[2005年12月]
札幌事務所
てん菜自走式多畦収穫機実演会の開催
平成17年11月1日、上川郡清水町において、社団法人北海道てん菜協会は、ドイツ製てん菜自走式多畦収穫機の実演会を開催した。これは、労働力不足、経営規模の大型化に対応するために、てん菜のコスト削減に向けた取り組みの一環として、てん菜の収穫作業の効率化を図るべく、当機構の補助事業により同協会が試験的に導入した収穫機であり、北海道向けに改良し実用化することを目的として取り組んでいる。十勝地域の異なる土地・栽培条件でのデータの収集を目的とした10月上旬からの清水、本別、更別での試験の後、今回の実演会が行われた。
このてん菜自走式多畦収穫機は、日本では製造されていないため、ヨーロッパで開発されている機種を検討した結果、価格、移植ビート用への改良のしやすさ、ヨーロッパでの販売実績などで優れていることを考慮し、ドイツのホルマー社のTerra
Dos(テラドス)が選ばれた。昨年3月に導入されたテラドスに日本でのビートの高畦移植栽培に合わせて改良を加え、今回の実演会が行われた。全長12メートル、高さ4メートル、幅3.3メートルの大型で、タンク容量は18トン、460馬力の自走式で、作業能力は1時間あたり1〜1.5ヘクタール、6畦のヨーロッパ仕様を日本仕様の4畦に変更し、日本の移植ビートに合わせた(特に茎葉を取り除くタッパー部に改良を加えた)アタッチメントが取り付けられている。
従来のビートハーベスターは、1畦ごとに収穫を行うが、日本仕様のテラドスは一度に4畦を収穫し、スピードも従来型に劣らず、燃料タンクも大型のため、朝から夜まで連続作業が可能である。改良の結果は、ほぼ期待通りの性能が発揮されており、実用化に向けて大きな一歩を踏み出している。集団での共同利用も期待されるこの大型ハーベスターの導入により、てん菜の収穫のコスト削減に貢献することが期待される。
(戸田)
札幌事務所
第4回「食と農」を考えるフォーラム「砂糖を正しく知ろう」が苫小牧市で開催
平成17年11月10日(木)、苫小牧市の日胆農業会館において、JAとまこまい広域とJAむかわで構成する「食と農」を考えるフォーラム実行委員会の主催により、第4回「食と農」を考えるフォーラム「砂糖を正しく知ろう」が開催された。同フォーラムは「地産地消」、「都市と農村の共生」の取り組みとして、消費者と農業者の相互理解を深めるために年1回開催されている。てん菜は同地域では積極的に作付けされている作物でありながら、意外に知られていないてん菜糖の魅力をクローズアップし、地域住民に農業の大切さを理解してもらおうと「砂糖」をテーマとして開催された。
基調講演は、天使大学看護栄養学部の荒川義人教授により、「キレる子、肥満、糖尿病の…原因なの?」をテーマに行われ、甘いものは生きていくために必要なエネルギー源であることや、我々の体全体の20%以上ものエネルギーを使う脳はブドウ糖のみをエネルギー源とすること、砂糖も米などのでんぷんも同じ糖質であること、食品での砂糖の役割について説明があった。また、砂糖と健康に関する諸説についてそれぞれ科学的に説明し、根拠のないものも多いので、情報を冷静に受け止めて正しい情報のもとに豊かな食生活を送ってもらいたいと呼びかけた。
続いて、パネルディスカッションでは、社団法人北海道てん菜協会専務理事の石原伍朗氏をコーディネーターに迎え、とまこまい広域てん菜振興会長の近藤勝美氏、鵡川町甜菜振興会長の上田泰裕氏、白老消費者協会理事の川西芳江氏、胆振日高管内学校栄養部会長の下斗米純子氏がパネリストを、基調講演を行った荒川教授がアドバイザーを務めて意見交換が行われた。
