[1999年12月]
東京事務所
○農林水産省「消費者の部屋」〜お砂糖の週〜
10月25日(月)〜29日(金)の5日間、農林水産省本館1階「消費者の部屋」特別展示室において、お砂糖の週が開催された。
「知ってますか?身近なお砂糖のこんなこと」をテーマに、砂糖の基礎知識・効用・役割などが、さとうきび・てん菜・粗糖の実物、各種パンフレット、パネル、ビデオ、インターネットなどを使って紹介されており、自然の恵みである身近な砂糖の重要性や、消費者の砂糖に対する様々な誤解を払拭する展示となっていた。(5日間の来場者数は1,868人)
第一コーナー「お砂糖の基礎知識」
1.さとうきび、てん菜(さとう大根)の実物や粗糖(原料)、糖種別サンプルの展示
2.パネルを用いて、砂糖の基礎知識を紹介
(1)「お砂糖の9不思議」
砂糖の温度による変化や脂肪の酸化防止、防腐性等の効果があると紹介。
(2)「砂糖のいろいろ」
砂糖には様々な種類があるが、個性もいろいろある。それぞれの砂糖の特性を紹介。
(3)「さとうきび、てん菜から、砂糖のできるまで」を紹介。
第二コーナー「お砂糖の効用とその働き」
1.パネルを用いて、砂糖の効用と働きを紹介
(1)「砂糖は太陽、水、空気、土の恵み」
砂糖の主な原料である、さとうきびとてん菜は、太陽エネルギーによって、葉の表面で水と空気中の二酸化炭素(炭酸ガス)からブドウ糖をつくる「光合成」という作業を行っている。このブドウ糖は、砂糖の主成分であるショ糖に変わる。このショ糖を取り出し、結晶にしたものが砂糖で、自然の恵みいっぱいの天然甘味料と紹介。
(2)「砂糖の白さは天然の色」
砂糖は本来、一粒、一粒が無色透明の結晶。白く見えるのは、結晶が集まって光を乱反射するからで、雪が白く見えるのと同じで、漂白剤を使って白くしているのではないと紹介。
(3)「砂糖は脳とからだのエネルギー源」
脳の唯一のエネルギー源はブドウ糖。ブドウ糖が不足すると、脳の働きが悪くなり、いらいらしたり、集中力が低下する。砂糖は、心臓や筋肉を動かし、脳を働かせるブドウ糖になると紹介。
(4)「砂糖は疲労回復に効果的」
砂糖は米やパン、パスタなどの主成分である炭水化物(糖質)の仲間。炭水化物(糖質)は、最終的にブドウ糖に分解され、吸収されるが、砂糖はでんぷんなどに比べ、消化・吸収が速いので疲労回復に即効性があると紹介。
2.ビデオ上映によって、「アニメ砂糖の歴史」や「砂糖のできるまで」、「太陽エネルギーの結晶・砂糖」などを紹介
3.各社小袋製品の展示
第三コーナー「お砂糖“真”時代協議会の活動」、「砂糖を科学する会の活動」
1.砂糖に対する正しい認識を深めるための、キャンペーンポスターや砂糖の安全宣言のポスターを掲示することによって、砂糖に対する積極的なPRを行っていた。
2.インターネットを使って、お砂糖“真”時代協議会のホームページを紹介。
内容は、お砂糖“真”時代の活動、砂糖の歴史、砂糖の基礎知識、砂糖Q&A、砂糖に対する消費者の誤解を解くなどで、砂糖の本当の姿を知ってもらうために、アニメーションなどを使って分かりやすく紹介していた。
そのほかに、稲田和子PADDY CAKE HOUSEによる、シュガーアート(シュガーケーキ)作品の展示、各種パンフレットの配布、アンケートに答えると、もれなくテトラシュガーのプレゼントがあるなど盛りだくさんの内容となっており、砂糖全般が理解できるイベントであった。
大阪事務所
○あんとカステラ生地が創り出す上品な味
〜愛媛県の銘菓「タルト」〜(その1)
はじめに
愛媛県は「全国でも有数の菓子どころ」と言われ、数々の銘菓が伝統の味を引き継いでいるが、その中でもタルトは全国的にも有名である。伝統的な和菓子の材料であるあんを、南蛮菓子の1つであるカステラ生地で巻いた形のタルトは、いわば「和洋折衷」型の珍しいお菓子である。
今回は、この銘菓について、その歴史を中心に、次号ではその製法や特徴などを取り上げてみたい。
タルトのルーツ
タルト(tarte(フランス語))は元々フランスで創り出されたお菓子である。いつごろ創り出されたかは不明であるが、形を色々と変化させながら諸国に伝えられた。
はじめはビスケット生地のお菓子だったが、15、6世紀頃に2つの形に分かれた。
1つは、ビスケット生地のまま引き継がれていったもので、現在のフランス菓子タルト(パイ生地あるいはビスケット生地で作られた皿型の器に、果物や各種のソースを飾ったもの。)は、この系統である。
一方スペインでは、材料のうちの卵を攪拌してフワッと焼かれたスポンジケーキが開発され、柔らかい生地のお菓子が生まれた。スペイン語でタルタ(tarta)といい、現在ドイツ語圏で見られるトルテ(torte)もこの仲間である。愛媛県のタルトは、この柔らかい方のお菓子の流れを引いていると考えられる。
