平成19年1月20日(土)、札幌市のサッポロファクトリーで北海道ガス株式会社により親子料理教室が開催され、その中で当機構の札幌事務所が砂糖とその原料作物であるてん菜について説明を行った。同社では、ガスを使った料理のおいしさを伝える目的で北ガスクッキングスクールを開校しており、今回は、小学校3年生から6年生の子供とその親を対象とした親子料理教室を開くにあたり、メニューで使用する砂糖についても勉強しようと呼びかけた。
当日は、10組22名の親子が参加し、ばら寿しを花形に抜いて飾った花寿し、ほうれん草のしらす和え、わかめと豆腐のみそ汁の3品を調理し、その味を試食した。
当機構からはパネルやパンフレットを使って、砂糖がてん菜やさとうきびから作られること、てん菜が参加者が暮らす北海道で栽培されていることなどについて、子供たちにも分かりやすく説明した。また、てん菜1個から、花寿しの鱈のそぼろ(6人分)に使った砂糖150gより少し多い量の砂糖が作られることを示し、てん菜そのものの味も実際に口にすることで確かめてもらった。母親には、メニューに関するものとして、寿司飯での砂糖による保水性についてやてん菜がほうれん草の仲間であることをはじめ、砂糖の効用ならびに、てん菜が北海道の農業において重要な意味を持つものであることを説明した。
参加者からはてん菜の味については甘くておいしいとの声も苦味がするとの声もあったが、てん菜を見ることが珍しい様子で、実際に手にして思ったより重いとの感想が挙がったり、記念にと模型を手に取って写真を撮る姿が見られたりした。(菊池)
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砂糖について勉強する様子
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てん菜の実物(右)と模型(左)
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平成19年1月24日(水)、大阪市西区の大阪厚生年金会館において、当機構大阪事務所の主催により、砂糖に関する地域情報交換会を開催した。
近年、砂糖の国内消費量は、食生活の多様化や嗜好の変化、また健康に関しての砂糖への誤解などによってやや減少傾向にあるが、砂糖は健康的で豊かな楽しい食生活を送るうえで、欠くことのできない食品のひとつでもある。そこで今回は砂糖の生産者、流通関係者、ユーザー、消費者、栄養士、行政関係者など各方面の関係者が参集、消費者10名を含む64名が出席して情報交換会が開催された。
会議は砂糖製造企業および砂糖ユーザーが砂糖に関連する話題提供を行った後、出席者間の意見交換が行われた。
「話題提供」では国内産糖企業(日本甜菜製糖椛蜊繪c業所)から、「てん菜糖の需給動向等」と題し、てん菜糖業界の歴史、てん菜の生産状況、てん菜糖の製造状況など、北海道農業におけるてん菜・てん菜糖の概況について解説が行われた。同社はまた、会場内にてん菜の実物を展示し、普段、てん菜に対してなじみの少ない出席者にとって、てん菜に触れる貴重な機会を提供した。
また、菓子製造企業(明治製菓椛蜊纃H場)から、「菓子製造における砂糖の優れた特性等」と題し、菓子の歴史、分類および各種類の菓子製造において砂糖の果たす役割、特性等について解説が行われた。チョコレート、ビスケット、キャンディーなど各種の菓子の製造における砂糖の果たす役割がわかりやすく解説され、消費者だけではなく、砂糖業界関係者にとっても非常に有益な講演であった。
「意見交換」では、消費者から、
(1) 砂糖の色と製造法の関係
(2) スーパー等における特殊な種類の砂糖の販売状況
(3) てん菜生産農家に対する支援の状況
等に関する質問が出され、これらに対し砂糖関係業界、機構がそれぞれ以下のように回答した。
(1) 純粋な結晶は無色透明で、漂白していない。黒砂糖や三温糖の色は、それぞれ残ったみつ分や、結晶化工程における加熱により生成される。
(2) 主要製品(上白、グラニュ、三温)以外の砂糖については、目につきやすい位置の棚に置くなど、陳列に工夫が見られる。このような商品は流通量が少なく、価格は高めである。
(3)砂糖価格調整制度により、輸入糖から徴収した調整金等を国産糖企業に交付することにより、間接的に農家を支援を行っている。今後は新たな経営安定対策により、やる気と能力のある担い手に絞って支援されることとなる。また、てん菜糖企業とてん菜生産農家は一体となって、てん菜糖の品質と生産性向上に努力している。(脇谷)