コーディネーターの石原氏からは、日本の砂糖事情、てん菜を取りまく状況について説明があり、その後、近藤氏は、てん菜生産者の一人として、近年、作付面積による生産調整、国際競争力を高めるためのコスト削減に直面して厳しい状況であるが、輪作体系維持のため、基幹作物としてのてん菜生産を続けていきたいと訴えた。上田氏は、生産者としててん菜を作りながらも砂糖については知らないことも多く、砂糖の消費が減少しているということをてん菜生産者も深刻なことであるととらえなければならないと新たな認識を持ったと述べた。川西氏は、主婦の立場から、砂糖は食生活に欠かすことができず、砂糖の種類により使い方もさまざまで、地産地消の取り組みの中で家庭料理を募集したところ、その半数以上に砂糖が使われていたことを紹介した。下斗米氏は、管理栄養士の立場から、小学生の授業の中でおやつの摂り方を考えようと、砂糖、油脂、塩の量を確認しながら、砂糖は地域の産物であること、おやつは心を和ませること、食べたら歯を磨こうと伝えているなどの事例を紹介した。続いて、荒川教授から、生産者、消費者ともに地元産物やその加工、流通を知るための取り組みを期待したいという言葉があった。
最後に、石原氏から北海道民としててん菜・てん菜糖をアピールしていくことが大切であり、生産者には食の安全・安心・信頼に取り組んでもらい、消費者には理解してもらうと同時に、応援者となってほしいとの意見で締めくくられた。
(菊池)
共同キャンペーン「お菓子は元気を育てます。」〜「お菓子サミット2005」開催〜
精糖工業会と全日本菓子協会は、お菓子とお菓子に使われている砂糖の価値・効用を再認識してもらい、理解を深めてもらうことを目的として、産業や企業の枠を越え、2005年11月から2006年1月まで「お菓子は元気を育てます。」をテーマに、共同キャンペーンを行っている。その初日である平成17年11月3日(木)に東京都港区の六本木ヒルズ森タワー49階六本木アカデミーヒルズにて、「お菓子サミット2005」を開催した。
【第一部 13:30〜 記者発表会】
開会宣言と来賓の紹介の後、全日本菓子協会北里会長から「お菓子を食べることは夢、安らぎ、心のいやしにつながる。昨今では、一人っ子が増えており、兄弟との会話がない子供にとってはお菓子が大人との共通の話題になる。子供たちの健やかな成長を願うとともに、さらなるご支援、ご協力を待っている」とのあいさつが、また、精糖工業会久野会長からは「業界の枠を超えた初めてのキャンペーンのスタートにあたり、菓子業界の方々に深く感謝申し上げる。砂糖はお菓子ととても相性がよく、脳の活力、瞬発力、集中力などの向上に大切である」とあいさつが行われた後、全日本菓子協会奥野和夫専務理事によるキャンペーン概要の説明があり、消費者に伝えたいメッセージ「お菓子憲章」が紹介された。
お菓子憲章
(1)お菓子は、楽しさや夢を広げ、豊かな食文化を創造します。
(2)お菓子は、生活においしさ、やすらぎ、団らんをもたらします。
(3)お菓子は、心と体の元気を育てます。 |
次に、歌手・女優で、画家としても活躍中の工藤静香さんと、工藤さんのデザインによる「お菓子の家」が紹介された。このお菓子の家はクッキー、キャンディ、キャラメル、チョコレート、豆、ようかんなど120種類100kgのお菓子と30kgの砂糖で作られている。「お菓子は夢のあるもので、ほっとするもの。子供のころからお菓子は大好きで、お菓子の家をデザインするに当たり、おとぎ話に登場するカエルの形にして、夢の広がるものにしたかった。なじみのあるお菓子がたくさんあり、イメージ以上の出来映えで大満足です」と工藤さんはコメントを述べた。
|
|
会場で紹介された工藤静香さん |
工藤静香さんデザインの「お菓子の家」 |
【第二部 15:30〜
「お菓子サミット2005」】
一般参加者親子約100組200名が参加し、足立香代子(管理栄養士・せんぽ東京高輪病院栄養管理室長)、土井善晴(料理研究家)、恵畑ゆう(NHKBS「おかあさんといっしょ」体操おにいさん)、橋本甜歌(子役タレント)によるパネルディスカッションが行われた。
「ヨーロッパで食後に何種類も出されるデザートは、最後に気持ちを幸せにしてくれる。大勢集まる誕生日会などでは甘いものが皆を幸せにしてくれる」《おいしいものを食べると幸せになる法則》や、「和菓子の『最中』の皮は何でできているか?」《答え:おもち》など、参加者に分かりやすい活発な意見交換がなされた。最後にパネリストからは「脳と身体のためには食事の間隔を3時間以上あけて食べるように」、「お菓子があればみんな集まる」、「毎日必ず運動してお菓子を食べて、身体と心を健康に!」などのメッセージが発表された。
