[2003年11月]
東京事務所
「砂糖と健康」
〜砂糖と食文化講座を栃木県鹿沼市で開催〜
ビートの模型を手に講演する橋本仁氏 |
平成15年8月27日(水)、栃木県鹿沼市の鹿沼市民文化センターにおいて「砂糖と食文化講座」を開催した。今回の講座は、消費科学連合会から紹介のあった同市内の消費者団体である「竹の会」と鹿沼市消費生活センターとが合同で企画した一般消費者向け教養講座を当事務所が共催する形で実施し、参加者は103名であった。これまで都内では砂糖に関する各種の講座が行われてきたが、栃木県下では初の開催であったため、主催者側より砂糖について広く・深くお話頂きたいとの要望があったので、砂糖を科学する会副代表の橋本仁氏に講師を依頼した。
橋本氏の講演は、毎日使っているグラニュー糖、上白糖、黒砂糖など色々な砂糖の製法と特性の違いから始まり、砂糖に対する様々な誤解や現代人の食生活の変化及びコンビニエンスストアーの台頭などに代表される流通システムの変化が日本人の砂糖消費量を減少させている要因であると続いた。さらに「砂糖はカルシウムを溶かす」等の誤解例を挙げ、それらの間違った説を科学的に検証し、否定された。その際、米国連邦食品医薬局(FDA)や国連食糧農業機関(FAO)、世界保険機関(WHO)など国際研究機関は砂糖を有害とはしていないことも併せて紹介された。それから話はメインテーマである“砂糖と健康の関係性”に入り、砂糖と血糖値の関係、砂糖の筋力面・精神面への効用等を述べられ、砂糖と糖尿病には直接的な関係が無いことや砂糖が脳のエネルギーとなること、うつ病の予防にも役立つことなどについて、約90分に渡ってスライドや模型を使用し具体例を挙げながら解説された。
講演後の質疑応答では、「上白糖と三温糖の違いは?」、「砂糖とオリゴ糖の違いは?」、「砂糖と人工甘味料の違いは?」、「砂糖とセロトニン(脳内物質)の関係は?」、「日常生活における砂糖の適性摂取量は?」など、講演の中で講師が述べた内容をさらに掘り下げて確認する質問が多く出された。
また、講演後に会場で行なったアンケート結果を見ると、約9割の方が今回初めて砂糖についての科学的な話を聞いたとしており、特に「砂糖の白色は漂白剤によるものではない」、「脳のエネルギー源は砂糖等に含まれるブドウ糖だけである」という点について参考になったとしていた。
当事務所管内の地方都市における砂糖と食文化講座の開催は、今回が初めてであったが、参加者の反響も大きかったので今後も機会を設けて実施していきたいと考えている。
大阪事務所
「食べる事は生きる事」
〜砂糖と食文化講座を大津市で開催〜
当事務所は平成15年9月19日(金)に大津市消費生活センターとの共催による「砂糖と食文化講座」を同センターにおいて開催した。
今回の講座は、同センターが一般消費者を対象に行う「命について−あなたの今と未来をみつめる−」をメインテーマとする連続講座「平成15年度消費生活講座」のうちの「健康」に関する講座としても位置付けられ、講師には滋賀県近江八幡市の菓子製造会社「株式会社たねや」の菓子職業訓練校事務長・たねや食環境研究室主任研究員であり、管理栄養士の肩書きを持つ佐藤成子氏を招き、「いつまでも命を輝かせる食環境、食べることは生きること、新しい食生活を目指して」をテーマに「食べる事は生きる事」と題して講演を行った。
講演中の佐藤成子氏 |
講師の佐藤氏は、病院の管理栄養士というサポート的な立場から菓子製造会社へ転身した経歴の持ち主で、講演の冒頭に自己紹介を兼ねて、病院食は一般に味気ないものが多く、医師にも栄養学の知識が乏しいなどの問題点を指摘しつつ、患者に対して味気ない病院食を提供するのではなく、「本物の食事・美味しい嗜好品」を提供することに努力してきた自己の活動について述べた。 次に「健康」の意味について、「健康とは、単に疾病がないとか虚弱でないというだけでなく、身体的、精神的及び社会的に完全に良好な状態をいう」と、WHOの定義を引用し、おいしいものを食べることが精神的にも重要な意味を持つことを強調した。
