[2004年3月]
札幌事務所
平成15年産てん菜の生産と受渡し実績
社団法人北海道てん菜協会のとりまとめによると、平成15年産のてん菜の収穫は、昨年10月上旬から11月中旬まで行なわれ、工場受入は平成15年12月28日に終了した。
今年度産の平均糖分は18.0%で、平成5年産と同水準となった。1ha当たりの平均収量は61.30トンで、平成14年産の61.60トンに次いで2番目となり、昨年に引き続き高水準の年となった。
高水準の要因としては、移植作業が一部の地域を除き平年並みに終了し、移植後のてん菜の生育が少雨かつ多照気味に推移したことが挙げられる。
また、夏の高温はてん菜にとって糖分を蓄積し、根の発達を抑制する傾向にあるが、昨年6月下旬から8月末までは冷夏であったことや適切な防除が行われ褐斑病、葉腐病、根腐病などの病害虫の発生が少なかったことにより、生育後期まで葉の活性が保たれ根中糖分の蓄積につながったことなども多糖多収の要因と考えられている。
てん菜の平均糖分及び単収
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平成15年産てん菜の生産と受渡し実績
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資料:北海道てん菜協会 |
「てん菜から砂糖作りを実習」
〜北海道勇払郡厚真町立厚真中央小学校〜
平成16年1月22日(木)、北海道勇払郡厚真町立厚真中央小学校の3年生22名が「てん菜から砂糖作り」を体験した。同小学校の生徒が総合学習の時間を活用して、自分たちの町でよく栽培されているいくつかの農作物の中からてん菜を選び、生徒自身が同校の農園で植付け・栽培管理・収穫までを行い、てん菜50kgを収穫した。
当日は、てん菜の集荷区域である北海道糖業株式会社道央地区センターの根津所長と柏木氏が講師となり、生徒たちは5班のグループに分かれ、各班ごとにてん菜の千切りから始め、約72℃の温度管理をしながら大鍋で煮詰め、残り糟を取り出し、煮詰め汁へ消石灰の投入、炭酸飽充、ろ紙でろ過という工程を白下糖になるまで生徒が中心になって行った。
生徒たちは、講師や小学校の先生からアドバイスを受けながらも、はじめて行うてん菜の千切りや温度管理等に手を焼いていたが、生き生きと砂糖作りを行っていた。完成した白下糖をなめて、甘いことに嬉しさいっぱいのようで、「これが本当に砂糖になるの?」と尋ねる生徒もいた。翌日、白下糖に粉糖を掻き混ぜて一晩寝かせた後、脱水機にかけて白砂糖を作り上げた。
後日、生徒たちはホットケーキに砂糖をかけて試食し、一年間の集大成とした。校長先生の話では、「子供が昔のように親の手伝いをすることが少なくなっているので、学校で実習を兼ねた経験が大人になってから役に立つのではないか」とのことであった。
消石灰の投入 |
完成した白下糖をなめて |
東京事務所
「砂糖シンポジウム〜砂糖は笑顔のエネルギー〜」が東京で開催
平成16年1月20日(火)、東京都武蔵野市の吉祥寺第一ホテルにて、(社)糖業協会、精糖工業会、砂糖を科学する会が主催する「砂糖シンポジウム〜砂糖は笑顔のエネルギー〜」が開催された。参加者は239名で、主に40代から50代の健康に関心のある主婦層が中心であった。
講演に先立ち、横浜国際バイオ研究所取締役会長橋本仁氏より挨拶があり、引き続き「心と体の健康」と題した講演がなされ、次に料理・菓子研究家 城川朝氏の「心に届く贈り物」と題した講演がなされた。
橋本氏は、「砂糖を食べると太る、糖尿病になる、砂糖を食べると行動異常を起す」といった砂糖に対する根強い誤解を払拭するために、科学的なデータや実証事例等を用い、参加者にわかりやすい講演をされた。また、最近文部科学省、厚生労働省、農林水産省では知育、徳育、体育の他に「食育」も重要視していることから、学校教育においても栄養学についての知識が必要であると指摘された。
