[2007年1月]
札幌事務所
「北海道十勝・バイオエタノール事例発表セミナー」の開催
平成18年10月24日(火)、当機構札幌事務所は、北海道におけるバイオエタノール開発の先導を努め、パイロットプラントを持つ、財団法人十勝圏振興機構との共催により、ホテルノースランド帯広において、砂糖に関する地域情報交換会の一環として、「北海道十勝・バイオエタノール事例発表セミナー」を開催した。
本セミナー開催にあたり、農林水産省をはじめ、環境省、北海道開発局、経済産業省北海道経済産業局、北海道農業協同組合中央会、国立大学法人帯広畜産大学、北海道、帯広市と、多数にわたる後援名義を頂いた。
わが国におけるバイオマスエネルギーに関する積極的な取り組みなどを背景に、北海道においては、これまで十勝を中心に、バイオエタノールに関する調査・研究が行われている。ブラジルおよびアメリカにおける砂糖とエタノール産業の実態調査結果の情報の共有化を図るため、今般、当機構が産官学から幅広い関係者を集めて、北海道におけるバイオマス事業の発展に資するための意見交換会を帯広で開催したものである。
セミナーは、まず、農林水産省大臣官房環境政策課資源循環室の課長補佐である長峰徹昭氏より、「国産バイオ燃料の導入に向けて」と題して、基調講演があった。農林水産省を中心に、国内で進めているバイオマス・ニッポン総合戦略など、国をあげて取り組んでいる背景と必要性・重要性の説明と、諸外国の取り組みや国内で先行している事例などの紹介があり、北海道において今後の方向性などが示された。
次に、当機構の加藤調査情報部長より「砂糖及びエタノールを巡る国際情勢」と題して、昨年度ブラジルで2回と今年度アメリカで行った砂糖とエタノール産業の現地調査を基に、ブラジルとアメリカの国としての取り組みやエタノールの生産・輸出実態とその供給力の違い、さらには今後のエタノール製造が砂糖やトウモロコシに与える影響についての紹介を行った。
最後に、株式会社りゅうせき、産業エネルギー事業本部バイオエタノールプロジェクト推進室の室長である奥島憲二氏より、「沖縄産糖蜜からの燃料用エタノール生産プロセス開発及びE3等実証試験概要」と題して、バイオエタノールへの取り組み背景、原料供給から生産、流通、利用といった、現在沖縄県宮古島で行っている現状、実用に向けた課題など、国内先進地域として抱える問題点や今後取り組む地域へ向けた紹介があった。
会場には、官公庁職員、民間企業の研究職、建設関係など幅広い参加者が集まり、当初予定の120名が、関係者を含めると180名の参加を得ることとなった。
アンケートを集計した結果、講演内容についてかなり参考になったという意見が約8割あり、特に「国内外におけるエタノールをとりまく情勢が理解できた」という意見がその中でも約7割を占めていた。
具体的な意見の中でも、「国の考え方や他国の現状などが非常にわかりやすく、今後もこのようなセミナーを増やして欲しい」、「エネルギー資源作物としての可能性について単に経済性でけではなく環境対策にも配慮した検討が必要」などがあり、世界的な流れと経済性だけではなく、国内における環境面という点でもバイオエタノールへの関心がかなり高いものであると感じられた。(戸田)
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会場の様子 |
調講演を行う農林水産省長峰課長補佐 |
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講演を行う当機構加藤部長 |
講演を行う鰍閧繧、せき奥島室長 |
東京事務所
「砂糖シンポジウム〜砂糖は笑顔のエネルギー〜」の開催
平成18年11月28日(火)、東京新宿の京王プラザホテルで、社団法人糖業協会、精糖工業会、砂糖を科学する会の主催により「砂糖シンポジウム〜砂糖は笑顔のエネルギー〜」が開催された。同シンポジウムは、砂糖について正しく理解してもらうことにより、砂糖に対する誤解を払拭するとともに、砂糖の役割や重要性、楽しみ方などについて情報提供し、砂糖は健康を支える大切なエネルギー源であることを広く認識してもらうことを目的としている。一般消費者約300人が参加する盛況の中、前半は東海大学教授で医学博士の久保明氏が「老化を抑える糖、すすめる糖 エネルギーと私達の健康」と題して講演を行った。久保氏は高輪メディカルクリニックの院長でもあり、テレビに出演するなど幅広く活躍されており、巧みな話術で会場は大いに盛り上がった。久保氏は砂糖の持つ悪い面ばかりが強調されて、砂糖の基本的な働きがないがしろにされていることをあげ、「今日は脳の働きに欠かせないエネルギー源である砂糖の本当の姿を皆さんに知っていただきたい」と語られた。老化現象の話題から加齢による脳機能の変化、脳にとってブドウ糖の補給が如何に大切であるか、時にユーモアをまじえ楽しく解説された。