蛇足ながら、フランス菓子タルトの小型のものをタルトレット(tartelette)といい、さらに小さい一口サイズのものは、タルトレット・フール(tartelette four)というが、作り方の基本はタルトと同じである。
さらにアメリカでは、タート(tart)と呼ばれ、パイを含めて、皿状あるいは平型の丸い菓子の総称となっている。
タルトの我が国への伝来
16世紀後半から17世紀前半にかけて、ポルトガル船やオランダ船の往来によって、種々の異国製品が初めて我が国(長崎)にもたらされたが、それらの中にパン、カステラ、コンペイトウ、ボーロなどとともにタルトも含まれていたようだ。当時の書物の中には、他の南蛮菓子とともに「タルタ」の記述が見られる。
タルトの松山への伝来
タルトを松山に伝えたのは、松山藩松平家初代藩主松平定行であるというのが定説になっている。松平定行は1647年に長崎探題識として長崎に出向したが、その際供せられたタルトの製法を松山に持ち帰ったというものである。ただし、定行が最初に食べたタルトは、カステラにジャムが入ったものであり、あん入りタルトは定行が松山で独自に考案したものとされている。
タルトが松山に遺された理由
ポルトガル人あるいはオランダ人によって長崎にもたらされたタルトは、松山以外の土地にも伝えられたであろうと推測される。その中で愛媛県においてだけ名産品として引き継がれてきた理由として、次のようなことが挙げられている。
江戸幕府は、飢饉の年には必ずといっていいほど倹約令を出して民衆の生活を制限した。具体的な倹約の手段としては、酒造の制限、南蛮菓子の製造禁止等がその主なものであった。この令に従って、全国の諸藩では南蛮菓子の製造を中止したところが多く、松山藩もそれに従ったわけだが、唯一タルトだけは例外であった。藩主である松平定行がもたらしたものであったということと、非常な嗜好品であったという理由から、菓子業者に密かにその製法を伝えさせたものらしい。(以下次号)
なお、このたびのタルト取材に当たって、松山市内で老舗として営業されている次の各社に多大なご協力をいただいたことに対し、誌面を借りて深く感謝申し上げます。
(株)うつぼ屋(タルトや坊っちゃん団子といった愛媛県銘菓などを製造販売)
三好商事(株)(製あん、製菓・製パン材料販売)
参考文献 吉田菊次郎「万国お菓子物語」、昌文社 他
神戸事務所
○一般女性市民対象生活セミナー
「知っていますか?砂糖の常識・非常識」の開催
姫路市女性社会課では、市内在住の女性(各回100名以内)を対象に生活セミナーを年間12回(前期と後期の2期に分けて研修視察も含め、6回ずつ)開講している。この生活セミナーは、日常の衣・食・住生活においてその時の話題になっている身近な問題を学習することを目的としており、特に2歳〜幼稚園児を対象に講座開始から終了までの保育体制を整えて、若い主婦層でも気楽に受講可能であるため、各回とも若いお母さん方に好評を得ているとのことである。
平成11年10月7日(木)姫路市自治福祉会館において、本年度後期第2回セミナーとして「知っていますか?砂糖の常識・非常識」をテーマに、講師には塩水港精糖(株)関西営業所安藤紀子ヘルシーアドバイザーを迎えて開催された。当日は、あいにくの残暑厳しい天候にもかかわらず、受講生は若い人から中高年まで幅広い年齢層にわたり、定員の8割方が出席し熱心にメモをとる姿が多く見受けられた。
講座内容は、一般的な砂糖消費動向から始まり、砂糖の種類、砂糖の調理特性、砂糖はエネルギー、砂糖の性質や各種効果、脳と砂糖の関係、糖と肥満、糖尿病との関係、新甘味料とは、ビフィズス菌と乳果オリゴ糖、特定保健用食品とは…と話は進み、随所にスライドを使い、手許には「お砂糖一番BOOK」「脳一番BOOK」「おなかの調子を整える食品 オリゴ糖」「お砂糖の9不思議」のパンフレットも配布されるなどして、わかりやすく解説、紹介された。
参加者は、特に肥満や糖尿病など身近な話題には熱心に耳を傾けており、砂糖は「キレる」「イライラ」の原因、砂糖は太る、カルシウムを溶かすなどの一般的に言われている悪いイメージやゆ誤解が、少しでも改善されたのではないかと思われる。
講座終了後にはアンケート調査も行われ、やはり砂糖の健康効果や誤解情報、乳果オリゴ糖などに関心がもたれ、開封したら砂糖に使用期限があるのかや上白糖とオリゴ糖使い分け(併用)などの質問も出ていた。
福岡事務所
○鹿児島県南西諸島における農産物粗生産額について(その3)
前月号に引き続き、鹿児島統計情報事務所が毎年調査している個別農産物粗生産額を基に、平成5年から平成9年まで5年間の徳之島、沖永良部島、与論島の農産物別粗生産額を取りまとめたので紹介する。
徳之島は徳之島町、天城町、伊仙町の3つの町からなっており、さとうきびの生産額は鹿児島県南西諸島の中で最も多く、同島の農産物粗生産額全体のほぼ半分前後に達している。さとうきび以外では肉用牛、ばれいしょ、さといもと続き、次いで豚が上位を占めている。