次に、料理・菓子研究家の城川朝氏の講演がなされ、沖縄県石垣島の一般家庭で作られている素朴なお菓子の実例を挙げ、手作りのお菓子の良さを紹介した。お菓子の持つ「甘み」は、お菓子を食べた人に「幸せな気持ち」をもたらし、日常生活をおくる上で大切なことであると述べた。また、昨今、家庭で料理しなくても、デパート、スーパーやコンビニエンスストアに行けば様々な食べ物が揃っているが、「外食」「中食」と家庭で作る料理との違いは「温度」であり、作るプロセスでの「匂い」が家庭を和ませるものであると考えられることから、今改めて家庭で作られる料理である「内食」を見直してもらいたいと述べた。
講演後の質疑応答では、「砂糖は1日どれくらい摂取してもよいのか」「三温糖はなぜグラニュー糖や上白糖と比べて価格が高いのか」「サトウキビで作った砂糖はビートで作った砂糖とどう違うのか」などが出され、改めて消費者の「砂糖と健康との関係」についての関心の高さがうかがえた。
「食と健康セミナー」をさいたま市で開催
情報提供を行う岡野氏
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平成16年1月21日(水)、当機構東京事務所は、埼玉県さいたま市のさいたま新都心合同庁舎2号館5A研修室において、農林水産省が提唱する毎年1月の「食を考える月間」運動の一環として、独立行政法人農林水産消費技術センター(以下「センター」と略す)との共催により「食と健康セミナー」を開催した。当日は埼玉県下の栄養士や食生活改善推進員、国及び県の行政関係者、食関係団体職員及び一般消費者約100名が出席した。
本セミナーは、栄養士等の食の専門家に、JAS法(農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律)と砂糖に係る正しい知識を提供することを目的として、センターから「食品のトレーサビリティとJAS規格」について説明し、浜松医科大学名誉教授の高田明和氏から「砂糖摂取と健康」をテーマに講演を行った。
はじめに、センター規格指導課の岡野敬一主任調査官が最近何かと話題に上るトレーサビリティ
(注1)の現状について紹介し、これに関連して「牛の個体識別のための情報の管理及び伝達に関する特別措置法」と平成15年12月に制度化した「生産情報公表牛肉のJAS規格
(注2)」について解説した。
講演中の高田氏
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続いて行われた高田氏の講演では、砂糖の摂取量・摂取方法の違いが身体にどのような影響を及ぼすのかについて、肥満及び糖尿病、さらには脳との関係を例にあげ、これらに係る最新の研究データ等を示しながら、砂糖が直接的には肥満や糖尿病と関係ないことや脳のエネルギー・安定剤となることなどを述べた。最後に高田氏は、「食品に対する安全・安心の情報を提供することは行政や学者の役割であるが、最終的に何をどれだけ摂取するかということについては自己責任であり、個々人の人生観によって決められるものである」と締めくくった。
今回のセミナーは、食に関わる者の出席が半数以上であったため、講演後の質疑応答も専門的な質問や意見が多かった。また、セミナー終了後に、栄養指導や地域の勉強会において活用したいとして、当機構が作成したパンフレット「栄養指導に活きる 砂糖の正しい知識」に対する追加資料請求が多かったことも特徴的であった。
今後も今回のような他機関との共催を行うことによって、一般消費者に対してだけでなく、幅広い分野の専門家に対しても砂糖の正しい情報を提供する機会を増やしていきたい。
(注1) |
消費者の食品に対する信頼を確保するため、食品原材料の出所や食品製造元、販売先等の記録を記帳・保管し、不測の事態が発生した際の原因究明や問題食品の追跡・回収を容易にすること |
