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最終更新日:2010年3月6日
●那覇事務所 |
1.「第30回沖縄県さとうきび競作会表彰式」(沖縄県糖業振興協会主催 那覇市 平成18年4月28日)
【競作会審査】
同競作会は、生産技術および経営改善の面で創意工夫により地域の模範となるさとうきび作農家や生産法人に対し、「農家部門」、「多量生産部門」を設け表彰を行い、さとうきび作農家等の生産意欲の高揚による生産振興を図ることを目的として毎年開催されている。
「農家部門」における審査方法は、沖縄本島(北部、中部、南部の各地区)、宮古地区及び八重山地区の各地区の農業改良普及センター、市町村、JA、製糖工場等からの推薦を受けて各地区のさとうきび生産振興対策協議会が中心となって予備審査、全刈審査を行い、その後沖縄県さとうきび審査委員会がそれらの審査資料に基づいて受賞者を決定する。
「多量生産部門」における審査方法は、各製糖工場から生産量の多い農家、生産法人などの推薦を受けた者に面接調査を実施し、その後競作会専門委員会により受賞者を決定するというものである。
受賞者を代表して挨拶する神谷福方氏 |
表彰の模様 |
受賞者の方々 |
【受賞者の紹介】
17/18年期のさとうきび作は、台風・干ばつ等の影響により全県的に低単収で競作会への出品が少なかったが、このような厳しい条件の下で高品質・高単収をあげた農家の方々が表彰された。
〈農家部門〉
沖縄県第1位(農林水産大臣賞)
神谷 福方氏(南部地区代表 八重瀬町)
(1) 栽培品種 NiF8(農林8号)
夏植
(2) 甘蔗糖度 15.5度
(3) 甘蔗糖重量 2,998kg/10a
(4) 蔗茎重量 19,340kg/10a
(5) 経営の特徴
栽培面積56a。さとうきび作50年。パワーショベルで深耕、フィルターケーキで苗作り、堆肥等の有機質投入による土作り、病害虫防除を実施。干ばつ時には隣接する井戸からかん水を実施。
(6) 今後の計画等
年齢的に面積の拡大は難しいが、品質の向上に努めるとともに、新品種の特性を学び、土壌に適したものを栽培。
沖縄県第2位(農林水産省生産局長賞)
松田 昌俊氏(中部地区代表 読谷村)
(1) 栽培品種 Ni15(農林15号)
春植
(2) 甘蔗糖度 14.4度
(3) 甘蔗糖重量 2,785kg/10a
(4) 蔗茎重量 13,120kg/10a
(5) 経営の特徴
栽培面積61a。退職後、10年余り農業に従事。耕起砕土、栽土は機械を利用し、収穫は手刈り。土地改良により基盤整備された地区であり、かんがい設備あり。
(6) 今後の計画等
現状の面積を維持しながら、品質の向上や新品種の導入に努める。
沖縄県第3位(沖縄県知事賞)
大城 宏氏(南部地区代表 糸満市)
(1) 栽培品種 NiF8(農林8号)、 春植
(2) 甘蔗糖度 15.3度
(3) 甘蔗糖重量 2,499kg/10a
(4) 蔗茎重量 11,080kg/10a
(5) 経営の特徴
栽培面積49a。さとうきびのほか、野菜(冬瓜、キャベツ、玉ねぎ)を栽培。植付け期、夏場のかん水に力を入れており、水肥も使用。また、牛ふんや化学肥料を適期に使用することを心がけている。
(6) 今後の計画
経営面積は現状を維持しながら肥培管理を充分に行い、品質向上を目指す。今後はNi17(農林17号)など新品種の栽培に取り組む。
〈多量生産部門〉
第1位(沖縄県知事賞)
農業生産法人(有)宇江城ファーム(久米島町)
(1) さとうきび生産量 527,776kg
(2) 甘蔗糖度 13.7度
(3) 工場搬入シェアー 1.07%
(4) 経営の特徴
平成12年7月7日に設立。久米島町宇江城地区で自作地10ha、借地10ha、計20haの経営規模。今期の収穫面積は13.8ha。
ほ場は強酸性でかん水設備も未整備であるため、干ばつを受けやすいことから、深耕により気象災害に強いさとうきび作りに努めている。春植はすべてパワーショベルを利用して深耕を実施。
上記4者のほか、各地域から選出された模範となるさとうきび栽培農家13名に対して表彰が行われた。
【記念講演】
表彰式に併せて、元沖縄県農業試験場長・農学博士の島袋正樹氏による「さとうきび増産のための行動」と題した記念講演が行われた。
島袋正樹氏の講演 |
○講演の概要
―担い手とは栽培の基本技術を実施する農業者である―
(基本技術)
(1)土づくり(2)苗づくり(3)適期植え付け(4)適期肥培管理(5)水管理(6)雑草防除(7)病害虫防除(8)台風対策(9)収穫(10)株出早期管理
基本技術のうち、「適期植え付け」と「適期肥培管理」の実践は特に重要
―栽培の基本技術の実施には農業機械が必要―
さまざまな農業機械が開発され、機械化一環体系も可能になりつつあるが、いずれの機械も高価であることが普及の妨げになっている。
―基礎条件の整備が重要―
環境(気象条件、ほ場の環境等)効果が栽培の基本技術の効果を上回る年が多い。
従って、かんがい設備、防風林、深い土層といった基礎条件整備が不可欠。
また、このほかに島袋氏自身で栽培管理を行っているほ場を例にした株出管理作業等と生育状況の解説等を行った。
2.宮古地区「さとうきびの日」関連行事(「スローガン宣言」と「ひまわり播種」(宮古地区農業振興会、宮古地区さとうきび糖業振興会主催 宮古島市 平成18年4月26日)
宮古地区の糖業関係者約50人が参加して、さとうきびの増産に向けた取り組みが行われた。
主催者を代表して、宮古地区農業振興会伊志嶺亮会長(宮古島市長)が「さとうきびは宮古の宝。関係者が一丸となって増産に取り組みましょう。」と呼びかけた。
続いて、生産者を代表して、宮古地区ハーベスター運営協議会の辺土名豊一氏によって以下のスローガンが宣言された。
宮古地区農業振興会伊志嶺亮会長(宮古島市長) |
【「さとうきびの日」のスローガン】
1.さとうきび生産目標28万8千トンの達成を図ろう!