日本人の国民病とも言える糖尿病については、糖分の取りすぎから糖尿病になるのではないとその誤解を解くとともに、日常の食事から糖分を含めた炭水化物を60%は摂取すべきであると説明した。さらに、「食べる事」即ち、「正しい食事」を心掛けることこそが何よりも大事であり、しっかり食べることが人間を育てることになるという見解を示した。
今流行のサプリメントについては、複雑な代謝サイクルのなかでその位置づけを説明しつつ、体内合成されるものや、その形態では経口摂取しても意味の無いものがあり、CMやマスコミの情報を鵜呑みにすることへの危惧に言及した。
最後に現在、佐藤氏が研究中である嚥下困難者や糖尿病患者向け嗜好品(菓子)の開発について話があり、高齢者や病人が生きることへの喜びを感じる意味からも、甘くて美味しいもの=菓子の持つ役割は少なくないと述べた。
質疑応答では、BMI値の説明及び同値と食品交換表を使ってのエネルギー計算を踏まえた、簡易な食材組み立て法の説明が行われた。
今回の講座は、食べることの重要性及び高齢者や病人に対する砂糖を使った菓子などの嗜好品の重要性を訴えるとともに、糖尿病に対する正しい知識やサプリメントに対する問題点についても言及し、非常に幅広い内容であった。しかも、管理栄養士という立場からの説明は非常に具体的でわかりやすく、かつ、説得力を持ったものであり、講演終了後に出席者に対して行ったアンケートにおいても好評を博し、一般消費者の「正しく食べること」への関心の高さを認識した講演であった。
神戸事務所
「バランスの良い食生活における砂糖の役割」
〜砂糖と食文化講座を姫路市で開催〜
当事務所では、平成15年10月7日(火)に姫路市役所内において開催された姫路消費生活研究会の学習会において、砂糖と食文化講座を実施した。
同研究会は、昭和44年に設立された姫路市内の消費者団体で、会員相互の自主的な研究・学習活動を通じて生活科学の推進を図ることを目的に活動を行っている。年間10回程度開催している学習会では、さまざまな分野から講師を招いて生活に関する幅広い研究を行っており、機構から砂糖に関する話題提供を行った今回の学習会には会員34名が参加した。
講演は、当事務所の脇谷次長が「バランスの良い食生活における砂糖の役割」と題して行い、機構の業務・砂糖制度について簡単に説明した後、甘味資源作物、砂糖の種類、砂糖と健康との関わり、砂糖の効用等について解説し、併せて機構制作ビデオ上映も実施した。
この後行われた質疑応答では、出席者から別表のような質問が出され、それぞれの質問に対する回答を行って講座は終了した。
なお、講演終了後実施したアンケートでは、「砂糖はキレる原因ではない」「砂糖は漂白していない」等の項目について「今回の講座に参加して初めて知った」とする回答も多く、依然として砂糖に対する消費者の誤解が根強いことを示している。今後も同講座を含め様々な機会を通じ、消費者に対して砂糖の正しい知識を提供していくことの必要性を感じた。
講演中の講師 |
熱心に聴講する参加者 |
参加者との討議内容(要旨) |
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主な質問 |
回 答 |
1 |
黒砂糖と上白糖など普通の白い砂糖との違いについて教えて欲しい。 |
黒砂糖は製造工程に分蜜工程が含まれず、製品に蜜分が多く含まれるという特徴などがある。 |
2 |
保健所で「若い人がペットボトルなどの砂糖入り飲料を大量に摂るなどしてキレる例が最近多い」と指導されたが、真実はどうか。 |
