[2004年12月]
札幌事務所
菓子大国とかちフェスティバルの開催
〜優れた食材と技にこだわる自慢のお菓子が勢揃い〜
会場の様子 |
平成16年10月28日(木)〜11月3日(水)、帯広市内において、「菓子大国とかちフェスティバル〜優れた食材と技にこだわる自慢のお菓子が勢揃い〜」(主催:帯広洋菓子協会・北海道菓子工業組合十勝支部・菓子大国とかちフェスティバル実行委員会)が開催された。
甘い香りが広がった会場では、クレープやどら焼き、シュークリームなどの実演販売が行われており、開催期間中会場は好みの菓子を求める人で連日盛況であったが、特に30日(土)には1万人を超える来場があった。
事務局長を努める(株)高田菊次郎商店取締役副社長の小野寺欣也氏によると、この催し物は8年前に札幌市内の百貨店で2月の雪祭りに開催された『北海道の温泉めぐりと味覚祭り』において『とかち菓子フェスティバル』がきっかけとのことである。その後回数を重ね、今回で6回目を迎えた。
十勝地方は、砂糖(てん菜糖)、乳製品、小麦、小豆の産地であり、菓子の基本的な材料を地元で調達できることから、菓子作りが盛んな地域であることでも知られている。その理由は、和菓子から始まったと言われているが、現在は和菓子のみならず、洋菓子作りも盛んである。
フェスティバルには帯広洋菓子協会、北海道菓子工業組合十勝支部会員の約半数の24社が一堂に集まるため、一般の人の反応を直接うかがい知ることができる機会でもあり、参加会員も良い意味での刺激を受けるようである。
今後も地元の原料を利用し、「菓子大国とかち」の名を高めるとともに会員の技術向上を図って欲しいものである。
東京事務所
砂糖科学会議の開催
〜砂糖を通じて食の安心・安全を考える〜
平成16年10月25日(月)、有楽町の糖業会館において、(社) 糖業協会、精糖工業会、砂糖を科学する会の主催により砂糖科学会議が開催された。これは消費者への直接的な情報発信の窓口である栄養士をはじめとする専門家に対して、砂糖の正しい情報提供を行う会議を開催することにより砂糖の安全性を理解してもらうとともに、砂糖に対する誤解の払拭を目的に開催されるもので、今年度は今回の開催含めて首都圏を中心に4回行われる予定となっている。
今年度第一回目の砂糖科学会議には、弘前大学客員教授の伊東汎氏と精糖工業会技術研究所所長の斉藤祥治氏を講師に迎え、講演とパネルデスカッションが行われた。
以下講演の概要を紹介する。
砂糖は有害ではなく有益なもの
伊東氏は、「食品の安全性〜砂糖の機能性〜」と題し、食品の安全性、砂糖の効果、効能などについて述べられた。
まず、食品の安全性についての行政の取り組みについて、農林水産省、厚生労働省、内閣府食品安全委員会の役割を説明された。また、最近の傾向として、生活習慣病を防ぐために健康食品などへの依存が見られるが、様々な情報が氾濫する中、各人が責任を持って自分の食生活と健康を維持・管理することが重要であると指摘した。
砂糖の機能性については、砂糖と免疫増強、肥満、糖尿病、虫歯の関係を中心に、砂糖を摂取することによる心と体へのプラス作用について解説された。例えば、ブドウ糖と果糖でできている砂糖を補給すれば、脳に素早くエネルギーを送ることができるため、砂糖の適度な摂取が不可欠であると強調するとともに、砂糖を上手に摂取すれば少量を食べただけでも満腹感を覚え、食べ過ぎを防ぐことができることや、運動後に砂糖を摂取することにより、質の良い筋肉作りにも効果的であることなどを説明された。
砂糖の安心・安全について考える
次に、斉藤氏が「食品の安心・安全〜今考えること〜」と題し、食品と砂糖を取り巻く食品衛生の現状と今後について解説された。
まず、今、食の安心・安全を考える上で重要なことは、過去に行われてきた食品の安全対策だけでは対応できなくなり、新たに安心という概念が出てきたことであると述べた。食品の安心とは食品の作り方や製造方法の公表、つまり製造過程における透明性の確保であることを説明された。また、食品添加物、残留農薬についての規制について解説し、三温糖や中双糖を製造する際に着色するためにカラメルが使われるが、その場合は食品添加物使用の表示義務に該当することや、農薬については、さとうきびおよびてん菜の栽培において使用する農薬の使用基準は決められており、製品としての砂糖には分析の結果、残留農薬は認められず、砂糖は安全な食品であることを説明した。
