[2006年2月]
千葉出張所
特産梨をジャムに 〜杉山ジャム工房の取組み〜
千葉県市原市は県内の中央に位置し、稲作を中心に野菜、酪農などが盛んで、梨やイチジクも栽培されている。特に「日本なし」は、同市の特産で栽培面積、収穫量および出荷量ともに県内では上位を占めている。
同市に所在する「杉山ジャム工房」では、特産の「日本なし」の香りと甘さを楽しむことができる加工品としてジャムを製造し、商品化に成功したので紹介する。
同市農政センターから、特産である「日本なし」の加工品開発の依頼により同工房の杉山代表が考案し、今年度に開催された梨の共進会でJA市原市の職員・生産者などに評判が高く商品化が決定した。
このジャムの製造方法は、梨を細かく裁断し、柔軟になるまで煮てから漉す。最後に水飴およびグラニュ糖を投入することによって、あっさりとした甘さを引き出しており、製造時間は約3時間を要する。また、砂糖を多く使用することによって、ジャムのゼリー化や防腐効果の向上にもつながっている。
甘味の強い品種の「幸水」は、グラニュ糖の量を控えていることに対して、酸味が強い「豊水」は、「幸水」と比べるとグラニュ糖を多めに使用するなど、品種によって砂糖の使用量を調節している。
「幸水」や「豊水」は、生食用に品種改良が進んでいることから、加工が困難な果物である。また、代表的なジャムの原料であるイチゴやブルーベリーと比較すると高価で商品化の弊害を生じていたが、JA市原市の協力で選果場に運びこまれた梨の中から規格外で出荷できない梨を譲り受けることにより低コスト化を実現した。
同工房では、特産梨から製造しているジャムのほかに、イチジク、ブルーベリー、梅、柚子、イチゴ、柿といった約20種類の果実から製造するジャムを開発した。これらの果実は、工房に隣接する畑で収穫しており、添加物を一切使用せず、食の安全・安心についてもこだわっている。
杉山代表によると「砂糖で煮るだけの単純の製造方法と思われるかもしれませんが、どのジャムにも果実の香りが引き立つ糖度があります。湿度や気温の違いで砂糖の量を変えないと、通常の味覚にはなりません。地場の材料で作るジャムを地場の人に味わってもらうことは喜ばしいことです。また、地場の材料で作るジャムは、究極のスローフードと思われます」と語ってくれた。
(石井)
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市原市特産の日本なしで製造したジャム |
工房に隣接する畑の果物で製造したジャムの数々 |
福岡事務所
平成17年度第1回砂糖に関する地域情報交換会の開催
平成17年12月9日(金)、当機構福岡事務所は、福岡第一ビル内三鷹ホールにおいて地域情報交換会を開催した。
同交換会は、行政機関、国内産糖製造事業者、精製糖製造事業者、異性化糖製造事業者、砂糖流通業者、ユーザー、一般消費者などが一堂に会し、相互に意見交換を行うことによって、各地域における砂糖やその原料作物、砂糖制度などについて相互に理解を深め、今後の業務や生活に活かすことを目的に平成12年度から毎年開催されているものである。
当事務所がさとうきびの生産およびそれを原料とした国内産糖を製造する地域を管内とする特性があることから、当日は、国内産糖を原料として精製糖を製造する者(4社6名)、国内産糖製造事業者(6社9名)、国内産糖指定倉庫(4社4名)及び国内産糖検査機関(2名)、合わせて14社1機関、21名を参集範囲として行われた。
まず、昨年度からスタートしている「さとうきび増産プロジェクト会議」について、当機構より、当面の日程予定ならびに現在実施しているさとうきび生産に関する施策およびその実施状況の紹介を行った。また、これに関連して、当機構が作製する「さとうきび品種一覧パンフレット」について、掲載品種の範囲などの概要および単収・品質向上に資するための適切な品種選定を行うなどの作製目的、3月中旬完成・配布に向けたスケジュール案、生産農家を対象にしたアンケート調査の実施による効果測定等の説明を行った。最後に、甘味資源作物の買入手続きの改正についての説明を行うとともに、糖価調整法における砂糖の種類および規格の基準の確認の徹底を依頼した。
その後の質疑応答では、各出席者とも今後の砂糖・でん粉制度改正に伴う交付金交付業務の事務手続き等の変更についての質問があったが、制度改正に係る法律案が本年の通常国会に提出される予定であることから、現在の状況として、農林水産省が作成した「品目横断的経営安定対策の導入に伴う畑作物に係る制度改正の検討状況について」、「さとうきび・でん粉原料用かんしょに係る支援方策について」および「さとうきび・かんしょ生産の現状と今後の展開方向」を資料として配布した。出席者からは、このような会議は、同じ産業に従事するものとして共通の意識を持つ必要性があることから、引き続き毎年開催して欲しいとの要望があった。