沖永良部島は和泊町、知名町の2つの町からなっており、さとうきび、いも類が上位を占めているが、きく、ゆりなどの花き類の栽培も盛んである。特にきくは、スプレー菊が他の菊より栽培が容易なことや、幅広い用途があることから最近伸びてきている。また、肉用牛が毎年4位前後に入っているなど、その他の生産額も他の島に比べて多く、農産物は幅広く生産されている。
与論島は1島1町であり、さとうきび、肉用牛、さやいんげん、さといもと上位4位までの順位は平成9年までの5年間は変わらず、安定した生産額を維持しており、平成8年から、5位にはきくなどの花き類が入っている。
表:島別農産物粗生産順位表 |
(1) 徳之島 | 単位:100万円 |
順位 暦年 |
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | | |
平成5年 |
さとうきび | 肉用牛 | さといも | ばれいしょ | 豚 | その他 | 計 |
4,528 | 1,343 | 1,077 | 569 | 175 | 1,474 | 9,166 |
平成6年 |
さとうきび | 肉用牛 | さといも | ばれいしょ | 豚 | その他 | 計 |
4,870 | 1,417 | 796 | 578 | 164 | 1,353 | 9,178 |
平成7年 |
さとうきび | 肉用牛 | ばれいしょ | さといも | 豚 | その他 | 計 |
4,664 | 1,526 | 1,066 | 835 | 152 | 1,512 | 9,755 |
平成8年 |
さとうきび | 肉用牛 | ばれいしょ | さといも | 豚 | その他 | 計 |
4,005 | 1,687 | 1,430 | 845 | 127 | 1,415 | 9,509 |
平成9年 |
さとうきび | 肉用牛 | ばれいしょ | さといも | 豚 | その他 | 計 |
3,957 | 1,720 | 995 | 438 | 114 | 1,229 | 8,453 |
|
(2) 沖永良部島 | 単位:100万円 |
順位 暦年 |
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | | |
平成5年 |
さとうきび | ゆり(球根) | ゆり(生花) | 肉用牛 | さといも | その他 | 計 |
1,191 | 1,085 | 1,069 | 950 | 904 | 4,187 | 9,386 |
平成6年 |
さとうきび | ばれいしょ | 肉用牛 | ゆり(球根) | ゆり(生花) | その他 | 計 |
1,228 | 1,143 | 953 | 858 | 841 | 3,981 | 9,004 |
平成7年 |
ばれいしょ | さとうきび | さといも | 肉用牛 | きく | その他 | 計 |
1,586 | 1,201 | 935 | 911 | 760 | 3,696 | 9,089 |
平成8年 |
ばれいしょ | きく | さとうきび | 肉用牛 | ゆり(生花) | その他 | 計 |
1,370 | 986 | 943 | 901 | 824 | 3,941 | 8,965 |
平成9年 |
きく | さとうきび | 肉用牛 | ゆり(生花) | ばれいしょ | その他 | 計 |
1,076 | 1,005 | 918 | 898 | 855 | 3,683 | 8,435 |
|
(3) 与論島 | 単位:100万円 |
順位 暦年 |
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | | |
平成5年 |
さとうきび | 肉用牛 | さやいんげん | さといも | ゆり(生花) | その他 | 計 |
837 | 362 | 109 | 98 | 33 | 278 | 1,717 |
平成6年 | さとうきび | 肉用牛 | さやいんげん | さといも | 鉢物類 | その他 | 計 |
783 | 371 | 155 | 137 | 53 | 226 | 1,725 |
平成7年 |
さとうきび | 肉用牛 | さやいんげん | さといも | しゅんぎく | その他 | 計 |
869 | 421 | 226 | 223 | 13 | 119 | 1,871 |
平成8年 |
さとうきび | 肉用牛 | さやいんげん | さといも | きく | その他 | 計 |
536 | 485 | 192 | 185 | 74 | 152 | 1,624 |
平成9年 |
さとうきび | 肉用牛 | さやいんげん | さといも | きく | その他 | 計 |
