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さとうきび品質測定安定化事業

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最終更新日:2010年3月6日

砂糖類ホームページ/国内情報

事業団から
[2000年12月]

シリーズ・農畜産業振興事業団助成事業の結果報告

 さとうきびは、平成6年産から品質取引が導入され、最低生産者価格は甘蔗糖度ごとに決定されています。しかし、近年さとうきびの品質構成が高糖度の品質へ次第に移行してきているため、甘蔗糖度換算式を見直す必要性や品質取引の定着化を推進する上で、近赤外線分光分析計で測定された蔗汁糖度と、旋光糖度計を利用し蔗汁糖度を直接測定する従来法による測定結果との比較検証を通じ、近赤外線分光分析計による品質測定の信頼性を確保するために行っているものであり、今後も引き続きこの事業を通じて、甘蔗糖度測定の信頼性の確保、品質取引の定着化が図られることを期待します。

鹿児島県糖業振興協会 事務局長 松元 幸男


これまでの経過
1. 事業実施の枠組み
2. 事業成果の概要
  (1)甘しゃ糖度換算式検討事業
  (2)近赤計測定安定化事業
3. おわりに


これまでの経過

 平成6年度に導入されたさとうきびの品質取引は、今年で6年を経過しようとしている。
 平成元年産のさとうきび価格決定時に「さとうきびの品質取引は、6年度から導入する」ことが決定されたことを受けて、沖縄、鹿児島両県で生産者、行政機関、糖業関係者が一体となって、品質取引の推進に向けた取り組みを展開している。
 鹿児島県では、製糖期間中の原料出荷の早晩による生産者間の品質格差による不公平感の解消、さとうきび生産者と製糖会社の品質取引上の公平性を保持するために多くの事業に取り組んできた。
 栽培並びに品質向上技術の取り組みでは、高品質品種の育成と品種特性に適応する栽培技術の確立、刈り置き劣化対策技術等がある。
 このうち、高品質品種の育成ではNif4、Nif8、F177等の早・晩熟型品種を開発し、品種の組み合わせによって、早期出荷と中・後期出荷原料の品質上の格差是正のための技術開発を行ってきた。
 品質向上技術では、新しい品種の品種特性に適応した栽培技術として、品種別の栽植密度、施肥量、栽培管理技術開発を進めてきた。また、刈り置き原料の品質劣化対策では、品質劣化速度の品種間差異を明らかにする一方、被覆資材、被覆方法によって品質の劣化を防止する技術開発を行ってきた。
 次に、品質取引に際して、さとうきびの品質を迅速かつ正確に測定する機器として、近赤外分光分析計を、さとうきびの品質測定に使用することが可能かどうかの実験を農業試験場徳之島支場において、平成2年度以降、県糖業振興協会の事業として実施してきた。
 近赤外分光分析計による糖度測定値は、液体クロマトグラフや従来法とされる旋光糖度計との測定数値とほとんど同一結果が得られ、近赤外分光分析計をさとうきびの品質測定に使用することが可能との結論が得られた。
 3年7月、さとうきびの品質基準を「甘しゃ糖度」とすることが決定された。
 同時に、品質測定機器として近赤外分光分析計、測定試料の前処理周辺機器として、コアサンプラー、シュレッダー、油圧プレス等の整備導入が決定された。
 5年度は、6年1月から3月にかけて、県内各工場において20日から50日間の品質取引模擬実験を行い、翌年度からの品質取引に備えている。
 6年11月には、品質取引の導入に伴う価格体系が決定され、6年産のさとうきび原料から品質取引が開始され現在に至っている。
 近赤外分光分析計は、従来法とされる旋光糖度計と比べて、
(1) 測定が迅速である
(2) 試薬等使用せず測定が自動化されており、測定者の熟練度が測定値に影響を与えない
(3) 廃液の処理が容易である
(4) 同一試験の繰り返し測定が可能である
(5) 検量線の管理等が平準化される
等の利点があるが検量線作成が必要である。
 検量線は、沖縄、鹿児島県両県の統一検量線とするため、品質の異なる多くのさとうきびの品質標本が必要であり、北は鹿児島県の種子島から南は沖縄県の南大東島までのサンプルの品質情報を集めたものとしてなければならない。
 さとうきびは、品種やその年の気象によって品質に大きな較差が生ずる一方、品質取引が進むにつれて高品質品種の出現普及によって、一定期間の品質標本で作成された検量線は、見直しが必要になってくる。
 この事業の目的は、高品質品種の普及や栽培技術の向上等によって、さとうきびの品質向上が図られることに対応して、これを正確に測定可能な検量線作成を行えることと、品質測定上の正確性を期するために、品質取引における標本の採取、細裂、搾汁、品質測定、糖度算出に至る一連の技術習得、近赤外分光分析計の取り扱い、品質取引に係る機器のメンテナンスの技術習得を行うために実施したものである。
 事業は9年度に開始され、12年度以降さらに継続されるが、これまでの事業の経過と成果の概要について紹介する。