最後に砂糖の品質表示については、「食品衛生法」と「JAS法」に規定されていることや、砂糖は品質の変化が少なく安定した製品であることから、賞味期限の表示については省略できることを説明するとともに、今後精糖業界でもトレーサビリティシステムの導入について検討されていることを紹介した。
横浜事務所
第2回共同ワークショップ
「農産物の安全・安心の取り組み〜農場から食卓まで〜」が横浜市で開催
平成16年10月7日(木)、横浜市横浜第2合同庁舎において、独立行政法人農林水産消費技術センターなどの主催により、第2回共同ワークショップ「農産物の安全・安心の取り組み〜農場から食卓まで〜」が開催された。
これは、昨年7月に食品安全基本法が施行され、わが国の食品安全行政の仕組みが大きく変化したことに伴い、同消費技術センターが食品に関する各種の調査分析を通じ、リスク情報の把握に努め、科学的観点から一般消費者に情報発信するなどの事業を展開しているところであり、同事業の一環として開催されたものである。
当日は、基調講演の講師に相模女子大学短期大学部食物栄養学科金井美恵子助教授を迎え、その後行われたパネルディスカッションには、行政、消費者、生産者などそれぞれの代表者がパネリストとして参加し、討論を通じて行政の施策や農産物の安全・安心の取り組みについて紹介した。
以下、基調講演の概要などを紹介する。
食品による危害
一般消費者にとって、かつての不安要因の大きなものは細菌などによる食中毒であったが、現在は、それらに加えてBSE問題、鳥インフルエンザウィルスなど感染症に対する関心が大きなものとなっている。
また、平成15年の食品安全委員会の調査結果によると、食品の安全性の観点から、不安を感じているものについて、国政モニターは農薬、食品添加物を挙げているが、食品の専門家といわれている食品安全モニターも農薬、食品添加物を挙げるとともに輸入食品、健康食品、飼料、機具・容器包装も同様に挙げており、この結果から農薬や食品添加物に対する不信感は根強いものがある。
しかし、1日摂取許容量「ADI(Acceptable Daily Intake)」を守れば、農薬および食品添加物を毎日摂取しても、人体への影響はないと考えられている。
食品安全基本法
BSE問題や偽装表示の問題など食の安全・安心に対する国民の不安が高まる中で、政府は食品安全基本法を平成15年5月に制定し、同法に基づき食品安全委員会を発足させた。同法の基本理念は、「国民の健康保護を最優先とする食品の安全措置」、「食品供給行程の全ての段階での安全性確保」、「国際動向および国民の意見に配慮しつつ、科学的知見に基づいた安全の確保」である。
また、国、地方公共団体、食品関係企業の責務や消費者自身の役割も明記されており、消費者としても、食品の多くを輸入しているわが国の現状を踏まえ、食品添加物、農薬などに対し、国際的安全性、知見について適切に対応していく必要がある。
また、パネルディスカッションでは、神奈川県が県民に対し、情報提供、意見募集などを行う観点から、今年7月に「神奈川食の安全・安心ダイヤル」を開設し、一般消費者の食に関する疑問や相談に答えるとともに、今後はホームページを通じて、わかりやすい情報提供を行っていきたいと説明がなされた。
名古屋事務所
氷砂糖で作られた和菓子 〜加賀福〜
石川県は個性あふれる和菓子が多数存在している土地である。前田利家を藩祖とする加賀藩では、お茶にゆかりのある人を多く召抱えるなど、茶道に熱心であり、その茶道に欠かせなかったのがお茶請けの和菓子であった。加賀藩では慶弔などの儀礼的な場はもちろんのこと、季節ごとの日常生活の中にもさまざまな菓子が用いられていたと伝えられている。
この石川県で氷砂糖を使ってつくられたあんころ餅「加賀福」(製造元:御菓子城加賀藩)を紹介する。
この餅は、お菓子の国石川県らしいお菓子をと20年ほど前に考案、製造された。素材には、なるべく地元で採れるものが使われている。