751 | 518 | 187 | 134 | 96 | 234 | 1,920 |
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関門事務所
○子供たちと砂糖のふれあい
北九州市門司区の西日本製糖(株)では、毎年門司区内の小学3年生を対象に工場見学を行っている。
この工場見学は、門司区の小学校の先生たちが集まる研究会が、地元にある西日本製糖(株)と花王(株)の工場見学会を行い、その研究発表の内容の一部が小学校の教科書の副読本に掲載されたことがきっかけとなって始まったとされている。今年で13回目を迎え、9月から11月の間で12校620名が予定されているが、同社では地域との交流や砂糖への正しい理解を深めるため、他にも申し込みがあれば積極的に工場見学を受け入れたいとしている。
今回はその模様を見学してきたので紹介する。
見学当日(9月21日)は、見学上の簡単な注意を受けた後、同社の正面玄関前に植え付けられている「さとうきび」の説明に始まり、原糖倉庫・製品包装工程・コンピューター制御室の順番で見学した。
最初の原糖倉庫では、原料糖を恐る恐る口にし「甘い」と言って喜んでいた子供たちの顔が印象的であった。また、豪州糖の荷役が行われており、あまりに大量な原料糖に驚いていた。
製品の包装工程では、いつも家庭で見慣れている上白糖等の小袋(1kg)の製品が次々に出来上がっていく様子に驚き、またテキパキ仕事をこなす包装用ロボット等に興味を持った子供たちが多くいた。
最後のコンピューター制御室では、ボタン1つで工場内の様子が把握できる集中管理システム装置や色鮮やかに点灯したコンピューター制御盤に一様に感嘆の声を上げていた。
2時間の見学であったが、普段先生方でも手を焼くような子供たちを相手に、工場で働く人たちが子供たちにわかり易く、例え話を交えながら熱心に説明しており、このような熱意がこの工場見学が13年間も続いている原動力となっていると思われた。
この体験により少しでも多くの子供たちが砂糖に興味を示してくれることを願いたいものである。
初めて「さとうきび」を見た子供達の様子
包装室での見学風景
那覇事務所
○平成11年産沖縄県産さとうきび及び甘しゃ糖生産見込み数量について
(第2回・平成11年10月1日現在)
沖縄県農林水産部が平成11年10月1日現在における平成11年産沖縄県産さとうきび及び甘しゃ糖生産見込み数量をとりまとめたので、その一部を紹介する。
今回の見込みによると、9月下旬の台風18号の被害によって、前回見込み(8月1日現在)に比較して単収及び製糖歩留りの低下が見込まれており、さとうきび及び甘しゃ糖生産見込み数量がともに前年実績及び過去5年実績(平成6年産から10年産)の平均値を下回る形で予測されている(下表参照)。
一方、台風被害後1カ月半が経過した11月中旬のさとうきびの生育状況は、多くの糖業関係者の見方によれば概ね順調に回復に向かっており、第2回の見込みを上回るものと予想されているが、台風以降の降雨量が極端に少なくやや干ばつ気味な地域もあることから、今後の生育状況が注目されるところである。
さとうきび及び甘しゃ分みつ糖生産見込み数量等 |
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面積 (ヘクタール) |
生産量 (トン) |
うち分みつ糖 |
生産量(トン) | 歩留り(%) | 産糖量(トン) |
第2回見込み(A) |
13,438 | 918,919 | 860,972 | 10.68 | 91,910 |
第1回見込み(B) |
13,472 | 940,395 | 884,440 | 11.50 | 101,898 |
前年実績(C) |
13,536 | 985,943 | 926,099 | 10.86 | 100,611 |
過去5年平均(D) |
14,358 | 924,577 | 873,098 | 11.58 | 101,208 |
増減 |
A-B | △34 | △21,476 | △23,468 | △0.82 | △9,988 |
A-C | △98 | △67,024 | △65,127 | △0.18 | △8,701 |
A-D | △920 | △5,658 | △12,117 | △0.90 | △9,298 |
比率 (%) |
A/B | 99.7 | 97.7 | 97.3 | 92.9 | 90.2 |
A/C | 99.3 | 93.2 | 93.0 | 98.3 | 91.4 |
A/D | 93.6 | 99.4 | 98.6 | 92.2 | 90.8 |
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