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てん菜直播栽培の普及状況について(3)〜幕別町の事例〜

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最終更新日:2010年3月6日

砂糖類情報ホームページ

[2009年2月]

【調査・報告】
札幌事務所 所長 角田 恵造
所長代理 戸田 義久

1 幕別町の概要

 幕別町は、十勝平野のほぼ中央部にあたる本町、札内、南幕別地区においては畑作物や野菜生産を、また中山間地である忠類地区においては大規模酪農経営を中心にしており、人口は2万7千人強(平成20年10月末)、農家戸数651戸の畑作と酪農を中心とした地域である。

図1 幕別町の位置

 幕別町の耕地面積は22,600ヘクタール(以下、ha)で、農産物生産額割合は農産が約78%、酪農経営、黒毛和種繁殖経営および重種馬繁殖経営からなる畜産が約22%であり、農産・畜産の複合経営を営む農家もある(表2)。

表1 平成19年度の作付面積
資料:JA幕別町
表2 平成19年度農産物生産額
資料:JA幕別町

2 幕別町の地勢と気候

(1)地勢
  幕別町は十勝平野のほぼ中央部に位置し、北端には十勝川が、またその支流である札内川が西端を猿別川、途別川が町内を南北に流れている。これらの川の流域はおおむね平坦で、沖積土層からなる十勝平野の中心部を形づくっている。また中央部から南部に向かっては、火山性土からなる台地性の丘陵が連続している。そのため気候は大陸性で、冬は寒く夏は高温となることが多いが、土壌は肥沃で農耕に適している。

 土壌は、火山性の湿性土壌が多いが、一部はてん菜の直播栽培に不向きな乾性土壌である。

(2)気候
  幕別町は、亜寒帯に属し、太平洋岸を除き内陸性気候であることが特徴である。春にはフェーン性の乾燥した季節風が日高山脈を越えて強風となることがあり、夏は海岸部で海霧が立ちこめ、日中の気温はあまり上昇しないが、内陸部では比較的高温が続く。冬は大陸性寒冷高気圧により低温が続き、日高山脈で雪雲が遮られることから降雪量は少なく晴天の日が続くため、土壌凍結深度が深くなる。年間を通じて全国的にも有数の日照時間に恵まれ、年間降水量も少なく、年平均気温は、4〜6度、年間降水量は800〜1000ミリメートルとなっている。

図2 幕別町の位置

3 幕別町のてん菜の作付け

(1)幕別町のてん菜作付農家戸数と1戸当たり作付面積の推移
  幕別町における平成10年から平成19年までのてん菜の栽培農家数は、平成10年の442戸から平成19年には91戸(21%)減の351戸となった。一方、1戸当たりの作付面積は、平成10年の6.31haから平成19年は7.25haとなり、0.94ha(15%)の増加となっている。

(2)幕別町のてん菜直播栽培の推移
  幕別町におけるてん菜の作付面積は、平成10年から平成12年は約2,700haで推移していたが、平成13年からは2,600ha前後で推移している。

 直播栽培面積は、平成10年には28haであったが、平成19年には104haとなり、約3.7倍となった。また、直播比率も平成10年の1.0%から平成19年には4.1%と3.1ポイントの伸びを示しており、生産者の高齢化、育苗ハウスなどの資材の高騰、1戸当たりの作付面積の拡大により家族労働力だけでは経営が難しくなってきたことにより、労働力の軽減と生産コスト軽減の観点から、てん菜の直播栽培を選択する農家が増加したようである。

出典:「てん菜糖業年鑑」北海道てん菜協会
図3 幕別町の農家戸数の1戸当たりの面積の推移
出典:「てん菜糖業年鑑」北海道てん菜協会
図4 幕別町の直播栽培の推移

4 幕別町のてん菜直播栽培農家の事例

 次に幕別町において、てん菜作付けに直播栽培を採用している農家の経営状況などを紹介する。

(1)駒畠のA氏の事例の特徴
①てん菜の栽培
  平成15年から平成19年におけるてん菜栽培の生産実績および20年産てん菜作付けの概要は、表4、表5のとおりである。かつてはすべて移植による栽培を行っていたが、平成10年からは、作付面積の半分に直播栽培を採用し、平成11年からはすべてを直播に切り替えた。単収は、その年により増減はあるが、平均すると移植と比較しても遜色はない。

