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てん菜耐病性品種育成促進事業

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最終更新日:2010年3月6日

砂糖類ホームページ/国内情報

事業団から
[2001年2月]
シリーズ・農畜産業振興事業団助成事業の結果報告
 最近、北海道のてん菜栽培地域においては、根腐病・黒根病による被害が多発し、大きな被害を受けています。根腐病・黒根病は防除作業に苦慮している現状にあることから、海外の耐病性遺伝資源と国内の優良品種との交配等により、耐病性品種の早期育成を目指すため、平成10年度から実施しています。本事業については(財)甘味資源振興会から報告していただきました。

財団法人 甘味資源振興会

I. 事業の目的と背景
II. 事業の成果
 1.てん菜耐病性遺伝資源導入事業
 2.てん菜育種素材増殖採種・検定等事業
  1)育種素材の増殖・交配
  2)育種素材の検定
  3)自殖系統の作出研究
III. 今後の計画

I. 事業の目的と背景

 てん菜は、北海道における基幹畑作物として、馬鈴しょ、麦とならび欠くことのできない重要な作物である。しかしながら、農業生産物の内外価格差の縮小のため、北海道のてん菜糖産業も同様に厳しい省力化、合理化による砂糖生産コストの低減が要請されている。
 このような情勢の中で、高糖度、高品質、多収、耐病性を合わせ持つ高レベルの品種の育成が求められている。てん菜育種は、雌親 (種子親) とこれと異質の雄親 (花粉親) を交配して作るハイブリッド品種が主流となっているため、優れた特性を持ち、しかも、これらを組み合わせて高い能力を発揮する両親が必要である。このような優良系統を育成するには従来の育成品種改良技術のほか、バイオテクノロジ−による効率的育種法の開発も欠かせないものとなっている。
 北海道農業試験場では、わが国の気候風土に適した独自の優良品種開発を推進しているが、最近における北海道のてん菜栽培地域においては、輪作体系の乱れや異常気象の影響等から、根部生育の生理的障害のほかに、てん菜根腐病及び黒根病が多発し、特に黒根病が多発した平成11年は、その発生面積が全道で40% (うち重症被害面積は10%) にも及んだと報告され、この影響で収量と糖分の低下が著しく、生産が不安定になり、農家の所得低下や製糖コストの上昇を招く要因となっている。黒根病については、薬剤防除の方法がなく、根腐病は薬剤防除のためには、多くの経費と労力を要するところから、耐病性品種の育成が急務である。
 そこで、同病の優良耐病性ハイブリッド品種育成のためには、従来の育種の範囲にとどまることなく、広く世界のてん菜育種関係機関との提携を図りつつ、同病耐病性遺伝資源の導入を行い、北海道農業試験場との共同研究により同農業試験場が保有している優良特性遺伝資源との交配をはじめとして、胚珠培養法等のバイオテクノロジ−を駆使し、早急に優良耐病品種の育成を図り、優良耐性一代雑種を作出、普及して、てん菜生産の振興に資するため事業を実施した。

てん菜耐病性品種育成促進事業の概要 てん菜耐病性品種育成促進事業の概要

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II. 事業の成果

1.てん菜耐病性遺伝資源導入事業

1) 技術情報の収集
 海外から耐病性選抜系統の導入及び耐病性品種育成に資するため、インターネット等による情報検索サービスを利用、海外てん菜育種研究機関との情報交換、研究者からの情報提供により耐病性育種にかかわる研究資料の収集を図った。得られた情報を選択、翻訳、印刷・配布し、耐病性育種関係研究者に研究情報として提供した。

表1 刊行した文献情報の内容
刊行資料名 登載
文献数
文献言語 翻訳の別 内容・分野
てん菜文献
情報、No.1
3 ハンガリー語
フランス語
ポーランド語
全訳 ハンガリーのてん菜病害抵抗性育種
バイテク等新技術による抵抗性育種
てん菜胚珠培養による自殖系統育成
てん菜文献
情報、No.2
6 英語 全訳 研究主要国米国における Aphanomyces抵抗性育種研究文献
てん菜文献
情報、No.3
132 英語 抄録訳 Aphanomyces 及び根腐病の病害研究及びその抵抗性育種研究文献
てん菜文献
情報、No.4
5 英語 全訳 Aphanomyces抵抗性育種材料、人為接種、選抜試験、抵抗性と罹病性の病態組織学的比較研究文献