「お菓子は元気を育てます。」キャンペーン活動では、お菓子売場の店頭にポスターを掲載し、リーフレットの配布やお菓子セットプレゼントが行われ、さらに冬休みは映画館約270館で映画の前に流す「スウィートコミュニケーション」というシネアド(映画用コマーシャルフィルム)が上映される予定である(詳細は、ウェブサイト「お菓子DE元気ナビ」《
http://www.okashi-navi.com》に掲載)。
参加者とお菓子のキャラクターたちとの写真撮影会も行なわれ、キャンペーンはにぎやかで活気あふれる好スタートを切った。
(深澤)
パネルディスカッションの様子
中区消費生活推進員を対象に食のセミナー“心身の健康と砂糖”を開催(横浜市)
〜セミナーにより砂糖に対する理解度が平均20%弱上昇〜
平成17年10月25日(火)、横浜市開港記念会館において横浜市中区役所主催、当機構横浜事務所の協力により、中区の消費生活推進員35名を対象に「食のセミナー」〜テーマ“心身の健康と砂糖”〜が開催された。
横浜市中区役所では、消費生活全般について比較的高い関心を持っている区民を中区消費生活推進員に委嘱している。そして、これら推進員を対象に、消費者が安心して暮らせるよう、「食の安全」だけでなく、古着・古布の回収やリサイクルなどの知識を習得してもらい、その知識を地域・地区の消費者に還元してもらうことを目的として、毎年さまざまなセミナーを開催している。
今回は講師に、横浜市在住で横浜国際バイオ研究所前会長、現在、砂糖を科学する会副代表の橋本 仁氏を招き、講演が行われた。
セミナーは、糖が生命の起源であること、砂糖に対する誤解を解く内容や砂糖の効用などについてであった。具体的には、(1)砂糖が肥満の原因でなく、摂取エネルギーと消費エネルギーのバランスが重要であること (2)砂糖は糖尿病の原因ではないこと
(3)砂糖(ぶどう糖)は脳の唯一のエネルギーであること (4)砂糖は記憶力向上に有効であることなど、一部対話形式も取り入れながら興味深い説明が行われた。
セミナー終了後には、受講者の一部から「ほとんどの内容が初めて聞いた話である」などの声があり、今後とも一般消費者に対して砂糖に対する正しい知識を普及することが重要であると再認識させるものであった。
(アンケート結果)
以下、セミナー後のアンケート結果の一部を紹介する。
アンケート回答者34名(男性2.9%、女性97.1%)(回収率97.1%)の中で、「このセミナーに参加して初めて知ったことと、以前から知っていたか」どうかの質問については、下表のとおりセミナー受講前では平均認知率が50%以下であったが、セミナー終了後には認知率が平均20%弱上昇し、セミナーの効果が大きいことが分かる。
特に、セミナー受講前には、砂糖の基本的性質(または特徴)である「炭水化物である」ことの認識がかなり低く、また「漂白していない」ということについては極めて低いなど、概して低い認知率となっていた。しかし、今回のセミナーにより砂糖に対する理解がかなり深まったようである。
今回のアンケート結果は一部の消費者の回答であり、全国の一般消費者の声を必ずしも反映している訳ではないが、消費者の「砂糖の正しい知識」のより一層の普及の必要性を再認識した。
(高橋)
砂糖に対する認知について(セミナー後のアンケート結果より)
福井のお菓子屋さん大集合〜「ウエル菓夢ふくい2005」の開催〜
平成17年10月28日(金)〜30日(日)、福井県鯖江市において、福井県菓子工業組合と福井県により「ふくい菓子博2005〜ウエル菓夢ふくい2005〜」が開催されたので紹介したい。
今回で5回目となるこのイベントは、福井県菓子工業組合が楽しい菓子文化をテーマに県内のお菓子を一堂に集め、県の菓子文化や新作お菓子の紹介などを行い、福井県の「菓子」を県内外にPRするために行われたものである。今年は、全国各地で一般の人々が通常行っている文化活動を、全国的な規模で発表・競演・交流する「第20回国民文化祭・ふくい2005」が福井県内各地で開催されており、今回はこのイベントのひとつとして開催された。
会場は「実演・販売コーナー」「展示コーナー」「和菓子BAR」「スイーツCafe」「饅頭箱ディスプレイ」「お菓子作り体験コーナー」の6つのゾーンに別れている。
