかは不明であるが、氏が佐久市に修業に入った昭和28年頃には、既に味噌パンが作られており、一説には戦時中からあったと言われている。昭和20年代は菓子パンの製造はストップしており、お菓子の種類も少なく、砂糖も配給制で自由に使えなかった中で、唯一製造されていたものが味噌パンであった。最盛期には長野県下で200店ほど製造していた。
 味噌パンの材料は、上白糖、小麦粉、信州の赤味噌、八ヶ岳山麓の水と膨張剤と非常にシンプルである。味噌パンの作り方は、小麦粉をドーナツ状にして、中心部に上白糖と膨張剤を水で溶いたものを注ぎ、その上に赤味噌を置き、ケッパーと呼ばれるヘラを使って素早く5分ほどこねる。生地を落着かせるために1時間ほど寝かせ、作業台で蕎麦をのばす要領で平らにする。最後に型抜きをしてオーブンで15分ほど焼き、冷ましてから袋詰めをする。出来上がるまでには、約4〜5時間かかる作業となる。
味噌パン
味噌パン
 製造で気をつける点は、味噌は気温が20℃以上になると発酵してしまい風味が変わるため、作業は気温が上がらない早朝5時から行っている。
 味噌パンの食感はカンパンのように硬い。しかし、食べると口の中に甘みと味噌の香りが広がり溶けていく感じで、懐かしい味がする。また水分が少ないため賞味期限が半年と長い。なお、松本で作られている味噌パンの特長は、葉書ぐらいの大きさで厚く、しっとりした食感である。賞味期限は水分が多いため約1ヶ月となっている。
 竹内氏は、その日の温度・湿度などによって配合を微妙に変える必要があるが、長年作りつづけていても、なかなか満足のいくものが作れない難しさがあると語る。
 現在は、味噌パンの味を引継いでくれる人がいないが、今後とも、昔ながらの味噌パンの味を守り、遠くから足を運んでくれる人がいる限り、作り続けたいと語っていた。
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自然が生み出す甘さ・砂糖と異性化糖の紹介
〜東海農政局消費者の部屋〜

展示会の様子
展示会の様子
 東海農政局では消費者と農林水産行政、さらに消費者と農業生産者、食品産業との交流を図るため「消費者の部屋」を設置し、農業、農政、食生活、食料品、食品表示等についての情報を提供しているほか、消費者からの相談や問い合わせに答えている。特に展示コーナーでは毎月テーマを変えて、パネル、パンフレット等により話題性のある展示を行っている。
 平成15年6月4日(水)〜27日(金)までの間、「甘味を正しく理解していますか〜自然が生み出す甘さ・砂糖と異性化糖の紹介〜」と題して当事業団が展示を行った。東海農政局展示コーナーへの出展は、今年で7回目を迎えた。
異性化糖を使用した食品
異性化糖を使用した食品
 展示内容は消費者に砂糖や糖化製品を身近に感じてもらおうと、砂糖の生産工程、砂糖と健康をテーマにしたパネルやてん菜・さとうきびの実物大模型の展示、砂糖や異性化糖を紹介したパンフレットや東海地方の精糖企業・異性化糖企業の会社案内の配布、異性化糖を使用した加工食品サンプルの展示や試供品の配布など、関係者の協力を得ながら行った。
 来場者からは、砂糖のパンフレットの内容が分かりやすいという声が多く、特に砂糖と健康の関係について興味を持った人が多かったようである。その他、さとうきびやてん菜の実物大の模型を見て、その品種や生産地について尋ねる人もいた。また、糖化製品を利用したサンプル配布も来場者に好評であった。
 このように砂糖と異性化糖、そして地元東海地方の企業を消費者の方々に広くPRし、この「消費者の部屋」の展示を機に、これらに関する認識を深めてもらいたいと感じた。
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砂糖の生理的効果に関する研究
〜県立広島女子大学〜

