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技術開発等推進事業実施報告

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最終更新日:2010年3月6日

砂糖類ホームページ/国内情報

事業団から
[2000年5月]
シリーズ・農畜産業振興事業団助成事業の結果報告
 農畜産業振興事業団の助成事業も3年を経過し、その事業内容及び成果についての広報が各方面から求められています。ついては、助成事業の実施主体からの各事業の実施報告をシリーズで掲載することといたしました。第1回目は技術開発等推進事業について (社)糖業協会から報告していただきます。

社団法人 糖業協会
I. 目的と背景
II. テーマの選定
III. 研究開発の方法と成果
 1.効率的な蔗糖回収技術の開発
 2.包装資材に関する調査研究
 3.品質保証管理システムの開発
 4.効率的な砂糖製品の輸送システムの開発

I. 目的と背景

 食品素材産業の一翼を担う精製糖企業は、「生産コストの低減」「環境保全」「食品の安全性対策」等といった対応が急務の状況にある。
 このうち「生産コストの低減」については、製造工程を効率的に改善するなどにより、消費者、ユーザーに対して合理的な価格で安定的に砂糖を供給する体制を作ることが必要となっている。  また 「環境保全」 については、包装資材のリサイクルなど、環境に配慮した対応が必要になっている。
 さらに「食品の安全性対策」については、消費者の食品に対する安全志向の高まりなどから食品への異物混入の防止、微生物の汚染の低減など、さらなる対応が必要となっている。
 このような中で、事業団助成事業の一環として、平成10〜11年度にかけて技術開発等推進事業を実施した。実施に当たり、次の目標を設定した。
(1) 低純糖液からの効率的な蔗糖回収技術の基礎的な研究とその技術の開発並びに副生した廃液の処理技術の開発 (以下、効率的な蔗糖回収技術の開発;平成10、11年度)
(2) 容器包装のリサイクルなど、環境に配慮した包装資材に関する調査研究 (以下、包装資材に関する調査研究;平成10年度)
(3) 精製糖工場への HACCP の導入の可能性や砂糖製品中の残留農薬の有無など砂糖の安全性を保証するために、砂糖の品質保証管理システムの開発 (以下、品質保証管理システムの開発;平成10、11年度)
(4) 食品への異物混入の防止、微生物の汚染の低減の面から、精製糖工場での砂糖製品の安全で効率的な輸送システムの開発 (以下、効率的な砂糖製品の輸送システムの開発;平成11年度)

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II. テーマの選定

 前述の4目標の達成に向けて、次のような具体的なテーマを策定した。

(1) 効率的な蔗糖回収技術の開発
 精製糖業は、製造コストの削減が重要な 課題となっていることから、現在の回収工程 (図1−F参照)の代わりに、エネルギー消費が比較 的少なく、砂糖の回収率の向上が期待でき るクロマト分離法で蔗糖を回収する方法(図1−B及び−C参照)を開発することにより、エネルギーの削減と砂糖の回収率の向上を目指す。
1) クロマト分離法による蔗糖回収技術 (図1−B参照)。

図1 精製糖の製造工程と研究開発のポイント

精製糖の製造工程と研究開発
2) 膜分離、クロマト分離による糖液精製の基礎研究 (図1−C参照)
3) クロマト分離副生廃液や低純糖液 (洗糖蜜や裾物蜜) の微生物を利用した脱色及び副生有用物質の利用技術 (以下、微生物を利用した低純糖液の脱色及び副生有用物質の利用技術;図1−D参照)
4) 精糖裾物液、クロマト分離副生廃液などの乾燥・固形化とその有用性評価 (以下、クロマト分離副生廃液、低純糖液の固形化;図1−E参照)

(2) 包装資材に関する調査研究
 精製糖業界の容器包装廃棄物の実態の把握、容器包装の資材転換の可能性について調査研究を行う。

(3) 品質保証管理システムの開発
 精製糖工場への HACCP 方式の導入に向けての調査を行うために「精製糖工場の包装工程における品質保証システムの確立」についての調査を行う。また、「砂糖の残留農薬の分析法の確立とその方法を利用した各種砂糖中の残留農薬の分析 (以下、砂糖を対象とした残留農薬の分析)」を行う。