2) てん菜耐病性遺伝資源導入事業
 耐病性品種を育成するに当たって、遺伝資源・育種素材を早急に世界各国から探索・導入する必要がある。甘味資源振興会では、10年〜11年の間に3回にわたり、研究員を各国に派遣した。また、導入した材料は黒根病、根腐病、褐斑病抵抗性を持つとされる雄親36系統 (米国:19系統、ポ−ランド:17系統)、雌親31系統 (米国) の計67材料である。

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2.てん菜育種素材増殖採種・検定等事業

1) 育種素材の増殖・交配
収穫時の越冬母根(香川)
写真1 収穫時の越冬母根(香川)
 導入した耐病性遺伝資源は、その評価や利用を図るため、可能な限り早期に母根養成、採種を実施した。また、同時に導入遺伝資源との交配組み合わせによる、系統の作出も同時に行い、これまでに米国やポ−ランドからの導入系統を利用した交配組み合わせ系統、約15,000本の母根を選抜、定植、採種し、約100系統を作出し、これらの系統の特性検定を実施している。さらに12年度は新たに5,000本の母根を選抜する。
 一般にてん菜の種子生産には母根養成のための栽培と、採種栽培との2年間を必要とするので、品種改良の期間を1年短縮するため、秋播越冬による母根養成を香川県農業試験場で実施し、その母根を用いて札幌で定植、採種する方式をとっている。
 採種には、他の品種の花粉との交雑を防止しつつハイブリッド種子を生産するため、雄親ごとに隔離した農家ほ場を借り約60組み合わせの交配を実施している。

表2 育種素材の増殖状況
育種素材の区分 系統数 面積(a) 生産数量 備考
母根養成 94 30.0 20,200本 越冬母根養成(香川農試に委託)
 種子親系統 65 21.7 14,800本
 花粉親系統 29 8.3 5,400本
採種 99 80.8 264kg 札幌・北広島近郊の隔離ほ場
 種子親系統 42 35.8 88kg
 花粉親系統 13 21.0 103kg
 一代雑種系統 44 24.0 73kg

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2) 育種素材の検定
(1) 検定・選抜
 池田町のてん菜生産農家の黒根病・根腐病発生畑を検定ほ場として利用し、導入耐病性親系統、国内育成優良親系統など計92系統を供試し、抽苔耐性、黒根病検定を行い、選抜した優良系統の採種を進めている。
 米国から導入した系統の中には耐病性の優れたものがあったが、抽苔耐性が充分でないものが多く、収量性改良にも長期間を要するものと思われる。ポーランドからの導入系統には高糖性の優れた素材があり、これらの系統を優先的に品種親として改良していく方針である。
 このため、平成11年度には母根の個体選抜を実施し、10系統の能力検定を進めている。

表3 ポーランドから導入した優良系統の品質
(単位:g、%)
品種・系統名 根重 ブリックス 品種・系統名 根重 ブリックス
KP-1 718g (74) 25.5% (126) KP-6 796g (83) 24.1% (119)
KP-2 704g (73) 25.0% (124) KP-7 742g (77) 24.0% (119)
KP-3 784g (81) 24.8% (123) KP-8 645g (67) 24.9% (123)
KP-4 824g (85) 24.6% (122) KP-9 769g (80) 24.7% (122)
KP-5 709g (73) 25.3% (125) KP-10 795g (82) 24.0% (119)
注) ( )書きは標準品種であるモノホマレに対する指数
参考 モノホマレ……根重 946g ブリックス 20.2%
    NK-212BR(花粉親)……根重 819g ブリックス 22.3%