清涼飲料などに偏った食生活は問題であるが、砂糖自体が「キレる」原因ではないことは明らか。 |
3 |
健康診断で「血糖値が高い」と言われ砂糖の代わりにみりんを使っているが、それで良いか。 |
総摂取カロリーの中で調整すれば、必ずしも砂糖だけを制限する必要はない。 |
4 |
砂糖とミネラルの関係を教えてほしい。 |
三温糖や黒砂糖は白い砂糖と比較するとミネラル分は多いが、それだけでは十分なミネラルが摂取できないため、他の食品と併せて総合的な栄養バランスを考えることが重要。 |
5 |
原産国によって砂糖の色は違うのか。 |
原料糖の段階では原産地によって色や成分に差があるが、色々な産地の原料糖が混ぜ合わされて精製され、製品は一定の品質のものとなる。 |
6 |
砂糖の賞味期限について教えて欲しい。 |
砂糖は品質の変化が極めて少ない食品なので、賞味期限の表示を省略している。 |
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福岡事務所
「お砂糖と和菓子」
〜砂糖と食文化講座を福岡市で開催〜
平成15年9月26日(金)、当事務所は、特定非営利活動法人コンシューマー福岡(阿部好子会長)と共催で砂糖と食文化講座「お砂糖と和菓子」を福岡市立婦人会館で開催した。
同講座は、消費者の持つ砂糖に対する誤解の払拭及び効用等の正しい知識の普及啓発を目的に毎年実施しているものであり、当日は、コンシューマー福岡の会員を中心に31名が参加した。
前半は福岡市和菓子組合役員の松本弘樹氏が「お砂糖と和菓子」と題して講演し、後半は同組合の藤村賢造氏、牟田明氏が講師に加わり家庭で出来る秋の和菓子教室を行った。
パンフレットを手に説明する三山所長 |
講師の松本弘樹氏 |
開会に先立ち、主催者を代表して当機構の三山福岡事務所長が開催趣旨等を説明するとともに、当機構製作のパンフレット『砂糖のあれこれ〜お砂糖Q&A〜』を用いて、我が国における砂糖生産量や輸入量、砂糖の一人当たり消費量は世界平均を下回っていること等を紹介し、最後に砂糖の価格調整制度に基づく当機構の役割について説明し、参加者である消費者の理解を求めた。
講演「お砂糖と和菓子」で松本氏は、日本人の食文化を支えた癒しのこころ、和菓子は、平和の世界に成り立つものであると述べ、我が国における糖業史を説明された。また、和菓子の甘みは糖度28度が基準となっており、完熟した柿の甘みに相当し、この甘みを出発点とし和菓子の世界が拡がっていったことを紹介した。さらに、日本人が甘みを表現するときに「まったり」「そこはかとない」等の美しい形容詞を数多く用いることから、非常に味覚が発達している国民であると説明された。
引き続き行われた和菓子教室では、秋を感じる「栗鹿の子」、和菓子の定番「練りきり」、「わらび餅」を作製した。講師は、参加者の手を取りながら熱心に指導し、特に練りきりは初心者向けのハンカチを使った茶巾絞りを試みた。初めは慣れない手つきであったが、幾つか作るうちに上手になっていき、歓声をあげる参加者もいた。講師は指導の中で和菓子における砂糖の特性について、保存性を高めたり、味わいや食感、仕上がりの美しさなどを演出することが出来ることを説明された。
終了後、参加者からは「和菓子はお店で購入するものだと思っていましたが、まさか、自分にも作れるなんて」「日頃、洋菓子は作りますが、和菓子が自分でも作れるなんて驚きました」「本物の職人さんから講習を受けることができ、大変楽しいひとときを過ごさせて頂きました」等の声が聞かれた。また、アンケートには、「甘い物というのは人を幸せな気持ちにしてくれます。家族みんなでお茶の時間を持てたらと思います」などの感想が寄せられた。爽やかに晴れ渡った秋の一日、同講座全体が終始参加者の笑顔で包まれ、まさに松本氏のいう和菓子の持つ「癒し」のこころが参加者に深く浸透したのではないかと感じられた。
