ホーム > 砂糖 > 機構から > 第3回さとうきび・甘蔗糖関係検討会の開催について
最終更新日:2010年3月6日
調査情報部 |
1.挨拶 |
2.「さとうきび栽培実態診断調査」の実施結果(総括報告) |
3.検討 4.総括 まとめ |
山本理事長の挨拶
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【多収・少収の方程式】
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(1)統計から浮かび上がる生産現場の実態 | ||
1) | 生産現場の生育の面では、春植は不安定で収量も低い。春植が効率的で夏植が非効率的とは言えない。作型は地域の実情(気象・基盤整備・経営)に応じて選択すべき。 | |
2) | ブリックスは地域や年次間の差異が小さいが、収量は地域間の差異が大きい。収量とブリックスの間には負の相関関係が認められない。糖度の改善は容易ではないが、糖度を下げずに収量を向上させることはできそうだ。 | |
(2)栽培改善の方向 | ||
1) | 品質の向上は容易ではないが、品質を下げずに収量を向上することはできそうだ。地域総体の栽培改善は少収地域の収量改善から。 | |
2) | 春植は気象条件の影響を受けやすい。春植は、地域の自然環境、基盤整備の状況、担い手の経営環境に配慮して推進する。 | |
3) | 夏植は比較的安定多収だが、倒伏による作業性の悪化・低糖度や株出萌芽が難点である。少収圃場では夏植型の株出多収栽培法を開発するのが得策である。 | |
(3)省力的な多収栽培の要点 (多収方程式の解から考えたこと) | ||
1) | 小さな欠株が多い圃場:条件の良いときに良い苗を少し多めに植える。大きな欠株がある圃場は、圃場の改良や植溝の工夫等が必要である。 | |
2) | 茎の伸びが悪い圃場:梅雨の雨を最大限に活用する。 | |
3) | 糖度の低い圃場:深い植溝、或いは値系の強い耐倒伏性品種の利用で受光態勢を改良する。 | |
(4)栽培改善の方向と品種特性 (台風・干ばつを前提にして初めて安定生産技術である) |
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1) | 出芽・株立ち・生葉展開の促進;Ni16、KF92-93、KF93T-509等(初期生育の促進) | |
2) | 干ばつ・低地力条件:Ni9、Ni16、FK92-93等 | |
3) | 株出し萌芽の促進:Ni16、Ni17、FK92-93等 | |
4) | 耐倒伏性:Ni17等 | |
5) | 作業分散・早期収穫の実施:KF92T−519、KN91-49等 | |
6) | 風折・潮風害抵抗性:Ni17等 | |
7) | 低糖度の改善:NiF8、Bi15、Ni17等 |
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(1)担い手農家の育成 | ||
ア. | 農業生産法人・農作業受託組織の育成 (鹿児島県) 農家の高齢化や他作物との競合などによる労働力不足による生産力が低下しているため、機械化一貫体系の確立とともに植付や収穫作業の受託組織の育成に努めているとした。 (沖縄県) 平成11年からさとうきび生産法人の育成に取り組み現在29法人。平成15年は、新たに3法人の設立が予定されている。また、農作業受託組織の育成として、農業機械銀行による作業受託を行っている。 |
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・ | これに対し生産の現場からは、生産農家は、収穫時期に春植の適期植付まで手が回らないのが現状。さとうきび生産法人等が収穫作業と植付作業を適期にバランスよく実施できるように育成することによって春植えの面積も拡大でき生産量も拡大できるのではないかとの意見があった。 |
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・ | さとうきび生産法人は、農地の集積が進まず経営的に厳しい。経営管理強化のため研修等を積極的に実施している。 |
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イ. | 遊休地の農地利用の推進 (鹿児島県) 遊休農地解消対策事業等を活用して遊休農地の解消と流動化の促進に努めたい。また、新R事業の推進により耕作放棄地は減少傾向にあり収穫面積は増加している。 |
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・ | 農地の流動化については、農家同士の相対による賃借が8割を占める。もっと組織的に取組む必要がある。県の積極的な対応を求めるとの意見があった。 (鹿児島県) 奄美大島は復帰前後の特殊事情もあり土地の権利関係が複雑。従って相対に依らざるを得ない事情がある。 |
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(2)地域の実情に即した機械化体系の確立 |
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(鹿児島県) 収穫の機械化が進んできている。今後の課題は、植付け作業の機械化である。今年進めているのは株出管理機で、地元でも期待している。労働時間の6割減は非常に厳しいが、実現に向け努力したい。 (沖縄県) 機械収穫率は約38%に向上してきており、これに伴って生産費コストも逓減してきている。植付の機械化については、県農業試験場が開発した高性能新型植付機の導入を図っている。 |