後半は、(株)横浜国際バイオ研究所前会長の橋本仁氏が「心身の健康と砂糖」について講演を行った。橋本氏は、「今日は皆さんに砂糖についてもっと知っていただきたい、考えていただきたいと思ってお話しします」と述べ、会場の参加者に質問を投げかけ答えてもらいながら、砂糖に関する正しい知識について説明された。「お米が一番とれるのは何県、ではお砂糖が一番とれるのは?」、「グラニュー糖、三温糖、砂糖の一番搾りはどちら?」などの問いに対する正解について、会場からは驚きの声があがるなどの反応があった。肥満や糖尿病の原因となるなどといった砂糖に対する誤解についても触れ、砂糖を摂ったから肥満になるのではなく、エネルギー摂取と消費のアンバランスが肥満の主な要因であると説明された。
最後に両講師への質問の時間が設けられ、会場の参加者から「和菓子が大好物だが、1日に食べる適量は?」、「最近、甘さ控えめのケーキが多いがなぜか?」などの質問が寄せられた。(三山)
福岡事務所
平成18年度 第2回砂糖に関する地域情報交換会の開催
平成18年11月29日(水)、先月開催した第1回に続いて当機構福岡事務所主催による「第2回砂糖に関する地域情報交換会」を福岡第一ビル内三鷹ホールにおいて開催した。
同交換会は、同事務所管轄の国内産糖製造事業者(7社10名)、精製糖製造事業者(4社5名)、国内産糖指定倉庫業者(5社5名)、日本穀物検定協会(2名)を参集範囲として、国内産糖交付金交付事務手続きに係る留意点など、19年産から始まる新制度に向けての最新情勢についての説明およびこれらに関する各出席者との意見交換を目的としている。
まず、当機構安特産流通部特産流通第1課長が、農林水産省が作成した「砂糖に関する新たな政策の展開方向(平成18年10月農林水産省)」に基づいて、甘味資源作物の最低生産者価格の廃止と市場の需給事情を反映した取引価格が形成される制度への移行、生産者と製造事業者との事前取り決めに基づき、製品の販売価格を分配する収入分配方式への変更、また製造事業者に対する政策支援などについて説明を行った。続いて、当機構が作成した「製造事業者の交付金交付に係る関係書類一覧(案)」、「国内産糖製造事業者交付金交付事務の手続き(案)」、「新制度における国内産糖交付金交付に係る検査について(案)」に基づいて説明を行った。
続いて、質疑応答が行われ、自主検査への移行、指定倉庫の廃止、および対象要件からはずれる生産者からのきびの製造分の扱いなどについて質問が出された。その後、同事務所より18年産に係る国内産糖交付金交付事務手続きにおける留意点等および情報業務関係について説明を行った。
最後に、この会議に対する全体的な意見交換会が行われ、「砂糖類情報」に対する意見や鹿児島県のさとうきびおよび甘しゃ糖の17年産の生産実績、18年産の生育状況および生産見込みについて、各甘しゃ糖製造事業者から簡単に説明が行われ同交換会を終了した。
同交換会終了後は、「情報の共有や各関係業者との関係や連携を深められるので、来年度以降においても引き続き同交換会を開催してもらいたい」との要望があがっていた。(寺西)
福岡事務所
「砂糖と健康セミナー〜砂糖は笑顔のエネルギー〜」(熊本)の開催について
平成18年12月5日(火)、熊本市のメルパルク熊本において、砂糖を科学する会の主催、熊本放送と当機構の後援による「砂糖と健康セミナー〜砂糖は笑顔のエネルギー〜」が開催され、約100名が参加した。
今年度のセミナーは今回の熊本で第6回目の開催となり、今後、第7回は盛岡、第8回は高知において開催予定となっている。
同セミナーは、「砂糖と心身の健康」をテーマとし、横浜バイオ研究所前会長で農学博士の橋本仁氏を講師に迎えて行われた。
橋本氏は、はじめに、「日本で砂糖が一番とれる都道府県は?」、「砂糖の種類のなかで一番最初にできる砂糖は?」などの質問を参加者に投げかけながら、さとうきびやてん菜を原料とした砂糖の製造過程、グラニュ糖や上白糖などの砂糖の種類や性質など、砂糖の基本的なことを説明した。
次に、砂糖を食べると太る、糖尿病になるといった砂糖摂取に関する誤解や偏見に対して、砂糖のエネルギーは1g=4kcalで、米、小麦、いもなどと同じであること、また、糖質摂取量は減っているのに対し、糖尿病患者は増えていることから砂糖が直接肥満や糖尿病を引き起こす要因ではないことは科学的にも明らかになっていると説明した。
続いて、摂取した砂糖はブドウ糖になり、筋肉、また、唯一の脳のエネルギー源になること、運動直後に砂糖を摂取すると疲労回復に効果があること、ブドウ糖服用後は記憶力が向上し、特に、アルツハイマー病患者の記憶力の改善に効果が見られたことなど、砂糖の持つ効用について説明した。
最後に、「さとうきびは石油に代わるエネルギーであるエタノールの製造にも活用されており、地球温暖化防止の観点からも世界中で注目されている。砂糖は体を健やかに、心を安らかにする健康の源であり、まさに、砂糖は笑顔のエネルギーです」と述べ、講演は終了となった。
講演後の質疑応答では、「黒砂糖は白砂糖より体に良いと聞いたが本当ですか?」、「どのタイミングで砂糖を摂取すれば良いですか?」、「子供たちに空腹時に甘いものを与えてもいいのですか?」など、閉会間際まで多数の質問があった。