なお、第2回目は、平成19砂糖年度からの制度改正に関連して、行政関係者、生産者代表(JA等)、砂糖製造事業者ほか砂糖業界関係者を参集範囲とした会議を、また、第3回目は、消費者などへのアンケート調査を基に、精製糖工場見学や医学関係者による講演など、消費者団体および一般消費者を参集範囲とした会議をそれぞれ予定している。
(杉山)
平成17/18年期における鹿児島県の各社製糖工場の操業状況について
鹿児島県における平成17年産甘しゃ分みつ糖製糖工場(6社7工場)の操業は、平成17年12月12日から開始した新光糖業(種子島)を皮切りに順次始まり、平成18年4月には製糖を終了する予定となっている。各製糖工場の操業予定およびコメントについては別表のとおりである。
今期は、台風による被害が比較的少なく良好な天候が続いたことなどによりさとうきびの収穫量は昨年に比べ増加する見込みであるため、12月の年内操業は昨年1工場であったが、本年は4工場が年内に操業を開始している。
なお、日本甘蔗糖工業会によると、平成17年産(平成17年12月15日現在)のさとうきび生産量は52万6千トン(前年度比5%強の増加)、歩留りは12.43%(前年度比12%強の増加)、産糖量は6万5千トン(前年度比18%程度の増加)の見込みとなっている。
(杉山)
県内トップを切って翔南製糖(株)が平成17/18年産の製糖操業を開始
平成17年12月20日(火)、翔南製糖(株)において平成17/18年産の製糖が開始された。同社では、前期より収穫サイクルの早期化により単収を上げるべく12月中の操業開始を実施しており、今期は沖縄県内で石垣島製糖(株)と並んで県内トップを切っての操業開始となった。沖縄本島内の工場が県内トップで操業を始めるのは初めてであり、同社は3月18日までの間、24時間稼動による操業を予定している。沖縄県下では、他社の工場においても順次操業を開始し、本格的な製糖シーズンを迎える。
操業開始日には、さとうきび搬入開始式が行われ、津波次郎社長が、「さとうきびは基幹作物であり、農家など関係者と共に今後も地域に貢献できるよう努力していきたい」とのあいさつを行い、続いて来賓のあいさつ、「前期運搬人好成績者」の表彰、安全祈願の献酒が行われた。
沖縄本島・北中城以南を集荷地域とする同社管内のさとうきびは、慢性的な干ばつにより生育は平年並みであるが、台風の直撃を免れたこと、秋口以降の冷え込みによる糖度の高まりなどに加え、同社の前期からの早期操業による適期植え付け管理作業の取り組みにより、生産量、糖度、単収のいずれも前期を上回る見込みで、生産高見込みは前年比11,300トン増の133,000トンとなっている。さらに、新鮮原料確保のための無脱葉収穫の奨励などの取り組みによるさとうきび原料搬入時の品質の向上も相まって、産糖量予測は前年比2,000トン増の15,500トンとなっている。
(緒方)
平成17/18年期 製糖期間一覧
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表彰の様子 |
搬入開始式の様子 |
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早朝から搬入を待つトラック |
運び込まれたさとうきび |
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平成17年度さとうきび収穫機械オペレーター養成研修が開催される
さとうきび生産コストの低減や農家の高齢化、労力不足に対処するには収穫作業の機械化が不可欠である。収穫用機械の導入に先がけ、その中核的な利用技能者(オペレーター)を養成し、導入機械の効率的、かつ安全な利用を図ることを目的として、さとうきびの収穫期を前にした平成17年12月15日(木)、19日(月)の両日、沖縄県農林水産部主催により、「平成17年度さとうきび収穫機械オペレーター養成研修」が開催され、沖縄本島、宮古、八重山地域のオペレーターが参加した。
研修は12月15日に大里村(現南城市)で開催された基礎研修と、12月19日に糸満市で開催された実技研修の2回に分けて実施された。
基礎研修は、収穫用機械の利用技能に必要な学科研修で、はじめに沖縄県農業試験場農業機械研究室の赤地室長より「サトウキビ収穫の現状と役割」として、ハーベスタの分類、機械収穫における現状・課題などのハーベスタに関する概要の説明があった。次に沖縄県農林水産部糖業農産課普天間氏より「ハーベスタの安全な作業について」として、ハーベスタ収穫時の事故事例を通し、その原因・予防策などの説明があり、安全な収穫作業を呼びかけた。続いてハーベスタ製造会社および販売会社により「ハーベスタの基本操作・機構及び保守点検について」として、保守点検整備や故障診断などの説明がなされ、最後に沖縄県農業試験場蔗作研究室の新里室長より「収穫後の管理体系について」として、株出における「株揃」、「根切」、「施肥」、「除草剤散布」といった管理作業を収穫作業後に速やかに実施することの重要性についての説明と、これらの作業を1台で賄う株出管理機の紹介がなされた。