 県立広島女子大学生活科学部健康科学科の加藤研究室(臨床栄養学)では、健康づくりと、生活習慣病の予防と生活習慣の改善のための研究を行っているが、その一環として、砂糖の肝臓グリコーゲン(注1)合成促進についての研究を行っている。
 この研究は、空腹や激しい運動により枯渇したグリコーゲンを回復するためには、どのような種類の糖質の摂取が効果的なのかを検証するもので、肝臓グリコーゲンの場合、ブドウ糖や麦芽糖に比べ、砂糖がその合成に対しより高い効果を与えることが明らかになっている。
 この研究結果から、(1) 砂糖はグリコーゲン合成を促進することによって肝臓の働きを助ける (2) そのグリコーゲン増加によって、生体がブドウ糖を脳に供給しやすい環境ができることにより、脳の働きを助けることにつながることが明らかになったという。
 担当教官の加藤秀夫教授は、生体リズム科学、スポーツ生化学、臨床栄養学を専門分野とする医学博士で、地域の健康づくり支援と、生活習慣病の予防と生活習慣の改善に時間栄養学(注2)を導入した研究を展開し、同研究室所属の学生とともに地元のテレビ、ラジオ等に出演するなど様々な活動を行っている。
 今年3月には同研究室の大学院生と卒業生(全て管理栄養士)が中心となって健康に関するホームページ〔「みんなの家」(http://www.ishizue.com/minnanoie/)〕を開設し、インターネットを通じて健康に役立つ情報の発信も行っている。
 加藤教授によれば、「過剰摂取は砂糖に限らず身体にとって良くないことですが、砂糖を摂取すると脳へのエネルギー補給によって交通事故が減少することも統計的に明らかになっているし、砂糖は色々な意味ですぐれた甘味料だと思っています。何より、砂糖の存在により食べ物をおいしく食べられれば、気持ちが良い方向に向かうということで、それが結果的に身体にとっても良い影響をもたらすはずです。今後も『砂糖の良さを見直す』という観点で研究を続けていきたい。」と話していた。
 このような研究成果や情報発信により、砂糖についての理解が深まることを期待したい。
(注1) グリコーゲンとは、動物組織、特に肝臓と筋肉によく見出される多糖類。肝臓グリコーゲンは分解してグルコース(ブドウ糖)になり、血液に入り血中グルコース量を維持する。筋肉グリコーゲンは筋肉収縮のエネルギー源として働く。
(注2) 時間栄養学とは、食物摂取が生体に及ぼす効果を研究する際に、時間を一つの因子として取扱う学問分野。つまり、「何を、どのくらいの量食べるのか」ということに「いつ食べるのか」という要素も加えて研究する学問である。
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沖永良部島「仁志地区さとうきびつくろう会」の取り組み

 沖永良部島は、鹿児島市から南西へ約540km離れた洋上に位置し、和泊町と知名町の2町からなる比較的平坦な島で、農耕地に恵まれた周囲55.8kmの隆起珊瑚礁の島である。四季を通じた温暖な気候を活かし、さとうきびを基幹作物に、キク、ユリ及びグラジオラス等の花き、ばれいしょなどの野菜、並びに畜産等の農業が盛んに営まれている。同島でさとうきび生産の増産に向けて、地域一体となり意欲的に取り組んでいる大島郡和泊町仁志の「仁志地区さとうきびつくろう会」(坂本元明会長、会員18名)を紹介する。

「仁志地区さとうきびつくろう会」の概要
会長 坂本元明氏
「仁志地区さとうきびつくろう会」
会長 坂本元明氏
 同地区は和泊町の西部に位置し、さとうきびを中心(地区の全耕地面積のうち約70%)にユリ等の花き類と肉用牛を組み合わせた複合経営が定着している。しかしながら、さとうきびの収穫面積は、農業従事者の高齢化に伴う労働力不足の中で、労働集約型で収益性の高い花きへの転換や、春植の植付け時期に他作物と労力が競合する等の理由から、収穫面積は減少傾向で推移していた。また、酸性土壌等の不良土壌が点在していることや、海岸部に近いために台風による塩害を比較的受けやすいこと等から、さとうきびの生産性が低い実態にあった。このため、こうした状況を打開すべく、平成13年1月にさとうきび栽培における機械化体系の確立及び土づくりを積極的に推進し、さとうきび作の生産性向上と農家所得の増大を図ることを目的に、同地区のさとうきび栽培を農業経営の柱とする複合経営農家18戸をもって「仁志地区さとうきびつくろう会」が立ち上げられた。

