[2005年11月]
札幌事務所
「北区食改善展」で、砂糖のパネル・てん菜模型などを展示〜札幌市〜
平成17年9月29日(木)〜30日(金)の2日間、札幌市の北区民センターの1Fにおいて、「第21回 北区食改善展」(主催:北区食生活改善推進員協議会)が、開催され、地域住民など両日併せて約700名の参加者でにぎわった。同展は、「私達の健康は私達の手で」をスローガンに、栄養および食生活改善についての普及啓蒙を行うことにより、地域住民の健康増進・体力作りに寄与するとともに、食生活の大切さをアピールすることを目的として、毎年開催されている。
今回は、「みんなで食べようたっぷり野菜と乳製品」をテーマに野菜および乳製品を利用した料理の展示および試食・試飲と簡単朝食のモデル献立の展示を中心に、普段の何気なく摂っている食事の大切さを来場者に呼びかけていた。
また、当機構から提供した砂糖のパネル、てん菜およびさとうきびの模型も展示し、砂糖の各種パンフレットを配布することで、砂糖についても食事を豊かにするものとして正しい知識の普及などの情報提供を行った。
会場には、小さな子供連れの母親など、多数が来場し、提案されている献立に興味を示し、家庭でも試してみるとレシピを持ち帰っていた。来場者に家庭での砂糖の扱いなどについて尋ねてみたところ、「紅茶やコーヒーにはグラニュー糖を使用しているが、料理には三温糖やきび砂糖を使っている」などの声があり、生活の中で砂糖の種類の区別が意識されていることがうかがえた。また、中には、てん菜については「新聞で記事を見ることがあった」など、地元の産物に興味を持っている方もみられた。
砂糖は、料理を作るに当たっては欠かすことのできない調味料であるため、今回の食改善展などを通じて、砂糖に対する正しいその知識や使い方に対する認識が深まることを期待したい。
(菊池)
砂糖に関する展示の様子
札幌事務所
平成17年産てん菜糖の製造が始まる
平成17年10月10日(月)に日本甜菜製糖(株)美幌製糖所および士別製糖所で操業が開始され、平成17年産てん菜糖の製造が始まった。
本年産は、融雪の遅れと5月の天候不順のために移植、直播作業が遅れた上、生育初期の気温が低く、地域によっては乾燥気味であったことから生育が遅れたが、その後の高温と適度な降雨により、生育は平年並みを取り戻した。また、農家が適時防除に努めた効果もあって、褐斑病、黒根病などの病害虫による大きな被害も見られなかった。なお、糖分については夏の気温が高めに推移したことから、やや緩やかな上昇となっている。また、作付面積が6万7,500haと前年度より1%程度の減少となったため、収穫量は過去最大であった前年度を下回ると見られ、製糖の開始も5日遅れとなった。
その他の製糖工場の操業開始日は、日本甜菜製糖(株)芽室製糖所が10月11日(火)、ホクレン農業協同組合連合会中斜里製糖工場が15日(土)、清水製糖工場が11日(火)、北海道糖業(株)北見製糖所が11日(火)、道南製糖所が13日(木)、本別製糖所が13日(木)であった。
今後は各社とも24時間体制で製糖ラインを稼動させ、早い工場では2月初旬、遅い工場では6月初旬まで操業が行われ、約70万トンの産糖量が見込まれている。
(菊池)
チーズドーナツ作りを通じた砂糖の食育
平成17年9月14日(水)、新宿区榎町児童センターにおいて、新宿区と雪印乳業(株)の協働による「キッチンENOKI」が開催された。新宿区榎町在住の小学生が対象で、この日は3回行なわれ、小学校1年生から4年生の54名、中学生6名の計60名が参加した。今年度、新宿区と雪印乳業(株)による食育の協働事業は区内10ヵ所の児童館で行われており、今回の「キッチンENOKI」はそのうちの一つである。
雪印乳業(株)の管理栄養士で食育活動を熱心に行なっている新原恵子先生の指導の下、この日のメニューは、砂糖をまぶしたチーズドーナツであった。牛乳・乳製品の栄養の話に始まり、砂糖は脳に栄養を与える重要なものであるといった砂糖の正しい知識についての話もなされた。続いて、さとうきびやてん菜から砂糖が作られるまでを分かりやすく解説した当機構作成によるビデオ「不思議な魅力―砂糖―」が上映された。