講演の終了後は、会場の外に用意されたハーベスタを用いて、基本構造の説明が行われた。
実技研修では、圃場において、小型ハーベスタ5台、株出管理機3台などが用意された。運転者と補助員とが連携をとり、周囲の安全を確認しながら作業を行うことなど、ハーベスタによる収穫作業の注意事項の説明の後、参加者は実際にハーベスタに乗り込み、ハーベスタ製造会社などの担当職員から収穫作業や株出管理機による作業の実演や解説、操作の指導を受けた。
ハーベスタを初めて操作する参加者もおり、「刈り取る際の圃場の上下に合わせた操作が難しい」、「最初に圃場に入る際に畦が見えないため、直進させることが意外に難しい」、「微妙な操作で左右に曲がってしまう」といった操作の難しさを実感した声が多く聞かれた。一方、「丁寧に指導してもらい分かりやすかった」といった声も多く、実技研修では参加者が貴重な体験を得られたことに大いに成果を感じられた。
今回の研修に参加して、ハーベスタを利用した収穫作業に加え、株出管理機を活用し、収穫後の一連の株出管理作業を効率的に行うことの重要性が認識できた。今回の研修を踏まえて、オペレーターの方々には収穫用機械の適切な操作とさらなる運転技術の向上を図り、今期の収穫期における安全かつ効率的な作業に期待したい。
(緒方)
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赤池室長による講義の様子
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ハーベスタ実車説明の様子
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ハーベスタを運転する参加者
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収納袋の取り付け
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内部構造の説明 |
株出管理機を説明する様子 |
第54回さとうきび育種委員会が南大東島で開催される
琉球大学農学部や沖縄県農林水産部、JAおきなわなどで構成する沖縄蔗作研究協会(村山盛一会長)の主催により、「第54回サトウキビ育種委員会」が平成17年12月1日(火)、琉球大学、沖縄県農業試験場、沖縄総合事務局、沖縄県農林水産部など、研究機関、行政、製糖企業関係者約60名が参加して、南大東島で開催された。
「サトウキビ育種委員会」では、年2回優良品種の選抜のための研究発表と現地検討会が行われているもので、今回は、地元さとうきび関係機関などからの強い要望もあり、南大東島での開催となった。
南大東島に限らず沖縄県のさとうきび生産は、関係者の努力にも関わらず、気象条件にも災いされ、ここ数年間落ち込む一方であり、生産向上は緊急の課題となっている。
生産向上には、地域に適した優良品種の普及が欠かせないことはいうまでもないが、一部には地域に適した品種が栽培されていない、あるいは品種にあった栽培方法がなされていないなど、品種特性による効果が十分発揮されていない状況も見受けられる。
このような状況を踏まえ、育種委員会では、「担い手から見た地域に適した品種を選定し、地域における品種のバランスを探り、生産向上に貢献する」ことを目的として「生産向上総合技術実証展示圃」を設置している。
この展示圃の特徴は,、農家の畑を利用し、実際に農家が各優良品種候補を栽培することで、その地域における栽培方法・技術にあった品種なのかを総合的に検討することが可能となり、実施段階において、(1)品種・技術の普及の定着を図ることが可能、(2)品種の特性による効果が見やすい、(3)地域の担い手の技術向上につながるなど、直接普及に役立つことが期待できる点である。
今回の南大東島に設置された「生産向上総合技術実証展示圃」の現地検討会では、圃場で実際に栽培を行っている生産者の方から品種・栽培方法について説明を受け、さらに、各参加者の視点で優良性を採点評価するなど、ユニークな評価手法も取り入れられた検討がされ活発な意見交換が行われた。
研究機関や工場の評価の高い品種であっても、農家に受け入れられ普及されなくては、品種開発の成果は十分とは言えない。その点で「生産向上総合技術実証展示圃」設置の意義は大きいと思われる。
南大東島の農家をはじめ糖業関係者は、この取り組みが直接生産増につながるものと期待している。 (仁科)
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委員会の様子
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実証展示圃案内
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圃場で説明を受ける様子
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