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さとうきび種苗(メリクローン苗)供給安定化対策事業

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最終更新日:2010年3月6日

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事業団から
[2000年9月]
シリーズ・農畜産業振興事業団助成事業の結果報告

 農畜産業振興事業団の助成事業も3年を経過し、その事業内容及び成果についての広報が各方面から求められています。そこで、助成事業実施主体からの各事業の実施報告をシリーズで掲載することとしています。今月号では、さとうきび種苗供給安定化対策事業について、(社)鹿児島県糖業振興協会の松元事務局長から報告していただきます。

社団法人鹿児島県糖業振興協会 事務局長 松元 幸男

はじめに
1.メリクローン苗の生産工程
 (1) メリクローン苗の特性   (2) さとうきびメリクローン苗の生産工程
2.メリクローン苗生産技術開発の枠組み
3.事業成果の概要
 (1) 低コスト種苗増殖技術開発事業   (2) 新種苗増殖技術実証試験事業
4.メリクローン苗利用による種苗供給の新たな展望と課題

はじめに

 鹿児島県のさとうきびは、種子島、奄美諸島の重要な基幹作物として生産のモノカルチャー化が進み、農業と工業が結合した重要な産業として、地域経済に計り知れない効用をもたらしてきた。近年、収穫面積が減少し、特に奄美諸島では工場の操業力に見合った原料確保が困難となるなど、深刻な状況となり、現在、『さとうきび・糖業ルネッサンス計画』に基づき生産拡大に向け、関係機関・団体一体となった取り組みがなされている。
 近年におけるさとうきび収穫面積の減少は、一般的には担い手の高齢化や農業離れのほかに、若い担い手を中心に肉用牛・野菜・花きなど、高収益作物への作付転換によるところが大きい。一方、収穫面積の減少を技術的な視点でとらえると、株出栽培が著しく減少し、夏植栽培に移行したことに原因があるとみられている。夏植栽培は、作付期間の延長、種苗、労働力の調達、それに伴う費用負担の増加等から、夏植1作では相応の単収を得なければ収益性悪化を招き、さとうきび離れに一層拍車をかけることになる。
 これまでのさとうきび作りは、新植後2〜3回の株出しを行うのが一般的であり、1度植え付ければ3〜4年間は株出栽培が可能であった。株出栽培は、種苗や植付作業の手間が省け、種苗、労働費等の生産費の節減による生産コストの低減が図れるということで、これがさとうきび作りの「最大の利点」とされてきた。そして、これを支えた最大の要因が、昭和36年以降の主力品種「NCo310」の存在であった。
 この品種は、株出適応性に優れ、単収・品質は、むしろ新植栽培よりも株出が勝ると言われたほどである。また、現在の普及品種に比べ茎数型で、収穫後ほ場に残された株にもたくさんの芽子が残され、株出萌芽特性も良好で、夏植作型でも株出栽培が可能であった。また、種苗用としては、収穫前の剥葉がほとんどなく、下節部位の芽子も葉鞘に守られ種苗に供された。
 これに対して現在の品種は、茎は中間〜茎重型に属し、脱葉性がよく収穫作業の安易さでは一定の評価ができるが、種苗確保の面からは問題を残すこととなった。
 すなわち、収穫時の脱葉性で評価の高いNiF8は収穫前の立毛中に下節部位は既に剥葉し、残された生葉も極めて脱葉が容易で収穫作業が能率化される反面、剥葉による下節部位の芽子の老化が進み、春植では種苗用としてより多くの採苗ほが必要となった。
 新たな種苗供給技術の開発は、このような技術的な問題をも背景として、作型を問わず安価な種苗を大量に供給するために取り組まれたものである。
 鹿児島県では平成2年から南西糖業(株)がメリクローン種苗技術を活用したさとうきびの新たな種苗供給技術の開発に向けての研究に着手してきたところである。
 平成8年度に、農林水産省の主催で「さとうきび新技術研究会」が開催され、平成9年度以降農畜産業振興事業団の助成を受けて、「さとうきび種苗供給安定化対策事業」として実施することとなり、沖縄県の「側枝苗生産技術開発」と併行して、鹿児島県では南西糖業(株)をはじめ、鹿児島県農業試験場徳之島支場、平成11年度は沖永良部農業開発組合をも含め技術開発に取り組んできたところである。
 平成11年度で事業を完了し、これまでの技術開発の成果をもとに、徳之島では実用化に向けた様々な取り組みがなされているところである。
 事業を完了するに当たり事業の成果と成果の利活用並びに残された技術的課題について紹介したい。