「実演・販売コーナー」では県内から31店のお菓子屋、菓子組合、洋菓子組合が、それぞれ自慢の団子・水羊かん・ケーキ・和菓子などを販売していた。「和菓子BAR」「スイーツCafe」では、上和菓子・洋菓子と飲み物をセットにして販売しており、来場者は甘いお菓子でほっと一息ついていた。「展示コーナー」では170店ものお菓子屋がそのお店のお菓子1品をプロフィールと共に紹介しており、個性のあるお菓子がずらりと並んだ。また、人々の生活・くらしとお菓子との縁を、七五三ではどのようなお菓子で祝うか、といった具体的な例をあげて説明が行われていた。さらに、地産地消をテーマに、県産野菜で作られた創作菓子の発表、菓子作りの道具や工芸菓子・創作菓子の展示も行われた。「饅頭箱ディスプレイ」では福井県独自の文化である饅頭箱が大型モニュメントで紹介されていた。
今回の菓子博での新たな取り組みとしては、「展示コーナー」に展示されていた工芸菓子と創作菓子である。工芸菓子は福井県菓子工業組合青年部が製作したもので、青年部では工芸菓子を作る技術がなかったため、県外から講師を招き、1年がかりで製作した。砂糖で作ったとは思えないほど優雅で壮大な作品の数々に、来場者は驚きの声をあげていた。
今回の菓子博について、福井県菓子工業組合江川正典組合長は「福井県はお茶うけにお菓子を食べるといった習慣はあまりなく、出産・七五三といった暮らしの習慣(行事)でお菓子が消費されてきた。しかし近年、そういった習慣が薄れてきており、それに伴ってお菓子の消費も減少している。今後は青年部による工芸菓子や創作菓子の製作といった新しい事にどんどんチャレンジし、福井のお菓子を広めていきたい」と語った。
(大槻)
関西砂糖特約店協同組合が講演会を開催
平成17年10月20日(木)、関西砂糖特約店協同組合は、大阪市中央区のハートンホテル南船場において、秋季総員懇談会として講演会を開催した。講演は農林水産省特産振興課の北川泰義課長補佐を講師に招いて「新砂糖年度を迎えて」を演題に、関西地区の精製糖企業、代理店、特約店、てん菜糖企業などから35社79名が出席して行われた。
講演の中で北川課長補佐は、
○平成17砂糖年度における国内産糖合理化目標価格
○平成17砂糖年度における砂糖及び異性化糖の需給見通し
○WTO農業交渉の状況
○経済連携協定(EPA)・自由貿易協定(FTA)をめぐる状況
などについて、それぞれ配布資料に沿って説明を行った。
国内情勢については、新砂糖年度における各種指標や砂糖・異性化糖の需給見通しなどについて、各数字が決定された背景などについての説明が行われた。
また、国際情勢については、WTO農業交渉の進捗状況や、タイ、フィリピンとのFTA・EPA合意内容が紹介され、国際社会の中でわが国の砂糖制度が直面する状況などについての説明が行われた。
国内外に問題が山積し、また不確定要素も多い中、国際的にも国内的にも日本の砂糖類行政は難しい舵取りを求められているが、北川課長補佐の講演は、各方面において適正なバランスを保持するために努力する行政当局としての姿勢を示すものであり、出席した各砂糖関係企業の今後の活動においても、参考となる部分が多かったと思われる。
(脇谷)
北川課長補佐講演の様子
中国四国農政局ほか、三井製糖(株)岡山工場を見学
平成17年10月20日(木)、農林水産省中国四国農政局、農林中央金庫、農林漁業金融公庫、独立行政法人農林水産消費技術センター、独立行政法人緑資源機構、独立行政法人農畜産業振興機構の6者が三井製糖(株)岡山工場を見学した。
最初に同工場側から工場の概要説明を受け、続いて砂糖の製造工程についてのビデオを見た。その後、同工場敷地内の精製糖製造施設、原糖倉庫、製袋施設などを1時間程度をかけて見学した。参加者の一部からは精製糖を製造する際に発生する副産物の用途についての質問があり、また、スティックシュガーを少量単位で製造しなければならない緻密な製袋作業などにも関心が寄せられていた。