(注2) |
センターが実施する検査に合格した牛肉に、JASマークをつけることを認めること |
横浜事務所
「栄養と肥満についての誤解」
〜砂糖科学会議を横浜鶴屋町で開催〜
平成16年1月9日(金)、横浜市鶴屋町で社団法人糖業協会、精糖工業会、砂糖を科学する会が主催する砂糖科学会議が開催された。今回は「栄養と肥満についての誤解」をテーマに、講師には浜松医科大学名誉教授の高田明和氏と帝京大学教授の寺本民生氏を迎え、栄養士、一般消費者などを対象に講演及び質疑応答が行われた。
高田氏は「食べ物の誤解」と題し、肥満や糖尿病は脂質の摂取量の増加に伴う食生活の変化や運動不足などによるもので、砂糖とは直接関係ないことを国民栄養調査などのデータを引用して説明した。また、砂糖はぶどう糖と果糖から成っており、ぶどう糖を摂取すると血糖値が上り、記憶力を高めるたり痴呆予防に効果があることや、トリプトファン(アミノ酸)が多く含まれている牛乳と砂糖を一緒に摂取することによりぶどう糖がトリプトファンを脳内に運びセロトニンが作られ、満腹感、睡眠の誘発、うつ病予防や消化活動の促進に効果があることを説明された。最後に、これらの効果を利用した「砂糖ミルクダイエット」(注)を紹介し、砂糖の誤解を払拭するための実例になりうるものであると付け加えた。
寺本氏は「高脂血症診療の最近の話題−生活習慣の改善と薬物療法−」と題し、日本人の食事内容が大きく変わってきており、脂肪の摂取量が圧倒的に増えていることを指摘し、脂肪の摂取量が増えると糖質の摂取量が減少するのが特徴的であり、脂肪の摂取量が多い食事は、高脂血症、悪玉コレステロール(LDL)の上昇と善玉コレステロール(HDL)の低下を招き、さらには動脈硬化、心筋梗塞などのリスクの可能性が高くなることを説明された。動脈硬化の抑制は、薬物療法でも可能であるが、それよりも生活習慣の改善を重要視し、片寄った食事は摂らないように注意し、総摂取エネルギーの栄養素配分の適正化(脂肪20〜25%、複合糖質は60%、蛋白質15〜20%、植物繊維25g以上、アルコール25g以下、砂糖(単糖類)80〜100キロカロリー)に努めるよう心がけ、運動についても、週3回以上は1日30〜60分の散歩を行うことで、中性脂肪が下がるとともに善玉コレステロールが上がるため、動脈硬化の予防に非常に有効であることを説明された。また、自分の体重を把握し、健康維持に努めるなどの自己管理の必要性についても述べた。
講演終了後の質疑応答では、「最近アメリカで話題となっている肉と野菜だけ摂るダイエットについて」「受験勉強中に砂糖入りのホットミルクを飲むことについて」などといったダイエットや砂糖の摂取における効用についての質問、意見等が出され、参加者には正しいダイエットや砂糖の知識が浸透したものと思われる。
(注) |
砂糖ミルクダイエットとは、間食をやめ、夕食の15〜30分前に200ccの牛乳に砂糖を小さじ一杯入れて飲むダイエット方法である。 |
名古屋事務所
「新しい食品安全行政のしくみ」の講演会の開催
〜愛知県岡崎市〜
講演中の西郷氏 |
平成16年1月20日(火)、当機構名古屋事務所は、西三河地区の消費者代表の人たちを対象に、愛知県西三河事務所(岡崎市)において、講演会を開催した。
この講演会は、昨今、国民の食生活をとりまく状況の変化、食の安全を脅かす事件の頻発、食の安全に関する国際的な動向等から、平成15年7月に「食品安全基本法」が施行されたことに伴い、同法に基づいて新たな食品安全行政を展開していくために内閣府に食品安全委員会を設置されたことを受け、当事務所が一般消費者に対し、食の安全・安心に関する話題提供の場を設けたものである。講師には、内閣府食品安全委員会事務局リスクコミュニケーション官の西郷正道氏を招き、食品安全基本法の趣旨及び食品安全委員会の役割等について講演を行った。同氏の講演要旨は以下のとおりである。