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会場の様子 |
日本甜菜製糖(株)
恵本大阪営業所長講演の様子 |
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明治製菓(株)
麻原大阪工場製造部技術グループ長講演の様子 |
てん菜を見ている様子 |
沖縄県は、海岸線総延長が1,732kmと全国で4番目の長さであり、夏の台風、冬の季節風に加え、四方を海に囲まれた地理的な条件が相まって、季節を問わず潮風にさらされている。そのため、強風や潮害によるさとうきびをはじめとする農作物への被害が多く、防風・防潮林の整備が非常に重要と言われてきた。しかしその一方で、農地の整備などで防風林を伐採する場合もあるなど、まだその対策は十分とはいえない。
防風林の整備は、苗の確保や維持管理など個人では取り組めないこともあり、地域や全県における取り組みが求められている。そのような中、地域で防風・防潮林の重要性に関しての認識を共有し、防風・防潮林の整備による農業生産性の向上を全県的に取り組むことを目的として、農業関係機関、関係団体による「沖縄県防災農業推進会議」が設立されたので、記念講演と本年度行われた関連行事の模様を紹介する。
1. 沖縄県防災農業推進会議の発足と取り組み
平成18年11月21(火)、JAおきなわ南風原支店において、県内の農業関係機関、関係団体により、「沖縄県防災農業推進会議」が発足した。
同会議では、毎年11月の第4木曜日を「防風林の日」と定めるとともに、全県的な防風林の啓発を図り、「防風林の日」をPRするための標語が発表された。また、『防風林の日』関連行事として、平成18年度は「防風林の普及啓発資料の展示」、「植樹セレモニー」が行われた。
『標語』
「防風林 育てて納得 単収アップ」
「子孫へつなぎ地域で育てる防風林」
2.記念講演会
講演要旨は次のとおり。
(1) 「防災営農と防風・防潮林について」幸喜善福琉球大学名誉教授
沖縄県は、周囲を海岸線で取り囲まれ、東西を結ぶ距離が短い場所で4km程度、長いところでも20km程度となっており、他県のような内陸部がなく、島の周辺で発達しているさんご礁に波頭が衝突することによる海水のしぶきや破裂した海面の気泡が空気中に放出されやすい。また、夏の台風、冬の季節風等、潮害を引き起こす要因が多く存在する。とりわけ台風時における空気中には、通常よりはるかに多い塩分が含まれており、潮害が広範囲に及んでいる。
これらの要因により、他県と比較しても空気中の塩分が圧倒的に多く、沖縄県内の中でも面積の小さな離島ではさらに条件が厳しくなる。また、3種類の海岸線(石積海岸、テトラポット、砂浜)による空気中の塩分に関する調査結果によると、石積海岸では砂浜と比較して1.4倍、テトラポットにおいては1.7倍の塩分が含まれている。このようなことから、潮害の影響を非常に受けやすい沖縄県で防風林を整備することは非常に重要である。
(2) 「新しい防災林造成」新里孝和琉球大学農学部教授
沖縄県全土に占める森林率は48%であり、とりわけ宮古地域は16%と非常に低水準であり、宮古地域の森林率を高めるためには、農業、施設、学校、住居など守る暮らしにとって重要な防災林を充実させることが必要である。
また、平成15年に宮古地域を襲った台風14号により、従来防風林として長い間用いられてきた琉球松、モクマオウ、ソウシジュが間伐の遅れや老齢林であったことなどによって甚大な被害を被った。
防災林の耐風性は、壮年期で最も強く、その後徐々に低くなり、老齢期で非常に低くなるが、戦後、防風防潮林樹種の中心を担ってきたモクマオウは成長が早い代わりに寿命も短く、戦後60年経った今日一斉に立ち枯れが目立っている。
また、これまでフクギをあまり積極的に採用してこなかった理由を関係者に尋ねた際、「成長が遅いから」という回答が非常に多く、今後再びモクマオウなどの寿命が短い樹種を植えつけた場合には、40年後にまた同じ後悔を繰り返すことになり、そのような事態は避けなければならない。
防風林の理想としては、多良間村の集落で見られるフクギのように、防風林の周りを多くの樹種が取り囲んで自生することにより、防風効果が一層高くなっていることが挙げられる。