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1.メリクローン苗の生産工程

(1) メリクローン苗の特性
 メリクローン苗は植物の生長点(茎頂)培養により多芽体(カルス)を形成させ、培養分割を繰り返した後に馴化(じゅんか)させ種苗用として利用する技術で、当初はウィルスフリー個体を作出する技術として開発された。
 1960年代に洋ランやサツマイモにおいて大量増殖技術が開発され、その後花き類やイチゴ、サトイモ、その他作物等に全国的に広く実用化されている。
 さとうきびにおいてもメリクローン苗を種苗として利用する試みが、古くはハワイで行われ、現在でもブラジルにおいて活用されている。国内においては沖縄県の取り組みは早く、沖縄県農業試験場における基礎研究、(株)沖縄緑化開発センターにおける量産化技術開発などが行われてきた。
 メリクローン苗の利用については、それを直接原料生産に供するのではなく、ほ場で増殖させて、そこから得られる二芽苗(二節苗)を種苗として用いることとしている。
 得られた種苗の特徴は、メリクローン二芽苗として従来の二芽苗(二節苗)に比べて発芽が良く、分けつ力が旺盛で、生育良好なことから、単位面積当たりの種苗生産量が慣行の約10倍に対して、メリクローン苗は最大で40倍との報告もある。このため、必要な種苗確保面積の大幅な縮小が可能となり、その分だけ収穫面積の拡大も期待できる。
 また、従来からの二芽苗との収量の比較試験で、沖縄県の既往の成果では25%の増収が報告されている。

メリクローン苗
写真1 メリクローン苗
二芽苗
写真2
左/普通二芽苗
右/メリクローン二芽苗

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(2) さとうきびメリクローン苗の生産工程
 さとうきびメリクローン苗の生産工程を図1に示した。
 生産工程の手順は下記のとおりである。
a. クリーンルーム内で、無菌で健全茎の茎頂から生長点を実体顕微鏡下で0.5〜0.8mm程度の大きさに摘出する。
b. この生長点を初代培養固定培地に置床し培養を行う。約30日でシュート(芽)が形成され、さらに約30日で15〜20本の多芽体(カルス)が得られる。
c. 生長点の摘出から約2ヵ月で得られたこの多芽体(カルス)を分割し増殖液体培地に移植する。その後、回転及び浸とう培養により増殖させる。
d. 分割、植替え作業を7〜10日ごとに10回程度繰り返すことによって、1個の成長点から2,000〜2,500本程度の苗が得られる。
e. その後、発根培地に移植し10〜15日間培養して発根させる。
 発根後は室内での馴化を図り、さらにガラス室内で株状態のまま仮植用プラグポットに移植し育苗する。
f. 約1ヵ月後株を1本ずつに分割し、あらかじめ準備したプラグポットに移植育苗する。
g. さらに約1ヵ月後に苗として配布、またはほ場にポット苗として定植し、二芽苗種苗用として管理する。
 以上、生長点の摘出からほ場定植まで約6ヵ月を要することとなる。

図1 メリクローン苗の生産工程

メリクローン苗の生産工程1
メリクローン苗の生産工程2
メリクローン苗の生産工程3

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2.メリクローン苗生産技術開発の枠組み

 メリクローン苗による種苗供給の実用化を図るための生産工程を踏まえて解決を要する課題は次のとおりである。

(1)低コスト種苗増殖技術開発事業
a. 低コスト組織培養技術開発
ア. 大量生産技術の確立
(平成9〜11年度、鹿児島県農業試験場徳之島支場、南西糖業(株))
イ. 定植機の改良開発
(平成10年、南西糖業(株))
ウ. メリクローン二芽苗の生産力試験
(平成9〜11年度、鹿児島県農業試験場徳之島支場)
エ. 優良種苗生産体系の確立
(平成10〜11年度、鹿児島県農業試験場徳之島支場)
オ. 種苗貯蔵技術の確立
(平成9〜11年度、鹿児島県農業試験場徳之島支場)

(2)新種苗増殖技術実証試験事業
a. 新種苗増殖技術実証
ア. 実証ほの設置
(平成9〜11年度、南西糖業(株)、沖永良部農業開発組合)
b. 新種苗増殖技術実証施設設置
ア. 技術実証施設設置
(平成10〜11年度、南西糖業(株))
イ. 種苗生産 (平成10〜11年度、南西糖業(株))