はじめに
寿命には平均寿命と健康寿命がある。我が国の平均寿命は男性78.1歳、女性84.9歳となり世界一の長寿国となった。これは長い目、広い視野でみると、医療の進歩のみならず、食べ物が大変良くなってきたことが影響しているのではないかと考えられる。
食品に含まれる危害の多様化・複雑化
(1) 安くておいしいものを作るために、農薬の開発、遺伝子組み換え、バイオ技術の活用、食のグローバル化が進んできたこと
(2) 人獣共通感染症から人への感染。生物には種の壁があるのだが、人間にうつらないと言われていた病気の発生や変異あるいは常在菌による食中毒の発生
(3) 分析機器の精度向上。それまで測定することが困難だったものまで測定することが可能となったため、「残留ゼロ」が事実上存在しなくなったこと
消費者の感情意識
消費者アンケートによると、約9割の人が食品に対して何らかの不安を持っていると答えており、中でも最も不安があるのは食品添加物で、次いで遺伝子組み換え食品、環境ホルモン、残留農薬となっている。
参加者の様子 |
食品安全モニター・アンケート調査
食品安全委員会が平成15年9月に実施した同モニターのアンケート結果によると、食品の安全性確保に対する取り組みが大方評価されているものの、食品安全委員会に対する評価は、若い人が他の年代より低い結果となった。また食品の生産から消費に至るまでの過程で、安全性における最も注意が必要な段階は、生産の段階であるとの意見が多かった。
健全な食品から不健全な食品への変化
食品が悪くなる原因は、A微生物や害虫などによる生物的変質要因B酸化、変色などによる化学的変質要因C乾燥、吸湿などによる物理的変質要因が挙げられる。遺伝子組み換えや農薬によるもので、食品事故はまだ起こった報告はない。食品事故は農薬などよりむしろ、食中毒によるものが多いことを理解してほしい。
リスクの許容範囲
絶対に安全な食料はない。リスクをどこまで許容するかの問題だ。リスクとは確率的なものが存在する。その許容範囲をどこまでにするかは社会が決めていかなければならない。
食品安全基本法の制定
食品の安全性に関する法律は数多くあったが、それらは、食品の安全性が当然確保されていることを前提としており、消費者の健康に悪影響がないようにと法律に明文化したものがなかった。このため、消費者の健康保護を最優先とした制度を統一的に整える必要性から食品安全基本法が制定された。
その基本理念は
(1) 国民の健康の保護が最も重要であるという基本的認識の下に、必要な措置が行われること
(2) 食品供給過程の各段階において、安全性を確保すること
(3) 国民の健康への悪影響が未然に防止されるようにすることを旨として、国際的動向及び国民の意見に十分配慮しつつ、科学的知見に基づいて必要な措置が行われること
となっている。
世界の動向
食品に関する国際的な考え方は、食品の安全に「絶対」はなく、リスクの存在を前提に制御するという考え方が一般的になってきており、ヨーロッパを中心に独立した食品安全機関が設立されてきた。
食品安全委員会
食品安全委員会は、国民の健康の保護が最も重要であるという基本認識の下、規制や指導等のリスク管理を行う関係行政機関から独立して、科学的知見に基づき客観的かつ中立公正にリスク評価を行う機関である。委員会は7人の委員から構成されており、その下に専門委員会が設置されている。また、食品安全委員会では一般消費者からの食品の安全性に関する問い合わせや情報提供、意見を寄せていただくために「食の安全ダイヤル」(電話番号 03-5251-9220・9221)を設置している。
このような講演会を通じ、多くの消費者が食の安全に関する理解を深めてもらえることを願ってやまない。
食の理解を深めよう!
