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さとうきび品質測定安定化事業

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最終更新日:2010年3月6日

砂糖類ホームページ/国内情報

事業団から
[2001年1月]

シリーズ・農畜産業振興事業団助成事業の結果報告

 前月号では鹿児島県の状況を鹿児島県糖業振興協会から報告していただきました。今月号では沖縄県の状況を沖縄県糖業振興協会から報告していただきます。この事業を通じて甘しゃ糖度測定の信頼性の確保、品質取引の定着化が図られることを期待します。

社団法人 沖縄県糖業振興協会


I. 事業の目的と背景
II. 甘しゃ糖度について
III. 品質取引の作業行程について
IV. 近赤外分光分析計について
V. 事業の実施、経過
VI. 甘しゃ糖度換算式 (プレスバガス糖度推定式) の更新について
VII. 今後の課題

I. 事業の目的と背景

 さとうきびの取引は、平成5年産まで重量一本立てで取引がなされてきた。しかし、さとうきびを取りまく諸情勢の変化に対応するため6年産から品質による取引制度へ移行された。その新しい品質取引制度への移行に伴い、さとうきびの品種構成が高糖度の品種へ移行しつつある現状を踏まえ甘しゃ糖度換算式の作成見直しを行うとともに近赤外分光分析計 (以下 「近赤計」 という) で測定された蔗汁糖度 (原料さとうきびの搾汁液の糖度) と従来法である旋光糖度計で測定された蔗汁糖度との比較検証等を行うことにより甘しゃ糖度測定の信頼性を確保し品質取引の円滑な推進定着化に資することを目的として9年産から 「さとうきび品質安定化事業」 を実施してきた。
 沖縄県における品質取引移行への取り組みは、制度導入に向けて4年産から5年産にかけて県内分みつ糖工場 (11社12工場) の協力を得て甘しゃ糖度の換算式作成のための品質分布調査を実施した。
 品質分布調査のサンプリング件数は、年間4,090点採取し、測定項目は(1)サンプル重量、(2)清浄甘しゃ重量、(3)細裂甘しゃ重量、(4)プレスバガス重量、(5)搾汁率、(6)蔗汁ブリックス、(7)蔗汁糖度、(8)プレスバガス糖度、(9)プレスバガス繊維分、(10)甘しゃ糖度の10項目についての測定、分析作業を行った。  分析結果のデータを県農業試験場で集計、解析を行い暫定的な甘しゃ糖度の換算式が作成された。
 一方、(財)日本食品分析センターにおいては、5年産において該当する全工場に近赤計を設置させて模擬取引用検量線を使って実際に搾汁液を測定し、品質取引の訓練を実施した。その結果、検量線は(財)日本食品分析センターと全工場をオンライン化し、問題のないことが確認された。機器の点検、確認のための模擬取引用モデル液を全工場に送付して、毎日これを測定し、モデル液の安定性の確認を行った。その結果、セルの汚れの影響で、モデル液の測定値が高い値のでる工場が存在することが判明した。そのため、(1)近赤計の測定値と従来法の測定値を比較して、測定値の適正を確認する、(2)セルの汚れを洗浄するため、より強力な洗浄液を開発し、セルの汚れの影響を受けない検量線を再作成した。
 以上の準備作業を経て、6年産からさとうきびの品質による取引が実施された。
 作成された甘しゃ糖度換算式は対比するものがないため暫定式と言わざるを得ず、換算式については、継続して検討を重ねていく必要から品質分布調査が継続して行われた。品質取引実施後3年目の8年産までの品質分布調査データと4、5年産のデータを加えて、データの分析が行われた後、第1回の甘しゃ糖度換算式の見直しがなされ新しい換算式が採用され、9年産から新しい換算式による品質取引がなされた。
 9年産までは11社12工場で品質分布調査が実施されていたが、10年産からは北部製糖と沖縄県経済連が統合し球陽製糖として発足したため、10社11工場で行われている。