和菓子教室の模様 |
左から練りきり、栗鹿の子、わらび餅 |
徳之島さとうきびジャンプ会の新会長紹介
徳之島のさとうきび畑(平成15年9月18日撮影) |
徳之島は、鹿児島市の南南西約470kmの太平洋と東シナ海の境界線上に位置し、徳之島町、天城町及び伊仙町の3町からなる島で、農耕地に恵まれた周囲89.1kmの古生層の陥落島である。四季を通じた温暖な気候を活かし、さとうきびを基幹作物に、ばれいしょなどの野菜及び畜産等の農業が盛んに営まれている。同島における平成14/15年期のさとうきびの生産量は191,059トンで、奄美群島の中で最大である。同生産量のうち約5%にあたる9,004トンを生産する等、同島のさとうきび作の中心的役割を担っている大規模農家集団「徳之島さとうきびジャンプ会」の会長に就任された市来昇氏(63歳)を取材したので紹介する。
徳之島さとうきびジャンプ会の概要
同島におけるさとうきび作は、近年、農業従事者の高齢化に伴う労働力不足等により栽培面積が年々減少傾向で推移してきた。この状況になんとか歯止めをかけ、併せて、担い手農家を育成するため、鹿児島県徳之島農業改良普及センター、鹿児島県農業試験場徳之島支場、各町農政課及び経済課、各JA、南西糖業株式会社等、多くの地元関係機関・団体の連携・支援により、平成6年12月に同会が結成された。会員資格は、さとうきびの収穫面積が5ha以上で、将来的には一戸当たりの生産量1,000トン以上を目指す意欲あるさとうきび作農家であることと、各町の推薦を必要とする。現在の会員数は、30名(徳之島町13名、天城町7名、伊仙町10名)で、全会員が認定農業者制度(注)に基づく認定を受けている。主要な活動は定例会や研修会の開催であり、会員間で営農技術面や経営面の問題点等について意見交換しながら、単収アップや品質向上に取り組んでいる。
なお、社団法人全国農業改良普及協会主催の平成14年度経営体育成普及活動全国コンクールにおいて、鹿児島県徳之島農業改良普及センターが報告した同会の育成支援に関する取組み「離島農業の新時代を拓く普及活動の展開」が高く評価され、農林水産大臣賞を受賞し、更なる発展が期待されている(本誌平成15年4月号で紹介)。
(注) 認定農業者制度とは、効率的かつ安定的で経営感覚に優れた農業者を育成する目的で、農業経営基盤強化促進法に基づき、農業者が自ら作成した農業経営改善計画を市町村が定めている基本構想に照らして市町村長が認定し、農業者の計画達成に向けて様々な支援措置を講じていく制度である。
会長就任に当たって
市来昇会長 |
市来昇会長は、地元の甘しゃ糖企業である南西糖業株式会社に入社以来、同社の社是である「地域農業政策の一翼を担う企業であることに責任と誇りを持ち、農工一体となって事業を推進することにより地域社会と社業の発展を期する」との揺るぎない信念に基づき、農務部門一筋に37年間歩まれ、平成13年に同社を退職された。同氏のさとうきび増産に向けた真摯な取組みは、生産農家をはじめ、地元関係機関・団体から厚い信頼を寄せられており、平成15年8月に開催された同会の定例会において、これまで同会の発展に尽力された大竹精一会長の勇退を受け、新会長に就任された。
抱負について、同会長は、「大竹会長は4期連続で1,000トン収穫を達成された大規模農家であるとともに、大変指導力のあった方であり、その後任なので不安もあるが、お引き受けした以上、中途半端な仕事はできない。自分自身、長年さとうきび作りをしていて、さとうきびの良さは十分認識しているつもりですし、島には無くてはならない作物です。会員の皆さんがさとうきび作りをして良かったと思えるように、支援をして頂いている関係機関・団体の方々への感謝の気持ちを忘れずに、また、お力をお借りしながら、一生懸命さとうきび増産に向けて努力していきたい」と、一語一語丁寧に語られた。