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3.事業成果の概要

(1) 低コスト種苗増殖技術開発事業

a. 低コスト組織培養技術開発
ア. 大量生産技術の確立
(ア) 活着率向上試験
    (鹿児島県農業試験場徳之島支場)
 メリクローン苗は培養から床土に移植する過程において、枯死する個体が極めて多く、これが種苗生産の不安定とコスト高となった。調査の結果、枯死個体からピシウム菌が検出され立枯病の可能性が考えられた。
 さとうきび立枯病に効果の高い「タチガレエース」(商品名)利用試験を行った。試験結果は表1のとおりで、無処理区の活着率が33%に対して、タチガレエース処理区活着率は97〜100%であった。
 タチガレエース剤は、メリクローン苗活着に極めて高い効果を示すことが確認され、活着率向上によるメリクローン苗のコスト低減が図られることが明らかになった。

表1 メリクローン苗活着に対するタチガレエースの効果

試験区名 供試株数 活着株数 枯死株数 活着率(%)
1. 無 処 理 100 33 67 33
2. タチガレエース
粉剤 10g
100 100 0 100
3. タチガレエース
粉剤 20g
100 97 3 97
4. タチガレエース
液剤 500ml
50 50 0 100

タチガレエースの効果
写真3 無施用区 施用区

(イ) 床土に関する試験
    (鹿児島県農業試験場徳之島支場)
 育苗は育苗箱に2度の仮植を行うため大量の床土が必要となる。現在、市販の床土(与作N-15)を用いているが、将来、大量育苗を行う段階では、低コスト化を図るうえで安定的に用土を確保する必要がある。
 現在、製糖会社で大量に排出されるフィルターケーキを床土用土に活用することを目的に実験を行っている。
 フィルターケーキは、市販の用土(与作N-15)に比べてEC、NH4-N、NO3-Nが極めて高いため、この状態では利用できない。さとうきび育種における実生育苗の床土として利用するためには、長期間の放置または山土等との混合で利用可能である。

(ウ) メリクローン苗のほ場定植時における活着率の調査
    (南西糖業(株))
 メリクローン苗は、植付時期によって干害による活着率の低下が危惧されるところである。天城町に設置した4ヵ所の実証ほ場において、プラグポット育苗、自社開発の植付機供試による実験実証の結果、92〜96%の活着率となり、ほ場への植付時における活着対策の問題は解消された。

(エ) メリクローン二芽苗生産量調査
    (南西糖業(株))
 実証ほにおける二芽苗(種苗)の生産量を、天城町内に設置した6ヵ所の実証ほ場において実験実証を行った結果、二芽苗生産量は慣行区(10a:30,000本)の168%(最高235%)となった。
 今回の実験では、ほ場によって種苗の生産量にばらつきが見られたが、今後安定的な増殖が得られる栽培技術の確立が課題となる。

(オ) メリクローン苗生産試験
    (南西糖業(株))
 毎月約20,000本の生産を目標にして、栽培手順を
a. 生長点摘出とカルスの形成
b. カルス培養培地における分割・継代によって約1,000倍に増殖
c. 増殖したカルスの発根培地による発根
d. 発根後外気に馴化(室内馴化)
 さらに育苗手順を
a. 室内馴化苗を遮光下において専用用土で育苗する。50穴プラグポットに株植とする
b. 生育後、株を分け1本植えとする
c. 根鉢の形成を確認しほ場に定植する
 このような生産工程を経て、培養段階における苗生産量(鉢上げ量)は、合計24万本であったが、枯死等ロスが生じたことから育苗段階では11万3,000本となった。今後、開発されたタチガレエースの使用で活着率が向上し、年間の目標生産量19万9,000本生産の可能性の確証を得たところである。さらにロボット装置の導入により、生産の効率化を図り、目標生産量を30万6,000本とする計画である。