その後、ドーナツ作りが行われた。ホットケーキミックスに牛乳と溶き卵を加え、レーズンとサイコロ状に切ったチーズを加え軽く混ぜ、それをスプーンで一口大に分けて、約175度の油で揚げて完成である。ポイントとなるのは、チーズを加えたドーナツに好みの砂糖を選んでまぶすことである。通常広く使用される上白糖やグラニュー糖、煮物や佃煮に使われる三温糖や沖縄の黒糖の4種類が紹介され、子供たちはそれぞれを味見をした後、好みの砂糖を選んでドーナツにまぶした。
子供たちが選んだ一番人気は三温糖で、次がグラニュー糖、3番目は上白糖で、子供にはちょっと香りが強いと思われる黒糖は4番目であった。さとうきびやてん菜など、砂糖の原料を知らない子供たちが大半であったが、ビデオで生産地の様子を見ることによって、それらの原料作物の生育について理解を深めたようである。
「国民が生涯にわたって健全な心身を培い、豊かな人間性を育むことができるように、食育を総合的かつ計画的に推進すること」を目的とした食育基本法が、7月15日に施行された。その背景として、昨今、我々の食生活を取り巻く環境は、輸入食材の増加やライフスタイルの多様化などにより大きく変化しており、その中で、「食」を大切にする心を育むこと、栄養バランスの良い食事・規則正しい食事を身につけること、伝統ある食文化を取り戻そうといったことなどを改めて見直そうということがある。
今回の「キッチンENOKI」は、普段おろそかになりがちな食に対する感性を養うことをテーマとして開催され、チーズドーナツ作りを通じて、チーズと砂糖についても理解を深めることを目的とした食育の場であったと言えよう。
(深澤)
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ドーナツ作りに使用された砂糖とチーズ |
当機構パンフレット『砂糖のあれこれ』を配布 |
「畑作物・資源作物の健康機能性と地域食品産業の振興セミナー」が開催される
平成17年9月27日(火)、東京農業大学世田谷キャンパスにおいて、独立行政法人農業・生物系特定産業技術研究機構の主催により畑作物・資源作物の健康機能性と地域食品産業の振興セミナーが開催された。同セミナーは、「畑作物・資源作物の有する健康増進効果」について、6名の研究者の方による講演と「パネルや試食品による消費者・実需者・研究者の交流」と題した開発食品の紹介・試飲食などの交流会の二部構成で行われた。
第一部の研究報告会では、東京農業大学の高野克己氏が「作物の健康機能を考える」、長野県工業技術総合センターの大日方洋氏が「ソバの健康機能性と食品開発」、九州沖縄農業研究センターの須田郁夫氏が「サツマイモの有する健康増進効果と食品産業の振興」、北海道農業研究センターの野田高弘氏が「カラフルポテトを利用した食品開発と用途拡大」と題した講演を行った後、てん菜・さとうきび関係では、日本甜菜製糖株式会社総合研究所の有塚勉氏が「テンサイから機能性オリゴ糖等の健康食品素材の開発」、同機構九州沖縄農業研究センターの吉元誠氏が「サトウキビの多段階利用と地域振興」と題した講演を行ったので、その概要を紹介する。
テンサイから機能性オリゴ糖等の健康食品素材の開発
この講演では、てん菜を原料として開発された食品素材(ラフィノース、ベタイン、イノシトール、ビートファイバー、セラミド)の有効利用についての取り組みが紹介された。
てん菜はショ糖を16〜17%含有するほか、一般の植物が持つ成分とともに、以下のような特異的な成分も含まれている。
・ラフィノース(難消化性オリゴ糖)、ベタイン(アミノ酸類)は、てん菜中に約0.1〜0.2%含まれ、ラフィノースはビフィズス菌増殖糖源で、食品素材として広く食品に利用されている。また近年、アトピー性皮膚炎を改善するオリゴ糖としても注目されている。ベタインは高い保湿・吸湿性で化粧品、食品(水産加工品が中心)に利用されている。
・イノシトールは、てん菜中に約0.005%含まれ、ビタミンB群の一つとして、健康ドリンクやビタミン剤に使用されている。
・ビートファイバーは、てん菜中に約5%含まれるビートパルプを衛生的に処理して製造される植物繊維素材である。一般食品の物性改良剤として利用されているとともに、機能性においては、血中脂質の上昇抑制作用や実験的大腸癌発生抑制作用などが確認された。
・セラミドは、ビートパルプに豊富に含まれ、保湿素材として注目されているスフィンゴ糖脂質の一つである。
サトウキビの多段階利用と地域振興
この講演では、ケーンセパレーションシステムを利用した新規黒糖やシロップの製造法の確立と、さとうきび酢の機能性解明についての取り組みが紹介された。