表4 過去5ヵ年生産実績
表5 20年産てん菜の作付けの概要(直播)

② 直播栽培の導入の動機
  平成10年の大雪で、10ha分の育苗ハウスの2棟のうち1棟が倒壊したこともあり、作付けの約半分に直播栽培を導入した。直播栽培により、てん菜の育苗に係る経費と労力の軽減を図ることができるため、平成11年からは全部を直播にした。

 初年度の平成10年には4月30日に発芽したあと、気温が氷点下5〜6度まで下がり、凍霜害が発生したため播き直しを行った。

 なお、労働力は夫婦と息子夫婦の4人である。

③ 直播栽培の方法
  は種機は、平成6年に購入した大豆用のは種機を使用している。

 は種と同時に鎮圧すると土中の水分が集まることで、種の吸水性が良くなり発芽不良はなくなった。鎮圧は、5〜7センチメートル(以下、cm)幅で、高さ2cmのローラー(凸型鎮圧輪)を使用している。この凸型鎮圧輪により畦の真ん中が2cmへこんだ部分に種が播かれるので、風が吹いても種が飛ばされない。

 直播栽培導入当初は、発芽時にテンサイトビハムシ(ジノミ)の被害にあったが、最近のてん菜の種は殺菌剤と殺虫剤入りのコーティングがされており、ジノミの被害がなくなっている。

 は種の時期は、雪解け後の気候にもよるが、早くて4月9日頃、平年で4月20日ころである。雪解け後早い時期に好天が続いた場合、収量を良くするために早期には種を終了し、生育期間を長くしたいが、は種後に晩霜の被害に遭う恐れがあるので注意し、晩霜が発生した場合には、播き直している。

 直播栽培の除草剤散布は発芽の時期がそろわないと難しい。苗が小さいうちに除草剤を播くと、てん菜にも利いてしまうし、てん菜が大きくなってからだと、雑草が大きくなって、除草剤の効果がないこともある。1回の除草剤散布で効果がないと作業と経費が余分に掛かることになる。

④ 輪作体系
  平成20年の作付けは、てん菜11ha、小麦22ha、ばれいしょ(でん粉原料用、加工用)13ha、野菜(にんじん、ながいも)+そば2ha、緑肥12ha、計60haで、畑を回している。野菜は、根菜類である。

 主として、てん菜、小麦、ばれいしょの3輪作で体系を組み、地力維持のため小麦収穫後、緑肥を播き秋に畑にすきこむ。また、所得確保源として一部野菜を組み入れている。

【具体的な輪作の例】
ⅰ)ばれいしょ→小麦(後に緑肥(えん麦))→てん菜→野菜類
ⅱ)ばれいしょ→てん菜→野菜類→小麦(後に緑肥(えん麦))

 てん菜の直播栽培は、酸性土壌を嫌い、ばれいしょは逆に土壌を酸性にしておかなければ、そうか病が発生するので、てん菜の後のばれいしょの作付けは避けている。

⑤土壌管理
  種子ばれいしょの適正な耕作地をJA幕別町が確認するため、土壌診断を行っている。その土壌診断の結果を元に、次年に植え付ける作物に合わせ、不足が見込まれる成分の単肥を追肥し、肥料代の節約に努めている。

 土作りの基本として、小麦の後作に緑肥作物(えん麦)を作付けし、土壌還元の上、たい肥を入れることにしている。

 畑の地力を維持するために、耕作地60haのうち5分の1の12haを休耕させ、緑肥(えん麦)を導入している。

 たい肥は、酪農家からの購入と麦稈との交換をして得ている。

 土壌pHの補正には石灰を投入している。投入方法としては、pHの低いほ場は全層を主体に行い、pHの高いほ場においても作条で使用している。

 てん菜は湿害に弱い作物なので排水性を良くするために、 明渠 めいきょ 暗渠 あんきょ を施工している。心土破砕は小麦収穫後に施工しているが、春整地前に施工することもある。