今回のセミナーでは、砂糖は笑顔のエネルギーというように会場は終始なごやかな雰囲気に包まれ、参加者の砂糖に対する正しい知識の普及、また、砂糖に対する誤解の払拭ができたとともに、砂糖の役割や重要性、楽しみ方など知る良い機会となったのではないだろうか。(山崎)
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橋本氏による講演の様子 |
質疑応答の様子 |
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受付の様子 |
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宮崎出張所
「いただきます」からはじめよう!〜みやざきの食と農を考えるシンポジウム〜
みやざきの食と農を考える県民会議主催の「みやざきの食と農を考えるシンポジウム」が11月8日(水)、宮崎市の県立芸術劇場で開催された。
同シンポジウムには、みやざきの食と農を考える県民会議会員、地産地消推進協力員など約300人が参加した。
先ず、
安藤忠恕前宮崎県知事の開会あいさつの後、宮崎県内で放送中のPRCM〜「いただきます」からはじめよう宣言〜を上映した。このCMは、「すべての野菜や畜産物は自然から生まれた「いのちの恵み」であり、生産者、消費者もこの「いのちの恵み」を食べて生きている、生かされている。このことが「食」と「農」の原点である」ということを「いただきます」という感謝の言葉を通して伝えている。
続いて、
服部幸應服部学園服部栄養専門学校理事長・校長・医学博士が「食育のすすめ−大切なものを失った日本人−」と題し、「「食育」は「選食力」、「食事の作法」、「グローバルな視野」の3本の柱によって「食」の基本を理解し、自分の体に良いものを考え、食べ、作られるようになることが大切である。この3点を理解し「食育」を実践することで食生活はもっと豊かで素晴らしいものになるでしょう」と述べていた。
次に、「地産地消・食育」に関する二つの実践活動事例発表が行われ、一つ目の県立宮崎農業高校生産流通科3年生8人は、「ようこそ!わくわくチャレンジファームへ〜地域における食農交流のモデルを目指して〜」と題し、農業高校生の甲子園と呼ばれる「日本学校農業クラブ全国大会」で優秀賞を受賞した「ようこそ!わくわくチャレンジファームへ」では、「参加者に農業の楽しさ・厳しさを体験してもらい、食の大切さを学んでもらう」、「自分たちは食農交流のモデルを目指すことで、農業の専門性を高める」という2つの目標を掲げ、その活動の中で得た感動や今後の課題などを発表した。
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県立宮崎農業高等学校の発表
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県立宮崎農業高等学校の発表
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二つ目の
濱田倫紀宮崎・綾スローフード協会会長は、「スローフードは人生哲学」と題し、昔からある「身土不二」の精神や1986年にイタリアでスタートしたスローフードの定義を説明し、また、「スローフードとは手段であって目的ではない」と強調し、スローフードから始まりスローライフ、スローシティへと発展させていくことの大切さを発表した。
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宮崎・綾スローフード協会会長濱田氏
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アドバイザーのコメント
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この後二つの活動事例発表に対し、アドバイザーとして参加していた服部氏、和田生活協同組合コープみやざき会長、羽田JA宮崎経済連代表理事会長、長野宮崎県農政水産部長からコメントが述べられ、盛況のうちに閉会した。
終了後、会場に来ていた女性は、県立宮崎農業高校の事例発表に対して、「高校生の農業への取り組みを見て、これからの農業に対する不安が消えた。希望がわいてきた」と感想を述べた。
今後このシンポジウムを通じて、「いただきます」という言葉とともに農業や食の大切さを理解し、より一層宮崎県内における「食育」が進められることを期待する。(斎藤)
那覇事務所
平成18年度中部地区さとうきび増産推進大会が開催される
近年のさとうきび生産の減少傾向を打開することを目指すとともに、19年産からの新制度の対象となる今期の夏植えの単収向上を図ることを目的とした基本技術の実演会「さとうきび増産推進大会」が平成18年9月5日に南部地区(糸満市