(4) 効率的な砂糖製品の輸送システムの開発
 精製糖工場では、結晶スラリーの遠心分離機処理により得られる結晶製品を乾燥冷却し、包装工程へ輸送するために振動コンベヤ、バケットエレベーター、スクリューコンベヤなどが用いられている。このため、機械的摩耗により生じる微細な金属片や機械に付着し変質した砂糖の混入を防止するために、輸送工程の洗浄を行っているが、製品の汚染を完全に防ぐことは、ほとんど不可能である。さらに機械構造が複雑なことから、機器の維持管理にも多くの手間がかかる。そこで、効率的な砂糖製品の輸送システムを開発する。

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III. 研究開発の方法と成果

1.効率的な蔗糖回収技術の開発

(1) クロマト分離法による蔗糖回収技術
1) 研究開発の方法
 イオン交換樹脂の選択的な吸着能力の違いを利用して、蔗糖分とその他の不要成分を分離する技術を開発するため、クロマト分離技術、装置を含むシステムの設計思想、工学的な装置の構造など異にする3グループで、各々のクロマト分離方式の装置を用いた分離試験と、各々のクロマト分離装置に適合した各種の前・後処理工程を検討して、洗糖蜜や裾物液から蔗糖を回収するシステムの研究を行った。初年度は、蔗糖とその他2成分へのクロマト分離の基礎試験及び処理液の前処理方法の検討 (クロマト分離に用いる試料の最適濃度、試料中の2価イオンを1価イオンに変えるための軟化処理、試料中の不溶性の不純物を取り除くための濾過処理など) と実験室規模の試験を行った。2年度目には、初年度でやり残した課題を解決した上、本技術の実用化を目指して精製糖工場内にテストプラントを設置し、2〜4カ月にわたり、現場試験 (写真1参照) を行った。
2) 得られた成果
 クロマト分離により、低純糖液の糖液から蔗糖分、還元糖分、その他成分の3成分を分離することができた。その時の蔗糖分の純度及び回収率は、それぞれ95%以上、90%以上となり、目標とした値が得られた。
 前処理については、洗糖蜜、裾物蜜を精密濾過、膜濾過、珪藻土濾過などにより、不純物の除去試験を行った結果、いずれでもクロマト分離に要求される性状の液を得ることができた。また、この濾液を軟化処理すると、クロマト分離装置の分離剤の寿命が延び、かつ、回収した蔗糖の純度も向上することが分かった。
 現場試験では、上述の得られた条件を基に、システムを組み、精糖工場にシステムを持ち込んで試験を行った結果、裾物蜜あるいは洗糖蜜からの蔗糖の回収率が現行の方法より、改善することが明らかとなり、当初の目標を達成できた。
 精糖工場への本格的な導入には、多くの課題が山積しているが、今回の研究開発により、精糖工場に本システムを導入した場合、経済的にメリットが生ずることが予想できた。

(2) 膜分離、クロマト分離による糖液精製の基礎研究
1) 研究の方法
 洗糖蜜や裾物液を対象としたクロマト分離の基礎研究では、2年間の間、限界濾過の各種の操作条件、濾液を煎糖して蔗糖の回収試験を行った。
2) 得られた成果
 低純糖液 (洗糖溶液、ブラウンリカー、原料糖など) を限界濾過すると、濾過液の着色物質はイオン交換樹脂のような吸着剤で脱色され易く、使用後のイオン交換樹脂も再生され易かった。また、限外濾過液は、粘性が低下しているため、煎糖による晶析が容易で、砂糖の回収率が高まった。
 限界濾過とクロマト分離法を組み合わせた精糖法の研究は、まだ基礎的な段階にあるが、今後さらに研究を進めれば、精糖工程のコンパクト化が達成でき、省エネ、省コスト化が可能になると思われる。