⑥ その他
  野良いも(ばれいしょを収穫した後にほ場に残留したいも)の処理として、雪割りを行い、土壌凍結が深く入るようにして、野良いもを凍結させ、発芽しないようにしている。

 直播の場合は、10haのほ場へのは種に要する時間は、4畦のは種機で2日であるが、移植の場合には4畦でも3日を要する。

(2)駒畠のB氏の事例の特徴
①てん菜の栽培
  平成15年から平成19年におけるてん菜栽培の生産実績および20年産てん菜作付けの概要は、表6、表7のとおりで、平成19年から一部直播を導入した。

表6 過去5ヵ年生産実績
表7 20年産てん菜の作付けの概要(直播)

② 直播栽培の導入の動機
  平成19年産から移植栽培との並行作により直播栽培を導入した。

 平成19年に移植機(14年間使用)が使用不能となり、2畦の移植機を新たに購入すると約150万円、育苗ハウス2棟(築20年と15年)も古く、建替えると約450万円の併せて新たに約600万円の投資が必要となったことと、家族経営で、親が高齢であることから直播栽培を導入した。なお、労働力は本人と親の2人である。

③ 直播栽培の方法
  基本は、A氏と同様の栽培を行っている。は種機は他の作物でも使用出来るので、は種と鎮圧が同時に行える機械を使用し、は種後の鎮圧は種子位置の土壌乾燥予防と風による種子露出を防止し、発芽揃いをよくするため行っている。

 種子はテンサイトビハムシの予防として、殺虫剤入りのコーティングを使用し被害を軽減している。

 は種時期は融雪の時期は年によって異なり、収量面を考えると一日でも早期には種することがポイントとなるが、発芽後の晩霜による凍霜害も避けなければならないので、その年の天候を見ながらは種している。

④輪作体系
 平成20年の作付けは、てん菜10.7ha、小麦14ha、ばれいしょ(でん粉原料用、加工用)11.3ha、野菜(にんじん)4ha、計40haで、畑を回している。

 主として、てん菜、小麦、ばれいしょの3輪作で体系を組み、地力維持のため小麦収穫後、緑肥を播き秋に畑に鋤きこむ。また、収入源として一部野菜を組み入れている。

【具体的な輪作の例】
ⅰ)ばれいしょ→小麦(収穫後に緑肥作物(えん麦))→てん菜→野菜
ⅱ)ばれいしょ→てん菜→野菜→小麦(収穫後に緑肥作物(えん麦))

 てん菜の直播栽培は、酸性土壌を嫌い、ばれいしょは逆に土壌を酸性にしておかなければ、そうか病の発生がすることもあるので、てん菜の後にばれいしょを作付けることを避けている。

⑤ 土壌管理
  JA幕別町が土壌診断を行い、不足している成分の単肥を追肥し、肥料代の軽減に努めている。てん菜の作付けの前年にたい肥を入れ、てん菜の作付けの翌年に野菜、小麦を作付けし、肥料代の軽減とばれいしょのための酸性土壌化に努めている。

 土壌pHの補正には石灰を投入している。投入方法としては、pHの低いほ場は全層を主体に行い、pHの高いほ場においても作条で使用している。

 てん菜は湿害に弱い作物なので、排水性を良くするために、明渠、暗渠を施工している。心土破砕は小麦収穫後に行っているが、春整地前に行うこともある。

⑥ その他
  野良いもの処理として、雪割りを行い、土壌凍結が深く入るようにして、野良いもを凍結させ、発芽しないようにしている。

 直播栽培のは種作業は、11haに対し48時間(およそ3〜5日間)で完了可能である。また、移植作業のように他者の手を借りる必要がなく、1人でも作業を行うことが可能である。

 移植栽培の場合は、約45日間の育苗期間が必要であり、経費もかかる。

(3)中里西のC氏の事例の特徴
① てん菜の栽培
  平成15年から平成19年におけるてん菜栽培の生産実績および20年産てん菜作付けの概要は、表8、表9のとおりで、直播栽培は2年前の平成18年から一部導入した。