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II. 甘しゃ糖度について

 製糖工場に搬入されるさとうきびは出荷原料と称し、この中身はトラッシュ、繊維分、水分、非砂糖分、砂糖分から成る。この中からトラッシュ分を除去したものを清浄甘しゃと称している。  甘しゃ糖度とは砂糖分の清浄甘しゃに対する百分率で表される量であり、現在の買い上げの基準となる糖度は13.1〜14.4%と定められている。
 この基準糖度を基礎にさとうきびの取引価格が決定され、基準糖度以上のさとうきびは増額され、基準糖度以下のさとうきびは減額される仕組みとなっており、増減額の区分は糖度0.1度刻みとなっている (図1を参照)。

図1 さとうきびの組成1

さとうきびの組成

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III. 品質取引の作業行程について

 沖縄県においては砂糖の製造法により分みつ糖地域と含みつ糖地域の2通りの作業行程となっている。その分みつ糖地域と含みつ糖地域の相違点は、(1)分みつ糖地域におけるサンプルの採取はコアサンプラーという機械装置で採取するのに対し、含みつ糖地域においては人力により採取すること、(2)品質測定器で分みつ糖地域では近赤計により蔗汁糖度を測定するのに対し、含みつ糖地域ではデジタルブリックス計で蔗汁ブリックスを測定することである。

1. コアサンプラー
 工場に搬入された原料甘しゃはコアサンプラーにより約5kgを目安にサンプルの採取をする。採取位置は積み荷の中央部から採取することを原則として行い、採取されたサンプルは直ちに品質取引室に送られる。
2. サンプルの計量
 サンプルの計量は電子天秤により小数点第1位を四捨五入して1g単位まで計量する。
3. 清浄原料の選別
 サンプルから定められたトラッシュ選別基準に従ってトラッシュの選別後、清浄原料の計量を行いその結果からトラッシュ率が計算され買い上げ原料の量が決まる。
4. 清浄原料の細裂
 細裂はシュレッダーという機械装置により行われる。細裂状態の良し悪しが搾汁率の良否、安定に影響を及ぼすことから細裂状態には細心の注意を払わねばいけない。
5. 細裂サンプルの計量
 細裂サンプルを約500g採取し精密電子天秤で秤量を行う。測定値は0.1gを単位に小数点第2位を四捨五入する。
6. 搾 汁
 搾汁は油圧プレスで行う。500gのサンプルを円筒形の容器に入れて、円筒の内側に入るピストンで圧縮して搾汁する。ピストンは油圧によって圧縮力を発生する。油圧はピストンの面圧で260kg/cm2 の圧力となるように調整し、加圧時間は約1分間と規定されている。このような操作で搾汁率70%が確保される。
7. バガス重量の計量
 油圧プレスで分離されたバガスは精密電子天秤で秤量され、測定値は0.1gを単位として小数点第2位を四捨五入して、この測定値の結果から搾汁率を算出している。
8. 品質測定
 搾汁された蔗汁を近赤計により蔗汁糖度を測定し、測定値をコンピュータに入力すると直ちにコンピュータが甘しゃ糖度を計算する。
コンピュータに設置された甘しゃ糖度の計算式は下記のとおりである。
分みつ糖地域
 甘しゃ糖度=搾汁率×蔗汁糖度+(1−搾汁率)×バガス糖度
 搾 汁 率=1−(バガス重量/細裂甘しゃ重量)
 バガス糖度=0.41631×蔗汁糖度+0.87141
含みつ糖地域
 甘しゃ糖度=搾汁率×蔗汁糖度+(1−搾汁率)×バガス糖度
 蔗汁糖度=1.05643×蔗汁ブリックス−2.87360 (平成12年改定)
※旧式蔗汁糖度=1.05135×蔗汁ブリックス−2.83608
 搾 汁 率=1−(バガス重量/細裂甘しゃ重量)
 バガス糖度=0.41631×蔗汁糖度+0.87141