また、当面の課題については、「何といっても単収アップです。ほとんどの会員がハーベスタオペレータであり、地域の収穫作業の省力化に貢献されているが、近年、受託作業量が増大し、会員自身のほ場の適期管理作業が思うように実施できず、単収が伸び悩んでいる。先ず、自分自身のさとうきびをしっかり作ることを念頭に励んで頂き、地域ぐるみで効率的な受委託作業が行えるよう工夫を図っていきたい」としている。
最後に、今後の目標についてお聞きしたところ、「会員数を100名に増やし、ジャンプ会で安定的に50,000トン程度生産することが目標です。実現に向けて従前にも増して、地域のさとうきび生産農家の模範となるよう会員一丸となって努力していきたいと思っています。島では実年齢×0.7でみんな元気がありますよ。私は今63歳ですが若手の方です(笑)」と笑顔で語ってくれたのが印象的であった。
平成15/16年期の生産見込み量については、平成15年8月7日の大型で強い台風10号及び平成15年9月19日から20日にかけての強い台風15号が相次いで襲来し、同島の全ほ場が甚大な被害を受けており、平成15年10月1日現在の生産見込みでは、表のとおり197,548トンと見込まれ、2期連続の不作が懸念されているところである。
表 平成15/16年期さとうきび生産見込み(平成15年10月1日現在) |
(徳之島さとうきび生産対策本部調べ) |
那覇事務所
「砂糖の文化史と上手な使い方」
〜砂糖と食文化講座を那覇市で開催〜
平成15年9月10日(水)、当事務所主催による「砂糖と食文化講座」を那覇市内で開催した。講師には沖縄の食文化とその歴史に詳しい琉球大学名誉教授の金城須美子氏を招き、「砂糖の文化史と上手な使い方」と題した講演を行なった。当日は台風接近という悪天候にもかかわらず、一般消費者50名が参加した。
「砂糖の文化史」について金城氏は、15世紀の半ばに琉球王国では甘蔗が栽培され、黒砂糖の製法が伝わったという説を紹介した。沖縄では本土よりも早く、黒砂糖の製法が伝わったことにより、黒砂糖は沖縄の特産物として、琉球王府への租税や換金産物として財政を支える重要な輸出品になったが、当時は貴重な食材であり、もっぱら薬として使われ、当時の中国との交易品には氷砂糖や白砂糖などもみられたと説明され、最近の県民調査では黒砂糖は、お菓子に使う、煮物、お茶請けとしてそのまま食べ、料理に使う習慣が非常に少なく、砂糖は貴重なものという考え方が根強いと語った。砂糖づくりには制約があることや農民は自家の黒糖であっても勝手に売買ができなかったこと、琉球王府に納めた後のわずかな残りの砂糖を大事に貯えておき、薬用または菓子やお茶請けとして馴染んできた嗜好食品として使われたことを説明された。
「砂糖の使い方」については、沖縄の料理に砂糖を調味料として用いる例が少なく、中国の料理の影響を受けた琉球料理が揚げ物や炒め物の調理法が多いことを取り上げた。炒め物は伝統料理のチャンプルーが代表的であるが、その炒め物や揚げ物の摂り過ぎが肥満の原因になっていることや肥満が沖縄県の平均寿命を下降させている要因のひとつになっているのではないかとし、油の摂取量を押さえるためには同じ材料でも和え物や煮物など調理の形態を変える工夫が必要なことを強調された。また、沖縄県が5年に一回行っている栄養調査によると、県全体平均で1人1日当たりの砂糖摂取量は5.2gと非常に少ない結果であるにもかかわらず、沖縄県では肥満が多くなっているのは脂肪が原因であり、砂糖が肥満の原因ではないことを指摘された。