(2) 接種検定試験
 北海道農業試験場のガラス室において黒根病人為接種法の確立のため試験を実施している。接種による罹病 り びょう性系統と、耐病性系統の差は、明確に得られたが、安定した耐病性個体選抜のための手法確立までには至っていない。なお黒根病卵胞子の接種、発病汚染土壌による感染発病の程度の検討、黒根病菌による苗立枯病と生育期の黒根病発現との関係等検討を継続して行っている。

黒根病接種検定ガラス室内の状況
写真2 黒根病接種検定ガラス室内の状況
紙筒で育苗した苗の移植後のてん菜
黒根病の内部腐敗を伴う黒色斑の程度
写真3 黒根病の内部腐敗を伴う黒色斑の程度

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3) 自殖系統の作出研究
 品種親系統の短期作出技術として、てん菜胚珠培養の開発研究を恵庭リサーチビジネスパーク(株)に委託した。望ましい遺伝子を対 (ホモ) で保有する純系の短期育成方法に関する理論的根拠及び説明は図に示すとおりである (図参照)。
てん菜胚珠から生じたシュート
写真4 てん菜胚珠から生じたシュート
カルス状植物体より成長した葉
 基本培地 (MS 培地、B5培地、N11培地) と植物ホルモン (BA および NAA) の組み合わせ (各、0、0.1、1.0、10mg/リットル濃度) により各種培地を作成し、培養は25℃、16時間日長条件で行った。1年目には胚珠の摘出技術を完成した。またN11の一部培地 (BA 1.0mg/リットル、NAA 0.1mg/リットル) の胚珠にシュート状の組織発生が見られた。以後、新培地 (1/2MS、SH、N6)、培地媒体 (液体培地)、ショ糖濃度 (30、60、80g/リットル)、新生育調節物質 (IAA、TIBA)、新培養条件 (35℃暗所2日培養→27℃暗所2週間培養→25℃暗所8時間で培養) 等を検討した。
 シュートの発根、発根した植物の鉢上げについては、一部個体について成功しているが、発根条件は今のところ明確ではない。得られた幼植物の倍数性は、気孔の孔辺細胞中の葉緑体数と染色体数について検定を実施した。
 平成12年度は、培地及び品種ごとに置床胚珠数、シュート形成数及び平均シュート形成などを検討した結果、N6培地が比較的良いシュート形成率を示し、MS 培地は劣るようであった。シュート形成率については、5%以上の高い値の材料から1%以下の材料まで広い変異があった。

図 胚珠培養による純系育成品種
てん菜一般交配育種

一般の交配育種では、記号!で示された有用遺伝子をもっていないものとの交配では、有用遺伝子を1対で保有する2n染色体を作ることができない。

胚珠培養による純系育成品種
胚珠培養による純系育成品種

 培養胚珠を薬品処理で有用遺伝子を持つ染色体を倍加して2n 染色体18本の植物体を作ると、必ずその記号!で示された有用遺伝子を持つ染色体は1対になりその形質が発現されることになる。
 てん菜は他殖性で自身の花粉で受精せず種子を付けない。自殖遺伝子 (自身の花粉でも受精し結実する) を持つ特異な系統との交配によって取り込むことにより、この有用遺伝子はそのまま子孫に引き継がれ増殖が可能となる。


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III. 今後の計画

 し、平成10〜12年度は、それら系統の増殖及び特性評価 (導入した系統の約70%程度終了) を中心に行い、一部の系統については、増殖時に併せて国内系統と交配し採種を行った。また、てん菜の胚珠培養技術の開発研究についても、基本技術をほぼ確立した。
 今後は、これまで主として、耐病性遺伝資源の増殖及び特性評価を中心に進めてきた事業を、実用品種の早期作出に向けた国内系統との交配を拡大し、より多くの交配組み合わせ系統を作出し、耐病性や収量等の評価を行い、耐病性品種の早期作出を目指す。また、胚珠培養技術の開発研究は実用化を目指し、応用技術の開発研究に入る。

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