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IV. 近赤外分光分析計について

 本取引用検量線で作成した測定値はセルの汚れの影響を受けることなく安定した測定値を得ることができた。検量線は安定したが、装置の設置してある部屋の温度の影響を受けて測定値が変動することがあった。
 洗浄液も模擬取引で使用した液より濃度を濃くして使用したため、セルの汚れによる算出値のバラツキは減少した。製糖末期において、還元糖含有量の多いさとうきびの搾汁液を測定すると、値が従来法値より高く算出されることが判明した。
 以上が品質取引初年度の結果のおおよその評価であった。
 以上の事柄を踏まえて、2年度目に向けて次のような対策を講じた。
1) 室温の変化による影響を抑えるために空調設備を設置する。
2) 還元糖の影響を受けないように工夫して検量線を再作成する。
3) 算出値に影響はないものの、近赤外光が当たらない部分のセルの汚れが落ちないので、継続してより強力な洗浄液を新たに開発する。
 2年度目の品質取引では初年度の懸案事項はすべて解決された。
 7年産の種子島のさとうきびが霜害に見舞われ、全工場で使用している検量線では測定することができず、霜害用検量線の作成が必要になり検量線を作成した。
 3年度目 (8年産) の品質取引は全体的に安定して推移した。
 種子島においては霜害の発生もなく、全工場統一した検量線による測定で実施された。
 4年度目 (9年産) の品質取引も前年同様安定した取引が行われた。各工場の要望により、未成熟さとうきびも近赤外法で分析できないかについて、検討を行い、成熟さとうきび及び未成熟さとうきびともに測定できる1本の検量線を作成する。これに伴い、検量線を補正するためのモデル液組成を調べる。
 5年度目 (10年産) の品質取引も前年度同様問題なく安定した取引がなされた。前年度から取り組んできた、未成熟さとうきびの測定に向けて検量線を今までのものから、成熟さとうきび及び未成熟さとうきび用に検量線を変更した。しかしながら未成熟さとうきび用のモデル液の組成が適しておらず測定値にバラツキが目立ち、このままの状態で未成熟さとうきびを測定することはできないと判断された。そこで、品質取引で使用する高い糖度のモデル液と低い糖度のモデル液で検量線を補正して未熟さとうきびの測定を行い、結果を考察した。
 6年度目 (11年産) は、近赤計の自動校正システム導入を目的に、併せて近赤計の2000年問題対応で、近赤外分光装置の ROM を変更し、始業時点検でモデル液値が許容範囲を超えた場合、いつでも検量線の補正を行うことができるようになった。
 以上が、(財)日本食品分析センターの作業の取り組み実績である。

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V. 事業の実施、経過

1. 事業計画の策定
 事業計画の策定に当たっては、甘しゃ糖度換算式検討事業の品質分布調査について各工場の生産予想を基に1%に相当する件数を割り当てて、品種別、作型別、地域別、土壌別に偏らないよう配慮してサンプリングすることを基本とした。生産量が多く採取面積の広い地域の工場は、当然のことながら分析件数は多くなった。県内の目標件数を900点前後に設定して各工場に割り振りし操業開始前に各社と分析委託契約を締結して実施した。
2. 平成9年産工場別品質分布調査の実績
 データの集計・解析の結果、蔗汁糖度からプレスバガス糖度の推定式は以下のとおりの式が得られた。
 Y=0.43766×蔗汁糖度+0.44152
 ※決定係数R2=0.4239
3. 平成10年産工場別品質分布調査の実績
 データの集計・解析の結果から、蔗汁糖度からのプレスバガスの推定式は以下のとおりの式が得られた。
 Y=0.50572×蔗汁糖度−0.66894
 ※決定係数R2=0.6170
4. 平成11年産品質分布調査の実績
 データの集計・解析の結果から、蔗汁糖度からのプレスバガスの推定式は以下のとおりの式が得られた。
 Y=0.50566×蔗汁糖度−0.89453
 ※決定係数R2=0.5004
5. システム管理等に関する指導研修会
研修会は、近赤計を用いたさとうきびの品質取引における品質測定の安定性を維持し、適正なシステムの運用を図るために、各製糖工場の品質取引担当者を対象とした、システム管理等に関する技術向上を目的としている。研修会は年1回11月頃に沖縄県と鹿児島県で交互に行っている。
 研修の成果は上々で近年は初心者向けの研修会で対応していく方向である。
 受講者の実績
  9年度:20名 (沖縄県にて開催)
  10年度:16名 (鹿児島県にて開催)
  11年度:14名 (沖縄県にて開催)
7. 操業前点検・検量線調整
 毎製糖期開始前に、全工場にモデル液を配布し、近赤計を主体とする品質分析システムの保全・管理・運営のため、システムの検査及び診断を行い、システムの操業前点検・検量線調整を目的とし、各工場の安定操業に寄与してきた。
8. 操業中の保守管理
 「障害に対する予防保守」、「障害時の緊急対応」 及び 「技術指導」 を必要工場に出向き実施する。また、定期検査として、搾汁液凍結試料110 (1工場当たり10点) のサンプルを用いて、従来法による蔗汁糖度及び近赤計による蔗汁糖度の測定を行い比較検証を実施している。
 その結果、測定値は誤差の許容範囲内にあり、支障なく品質取引業務は実施されている。