緩効性肥料の導入と受託調苗班結成
 これまでの同会の主要な取り組みは (1) 緩効性肥料(植付時に基肥として全量を施肥)及び堆肥を用いた実証ほの設置(13年春植:250a、13年夏植:700a(緩効性肥料のみ))、(2) 14年2月に受託調苗班を結成したことである。
 (1) については、これまで同島のさとうきび作では、前作(花き等)の肥料分が畑にまだ残っているという考えから植付け時に基肥を施用するケースが少なく、植付け後、発芽してから追肥として肥料を施用するパターンが多かった。このため、鹿児島県沖永良部農業改良普及センター(早崎東内所長)では、植付け時に基肥を施用することが単収増のポイントであるとして営農指導を行っており、その一環として実証ほを設置したものである。その際、実証ほに施用する肥料については、追肥省略による省力化及び施肥効率の向上が期待できる緩効性肥料をいち早く導入した。その結果、同島におけるさとうきび生産の先進地区として他地区の農家が見学に訪れるようになり、島内で徐々に基肥を施用する栽培農家も見られる様になっていった。その後、会員間で、さとうきびの増産に向けた機運が更に高まり、(2) の受託調苗班の結成に至った。近年、さとうきびの調苗作業は、全茎式プランターの普及により省力化が図られつつあるものの、導入台数の関係等から、依然として苗となるさとうきびの刈り取りから切断までの作業を人手に頼らざるを得ない状況にある。また、春植時期(2月〜3月頃)は他作物との労力競合による人手不足、夏植時期(7月〜9月頃)は、夏場の酷暑の下で行わなければならず非常に労働負担が大きいこと等が、適期植付けを阻害する要因の一つと考えられている。また、同島では調苗作業を請け負う組織が少なかったことから、植付けが遅れる傾向にあった。そこで、同会は会員の妻を中心に6〜7名のグループで調苗から植付けまで一貫して行う受託調苗班を結成し、同地区内のみならず全島を対象に受託調苗作業を行い地域の需要に応えている。

着実に収穫面積と経営規模が拡大
有川健志氏
「和泊町生産実績第1位」 有川健志氏
 このような積極的な取り組みにより、(1) 同地区の沖永良部島さとうきび収穫面積に占める割合は表のとおり1%ほどで推移してきたが、14年産は2.1%、15年産(見込み)は2.8%と着実に収穫面積が増大、(2) 同地区の一戸当りの経営規模は147aで、全島平均75aの約2倍と規模拡大が進む、(3) 14/15年期に同会の会員である有川健志氏が生産量348tを上げ和泊町内で生産実績第1位に輝く、(4) 15年7月に開催された和泊町糖業振興会(会長・泉貞吉和泊町長)の定期総会において2年連続で優秀集落として表彰されるなど着実に成果が現われている。
 同島のさとうきび生産量は、地元甘しゃ糖工場の採算ラインとされる5万3千トンを3期連続で割り込むなど大変厳しい生産状況が続いているが、さとうきびの増産に向けて、同普及センターをはじめ、沖永良部さとうきび生産対策本部(本部長・井上吉偉JA知名町組合長)や地元関係者が一体となり、収穫面積の増大及び単収の向上に向けた取り組みが積極的に展開されている。ここ数年で植付け時に基肥を施用する農家が約4割に達し、まだ増加傾向にあることや15/16年期の春植の植付けが、近年にない早いペースで全体の約7割が適期である3月までに完了するなど、農家のさとうきび増産に対する認識が変わり、従前にも増して適期植付・適期肥培管理作業が進んできている。このような取り組みが功を奏し、15/16年期は豊作の年であるように期待したい。
沖永良部島さとうきび収穫面積の推移
(単位:ha)
生産年
項 目
10年産 11年産 12年産 13年産 14年産 15年産
(見込み)
全  島(A) 884.1 924.6 875.9 870.2 907.3 960.0
仁志地区(B) 10.6 11.0 12.7 14.7 18.6 26.6
(B)/(A)% 1.2 1.2 1.5 1.7 2.1 2.8
(注)和泊町及び知名町経済課調べ