今後の防風林対策としては、樹種をフクギ中心とした樹種選定を行い、多様な樹種を織り交ぜていくことが、防風防潮の効果を高め、そこを棲みかとする生物に対する環境調和の観点から大切である。
(3) 「フクギ林と集落景観について」仲間勇栄琉球大学農学部教授
今後の防風林を考える上で、歴史からその意味を考えていくことは、大いに意義があるとして、琉球王朝時代の防風林づくりに携わった蔡温(1682-1761)を紹介し、当時考えられていた「風水の思想」に基づく防風林づくりを紹介。
蔡温(さいおん)
琉球王府より在留通事を任命され、中国で陽明学、風水、地理を学ぶ。
1713 首里城風水検分
1728 三司官(大臣)
1737 全琉球の農業改革
風水と聞くと、多くの人々が「迷信」、「古い」といった印象を持ちやすい。しかし、今日の環境、集落景観といった視点から着目しても風水の考え方は非常に優れており、当時の考え方で作られた防風林を持つ地区として、渡名喜島における集落の例が挙げられる。
この渡名喜島の集落では、道路とそれに沿って植えられている防風林を直線的に配置し風を遮断するのではなく、曲線で構成されており、風を取り込んだ上でコントロールして弱めるといった風水で言う「抱護」の考え方に基づいている。
数百年間にわたって景観を維持してきたものには重要な意味を兼ね備えている。我々は集落景観、防風防潮に関して歴史から学んでいくべきではないだろうか。
※風水(ふうすい)
中国の伝統的な自然観のひとつ。都市や住宅・墳墓などを造る際に、地勢や方位、地脈や陰陽の気などを考え、そこに生きる者とそこで死んだ者すべてによい自然環境を求めようとするもの。(大辞泉より)
3・平成18年度「防風林の日」関連行事
(1)防風林の普及啓発資料の展示
平成18年11月27日(月)〜12月1日(金)、県民ホール(沖縄県庁一階)で、県農林水産部各課および関連団体による防風林関連事業等を紹介したパネルと防風林樹種苗の展示を行った。
パネルでは防風林の必要性とその効果、取り組み事例、防風林の樹種紹介等についてわかりやすく紹介し、苗はフクギ、テリハボク、アカテツが展示された。
また、同会議で作成した防風林のPRパンフレットの配布や防風林に関するアンケートも行われ、ホール行き交う多くの人々が足を止めた。
(2)「防風林の日」植樹セレモニー
平成18年11月30日(木)、うるま市宮城島の圃場整備地区において、防風林の植樹セレモニーが開催され、多数の農家や関係機関が参加した。
同会議の国吉副会長(沖縄県農林水産部長)が主査者を代表して、「防風林は今日植えて明日から効果があがるというものではないので、関係者による地道な取り組みが必要。いつの日にか、沖縄の農地はどこでも防風林に囲まれているといった防災農業の見本を作っていきたいと考えている。」とのあいさつがあった。
その後、農家代表によるPR標語の発表とがんばろう三唱、今回の植樹の開催地であるうるま市から来年度の開催予定地である宜野座村への苗木の進呈、会場となった圃場における県営農地保全整備事業の紹介、植樹方法の説明、JAおきなわ中央会会長、沖縄県農林水産部長、うるま市長、農家代表による記念植樹が行われ、最後に参加者全員が植樹を行った。
植樹開始の合図をされると、待ちわびた参加者がシャベルを片手に一斉に穴を掘り、次々に苗木が植えられ、300本用意された苗はあっという間に植えられた。
苗は、フクギとアカテツの2種類で、いずれも長寿で潮風害に強い特徴を持つ。
「今日自分で植えた木が大きく育った姿を見るのが楽しみ。」「防風林を植えたのは初めて。来て良かった。」といった感想が多く聞かれ、笑顔があふれる和やかな式典となった。(緒方)
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国吉副会長(沖縄県農林水産部長) |
がんばろう三唱 |
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記念植樹 |
さあ、植えよう!! |
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みんな夢中 |
ガンガン植えるぞ!! |
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大きく育ってね!! |
あっという間に植えられた苗木 |