材料の餅米には主に石川県産「かぐら米」と福井県産「白山」とをブレンドして使われており、小豆は十勝産エリモ小豆を使うなど、厳選された素材が使われている。また、保存料は一切使用されていない。
作り方は小豆を洗い、つぶして実と皮に分ける。その実の部分だけを煮た後に、氷砂糖を加え1持間半ほど餡を練る。一晩ねかせた後、突いたお餅とあわせて出来上がる。このように仕込みから出来上がるまでには、2日間かかる。
「加賀福」の糖度は63度程度となっており、他の和菓子に比べ少し甘いはずであるが、氷砂糖を使っているためか甘さがくどくなく、口あたりもさらりとしているため、甘いものが苦手な人でもいくらでも食べることができそうである。
加賀福餅の製造元では、「今後も北陸地方の素材を使い、特色のあるお菓子を考案・製造し続けていきたい」とのことであった。
「瀬戸市みんなの生活展」に砂糖のコーナーを出展
平成16年11月6日(土)、瀬戸市および瀬戸市消費者団体連絡会が主催する「瀬戸市みんなの生活展」が瀬戸市文化センターにおいて開催され、地元住民など約1,500人の来場者でにぎわった。今年で31回目を迎える同生活展は、「学ぼう未来を見通す目」をテーマに、消費者団体が日常の生活において調査した研究活動の成果発表や、ごみ・食生活などの身近な問題を取り上げるなどして、瀬戸市民の消費者意識の高揚と啓発を推進するために行われている。
展示の様子 |
出展者のうち、瀬戸市内の消費者団体の出展では、リサイクルへの取り組み状況や身近なところから自然環境の保全を訴えるなど、環境問題に対する意識が高く現れていた。その他東海農政局からは、世界のお米の紹介や食品の表示制度の解説など、また地元あいち尾東農協からは地元野菜のPRなどが行われていた。
当機構からは「砂糖を正しく理解していますか」というテーマの下、てん菜およびさとうきびの実物をはじめ、様々な種類の砂糖の紹介や機構が作成したパネルの展示やパンフレットの配布を行うとともに、来場者に砂糖に関する正しい知識を持ってもらうための情報提供を行った。
瀬戸市付近では35年ほど前まではさとうきびの栽培が盛んに行われており、さとうきびを手に「よくおやつとしてかじった」「昔は家で黒砂糖を作っていた」などと懐かしがる年配者が多かった。また、「もう一度さとうきびを植えてみたい」「子供とさとうきびを育ててみたい」との声が多く寄せられたため、展示してあったさとうきびの配布も行った。
当機構のコーナーを訪れた来場者からは「砂糖は漂白しているのか」といった質問が多く寄せられたため、当機構職員がパネルやパンフレットを使いながら説明を行い、誤った認識を改めていただいた。
今回の砂糖コーナーの出展を通して、来場者の砂糖に対する質問などから砂糖の誤解を払拭するために、砂糖ならびに甘味資源作物の正しい知識の普及をさらに行う必要性を感じるとともに、今後も地道な活動を展開していきたいと考えている。
大阪事務所
関西砂糖特約店協同組合が講演会を開催
平成16年10月29日(金)、大阪市において関西砂糖特約店協同組合による秋季総員懇談会ならびに講演会が、関西地区の特約店、代理店、国産糖企業および精製糖企業など多数参加の下、開催された。春の通常総会に続き、農林水産省生産局特産振興課の久保田課長補佐を講師に迎え、「新砂糖年度を迎えて」と題した講演が行われた。
以下、講演会の概要を紹介する。
講演中の久保田氏 |
農林水産省では、新たな「食料・農業・農村基本計画」策定作業に係る本年8月の中間論点整理により一定の方向性が決まる中、砂糖についても同月に「砂糖及びでん粉に関する検討会」が設置され、糖価調整制度の見直しに向けた検討が始まっている。
砂糖および甘味資源作物における課題として、砂糖需要の低迷、大幅な内外価格差、精製糖および国産糖企業の合理化問題が挙げられるが、これらに本年7月のWTO農業交渉における枠組み合意がなされるなど国際化が進展する中、内外価格差の是正や糖価調整制度の在り方が問われ、改革議論は急ピッチで進められているところである。
