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地域だより[2005年10月]

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最終更新日:2010年3月6日

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地域だより
[2005年10月]

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ビートファイバー入りパンの紹介

 北海道では、道産の食材を利用した食品開発の試みが各地で行われている。その中で、てん菜の食物繊維を利用したビートファイバー入りパンが登場したので紹介する。
 このビートファイバー入りパンを製造したのは、本社を札幌市に持つ京田食品(株)である。同社の担当者によると、せっかく地元で採れる小麦があるのだから、その小麦を使えないかと考えていたところに、道産の小麦を紹介されたことがきっかけで、それ以後、できる限り小麦以外でも道産の食材を用いてパンや菓子などを製造している。
 ビートファイバー入りパンもその試みの一つで、このパンには、地元北海道のてん菜から抽出した食物繊維が、パン100g中3g以上含まれている。毎日の主食から食物繊維を摂取できるようにとのコンセプトで開発され、食パン、フランスパン生地のバタール、お菓子感覚で味わえるスコーンが販売されている。また、ビートファイバー以外の原料も、塩以外はすべて北海道産の原料が使われており、バタールは仕込み水に北海道で取れた海洋深層水を使うことですべてが道産となっている。
 このビートファイバー入りパンの開発にあたり苦労した点は、ビートファイバーは、イーストの発酵には大きな影響を与えなかったが、ビートファイバー自体の酸味やくせをどこまで残して活かすかということを半年以上もの試行を繰り返した結果、商品化にたどり着いたことだそうである。その結果、ビートファイバーが水分を吸収し、焼成後も水分を離さないため、通常よりもしっとりとして弾力のあるパンに仕上がっている。現在、ビートファイバーを多く加えた商品の開発や、ビートファイバーの機能についてのデータ試験なども行われている。
 昨年、秋の販売当初には、店頭にてん菜を並べてアピールし、既に、繰り返し購入する固定客もついているとのことである。今まで、てん菜からは砂糖以外にもビートオリゴ糖などが開発されているが、さらなる新しい産物に注目していきたい。
(菊池)


ビートファイバー入りパン

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石川の素材を取り入れた和菓子
〜石川県菓子工業組合青年部の統一菓子〜

 平成6年に開催された「金沢菓子博‘94」に合わせて設立された石川県菓子工業組合青年部(石川菓業青年会)では、石川県の素材(幸)を取り入れた和菓子、『旨石』を昨年より製作・販売しているので紹介したい。

 石川菓業青年会では、昨年、創立10周年を迎えるにあたり、同会での共通の創作菓子を作ろうという声が会員から自然と起こり、製作することとなった。同会技術向上委員会長村本賢治氏が中心となり、石川の素材・食材を取り入れ、試作・研究を重ねて完成した。また、お菓子の包装、帯シール、ポスターのデザインも会員の意見で決定した。
 完成した和菓子は『旨石』と名づけられた。『旨石』とは、「旨い」と「石川」、そして石川の方言「うまいし食べて」などの意味が込められている。加賀丸いもを練り込み蒸揚げたカステラ風の生地に、ようかんをサンドしたカステラのイメージで作られており、ようかんに入れる素材を替えることによって、3種類の『旨石』が作られた。志雄町の塩漬け桜を使い、白手亡ようかんをサンドした「桜」、奥能登の栗を使い、黒糖ようかんをサンドした「栗」、能登大納言小豆をサンドした「蓬」の3種類で、しっとりとした生地にもちもちとした食感で、日本茶だけでなくコーヒーなどにも合うという。この『旨石』は高い創作性を評価され、平成17年2月に全国菓子工業組合連合会理事長賞に選ばれた。
 今年は同賞を受賞したことを記念し、「蓮根」が発売された。生地は同じで、加賀野菜の小坂レンコンをすりおろし、寒天で固めたようかんがサンドしてあり、しゃりしゃりとした食感が楽しめるお菓子である。これらの『旨石』は、同会の加盟店50店で販売されている。
 この『旨石』の特徴は、同じ材料の配合、同じ包装、帯シール、同じ価格で同会の加盟する多数の店で販売されていることであろう。このような取り組みは菓子業界では珍しく、小山辰司会長は「このようなことは青年会だから実行できたことだと思う。今後も新しいお菓子を開発していきたい。また『旨石』がお客様から愛されるお菓子となってほしい」と語った。(大槻)  

4種類の旨石
 下段左から「桜」「栗」「蓬」、上段は「蓮根」


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砂糖を原料とする生分解プラスチックを開発

  大阪府立大学北村進一教授、江崎グリコ株式会社および三和澱粉工業株式会社は、本年2月に、共同研究により、砂糖を原料とするアミロース(生分解プラスチック)の工業的生産に世界で初めて成功した。現在、実験プラントにおいて、その産業的応用の検討を進めている。
 環境にやさしいとされる生分解プラスチックについては、これまでトウモロコシを原料としたポリ乳酸が知られている。しかしながら、現存の多様な石油系プラスチックのすべてを、ポリ乳酸で代替するのは困難であり、新たな生分解プラスチック材料への期待は大きい。今回開発された砂糖を原料として製造される酵素合成アミロースは、ポリ乳酸よりも優れた生分解性とガス遮断性を有しており、新たな生分解プラスチックとしての利用が期待される。
 天然アミロースは、いろいろな植物でんぷんの中に存在するものの、これを純粋に抽出することが困難であるため、産業的な応用が難しかった。一方、酵素合成アミロースは、でんぷんから抽出するのでなく、砂糖を原料として、砂糖を構成するぶどう糖と果糖を切断し、そのときに生じるエネルギーを利用して、ぶどう糖を2種類の酵素を使い重合させるもので、反応効率が良く、しかも分子量分布が狭く、分岐を持たない(直鎖状)。また、反応を制御することにより、分子量の異なるアミロースの製造が可能となっている。
 酵素合成アミロースの特性は、(1)強度がある、(2)ガスバリア性が高い、(3)透明性が非常に高い、(4)機能性(包接(分子の中に様々な物質を取り込む現象)、配向)を持たせることができる、(5)生分解性が高い、(6)砂糖が原料なので安全性が高い
などである。
 具体的に、強度を見ると、図2のとおりポリスチレン以上のものとなっている。また、ガスバリア性(ガス遮断性)についても図3のとおり、包装材料として十分使用できるレベルとなっている。
 今後の計画としては、三和澱粉工業から聴取したところによると、安全性、分解性、製造原価等を勘案して、高機能向け、例えば医療向け用途を見込んでおり、5年をめどに数百トン程度の生産を予定しているとのことである。砂糖の大量の需要とはいかないが、今後の砂糖需要の一部になるものとして期待される。 (高橋)


図1 酵素合成アミロースの製造方法


図2


図3
注:図の引用は、「高機能酵素合成アミロースフィルムの開発」北村進一(大阪府立大学大学院生命環境科学研究科)による。

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