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1. 事業実施の枠組み

 実施事業名、実施場所、実施年度は次のとおりである。
(1) 甘しゃ糖度換算式検討事業
1) 検討会開催(9〜11年度)
2) 品質分布調査及び調査データー解析
 (ア) 品質分布調査
  (9〜11年度、県内各製糖工場)
 (イ) 調査データー解析
  (9〜11年度、県農試徳之島支場)
(2) 近赤計測計安定化事業
1) 自然被害による品質劣化さとうきび品質測定対応検量線開発(霜害原料)
 (9年度、(財)日本食品分析センター)
2) 未成熟さとうきび品質測定対応検量線開発
 (9〜10年度、(財)日本食品分析センター)
3) 指導研修会開催
 (9〜11年度、(財)日本食品分析センター)
4) 操業前点検・検量線調整
 (9〜11年度、(財)日本食品分析センター)
5) 操業中の保守管理
 (9〜11年度、(財)日本食品分析センター)

さとうきびの品質測定状況
写真1 さとうきびの品質測定状況

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2. 事業成果の概要

(1) 甘しゃ糖度換算式検討事業
1) 検討会開催(9〜11年度)
 甘しゃ糖度換算式の見直しを行うため、生産者団体、製糖業者団体、有識者等を構成員とする検討会を開催している。
 例年1〜2回(概ね6月と11月)農林水産省で開催され、協議事項は沖縄、鹿児島両県における前年度の品質取引の状況、品質取引の実施並びに立会上の問題点などについての意見交換、品質分布調査、甘しゃ糖度換算式の検討が主な内容である。
 現在、品質取引に供されている甘しゃ糖度換算式は6〜8年産のさとうきびの品質標本で作成され、統一検量線として9年度以降11年度まで使用されてきた。
 12年7月、当該検討会において、9年度に決定し、これまで沖縄、鹿児島両県の統一換算式として使用してきた甘しゃ糖度換算式の精度低下は認められなかった。
 したがって、今回は、9年度に決定した換算式の見直しは行わず、引き続き現行の両県統一式を用いることとされた。
 そして、今後とも品種構成、栽培技術、収穫方法等の変化にともなう品質向上が図られる可能性が高く、換算式の見直しが必要となるため、品質分布調査とその解析を継続実施し、3年後(15年)に調査結果を当該会議で検討することになった。
2) 品質分布調査及び調査データーの解析
(ア) 品質分布調査
 近赤外分光分析計で測定されたしゃ汁糖度と従来法の旋光糖度計で測定されたしゃ汁糖度との相関関係の検証を行い、同時に甘しゃ糖度換算式をより精度の高いものにすることを目的として、当県は県内製糖会社6社の7工場に委託して調査を行った。
 標本数は、9年度567点、10年度595点、11年度607点で、工場別の配分法は、工場別の総搬入原料を5トンで除して算出した搬入台数を基準とし、その概ね0.5%相当をサンプリングの1点とした。
 標本の分析調査項目は、搾汁率、しゃ汁ブリックス、しゃ汁糖度、プレスバガス糖度、甘しゃ糖度等である。
(イ) 調査データーの解析
 品質分布調査において蓄積されたデーターをもとに、甘しゃ糖度の換算式を導くため、プレスバガス糖度換算の解析を行った。
 解析は各々沖縄、鹿児島両県で実施し、当県は県農業試験場徳之島支場に委託している。
 両県統一の換算式は、9〜11年度標本については沖縄県において解析した。
 分析結果は前述の検討会における換算式見直しの見送りのとおりであった。