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VI. 甘しゃ糖度換算式(プレスバガス糖度推定式)の更新について

 甘しゃ糖度換算式 (プレスバガス糖度推定式) の更新については3年ごとに実施することになっており、前回の更新が8年度に行われており、12年度は更新の年度となることから協議、検討会が開催された (平成12年7月11日開催)。
1. 品質分布調査の解析結果の概要
(1) 新たなプレスバガス糖度推定式として、下記条件での式が提供され協議、検討がなされた (表1参照)。
a.両県の6〜8年産データから得られた回帰式:現在の両県統一式
b.両県の9〜11年産データから得られた回帰式
c.両県の6〜11年産ダータから得られた回帰式
d.両県の9〜11年産データから鹿児島の11年産データを除外して得られた回帰式

表1 検討対象プレスバガス糖度推定式
  元データ 推定式
(X:蔗汁糖度)
相関関数
(r)
決定係数
(R2)
標準誤差
(1) 6〜8年産 Y=0.41631X+0.87141 0.64574 0.41698 0.84105
(2) 9〜11年産 Y=0.42790X+0.58370 0.63206 0.39950 0.90211
(3) 6〜11年産 Y=0.42532X+0.66731 0.64020 0.40985 0.87798
(4) 9〜11年産 Y=0.45275X+0.22975 0.68074 0.46328 0.82338

2. 換算甘しゃ糖度の推定精度
 表2は9〜11年産の沖縄県、鹿児島県両県のデータを推定対象に、(1)〜(4)式のプレスバガス糖度推定式を基にした甘しゃ糖度換算式から求めた値をラウンドした場合の精度比較である。ラウンド前は(4)式を用いた方が最も標準誤差が小さかったが、ラウンドした場合はいずれも(1)式を用いた方が標準誤差が小さくなっている。このことは言い換えると、ラウンドするか否かによって最も精度の高くなる式が入れ替わるくらいに精度の差が小さいということでもある。

表2
データ分類 相関関数
(r)
決定係数
(R2)
標準誤差
データ年度 推定式
9〜11年度 (1) 0.98258 0.96546 0.26389
(2) 0.98246 0.96523 0.26477
(3) 0.98248 0.96527 0.26463
(4) 0.98252 0.965347 0.26437

3. 平成12年度甘しゃ糖度換算式について
 今回比較した4種のプレスバガス糖度推定式については、最終的な甘しゃ糖度の推定精度を検討した結果、精度の差はないと判断された。
 その上で実質的に誤差がゼロと推定されるサンプルの割合が高いのは(1) (現行の両県統一式) となった。従って今回は甘しゃ糖度換算式の見直しを実施せず、当面引き続き現行の両県統一式を用いることで結論に達した。
※ (さとうきび品質取引推進連絡協議会専門部会合同会議及び沖縄県農業試験場の資料から引用)

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VII. 今後の課題

 甘しゃ糖度換算式 (プレスバガス糖度推定式) の更新については3品質分布調査においては、7年産の種子島における霜害さとうきびの品質測定で発生した支障例から、本県においては台風、干ばつ等の被害が発生した場合に備えてのデータの集積が必要であろう。なお、品質取引測定装置全般については、保守・管理についての基礎データ不足から対応策が立たず補修経費の計画ができない状況にある。12年産で7年目となり、測定装置全体が経年劣化、老朽化してきていることから懸念されるところである。以上、事業の内容について概略を報告し今後の事業に精励し、内容の充実に努めていきたいと考える。

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