工場見学終了後に行われた懇談会では、当機構からパンフレットを使用しながら、栄養学的な見地から砂糖の効用、砂糖の正しい知識、砂糖の価格調整制度についての説明のほか、当機構の業務の紹介も行った。農政局からは、製糖各社が最近、砂糖の値上げを行なったことに関する質問があり、それに対して機構から、海外砂糖市場における現物価格の高騰や、近畿・中国四国地域における砂糖の販売価格事情などについての説明を行った。また、懇談会では、新たな砂糖・でん粉制度の検討状況についても話題となった。
このように精製糖企業の生産現場を実際に見た上で砂糖に関する懇談会を設けられたことは、砂糖に対する理解を深めてもらう上で大変有意義なものであったと感じられる。
(古澤)
ウージ(さとうきび)染めの魅力を全国・世界に向けて
平成17年10月21日(金)〜23(日)の3日間、那覇市内の奥武山公園と県立武道館において、「県産品 使って分かる すばらしさ」をテーマに「第29回沖縄の産業まつり」が開催された。
多数の地元企業の出展により多くの来場者でにぎわう中、「豊見城市ウージ染め協同組合」は、「JAPANブランド育成支援事業」(注)の一環として、地元沖縄の基幹作物であるさとうきびの葉と穂を利用して作られている「ウージ染め」を出展した。
その独特の風合いと美しさに多くの来場者が足を止め、同ブース内に設けられた「ウージ染めの体験コーナー」では、様々な年齢層の来場者が組合員の指導を受けながら、初めて体験する染めの作業を楽しんでいた。
ウージ染め
沖縄の方言でさとうきびのことを「ウージ」と呼び、「ウージ染め」は、さとうきびの葉と穂を煮出して作られた染料を使用した「染め」と「織り」のことであり、素材としては、木綿、麻、絹がある。若草色を基調に鶯色、黄緑色、茶色に近い色に仕上げられることが特長で、同組合によって、タペストリー、のれん、ネクタイ、バッグといった装飾品・小物・衣類など多種多様の製品が作られている。
染料の原料であるさとうきびの葉や穂は、同組合が契約している個人農家のさとうきび畑で組合員の手により直接刈り取られる。その後、手作業で細かく刻み、釜で煮出す。炎天下での刈り取りや夏場の釜の作業といった重労働、色ムラを出さずに染める技術の習得、天候に左右される作業工程といった日々の苦労を重ねた結果、美しい色に身を包んだ製品に出会えるのだという。
地域ブランドとしての歩み
ウージ染めは、平成元年に豊見城村(当時)商工会の「むらおこし事業」における特産品開発事業の募集に村内の主婦が応募し、さとうきびが持つ独特の色合い・風合いが評価され、採用されたことから始まった。さとうきびを使った草木染めを特産品として着目した初めての試みであったという。
現在、組合員は染め職人12人織り職人7人の計19人となっており、主婦を中心とした女性たちにより運営されている。
平成3年に豊見城村(当時)、豊見城村商工会、農協の補助による豊見城村特産品開発センターウージ染め作業施設の設置、技術者の養成が行われ、平成6年に「豊見村ウージ染め協同組合」が設立された。平成7年、8年において同組合は、国・県からの補助を受け、新商品の開発や販路拡大を実施してきた。
さらに今年度において、中小企業庁が日本商工会議所・全国商工会連合会へ委託している「JAPANブランド育成支援事業」に、沖縄県内としては初めて豊見城市商工会と玉城村商工会の共同事業である「ウージ(さとうきび)を活用した地域ブランド構築プロジェクト」が採択され、ウージ染めはそのプロジェクトの中心的な位置付けとなっており、今回の産業まつりで来場者へのPRを図っていた。
活用が限られているさとうきびの葉と穂を基にして付加価値のある製品を作りあげ、新しい沖縄の地域ブランドとして地域が一体となって取り組んでいる「ウージ染め」に深い感銘を受けた。JAPANブランド育成支援事業採択を契機に、全国、さらには海外に向けて、「沖縄のさとうきびから作られたウージ染め」の魅力を発信できるよう、今後の展開を大いに期待したい。
(緒方)
(注)
「JAPANブランド育成支援事業」は、地域特性を活かし、全国、さらには海外で通用するブランドの確立を目指すことを目的とし、各地の商工会・商工会議所が地域の企業などをコーディネイトし、マーケットリサーチ、商品開発や販路開拓などを行う取り組みについて支援を行うものである。
|
|
産業まつり会場 |
染めた状態の糸 |
|
|
|
ウージ染め製品の数々 |
|
|