(3) 微生物を利用した低純糖液の脱色及び副生有用物質の利用技術
1) 研究の方法
 初年度は、脱色能と高分子多糖生産能をもつ不完全菌 (カビの仲間)、脱色能とL−乳酸生産能をもつ乳酸菌の検索を行った後、両菌を用いて、これらの糖液の色素を最も効率よく脱色する条件、あるいはL−乳酸や高分子多糖を生産するための最適な条件を回分操作で検討した。2年度目は、さらに生成した高分子多糖の構造の検討や実用化について検討した。
2) 得られた成果
 高脱色能を持ち、低純糖液 (廃糖蜜) 中のグルコ−ス当たり約20%の多糖を生産する能力をもつ不完全菌を分離した。この菌の培養条件を最適化すると、脱色率は90%に達した。
 検索した乳酸菌は、半嫌気性の培養条件下で低純糖液 (廃糖蜜) 中の色素の約20%を脱色し、L−乳酸を11.7mg/ml (対グルコース当たり195%) 生産した。また本菌は少量のD−乳酸も生産したが、生産したL−乳酸とD−乳酸の割合は、98.2:1.8であった。これらの結果から、さらに研究を進めることにより、実用化が可能と思われる。
 精製糖蜜のような低純糖液は、再利用や廃棄を行う場合、環境に与える影響が大きいことから、本研究で実用化の目途のついた技術は、大いに期待できると思われる。

(4) クロマト分離副生廃液、低純糖液の固形化
1) 研究開発の方法
 新開発のジェットバーナーシステム(注)を用いて行った。最初は、従来型の構造の装置によりクロマト分離副生廃液や低純糖液 (精糖蜜) の固形化を行ったが、粘性が高いために、これらの糖液を装置に供給し、乾燥することが困難であった。そこで装置をこれらの糖液に適応できるように、バーナー、供給ノズル、処理釜の形状を改造して、これらの糖液の濃度、供給量などの条件を変えて試験した。
(注) バーナーと処理液を供給するノズルを内蔵した処理槽からなり、バーナーから灯油と空気の高圧混合ガスを燃焼させ、槽内に音速に近い1200〜1400℃の火焔ジェット流を噴射させる。供給された処理液はそのジェット流により、瞬時に乾燥、あるいは表面が炭化され、出口付近でマッハ4〜5の衝撃波を伴った高温ガスとともに排出される。燃焼条件や処理液の供給速度を調整することにより、性状の異なった処理液の固形化物が得られる。
2) 得られた成果
 クロマト分離副生廃液では、水分2.2%、嵩密度0.15%、低純糖液では、水分0.2%、嵩密度0.29%の黒色の顆粒状固形物を得た。本固形物は、取扱いが容易であり、土壌改良剤や肥料、燃料として利用できると考えられる。
 前述したように、精製糖蜜のような低純糖液の再利用や廃棄は、精糖工場にとって最大の問題点であるが、本ジェットバーナーシステムで低純糖液を処理することで、利用可能な顆粒状固形物を得る技術を獲得したことは、大きな前進であると考えられる。

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2.包装資材に関する調査研究

1) 調査研究の方法
 a.精製糖業界における容器包装の実態把握、b.容器包装の LCA (ライフサイクルアセスメント) 解析と評価、c.砂糖のライフサイクルにおける容器包装の LCA 解析と評価、の3点に絞り、アンケートや文献調査など作業を行った。
 a.に関しては、委託先で、砂糖の糖種別の生産量、容器包装の形態及び使用量、海外の状況、容器包装のライフサイクルとパターン、廃棄とリサイクルの処理形態、負担費用などを調査した。
 b.に関しては、容器包装のインベントリーデータ (外国の機関や企業、国内の企業や機関から得たデータ) を集め、容器包装資材のエネルギー消費量、炭酸ガスの排出量などを算出した。
 c.に関しては、b.と同様に砂糖のライフサイクルとパターンを調査し、砂糖と包装のエネルギー消費量や環境負荷物質などの排出の程度を調査した。
2) 得られた成果
 容器包装の材質には、再商品化のための分別収集が可能で、生産量が増加すれば現在の材質より製造コストが低下するラミネート紙がコスト削減の点で、有利であることが明らかとなった。したがって、現在使用している容器包装の素材は、特性、価格の点からみても優れてはいるが、今後、使用する素材としては、延伸ラミネート紙が軽量で、丈夫で、分別収集が容易であることから、産業廃棄物として望ましい素材と思われる。
 LCA 分析から、容器包装の製造、陸上輸送、消費、廃棄の各段階での環境負荷 (CO2, SOx , NOx) は、上白糖が小さく、環境負荷に対する各段階での影響は、容器包装の製造と廃棄の段階が輸送段階に比べ、高いことが分かった。このことは、容器包装の製造量を減らし、リサイクルを実行することが重要であることを示している。