〜愛知県名古屋市で移動消費者の部屋を開催〜
農政局からの話題提供 |
農林水産省では毎年1月を「食を考える月間」として国、地方公共団体、関係団体が連携して、食生活や食の安全・安心について理解してもらうための各種取り組みを全国的に実施している。
平成16年1月22日(木)、名古屋市消費生活センターにおいて、東海農政局と当機構名古屋事務所の共催により、この「食を考える月間」に合わせたイベントとして「移動消費者の部屋」を開催した。この中で東海農政局からは、食の安全・安心に関する話題提供がなされた後、当機構からは「砂糖と食文化講座」の一環として、砂糖の正しい知識についての話題提供、消費者との意見交換、砂糖と味噌、豆等を使った調理実習が行われた。
移動消費者の部屋は、東海地域の消費者等に対し、農林水産行政一般について情報提供・啓発を行うとともに、消費者に軸足をおいた農林水産行政の推進を図ることを目的に行っている。今回の開設は「食育」を推進している中、地産地消、地域の伝統料理を紹介し、消費者の食に対する信頼回復を図るとともに、東海農政局消費者の部屋のPRにも努めた。
参加者との意見交換会 |
東海農政局からは食のグローバル化が進む中、食生活の乱れを背景に平成12年に「食生活指針」が決議され、食生活改善に関する普及・啓発を行ってきているが、さらに、食に関する信頼の欠如、リスクに関する消費者の認識不足から、食の安心・安全に関わる普及・啓発も行い、その知識の習得を含め「食育」という大きな概念で推進していく必要があるとの話題提供があった。
当機構名古屋事務所は、砂糖の健康との関わりやその働きについて (1) 砂糖はご飯と同じ糖質で、でんぷんよりも吸収が早い即効性のあるエネルギー源であり、特に脳のエネルギー源としては重要であること (2) 糖尿病とは過剰に摂取したエネルギーや運動不足等が原因で発症することが多く、砂糖だけが直接的な原因ではないこと (3) 虫歯は歯に残った食物を栄養源としてミュータンス菌が増殖し、ミュータンス菌が酸を出すために虫歯になるので、砂糖に限らず食物を口内に残すことなく、歯磨きで常に清潔に保つことで虫歯を予防できること等を説明し、砂糖に対する誤解の払拭に努め、参加者の理解を求めた。また砂糖の調理上での働きについては、(1) 砂糖は肉等たんぱく質に熱を加えても硬くなりにくく、たんぱく質の凝固抑制作用があること (2) 砂糖には水を抱えて離さない保水性が優れていること (3) ジャム等を作るときに果物に砂糖を加えると、果実のペクチンと反応するために、ゼリー状になること (4) パンを作る際、砂糖を加えるとイースト菌の活動を促進する作用があること等を紹介した。
料理を指導する岡田氏 |
調理実習においては「輝きネット・あいちの技人」
(注)に認定されている郷土料理研究家、岡田一枝氏を講師として、「切り込みだんごの味噌煮込み」「切干大根の煮物」「糖衣菓子」等6品を調理した。参加者は講師の指導を受けながら楽しそうに取り組むとともに、調理に使われた地域の素材に改めてその大切さを見直していた様子がうかがえた。
東海農政局、当機構からの話題提供、調理実習後に参加者からの意見交換では、「食育を推進してくために協力したい」、「子育て中の若い母親に講座を受けさせ実践してほしい」等、「食育」を前向きに推進する必要性があるという意見が多く出されるとともに、砂糖については、砂糖と健康との関係、調理上の役割・効用等を改めて認識した意見が多かった。
このような消費者との意見交換や調理実習を踏まえ、砂糖に関する正しい知識の普及は当然のことながら、食育の推進・普及も行っていく必要があると感じた。
(注) |
愛知県が認定する団体「農村輝きネット・あいち」が農山村において生活改善活動を行っている県内生活改善実行グループのグループ員のうち、優れた農業及び暮らしの技術を伝承できる方を技人として認定し、講師等で派遣を通じて都市との交流や後の世代への伝承を図る。 |
岡山出張所
2005年岡山国体を盛り上げよう!