講座終了後行ったアンケートでは講座全体を通して「砂糖を敬遠しなくてもよいとわかった」「今後は砂糖を含め、食生活を見直したい」「講演がわかりやすかった」等の評価が寄せられ、今後の取り上げてもらいたいテーマとしては「砂糖を使った琉球料理」「砂糖と生活習慣病について」などがあった。
講演中の様子やアンケートの結果から、今回の講座が参加者に対して砂糖や食を見直す機会の提供が出来たものと考え、今後の講座の運営に生かしていきたい。
第30回サトウキビ試験成績発表会の開催
平成15年9月9日(火)、沖縄蔗作研究協会主催による第30回サトウキビ試験成績発表会が、那覇市内のメルパルク沖縄で開催された。
当日は、琉球大学農学部、沖縄総合事務局農林水産部や国の各研究機関、鹿児島、沖縄の行政機関や沖縄県農業試験場、各農業改良普及センター、各地区のさとうきび生産振興対策協議会、製糖企業、さとうきび生産法人、各市町村役場などさとうきび関係者約150名の参加者があった。
発表会の内容は、前半は、八重山地域に適する奨励品種候補「KF93T−509」の紹介、さとうきび機械化増収技術のポイント、サトウキビ側枝苗栽培技術の農家への普及等17件の研究成果が報告された。また、後半は特別講演として、九州沖縄農業研究センター作物機能開発部・さとうきび育種研究室長の杉本明氏による「沖縄県下におけるさとうきび少収の実態と栽培改善の方向」と沖縄県糖業振興協会さとうきび技術指導嘱託員の島袋正樹氏による「サトウキビ生産現場における生産技術の諸問題とその対応策及び環境基盤整備」と題する講演が行われ、活発な議論が行なわれた。
杉本明氏は、一般には春植が効率的で、夏植が非効率といわれているが、沖縄のさとうきび生産の実情を統計的に見ると必ずしもそうなってはいないと前起きし、作型は地域の実情に応じて選択すべきであるとの考えを紹介した。また、さとうきび栽培改善において、糖度改善は容易ではないものの、収量を向上させることは可能であることから、夏植が比較的安定多収である利点を生かし、少収地域における収量改善のために夏植株出多収栽培法の研究が最適であるとの報告がなされた。さらに現地での調査から、少収の原因としては、欠株、伸長不良、倒伏等があり、これらの対策としては、ほ場の改良、肥培環境の改良、栽培システムの改良、作物の改良というジャンルの中から低コストで環境保全型そして生産農家で実行の可能性が高いものを選択して行くべきであるとの見解を示した。
しかしながら、これまでの努力にもかかわらず、生産量が減少傾向にあるのは、抜本的な技術の見直をしない限り厳しい状況を乗り越えることができず、夏植型1年栽培の導入や副産物の高付加化に基づく気象災害抵抗性株出多収栽培等、現地に通用する技術を確立することが急務の課題であるとした。
次に、島袋正樹氏は、最初に、農家側の視点からさとうきび作りを考えると、さとうきび関係者がそれぞれの立場で、農家が行動しやすい環境づくりの重要性を説いた。
さとうきび栽培の生産技術の諸問題とその対応策については、品種・作型の最適なバランスを取り、土作りについては、堆肥、緑肥等の有機物の投入、深耕、深度破砕を行い、苗作りについては、春植用苗については5月〜7月、夏植用苗は2月〜4月に植え付けて供給することが大切であるとした。原料用きびの植付時期は、春植は1〜3月、夏植は8〜10月に行い、畝幅については小型収穫機に併せ125センチから130センチが適切で、理想としては昔の120センチに戻すべきとの考えを示した。株出管理については、収穫と株出管理を一緒に行なうべきだと主張した。環境基盤整備については、年間降水量約2千ミリの有効利用として、水資源の集積池・ファームボンドの建設と耕地を石のない深い土壌に再整備し、小型収穫機、肥培管理機、苗取り機、植付機等の高度化一貫作業体系の環境整備を行い、収穫機、管理機、高精度全茎植付機をまとめて整備すると結んだ。