WTO体制の下、欧米諸国は黄色の政策(削減対象となっている政策)から緑の政策(削減対象外の政策)などへの転換を進めている。わが国の糖価調整制度や麦、大豆、でん粉原料用いもなど個別品目毎に行っている諸制度は黄色の政策となっており、これらを極力緑の政策へ転換していくことが必要となっている。
このように国際ルールに適応しつつ、品目毎でなく担い手の経営に着目し、構造改革などを促進する観点から、“経営安定対策(品目横断的対策など)”への転換について検討がなされており、その方向に沿って糖価調整制度の見直しを行うべく、現在検討している。ただし、さとうきびについては、生産構造や地域の特殊な事情を踏まえた品目別対応が適当ではないかと考えている。
甘味資源作物については、市場価格が存在せず、農家は収穫量に応じた手取り価格を保証されていることなどから、砂糖の需給事情を反映した適正な生産の確保を図るべく市場原理の導入などについて検討されている。さらに、海外では生産割当、販売割当などの政策が行われているが、わが国には存在しないことなどを踏まえた検討が行われることも考えられる。
今後のスケジュールとしては、本年12月中旬に中間論点整理が行われた後、来年3月に基本計画全体に即した取りまとめが行われ、制度の見直しが行われることとなっている。
神戸事務所
西宮発 元気のでる和菓子・洋菓子店
〜市内の菓子店を西宮市と商工会議所がハンドブックで紹介〜
西宮市と同商工会議所は、食文化の振興を通じた産業振興を目的に、平成12年度から「ブランドインキュベーション事業」に取り組み、洋菓子、フレンチ・イタリアン料理店、日本酒といった市内の食品産業を西宮のブランドとして内外にアピールしてきた。
洋菓子に関しては、市民を対象に3000個のケーキバイキングを行う「西宮洋菓子園遊会」(本誌地域だより2001年1月号および12月号で紹介)などを毎年開催しており、好評を得ている。
また、昨年度からは新たに和菓子をブランドに加え今年は10月23日(土)〜24日(日)に阪神西宮駅前のエビスタ西宮において、「第2回西宮和菓子まつり」を開催した。このイベントでは、市内の和菓子店12店による展示販売のほか、上生菓子の製作実演、野点のお茶席や尺八の演奏など五感で和菓子を楽しめる内容となった。
西宮市内の菓子店を紹介したハンドブック |
このように同市と商工会議所では、市内の菓子関連産業について積極的な振興策を展開しているが、最近新たに市内の和洋菓子店を紹介するハンドブックを作製した。ハンドブックはA6判80ページで、和菓子店25店、洋菓子店40店が紹介されている。その中では、各店の概要や自慢の一品などが掲載されており、「お店の人の顔が見えるハンドブック」をポイントに作製したという。
作製部数は2万部で、上記和菓子イベントの来場者に配布したほか、市役所や商工会議所、ハンドブック掲載店でも配布中である。
同市の担当者によれば「ハンドブックは、市内の和菓子店と洋菓子店を1冊にまとめて紹介した甘党のバイブルです。予算の制限はあるが、今後もさまざまな手法により市内の菓子関連産業の振興を図っていきたい」とのことであった。「西宮ブランド和菓子・洋菓子」の今後の成長(インキュベイト)が期待される。
福岡事務所
「砂糖と健康セミナー」が福岡市で開催
平成16年10月14日(木)、砂糖を科学する会の主催により「砂糖と健康セミナー」が福岡市において開催された。
会場の様子 |
同セミナーは、9月に千葉で開催されたセミナーに引き続き今年度第2回目であり、講師には前回に引き続き、横浜バイオ研究所会長で農学博士の橋本仁氏を講師に迎えて行われた。
橋本氏は、日本において1人当たりの砂糖消費量が減少していることを説明し、その理由として、肥満や糖尿病の原因であるなどの「健康上の誤解」、外食の増加・既製品の内食化などの「食生活の変化」、スーパーマーケット、コンビニエンスストアの定着などの「流通システムの発達」の三点を挙げた。
特に砂糖に関する健康上の誤解については、砂糖の摂取に関する俗説への見解として「食べ物と肥満」、「肥満と運動量」、「体内において糖質が消化される過程」、「糖尿病と砂糖」といった観点から、砂糖が肥満や糖尿病の直接の原因ではないことをわかりやすく説明した。