ロボット装置によるカルス分割状況
ロボット装置によるカルス分割状況
(カ) メリクローン苗生産経費の算出
    (南西糖業(株))
 メリクローン苗の年間生産量を19万9,000本、総生産費22,682千円、生産コスト1本当たり113.9円を目標とした。
 さらに、ロボット導入後は、生産の効率化が図られ、メリクローン苗の生産量を30万6,000本、総生産費25,683千円、生産コスト1本当たり84円としている。
 実証試験結果は、培養段階における苗の生産量(鉢上げ量)は、24万本であったが、育苗ロスが生じたことから育苗段階で11万3,000本となった。苗生産経費の総額は20,608千円となり、ほ場定植苗11万3,000本の苗の生産コストは182.4円となる。
 生産経費のうち労務費が66%を占めることから、生産システムの効率化及び自動化技術などの検討が今後の課題となる。
 また、育苗段階での損失の大半が鉢上げ時の立枯苗による枯死である。立ち枯れ防除薬の施用効果が認められていることから、これを施用することによって活着率が飛躍的に向上し生産コストの低減が期待できる。

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イ. 定植機の改良 (南西糖業(株))
 メリクローン苗植付作業の省力化を目的に、沖縄県の側枝ペーパーポット苗移植機を改良したメリクローン苗移植機の開発改良を行った。
 開発した作業機は、40馬力程度のトラクタに装着し、作業能率は1時間10〜15a、作業工程は耕耘、畦立て、農薬投入、施肥、植付け、鎮圧、かん水の同時作業が可能である。珊瑚礁風化石灰岩土壌を対象に考えて、ロータリで耕耘し、砕土均平して10cm程度の条溝を作り植え付ける方法としている。
 実証ほにおける植付実験の結果は良好で、ほぼ目標通りの成果を得ることができた。

開発したメリクローン苗植付機

写真5 開発したメリクローン苗植付機

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ウ. メリクローン二芽苗の生産力試験
    (鹿児島県農業試験場徳之島支場)
 南西糖業(株)において養成した「芽子由来」のメリクローン苗から採取した二芽苗を生産力検定試験に供した結果、メリクローン苗は
a. 劣悪・変異個体の発生が多い
b. 葉身が短く直立する
c. ほ場ブリックスが低い
d. 側芽の発生が多く、海綿の程度が大きい
e. 茎長が短く茎径が細い
等の問題が指摘され、生育の過程で下葉や葉先が枯れる等の障害も発生し、普通栽培二芽苗に比べて単収が低く、ブリックス、糖度、可製糖量が極端に低くなる結果となった。
 この原因を究明するために、農業試験場では、副場長をチーフとして、バイオテクノロジー研究所研究員等による緊急プロジェクトチームを編成し問題の解決に当たった。
 その結果、生長点摘出部位に問題があるとして、これまで芽子から採取していた生長点を、梢頭部から摂取することとし、新たに「優良種苗生産体系の確立」を図るための課題に着手することとなった。

エ. 優良種苗生産体系の確立
    (鹿児島県農業試験場徳之島支場)
 生長点摘出部位の違いによるメリクローン二芽苗の収量性について、異なる部位(梢頭部、側芽、芽子)から摘出した生長点を使って、培養したメリクローン由来二芽苗の生育・収量の違いを明らかにするための実験を春植作型で行った。
 その結果、草丈及び仮茎長は、梢頭部由来二芽苗>側芽由来二芽苗>普通二芽苗>芽子由来二芽苗の順となり、また、茎数は梢頭部由来二芽苗>側芽由来二芽苗>普通二芽苗>側芽由来二芽苗の順で多かった。
 この結果から、メリクローン苗の生長点摘出に梢頭部を使用することによって、メリクローン由来二芽苗は初期生育が旺盛で、かつ原料茎数が多くなり、単収、可製糖量が著しく増収することが明らかとなった。

表2 メリクローン二芽苗(梢頭部由来)の生産力

  原 料 茎 数
本/a (指数)
一 茎 重
g (指数)
原 料 茎 重
kg/a (指数)
蔗 汁 糖 度
% (指数)
可 製 糖 量
kg/a (指数)
推定甘蔗糖度
% (指数)
普通栽培二芽苗 753 (100) 960 (100) 715 (100) 20.8 (100) 118 (100) 17.5 (100)
メリクローン芽苗 886 (118) 961 (100) 849 (119) 20.6 ( 99) 139 (118) 17.3 ( 99)