〜岡山国体キャラクター煎餅の紹介〜
煎餅の製造風景 |
岡山県倉敷市の知的障害者授産施設「ひまわりの園」では、同園の食品班19名が2005年に開催される岡山国体を盛り上げるため、同国体のマスコットキャラクター「ももっち」をあしらった煎餅の製造販売を行い、その収益で社会復帰を目指している。
同園は、菓子製造、花き栽培及び藍染め製品等を中心とした各種作業を通して、施設生の各種能力及び技術向上に必要な支援や援助を実施しており、障害の程度に関わらず施設生が社会復帰できることを目的としている。
同煎餅の主な原料としては、上白糖、黒糖、小麦粉及び卵が使用され、原料の4割程度を砂糖が占めている。砂糖を使用することで、甘さやコクを引き出すとともに保水性の向上、防腐効果、メイラード反応による着色及び酸化防止効果など砂糖の効果を最大限に利用している。
製造方法は、生地を練る、生地を焼く、包装、出荷販売の4工程に分かれ、作業時間は朝9時から夕方5時までで、一袋16枚入りの煎餅100袋を完成させるには2日間を要する。製造段階で困難な作業は、前日の生地を練る工程で固まった砂糖を根気よく木のへらでさらさらの状態になるまで潰し、時間をかけて丁寧に生地を練っていく作業と同国体のキャラクターを焼き上がった煎餅に烙印する作業である。出荷先は、同市内の寺院やスーパー等で開催されるバザー及び岡山県下20店舗の土産物店等で、しつこくない甘さで消費者にも人気の高い煎餅として売上げも好調のようである。食品班ではこの他にも砂糖を使用した煎餅を7種類製造している。
食品班責任者の岸本氏は、「施設生は、このような煎餅を製造販売できる能力はあります。これをきっかけに、地域社会に復帰してほしいと思います。また、知的障害者はただ施設の中に居るだけではなく、一生懸命労働しているということを健常者に理解してほしい。施設生が心を込めて製造した煎餅で岡山国体を盛り上げたい。」と語ってくれた。
岡山国体のマスコットキャラクター 「ももっち」をあしらった煎餅 |
福岡事務所
「2004 考えよう食と農 in 九州農政局」を熊本市で開催
大串和紀九州農政局長 |
平成16年1月21日(水)、農林水産省九州農政局(大串和紀局長)は、毎年1月の「食を考える月間」に併せ、食の安全・安心、地産地消、農業・農村の多面的機能に関する情報を一般消費者に分かり易く提供し、広く「食」について考えてもらうことを目的とした「2004 考えよう食と農 in 九州農政局」を熊本合同庁舎(熊本市)で開催し、一般消費者、学校関係者、栄養士、マスコミ及び農業者など多くの来場者で賑わった。また、併せて、食の安全・安心に関するセミナー、食と農と健康を考えるシンポジウム、バイオマス・地産地消についての講演が開催され、活発な質疑、意見交換が行われた。
なお、当機構福岡事務所は、同農政局の協力を得てメイン会場の一角で、当機構や砂糖を科学する会が製作した砂糖に関する正しい知識を深めてもらうためのパンフレットの展示、配布を行った。
同イベントの開催にあたり大串和紀九州農政局長は、「我が国初のBSEの発生等、食を巡る様々な問題が生じ、それを機会に消費者の食に対する安全・安心についての関心が非常に高まって参りました。農林水産省もそれまではどちらかと言えば生産重視の農政でしたが、今後は消費者に軸足を置いた農政を行っていく方向に大きく舵取りをした訳でございます。その大きな柱が食の安全・安心の確保です。また、国民の皆様に食べ物の安全、食べ物の選び方など、食べ物について関心をもっていただくために『食育
(注)』に取り組むことになり、昨年から毎年1月を『食を考える月間』とし、国を挙げて『食育』を推進して行くことになりました。今日のイベントは、同月間の一環として当農政局が企画したものです。皆様にとって食の安全・安心を考える、あるいは都市と農村の交流、農業・農村の現状、食育についてご理解をいただく良いチャンスになればと考えています」と挨拶し、今後の農政に対して一層の理解と協力を求めた。
多くの来場者で賑わう会場 |