平成14年産さとうきび生産実績(鹿児島県)

 鹿児島県農政部では、鹿児島県南西諸島における平成14年産さとうきび生産実績を取りまとめた。これによると、さとうきび収穫面積は9,876haで、前年産に比べて、500ha(5.3%)増加した。
 生産量は516,264トンで、前年産に比べて、122,029トン(19.1%)減少した。
 減収の原因は、収穫面積が前年に比べ増加したものの、14年7月に台風が集中的に襲来し、その後、7月下旬から8月下旬にかけて雨量が少なく長期干ばつとなり、さとうきびの生育が停滞していたところに、8月下旬の台風15号、9月上旬の台風16号が相次いで襲来し、さとうきびの倒伏、茎の折損、葉の裂傷及び塩害による被害のため、10a当たり収量が、5,227kgと前年産に比べて1,581kg(23.2%)下回ったためである。
平成14年産鹿児島県南西諸島さとうきび生産実績  
単位   収 穫 面 積:ha
10a当たり収量:kg
生 産 量:t
項目

島別
収穫面積 10a当たり
収量
生産量 前年産との比較
収穫面積 10a当たり
収量
生産量
 対差   対比  対比 対差  対比 
種子島 2,612 5,942 155,217 111
104.4

77.2
▲37,326
80.6
奄美大島 609 4,367 26,595 18 103.0 69.7 ▲10,443 71.8
喜界島 1,106 5,892 65,170 ▲28 97.5 77.6 ▲20,913 75.7
徳之島 4,059 4,707 191,059 382 110.4 72.7 ▲47,189 80.2
沖永良部島 907 5,393 48,935 37 104.3 90.8 ▲2,745 94.7
与論島 583 5,024 29,288 ▲20 96.7 92.6 ▲3,413 89.6
鹿児島県計 9,876 5,227 516,264 500 105.3 76.8 ▲122,029 80.9
注:鹿児島県農政部取りまとめの数値に基づく。
鹿児島県南西諸島さとうきび生産量の推移
  10年産 11年産 12年産 13年産 14年産
種子島
奄美大島
喜界島
徳之島
沖永良部島
与論島
194,155
37,591
90,690
244,974
70,293
41,031
162,104
30,237
76,765
235,479
63,216
43,605
195,254
30,744
77,503
207,400
44,075
34,020
192,543
37,038
86,083
238,248
51,680
32,701
155,217
26,595
65,170
191,059
48,935
29,288
鹿児島県計  678,734   611,406   588,996   638,293   516,264 
注:鹿児島県農政部取りまとめの数値に基づく。
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「バガス炭化によるバイオ・エコシステム」成果発表会(伊良部島)