本誌11月号で紹介)、10月10日には北部地区(大宜味村)での開催に引き続き、10月31日に中部地区(うるま市宮城島)において開催され、生産農家をはじめとする関係者約300名が参加した。
開会に先立ち、主催者を代表して、中部地区さとうきび生産振興対策協議会新垣清徳会長(中城村長)より、「中部地区におけるさとうきび生産状況は、単収の低迷や作付面積の減少により工場の稼働率も低下するなど、依然として厳しい状況にあり、生産条件の強化が急務となっている。基本的な栽培技術の励行による増産体制と担い手の育成が当面する最大の課題であり、夏植えの肥培管理の実演を通し、さとうきび作の安定化につないでいきたいと思う」とのあいさつがあった。
続いて、生産農家を代表して、うるま市与那城さとうきび生産組合金城政輝組合長から、「本大会を契機に、農家の肥培管理の徹底により、単収向上を図るとともに、生産者全員が国の対象用件を満たすことができるようがんばっていきたい」との決意表明の後、がんばろう三唱が行われた。
実演会
1.堆肥条撒機による堆肥散布の実演(1〜3 沖縄県農業研究センター 新里主任研究員)
堆肥条撒機による1条撒きの実演が行われた。従来は、培土、植え付け後、株出し後などに撒く対堆肥散布機がなかったが、これにより、例えば新植の時に2トン、株出しの時に1トン、株出し管理の時に1トンといった分割して効率的な撒き方が可能になった。
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堆肥条撒機への積込作業 |
堆肥条撒機による散布作業の実演 |
2.平均培土の実演
ミニトラクターによる夏植後の平均培土の実演が行われ、土のかぶせすぎは発芽不良により分げつが抑制されて減収となってしまうとの注意がなされた。
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平均培土の実演 |
沖縄県農業研究センター新里主任研究員 |
3.欠株対策としての補植苗の紹介
夏植の欠株の影響による減収は平均6〜7%あり、補植することによりその減収分の7〜8割を回復させることができるとし、欠株対策として用いるセルトレイで生育させた移植用一芽苗の生育方法などの紹介と移植作業の実演が行われた。
4.さとうきびの品種の選択について説明(中部農業改良普及センター作物畜産普及課 比嘉課長)
中部地区においては、F177が一番多く、27%を占めているが、台風に弱いことや晩熟であまり糖度が上がらないという問題があり、品種更新時期を迎え、地域ごとの土壌や機械の作業形態などに適合した品種として2〜3品種を選択することが望ましいとし、鉢植えで展示されたさとうきびの5品種(農林8号、15号、17号、19号、20号)の解説がされた。
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中部農業改良センター作物畜産課 比嘉課長 |
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展示されたさとうきび(農林19号) |
※当日は、当機構那覇事務所提供によるパンフレット「日本のさとうきび品種」「栽培の基本技術」が配布された。
5.夏植のポイント(沖縄県農林水産部営農支援課 安田主任技師)
平均培土の時期は、おおむね植え付けから2ヶ月後くらいで、4〜5本分げつした頃に浅く覆土することを心がけることが大切であると説明した。
また、人の1日3度の食事と同様に、朝食にあたるものとして「植え付け時の基肥」、昼食にあたるものとして「平均培土時の追肥」、夕食にあたるものとして、「高培土時の追肥」を心がけるように説明した。また、さとうきびの葉の色が濃いものは肥料が満たされており、薄いものは肥料が足りないことが分かるとの説明があった。
さらに、メイ虫の発生時期にあたる11月には圃場を観察し、新葉が立ち枯れを起こす前に早期に発見し防除することを呼びかけた。
6.灌水の実演(沖縄県農業研究センター 新里主任研究員)
市販の灌水チューブによる灌水と、灌水施設が設置されていない地区で有効な簡易タンクを用いた灌水の紹介がされた。また、簡易タンクの活用方法として、畜産処理水などの液肥の使用や、苗を植え付け時に一昼夜水につけることにより発芽率を高めるなどの利用の実例を紹介した。
灌水は最も増収効果のある作業であり、ぜひ実践するよう呼びかけた。
今大会をはじめとする「さとうきび推進大会」は、今回で今年度3回目の開催となる。今後さらに離島地域も含め株出管理、肥培管理、植え付けなどの実演会を開催する予定であり、さとうきびの増産に向けた栽培の基本技術の普及が全県的な広がりをみせている。
生産者大会といえば、これまではとかく「挨拶」ばかりが目立つ大会となりがちであったが、このような実演会を中心とした一連の「さとうきび増産推進大会」は、生産農家へ直接技術を伝えられることから意義は大きい。このような地道な取り組みの成果に期待したい。(緒方)