・ケーンセパレーションシステムは、通常の製糖工場で使われているさとうきびを直接圧搾する方式とは異なり、さとうきびを内実部、外皮および表皮ワックスに分離した後、それぞれの部分を有効活用できるようにするものである。内実部は圧搾して砂糖液を得た後の残ーを飼料に、外皮は紙・建材・衣料などに利用され、表皮ワックスからは健康食品などが試作されている。このシステムを経たシロップは従来の黒糖に比べると色調も薄く、味もまろやかになるとのことであった。
・昔から沖縄や奄美諸島でさとうきびの搾り汁を発酵させた後、熟成させ製造しているさとうきび酢は、これまで、抗癌・抗酸化・整腸・抗高血圧作用について試験管内および動物実験の結果、市販の醸造酢に比べ、ポリフェノール含量が高く老化や生活習慣病予防などに効果が高いことが判明し、沖縄・奄美諸島の長寿にはさとうきび酢の関与も示唆されているとのことであった。
両者とも今後は、これらの新規素材の用途開発のテーマを通じて、地域農業の維持・発展のために研究を進めたいと考えていると講演を締めくくった。
「パネルや試食品による消費者・実需者・研究者の交流」
会場を「食と農」の博物館へ移し行われた第二部の「パネルや試食品による消費者・実需者・研究者の交流」では、第一部の研究報告で開発された商品(そばアイス、紅いも、カラフルポテトのスナック菓子、さとうきび酢など)が試飲食、報告を行った研究者との意見交換ができるなど、講演とは一味違う雰囲気の中で行われた。
(佐藤・宗政)
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てん菜とてん菜を利用した食品の展示 |
さとうきび酢の展示 |
第32回サトウキビ試験成績発表会が那覇市内で開催される
「第32回サトウキビ試験成績発表会」(主催・沖縄蔗作研究協会)が平成17年9月13日(火)、沖縄総合事務局、沖縄県農林水産部、琉球大学、など、研究機関、行政、企業関係者が多数参加して、那覇市内のホテルで開催された。
研究発表とシンポジウムが行われ、研究発表では、「春植えさとうきび分げつ出現を解析するための指標開発」、「沖縄県北部地域におけるさとうきび畑の立地条件に適した品種選定」、「中小離島における新たな地下水開発技術」、「生産現場におけるさとうきび若苗作りと採取後の株出し栽培」など、16の最新の研究成果が発表された。
また、シンポジウムに先立ち、沖縄総合事務局農産園芸課の備瀬課長から、「さとうきびをめぐる情勢報告」として、「新たな砂糖および甘味資源作物政策」の概要についての説明も行われた。
シンポジウムでは、「さとうきび小型機械化体系の方向性について」と題して4氏から基調報告があり、沖縄県農業試験場農業機械研究室の赤地徹氏は、「小型さとうきび収穫機械の現状と今後の方向」についてと題し、機械収穫率が37%まで進展している現状や小型収穫機械の導入が進められつつある現状を紹介し、小型収穫機械の特徴や性能について、「今後の小型収穫機械の役割として、本来の守備範囲で大型・中型機の補完的導入が考えられる」と説明した。
さらに、沖縄県農業試験場庶作研究室の新里良章氏は、「さとうきび小型トラクタ栽培体系」と題して、200a未満農家の生産対策として、小型機械化体系が生産振興に結びつくとして、「耕起、耕耘作業と小型ハーベスターによる収穫を委託し、植え付けや管理作業を農家が行う小型機械化体系の普及がキビ作りの活性化につながる」と報告した。
生産の現場からは、「生産現場におけるさとうきび作機械化の現状について」として、久米島の生産法人久豊会代表の喜久里猛氏、生産法人サンファーム社長の新垣恒明氏から、「農業機械の導入は高価であるばかりでなく、修繕費の負担が大きい」現状や生産性向上のための自動補植機の開発、機械化一環体系の確立の必要性などの報告が行われた。
引き続き、意見交換では、小型収穫機械の作業能力や補植の有効性などについて活発な議論が行われた。平成19年度から、市場原理の導入による価格形成へと移行が検討されている現在、さとうきびの生産性の向上は、緊急の課題である。このような長年の試験研究の成果が沖縄県のさとうきび増産へと繋がることに期待したい。
(仁科)
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沖縄総合事務局秋本農林水産部長の挨拶 |
研究発表「中小離島における新たな地下水開発技術」 |