講演後に行われた質疑応答では、「砂糖に賞味期限はあるのか」、「砂糖の種類によってミネラルなどの栄養分に差があるのか」、「疲労時に砂糖を摂ると良いと言われているが体のどこに良いのか」、などの質問が閉会間際まで数多く出され、セミナーのテーマである「砂糖と健康」について消費者の関心の高さがうかがえた。
「砂糖市民シンポジウム〜砂糖は笑顔のエネルギー〜」が
福岡市で開催
平成16年10月15日(金)、福岡市において、(社)糖業協会、精糖工業会、砂糖を科学する会の主催により「砂糖市民シンポジウム〜砂糖は笑顔のエネルギー〜」が開催された。同シンポジウムは、9月に札幌で開催されたシンポジウムに次いで今年度2回目の開催であり、講師には東京女子医科大学名誉教授・和洋女子大学大学院教授の村田光範氏と浜松医科大学教授・医学博士の大関武彦氏を迎えて行われた。
はじめに村田氏が「最近の生活習慣と子どもの健康障害〜子どもの肥満を中心に〜」をテーマに、専門家の立場から子どもの肥満の現状と課題、最近の生活習慣が子どもへ及ぼす影響について講演を行った。村田氏は近年、ストレスを感じている子どもが増加傾向にあることを指摘した上で、その原因として、子どもの能力評価が学力中心となっていることに加えて、運動不足、夜型生活への移行、朝食抜きの食生活の増加といった生活習慣の変化を挙げ、体を動かすことや早寝早起き型生活の確立により、子どもの生活習慣を改善していくことが重要であると説明した。
次いで大関氏が「子どもから大人へ〜からだと心の発育と食生活〜」をテーマに、小児期から思春期にかけての体の成長や成熟と心の問題、食欲不振症の話題を中心に、その正しい理解と注意点について講演を行った。大関氏は、日本人の栄養摂取量について、脂肪の摂取量が増加している反面、糖質の摂取量が減少していることを指摘し、栄養の観点から望ましい子どもの生活を実現するためには、栄養摂取量・カロリーバランスが適正であること、栄養素のバランスが適正であること、家族で食事を摂ること、食物が安全であることが重要であると説明した。
講演後に行われた質疑応答では、「疲労回復に砂糖を摂ると良いことは知っているが、その他にも砂糖の良いところを知りたい」、「脂肪を燃やすために砂糖を摂ると良いと聞いたが本当か」、「合成甘味料の安全性について知りたい」といった質問などが数多く出された。
いずれの講演とも、初心者にもわかりやすく、参加者にとって子どもの健康と食生活、栄養に関して正しい知識を得る良い機会になったと推察される。
会場の様子 |
熱心に講演に聴き入る参加者 |
那覇事務所
日本作物学会公開シンポジュウムの開催
〜サトウキビをエネルギーに〜
平成16年10月20日(水)、宜野湾市の沖縄コンベンションセンターにおいて、日本作物学会と沖縄総合事務局の共催により、日本作物学会公開シンポジュウム(バイオマス・ニッポン総合戦略「東アジアにおけるバイオマス生産による地球環境保全」)と題したシンポジュウムが開催された。
わが国は、京都議定書の締結により、1990年の温室効果ガス排出量に比べ6%の温室効果ガス削減を、2008年から2012年までの第1次約束期間中に達成することが課せられていることから、現在地球温暖化対策としてバイオマス(生物資源)の総合的な利活用が注目されている。
今回のシンポジュウムでは、バイオマスを従来の食料・木材としての利用にとどまらず、新たな観点からエネルギーまたは製品としての活用を推進していくことにより、これまでの石炭や石油などの化石資源に依存することなく、持続的に発展可能な社会を実現するための道筋として平成14年12月に閣議決定された「バイオマス・ニッポン総合戦略」の趣旨を踏まえ、県内外の研究者による講演やサトウキビを中心に生物資源をエネルギーとして利活用するバイオマスの可能性についての研究報告が行われた。
研究成果の発表に先立ち、農林水産省官房環境政策課の佐藤正康氏が「バイオマス・ニッポン総合戦略」の紹介を行った。
佐藤氏は、岩手県での木質ペレット燃料や家畜排泄物活用などの例を挙げ「バイオマス利用は循環型社会の確立、農山村の活性化などに有効であり資源を無駄なく利用するための仕組み作りが課題となる」と語った。