連続式バガス炭化装置
連続式バガス炭化装置
 平成15年7月1日(火)に、伊良部島において内閣府沖縄総合事務局、県、町、村、県農業試験場、製糖企業、農業協同組合など多数の出席者のもと、「バガス炭化によるバイオエコシステム」成果報告会が開催された。
 この研究は、県や電力会社などの産業界が協力・推進し、「バイオエコシステム・プロジェクトチーム」(リーダー:琉球大学農学部教授 上野正実氏)が中心となり、バガス(さとうきびのしぼりかす)を炭化することよってできるバガス炭の普及と事業化の方策を探ることを目的としており、報告会ではバガス炭を製造する連続式バガス炭化装置をの説明をはじめとして、バガス炭を使った平成14年度の研究成果が発表されたので紹介する。
 連続式バガス炭化装置はバガス炭だけでなく、その製造過程で発生するガスを冷却することによってできる酢液(「ウージ酢」と命名)も作ることができる。
 これらのバガス炭やウージ酢には次のような働きがあることがわかった。
(1) バガス炭の特徴はpHが9.8と木炭に比べて高く、ミネラル成分のカリ成分や肥料成分が多く含まれ、肥料の代用となりうる。
(2) バガス炭は、保水性が木炭に比べ約500%という著しく高いという特徴を持つ。伊良部島を含む宮古地方の土壌(島尻マージ)は保水性が悪く、夏に干ばつを受けやすい。そこで、このバガス炭をほ場に撒くことにより、土壌の保水性が上昇し、干ばつ防止に有効的である。
バガス炭
バガス炭
(3) バガス炭には微生物の住処として提供できる小さな穴が無数にあり、微生物自体の働きを活性化できるという特徴を持つ。堆肥と混ぜて使うことにより通気性が向上し、それに伴い酸素の供給量が多くなり、堆肥の分解を促進する効果が得られる。
(4) ウージ酢は、100倍に薄めたものをほ場に撒くことにより、糖度が1度上昇するという結果が得られた。宮古地方の島尻マージ土壌地帯において配合肥料としてリンを与えると、カルシウムと結合して有効に利用できない難溶性リンが作られる。そこで、ウージ酢を土壌に撒くことにより、難溶性リンがカルシウムと遊離し溶け出し、さとうきびがリンを吸収し、生育促進及び糖度が上がるという結果に結びついた。
 その他ウージ酢には、クエン酸やポリフェノールなどの多くの有効成分が含まれており、その成分についても今後も継続して研究するとのことである。
 また、15年度以降は、引き続き展示ほ場を作り、さとうきび栽培への結果データを比較検討するのと同時に、バガス炭やウージ酢の製品化に関して、市場調査を行う予定とのことであった。





平成14/15年期さとうきび及び甘しゃ糖生産実績

 平成15年6月20日に沖縄県農林水産部より、平成14/15年期さとうきび及び甘しゃ糖生産実績が公表されたので紹介する。
 それによると、今期のさとうきび収穫面積は、春植・株出栽培の増加などにより1万3,894 ha(前期より501 ha、3.7%増)となった。
 これは、特に八重山地域で前期より302 ha(17.3%)の増加によるもので、沖縄本島及び周辺離島地域でも前期より198 ha(2.7%)の増加となり、さとうきび収穫面積の減少傾向に歯止めがかかったと見られる。
 10a当たり収量(単収)は、八重山地域を除く各地域で前期を下回り、県全体では、復帰後2番目に低い水準の5,830 kgとなり、前期の6,415 kgより9.1%減少した。
 単収低下の原因としては、台風4号、5号、7号、16号と度重なる台風襲来による被害や8月の小雨による被害等が挙げられる。沖縄本島、特に久米島では単収が過去最低を記録するなど、単収が大幅に落ち込む結果となった。
 このことから、さとうきび収穫面積の増加にもかかわらず、さとうきびの生産量は、81万50トンと前期の85万9,137トンに比べ4万9,087トン(5.7%)の減産となった。
 これを分みつ糖・含みつ糖原料別でみると、分みつ糖原料分が73万6,556トンで前期(81万1,063トン)に比べて7万4,507トン(9.2%)の減産に対し、含みつ糖原料分は7万3,494トンで前期(4万8,073トン)に比べて2万5,421トン(52.9%)の増産となった。
 これは、含みつ糖原料が集中している八重山地域においては、生育期に気象条件に恵まれたことなどにより、単収が高く豊作型で、石垣島においては13年ぶりにさとうきびの生産量が12万トン台となり、西表島においては製糖期間が5月末日まで(製糖日数145日)となるなど、地域によって明暗が分かれる結果となった。
 さとうきびの品質は、平均甘しゃ糖度14.2度となり、平成6/7年期の品質取引以降最も高かった前期の14.7度より0.5ポイント低下したものの、やや高い結果となった。
 甘しゃ糖の生産量は、9万7,847トンと前期の10万8,457トンに比べて1万610トン(9.8%)の減産となった。
 分みつ糖・含みつ糖別では、分みつ糖が8万7,560トンと前期に比べ1万3,879トン(13.7%)の減産に対し、含みつ糖は1万288トンと前期に比べ3,270トン(46.6%)の増産となった。
平成14年産沖縄県さとうきび及び甘しゃ糖生産実績(沖縄県調べ)
平成14年産沖縄県さとうきび及び甘しゃ糖生産実績(沖縄県調べ)
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