メリクローン二芽苗の生育状況
写真6 メリクローン二芽苗の生育状況

オ. 種苗貯蔵技術の確立
    (鹿児島県農業試験場徳之島支場)
 さとうきびの植付時期は、夏植えは干ばつ、春植えは降雨のため適期植付けが困難で、準備した種苗が放置され、収量低下の原因となっていることが多い。
 種苗を長期間貯蔵し、適期植付けを可能とする技術を確立するための試験の結果、貯蔵庫内の温度8℃、湿度100%の室内条件下で30日以上の長期保存が可能となった。

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(2) 新種苗増殖技術実証試験事業

a. 新種苗増殖技術実証
ア. 実証ほの設置
     (南西糖業(株)、 沖永良部農業開発組合)
 優良種苗生産体系によって新たに増殖したメリクローン苗の二芽苗生産量を検証するために、春植、夏植作型で徳之島3町に実証ほを設置し、さらに、メリクローン二芽苗の生産力を夏植作型で検証のための実証ほを沖永良部島に設置した。
 実証の結果、メリクローン苗の活着率は、プラグポット育苗、プランタ植付苗の活着率は夏植えで93〜95%、春植で97〜98%となり、当初目標とした技術成果を得ることができた。
 メリクローン二芽苗の生産量は、慣行二芽苗生産量の139〜151%となり、メリクローン苗の特徴としての分けつ、茎数増加を実証確認している。
 また、夏植作型での生産力を検証するため、沖永良部島で実証試験を行ったが、次年度を待たなければ、結果は出ない。現在までの経過は、発芽率、仮茎長、茎数ともにメリクローン苗の生育が勝っている。

メリクローン種苗実証展示ほの設置状況
写真7 メリクローン種苗実証展示ほの設置状況

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b. 新種苗増殖技術実証施設設置
ア. 実証施設の設置 (南西糖業(株))
 この事業実施に当たって設置した施設及び設置費は下記のとおりである。
〔平成10年度〕
1.培養棟(クリーンルーム、クリーンベンチ4基を含む) 1棟、48,029千円
2.培養ロボット 1基、36,750千円
〔平成11年度〕
1.育苗馴化施設1棟、20,945千円
 これらの施設は、平成12年度以降これまでに開発した技術をも含めて、生産者にメリクローン種苗供給事業として発足する「徳之島さとうきび培養苗実用化推進機構」に技術移転と同時に引き継がれることになる。

馴化施設内でのメリクローン苗かん水状況
写真8 馴化施設内でのメリクローン苗かん水状況

イ. 種苗生産 (南西糖業(株))
 天城町、徳之島町、伊仙町に設置しているメリクローン二芽苗の生産力検定のための実証ほ60a (春植え、夏植え各町1ヵ所)の種苗用として、また、沖永良部島の夏植栽培実証ほ1ヵ所100aの種苗用として生産し配布している。

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4.メリクローン苗利用による種苗供給の新たな展望と課題

 平成9年以降、これまで3年間にわたり取り組んできた技術開発の成果概要を紹介した。今後、得られた成果をもとに徳之島では、新たに徳之島3町、JA徳之島、JA天城、南西糖業(株)の構成による「さとうきび培養苗実用化推進機構」を、既存の徳之島さとうきび生産対策本部の中に創設し、当該事業で設置した施設と開発した技術の移転を進め、新しい種苗供給機構として種苗の生産と配布事業を開始したところである。

図2 メリクローン苗生産・普及システム体系図
メリクローン苗生産・普及システム体系図

 当機構では、メリクローン苗の植付時期、畝間、株間、葉の剪定方、植付本数、施肥量、かん水法、培土時期等の栽培基準や、メリクローン二芽苗の採苗時期、採苗本数、苗の特徴、増収効果等を解説したチラシを作成配布し、生産者へのメリクローン苗普及に向けた新たな取り組みを開始したところである。
 今後に残された技術問題については、短期的な課題として
(1) メリクローン苗の株出し栽培における増収効果の持続性の検討
(2) メリクローン苗生産工程における培養液成分の品種間差異の検討
(3) さらなる生産コスト低減対策
等を挙げることができるが、長期的にはメリクローン苗を直接原料生産に供する技術開発を目標とした新たな研究も実施しなければならない。これは、さらなる「大量育苗技術」と「低コスト生産技術」の飽くなき追求にある。
 これらの遠大な開発研究には、これまでにない新たな課題の派生も予期されるところである。当協会では、当該事業の成果を活かし当面は実用化に向けた短期的課題の解決に重点を置くが、長期的な課題への取り組みも視野に入れた研究開発も進めていきたい。
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