次に、九州沖縄農研センターの杉本明作物部長が、「超バイオマス生産サトウキビモンスターケーンの開発」と題した講演を行い、安定生産を目指した高バイオマスサトウキビの開発により、厳しい環境地域での砂糖・エネルギー複合生産原料としての利用が期待できる」と提言した。
さらに、琉球大農学部の川満芳信助教授が、バガス(さとうきびの絞りかす)の利用方法について、バガスを炭化することにより得られるバガス炭を土壌改良剤として利用し、さとうきびの増産にもつながる「バイオ・エコシステム」について説明した。特に、炭化にこだわった理由として、サトウキビ葉の高い光合成能力によって固定したCO2を封じ込める唯一の方法を紹介し、さらに作物による地球環境浄化機能についても説明を行った。
最後に、「ストックホルム青少年水大賞」(通称「水のノーベル賞」)を受賞した宮古農林高校の生徒による「宮古島の地下水はバイオマスで保全」と題した研究成果の発表も行われた。
今回のシンポジュウムを通じて、サトウキビが地球環境へ貢献できる重要な作物であるという認識が深まるとともに、世界中で生産されている12.7億トンのサトウキビがこれらの研究成果によって地球規模で進行中の温暖化抑制につながることに期待したい。
<参考>
バイオマスとは、生物資源(bio)の量(mass)の概念で「再生可能な、生物由来の有機性資源で化石資源を除いたもの」である。
バイオマスを燃焼させることにより放出される二酸化炭素(CO2)は、生物の成長過程で葉の光合成により大気中から吸収したCO2であることから、バイオマスをエネルギーとして利用しても、私たちのライフサイクルの中では大気中のCO2を増加させないという特性を有している。
また、バイオマスは植物が光合成により生成した有機物であるため、私たちのライフサイクルの中で、生命と太陽エネルギーがある限り持続的に再生可能な資源とされる。
このため、化石資源由来のエネルギーや製品をバイオマスに代替することにより、地球温暖化を引き起こす温室効果ガスのひとつであるCO2の排出削減に大きく貢献することができるというものである。
「第28回沖縄の産業まつり」の開催
平成16年10月22日(金)〜24日(日)の3日間、那覇市の奥武山公園・沖縄県立武道館において、沖縄の産業まつり実行委員会主催により「第28回沖縄の産業まつり」が開催された。
今年の産業まつりは、今回から県工業会を中心とする民間主導の運営に移行し、「県産品 未来を広げる道しるべ」をテーマに開催された。
開幕に先立ちオープニングセレモニーが行われ、島袋周仁実行委員会会長から「本県の第1次産業から第3次産業までを総合的に紹介し、生産者の意欲と県産品の販路拡大につなげたい」と挨拶があった。同産業まつりは、県内500社が出展し、沖縄ビジネスフェアー展が開かれた主会場の県立武道館では、情報産業、沖縄の伝統工芸品、新商品、産学共同技術開発展などが行われ、来場者は興味深そうに見学していた。
屋外では、県産品の展示即売会も行われ、県内産の食品やかりゆしウェアなども展示即売され、多くの人でにぎわっていた。
砂糖関係では、黒砂糖工業会から出展があり、パンフレットの配布、黒砂糖製品の展示即売および黒砂糖製造の実演が行われていた。
例年、黒砂糖製造の実演は好評を博しており、懐かしい黒砂糖の甘い香りに引き寄せられるようにブースには多くの人が訪れていた。
実演で使われたさとうきびは、県農業試験場から約1トン提供してもらい、開催期間中は1日3回の製造実演が予定されているとのことであり、担当者が汗だくになりながら製造実演を行っていた。
さとうきびから黒砂糖ができるまで約3時間かかるとのことで、訪れた子ともたちは出来上がるのを待ちきれないように「何時にできるのか」とさかんに聞いていたのが印象的だった。
また、年配の方々からは、口々に「黒砂糖は昔よく家庭でも作られていたものだった」と懐かしがる声が数多く聞かれた。
実演担当者は、「興味を持って多くの人が訪れてくれありがたい。これを機会に沖縄県の『さとうきび』への理解が深まれば」と話してくれた。
会場の様子 |
甘い香りが漂う黒砂糖の実演 |