2.緑肥作物による「土作り」で単収アップを図ろう!
3.肥培管理の徹底により品質の向上を図ろう!
4.地下水保全のための緩効性肥料の利用促進を図ろう!
5.防災営農による「さとうきびの振興」を図ろう!
【ひまわりの播種】
最後に参加者全員がほ場にひまわりの種をまき、さとうきびの増産に向けた「土作り」を行った。ひまわりは約3ヶ月で満開となり、花を咲き終えた後、ほ場にすき込まれ緑肥として活用される。また、満開となったひまわりは、宮古島の観光の名所としても一役買うことになる。
緑肥播種作業の様子 |
3.南部地区「さとうきび」関連行事(さとうきびの栽培に関する講演会)(沖縄県南部農業改良普及センター、南部地区さとうきび生産振興対策協議会主催 南城市 平成18年4月24日)
沖縄本島南部地区の糖業関係者約100人が参加して、「きょうから始めよう災害に強い高単収のきびづくり」と題し、専門家3人による講演会が開催された。
【講演の概要】
(1)「さとうきびの新植と株出栽培の管理技術の向上」
沖縄県農業研究センター 作物班 主任研究員 新里 良章氏
さとうきびの生産向上には、茎数を確保し増えた茎を梅雨期に伸ばす「自然を味方につけたきびづくり」が重要であるとして、株揃え作業、除草剤施散布、施肥の株出管理作業の重要性とこれら3作業を1行程で行える株出管理機の紹介、移植苗(1芽苗)を用いた捕植作業の説明等を行った。
(2)「さとうきびの生育を阻害するメイ虫類とガイダー等の害虫と黒穂病の防除技術」
沖縄県病害虫防除技術センター 技師 二神 和靖氏
カンシャシンクイハマキ、カンシャコバネナガカメムシ(ガイダー)、オキナワカンシャクシコメツキ(ハリガネムシ)といった害虫の生態と被害、防除対策、黒穂病の症状、伝染方法、防除対策を紹介。
(3)「地域のさとうきび産業を支える品種の紹介」
南部地区農業改良普及センター 普及指導員 金城 鉄男氏
NiF8(農林8号)、Ni9(農林9号)、NiTn10(農林10号)、Ni15(農林15号)等の品種を紹介し、品種ごとの特性を知り適切な選択を行うことの重要性を説明。
会場の様子 |
熱心に質問する参加者 |
パンフレット「日本のさとうきび品種」を紹介(南部地区) |
なお、これら3カ所で開催された「さとうきびの日」関連行事では、品種ごとの特徴や栽培の基本技術を分かりやすく説明した、当機構作製のパンフレット「日本のさとうきび品種」と「栽培の基本技術」を紹介するとともに、参加者全員に配布した。なお、今後生産農家をはじめ関係機関に広く配布する予定となっている。
以上3カ所における取り組み以外にも、沖縄市において当機構と中部地区さとうきび生産振興対策協議会との共催で行った「優良農家表彰式・記念講演」(次号にて紹介)、石垣市において石垣市さとうきび生産振興対策室の主催により当機構が作製したさとうきび栽培関連ビデオの上映や株出管理作業の実演などを行ったのをはじめ、沖縄県内各地で「さとうきびの日」関連行事が行われた。
「さとうきびの日」関連行事は、沖縄県内の各地域において、さとうきび生産農家および糖業関係者が一体となり、さとうきびの生産振興に向けた行事として深く浸透しており、沖縄県の糖業の発展と活性化に貢献している。
(緒方)
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