表8 過去5ヵ年生産実績
表9 20年産てん菜の作付けの概要(直播)

② 直播栽培の導入の動機

 直播栽培を始めたきっかけは、経営面積全体を増やしたことにより、和牛の飼育と春の定植作業が重なり、春先に労働力不足に陥ったためである。

 移植機の更新時期もきているが、育苗ハウスを新しくしたこともあり、今後全部を直播栽培にするかどうかについては、検討中である。

 なお、労働力は両親と夫婦の4人である。

③直播栽培の方法
  基本はA氏と同様な栽培を行っている。特には種時期について、発芽に重要な土壌水分と発芽時の晩霜や強風による被害を受けないよう時期を決めている。土壌水分と強風の影響を防ぎ、高発芽率を得るためは種時に鎮圧を行っている。以前は発芽時にテンサイトビハムシの被害を受けていたが、最近は種子に殺菌剤入りのコーティングが用いられたものを使用することによって被害が軽減されるようになった。

④ 輪作体系
  平成20年の作付けは、てん菜12.1ha(直播5.7ha、移植6.5ha)、小麦16ha、ばれいしょ(でん粉原料用、加工用)5.9ha、野菜(にんじん、ながいも)1ha、緑肥5ha、牧草15haの計55haである。

 畑の地力を維持するために、休耕畑に緑肥を導入している。また、表土の深いところは、ながいもを作付けている。他に、黒毛和牛を35頭飼育し複合経営を行っている。
主として、てん菜、小麦、ばれいしょの3輪作で体系を組み、地力維持のため小麦収穫後、緑肥を播き秋に畑にすきこむ。また、これら作物以外の所得確保源として一部野菜を組み入れている。

【具体的な輪作の例】
ⅰ)ばれいしょ→小麦(収穫後に緑肥(えん麦))→てん菜→野菜
ⅱ)ばれいしょ→てん菜→野菜→小麦(収穫後に緑肥(えん麦))

⑤ 土壌管理と肥培
  JA幕別町が土壌診断を行った結果により、必要な箇所への単肥の追肥を行い、コスト削減を行っている。55haのうち、牧草15haを除く、40haの8分の1の5haを休耕し、緑肥を導入している。また、小麦の後にはたい肥を投入している。

 土壌pHの補正には石灰を投入している。投入方法としては、pHの低いほ場は全層を主体に行い、pHの高いほ場においても作条で使用している。

 てん菜は湿害に弱い作物なので排水性を良くするために、明渠、暗渠を施工している。心土破砕は小麦収穫後に行っているが、春整地前に行うこともある。

⑥その他
  野良いもの処理として、雪割りを行い、土壌凍結が深く入るようにして、野良いもを凍結させ、発芽しないようにしている。

 直播栽培における投資は、は種機を購入したのみである。現在は、保険という意味で移植栽培も行っているが、資材高騰で移植のメリットがなくなってきている。和牛を肥育しているので牧草も作付けしている。

5 まとめ

 幕別町は通常の降雪量は少ないが、厳冬期の冷え込みは厳しく、強風がしばしば農耕地の表土を飛散させ、は種または移植直後の農作物に被害をもたらす地域である。今回3戸の耕作者にお話を伺うことが出来たが、凍霜、風害による再播、廃耕を経験しており、人一倍の努力をされている方々である。

 このような幕別地域において、直播栽培を導入したきっかけとしては、
①育苗ハウス等の施設、移植機械等の更新の時期の到来
②家族経営のなか、経営規模拡大による労働量の増加を平準化する必要性
③は種後に鎮圧の作業を実施することにより発芽率の向上
④コーティング種子の技術改良による害虫被害の軽減

 ―などが挙げられる。

 3農家とも輪作作物の中に野菜を一部組み入れ所得の確保にも努めている。
今後は、直播栽培が経費はもとより農作業の軽減、労働時間の短縮をもたらすことを経験することにより、幕別地域においても移植栽培から直播栽培への取り組みが徐々に増加していくものと思われる。

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