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3.品質保証管理システムの開発

(1) 精製糖工場の包装工程における品質保証システムの確立
1) 調査研究の方法
 製品に対するクレームを発生原因別に分析し、精製糖工場の工程を HACCP に準拠した工程診断表で分析・解析した。また、複数の精製糖工場の包装室内の塵埃数、空中落下菌数、温度・湿度、風向・風速、照度、捕捉昆虫の種類と数、包装機への付着菌数、製品の菌数についても検査した。これらの結果を分析し、解析して現状の問題点、疑問点を洗い出し、製品の品質管理方法、工程の管理方法あるいは包装室の改善点を提案した。
2) 得られた成果
 工程診断表に基づく解析やクレームの分析及び塵埃数、空中落下菌数、温度・湿度などの分析から、a.原料から製品に至る工程の品質管理を縦割りの組織で管理するだけでなく、横断的な組織での管理の導入・強化、b.文書、記録類の管理の徹底、c.包装室の基本施設や設備の改善・充実及び防虫管理のシステム化、d.従業員の教育・訓練の充実、e.液糖の UV 殺菌の導入・強化及び容器の密封性、などが製品に対する品質管理を徹底して行く上で、重要な課題であることが明らかとなった。

(2) 砂糖を対象とした残留農薬の分析
1) 研究の方法
 平成11年4月1日現在、さとうきびとてん菜の栽培に使用されその残留値が規制されている農薬は、77種類である。砂糖は、食品衛生法上の食品添加物等の規格基準 (残留農薬基準) の対象品目となっていないが、これらの農薬が分解されずに、製品の砂糖にまで残っているのではないかという消費者やユーザーの心配を払拭するためには、砂糖にこれらの農薬が残っていないことを証明する必要がある。しかし、これらの証明には、残留規制農薬77種類全てを分析する必要があるが、これらの農薬の分析方法は、それぞれ異なっている。
 そこで、初年度は文献調査を行った後、残留農薬分析法マニュアルを作成した。さらに、残留農薬分析法マニュアルを基に基礎的な分析条件の検討を行い、ガスクロマトグラフィ (GC)、ガスクロマトグラフィ−質量分析計 (GC-MS)、高速液体クロマトグラフィ (HPLC) などの分析装置を用いた分析技術を確立した。2年度目は、その確立した分析法の信頼性を検証した後、精製糖企業の製品砂糖の分析を行った。
2) 得られた成果
 残留規制農薬77種類のうち、HPLC により17種類の農薬を、また GC-MS により41種類の農薬を分析できる方法を確立した。グラニュー糖に既知量の農薬を加えて回収率を調べる試験では、今回確立した HPLC による方法では、17種類の農薬のうち1種類を除く16種類が92〜108%の範囲にあり、GC-MSによる方法では、41種類の農薬が70〜120%の範囲であった。
 この分析法を用いて、21の精製糖工場から提供されたグラニュー糖21点について、分析を行った結果、HPLC による農薬17種類、GC-MS による農薬41種類は検出されなかった。
 今後、まだ分析法が確立されていない19種類の農薬の分析法の確立をめざし、上白、三温などの製品や原料糖などを順次分析する予定である。

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4.効率的な砂糖製品の輸送システムの開発

1) 研究開発の方法
 他産業で実用化されている高濃度低速輸送、プラグ輸送などの技術を基本として、砂糖 (上白湿糖、上白製品、その中間品) の性状に合致するように、精製糖工場に試作・設置した輸送装置 (写真2参照) に改善を加えた。
2) 得られた成果
 空気輸送の可能性については、上白製品は、装置の組み合わせ方と空送諸元を選べば「しっとり感」を有したまま、輸送できる目途がついた。品質管理や衛生面から見ると、現行の方式に比較して、微細な金属片の混入や落下細菌等の汚染が少なくなり、砂糖の品質が向上した。上白湿糖、 その中間品については、 さらなる検討が必要である。

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