会場内は、「見る」「知る」「味わう」「学ぶ」の4つのコンセプトで展示が行われ、一部を紹介すると、「見る」コーナーでは、農村・森林の美しい写真が展示され、農村・森林の果たす役割について理解を深めることができ、「知る」コーナーでは、我が国の農業の現状、食料の自給率やWTO交渉の問題、九州の農林水産業の概況についてのパネルが展示され、「味わう」コーナーでは、米粉パンの試食、地元産農産物を使用した「だご汁」が提供され、「学ぶ」コーナーでは、小学生を対象とした講座や森をテーマにした紙芝居、野菜の重量当てや米粒の数当てなど楽しみながら学べるコーナーなど、限られたスペースで各コーナー毎に工夫がされており、担当者に熱心に質問する来場者も多く、食と農の関わりについて身近に考えることができる大変貴重な機会となった。
当機構は、中期目標において情報収集提供業務については「食料・農業・農村基本計画に定める食料消費の姿、食品の健康に果たす役割等についての理解を深めるとともに、基本計画に掲げる農業生産に関する課題の解決、食品安全に係るリスクコミュニケーションの充実等に資するよう実施する」ことと定められている。同業務を適切、効果的に実施する観点から、当事務所は同農政局と連携して、食の安全・安心に関する情報、農産物の自給率確保の重要性等について積極的に情報提供を行うこととしたい。
(注) |
食育とは、「食」に関する情報を正しく理解し、健康で安全・安心な生活の実現を図るために、「食生活指針」の実践に加え、家庭や学校教育をはじめとする地域社会等の様々な場面において、望ましい食生活の実現や「食」の安全、地域の食文化について、情報の交流や体験の場を提供するとともに、子供の頃から「食」の安全、「食」の選び方や組合せ方等を教え、「食」について関心を持ち、自ら考える習慣を身につけさせるための取組みをいう。 |
那覇事務所
「農林水産フェアおきなわ2004」を宜野湾市で開催
平成16年2月7日(土)、8日(日)の2日間、宜野湾市にある沖縄コンベンションセンターにおいて沖縄県等が主催の「農林水産フェアおきなわ2004」が開催された。このフェアは、県内で生産される農林水産物を一同に集め展示し、消費拡大推進、生産振興を図ることを目的として実施され、今年で2回目となる。会場には沖縄を代表する花や野菜の品評会や沖縄県産野菜を使っての料理講習等、様々なコーナーが設けられた。
同フェアで、県糖業農産課等が中心となり「沖縄にとって、大切なさとうきび・糖業」と題して、さとうきびや糖業、黒砂糖に関するコーナーを設けた。さとうきびの様々な品種や北海道より取り寄せたてん菜、様々な種類の砂糖の展示と並んで、当機構が作成した砂糖の生産から健康への関わりを紹介したパネルやビデオの展示やパンフレットの配布を行った。ある来場者からは展示を見て「砂糖に対する悪いイメージを解消できた」などの声や「どのようにして砂糖ができるか」など製造工程に関する質問も多かった。また、島別の様々な黒砂糖や原料糖も試食用に展示し、小さな子供からお年寄りまで幅広い来場者から好評を得た。
屋外のコーナーでは、さとうきびの苗やさとうきびをしぼって煮詰めた温かいジュース「さーたー湯」が無料で提供された。開催当日は冷え込んだため、多くの来場者に喜ばれた。
8日(日)には、沖縄コンベンションセンター敷地内にある宜野湾市立体育館(同時開催の第1回沖縄県協同組合まつり会場)において、沖縄県、農林水産フェアおきなわ推進本部と当機構那覇事務所の共催により、横浜バイオ研究所会長 橋本仁氏を講師に招き「砂糖と健康について」と題した講演会を開催した。これは「砂糖と食文化講座」の一環として行ったもので、当日は一般消費者約150名の参加があった。橋本氏は、肥満や糖尿病と砂糖の関係や脳と砂糖の関係などを沖縄の最近の平均寿命の話しも交え、わかりやすく説明された。
講演のアンケート結果によると、講座全体を通して「ダイエットと砂糖が関係ないと聞けて安心した。今後は使っていきたい」「子供に対して砂糖がいかに体によいのかを説明できる自信がついた」「他の市町村でも同じ講座を開催して欲しい」等の評価が寄せられた。講演中の様子やアンケートの結果から、多くの参加者に対して砂糖や食を見直す機会を提供できたものと考えられる。
さとうきび・糖業コーナー |
身も心も温まる「さーたー湯」 |