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(2) 近赤計測定安定化事業
さとうきびの霜害の状況
写真2 さとうきびの霜害の状況
1) 自然災害による品質劣化さとうきび品質測定対応検量線開発
 9年度の単年度事業として自然災害による品質劣化さとうきび品質測定対応について、種子島における霜害原料に対応する検量線の開発を行った。
 この事業は、8年に種子島で激しい霜害が発生し、この影響を受けて立枯れしたさとうきびの品質測定値が異常に高く算出され、霜害用検量線作成の必要が生じ、9年度に(財)日本食品分析センターに委託して種子島の霜害さとうきび用の検量線を作成した。
 9年、10年度においては、霜害の発生がなく霜害用検量線使用の機会がなかったが、11年度には、2〜3月に種子島北部山間部で発生した霜害原料35標本について当検量線を品質測定に供した。
2) 未成熟さとうきび品質測定検量線開発
 8年11月のさとうきび品質取引連絡協議会技術部会において、生産見込み調査時点(10月1日)のしゃ汁糖度から最終的な平均甘しゃ糖度の推定の可能性について、9年度以降検討することとなった。統一検量線を用いた近赤外分光分析計と旋光糖度計による従来法で、10月1日現在の未成熟原料を試料としてしゃ汁糖度を測定した結果、両者の測定値には高い相関が認められた。
 9〜11年産の10月1日現在の沖縄、鹿児島県両県の各島から採取した未成熟原料のしゃ汁糖度とそれぞれ各工場の買い入れ甘しゃ糖度との間には相関関係は認められなかった。したがって、未成熟原料の甘しゃ糖度と最終的な甘しゃ糖度との間にも相関がないことが示唆された。このことから、毎年10月1日に実施している生産見込み調査で測定されるしゃ汁糖度から最終的な甘しゃ糖度を推定することは困難であるとの結論に達し、今後この調査は中止された。
3) 指導研修会開催
 近赤外分光分析計を用いたさとうきびの品質取引における品質測定の安定性を維持し、適正なシステムの運用を図るために、各製糖工場の品質取引担当者を対象としたシステム管理等に関する技術指導のため、毎年11月に沖縄県と合同で技術研修会を開催している。当県からの受講者は、例年各工場から1〜2名が参加し品質測定技術の向上に努めている。研修内容は、近赤外分光分析計の基本やシステム保守管理の統一化等のほかに、特に前年度に発生した技術上の問題点や今までのトラブル例と対処方法など品質測定上の新たな知見等が中心になっている。
4) 操業前点検・検量線調整
 当県では毎年、製糖開始前に県下各工場にモデル液を配布し、各工場の近赤外分光分析計を主体とする品質分析システムの保全・管理・運営のため、システムの検査及び診断を行っている。準備が整った段階で、各製糖工場のシステム管理担当者が、製糖開始2週間前から1日20点以上のさとうきび品質標本について、近赤外分光分析法と従来法の旋光糖度測定法による測定を行い、その整合性をみながら品質取引に備えている。
 11年期には、近赤外分光分析装置のROMを変更し、自動校正システムを導入している。このシステムの導入により、始業前点検でモデル液値が許容範囲を超えた場合いつでも製糖工場の検量線の補正を行うことが可能となった。
5) 操業中の保守管理
 製糖工場における近赤外分光分析計を含む品質分析システムの操業中の保守管理について、「障害に対する予防保守」、「障害時の緊急対応」及び精度測定の「定期検査」等を実施している。
 障害に対する予防保守では、各製糖工業から送付されてくるシステム運転記録書の点検による近赤外分光分析計の稼動状況の確認やモデル液の測定値の調整等が実施された。障害時の緊急対応では、近赤外分光分析測定値が高めに算出されることや検量線の消失等が発生したが代替機の使用等で迅速に対応している。
 測定精度の定期検査においては、各製糖工場から送付されるさとうきび搾汁凍結試料のしゃ汁糖度の測定を行い品質測定の信頼性確保に努めている。

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3. おわりに

 さとうきびの品質分布調査は、6年度から8年度については、(財)甘味資源振興会の事業として実施され、9年度以降は事業団事業に引き継がれ、これまで沖縄、鹿児島両県で14,830点余りの品質標本について、測定解析を行い換算式の算出に供してきた。
 両県において、品種構成の高品質化が進んでおり近い将来換算式の見直しが必要と思われる。また、操業上の点検、検量線調整、操業中の保守管理、測定精度の定期検査等については、毎年開催される指導研修会や(財)日本食品分析センターとの情報交換によって品質測定上のトラブル解消に努めている。
 引き続き12年以降3年間事業が継続されることとなったが、さらなる測定精度の向上と測定技術向上が望まれている。

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