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・ | 研究開発の現場から、労働時間6割減を目標とする中で、簡易プランタの開発が緊急に必要だ。併せて発芽率の高い苗の採苗・調苗作業の機械化が必要。現在、鹿児島大学では、苗供給システム開発を手掛けている。これらの開発のため情報交換を願いたいとの意見があった。 |
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・ | 沖縄県では、砕土、畦立て、苗切断、施肥、殺虫剤散布、覆土、填圧、除草剤散布、すべて一工程で可能な「多機能ロータリー装着型の植付機」を昨年完成させた。これは全茎無脱葉のまま植付できるため、調苗作業の手間がかからない。これに苗の刈取り機ができれば機械化一貫体系はできたも同然であるとの意見があった。 |
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(3)春植・株出体系及び夏植・株出体系の推進等による収穫面積の増大 |
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・ | 限られた農地、面積で収量をアップするには春植え株出しを増やす必要がある。 |
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・ | 機械化には投資が必要となり、その回収の為にも株出しを増やして収入増を図る必要がある。 |
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(4)低収量・抵糖分地域における栽培技術の高位平準化への取組み |
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・ | 毎年、干ばつと台風に翻弄されている。対策は適期植付け、肥培管理の徹底により強いキビを作ることで被害を少しでも軽減することが必要だ。 |
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(九州沖縄農業研究センター) 種子島は (1) マルチによる初期管理対策が効果的であること。(2) 甘蔗糖企業との協力関係が良い為、収穫後すぐに株出し管理できる体制が整っていること。(3) 夏の到来は奄美大島と同じだが、梅雨が奄美大島に比べて一月遅い為、暑い時期に水がある。これは初期管理を良くしていると同じ効果がある。 (鹿児島県農業試験場) 種子島は単収が高いが他の島を含めて全体的に単収が低下傾向。キビは輪作作物であると思う。種子島はキビと芋が1/2。ところが奄美大島はキビ単作。長い間作り続けると連作による影響があるのではないかと危惧している。 (沖縄総合事務局) 久米島はここ3年間程、災害でキビ作りに苦戦している。そこでこれまでの栽培技術を見直し、地域に合った営農技術の確立についてモデル事業として取り組んでいる。 |
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(5)総合討議 |
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(当機構山本理事長) 何でも品種開発、試験研究に求めていたのでは時間がかかる。既存の品種、技術で如何にうまくやるかを真剣に考えてはどうか。 |
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・ | 農家も儲かる経営をしなければならない。そうすると今後、複合経営にどう取り組むかが問題。県はどう考えるか。 (鹿児島県) キビの場合は複合経営が多い。専作は大規模経営でなければ成りたたない。県とし農家経営の観点から複合経営を指導しているが、特に品目まで踏み込んだ指導はしていない。また、キビがなければ島の糖業も成り立たなくなるので、キビ作りが大前提であるが、農家経営の観点からすると複合経営に取り組むことも必要なのが現実である。島にとってキビも園芸も畜産も大切。しかし、キビがなくなれば園芸も畜産もなくなってしまう。キビを1億円増産すればその4倍の経済波及効果がある。また島で処理できるのはキビだけである。仮にキビのまま島外へ運びだしたのではたいへんな運送経費がかかるが、島に甘蔗糖企業があり、原料化して運送することによるメリットも大きいと農家に言っている。 (沖縄県) 75%は複合経営。各島の状況に応じて取組んでいる。 (九州沖縄農業研究センター) 技術的には収穫作業の機械化が進んで労働時間は減っているが、それが他の生産性向上の技術とうまく連動していない。技術のミスマッチがあるのではないか。そういったことが栽培診断で少しでも改善できればと考えている。 |
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(6)その他 |
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(種苗管理センター桑名理事長) 株出の成功は新植の成功の次にある。株出の振興は種苗更新を合わせて考えてもらいたい。新しい品種に対する需要の予測というのはなかなか難しいし、また過大に出る可能性もある。需要に応じた適切な品種の供給が大切であり、これらの実施には需要量を正確に把握する必要があるとし、関係機関への協力要請をした。 |
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まとめ
この検討会も第3回を向かえ、これまで以上に鹿児島県農政部や沖縄県農林水産部をはじめ、各機関がさとうきび糖業発展のため明確な目標を持ち、その達成のためにお互いに連携しながら、各々の機関が大きな努力を傾注している様子をうかがい知ることができた。
しかしながら実績の面で見ると、収穫面積は別として、収量や糖度の向上という目標に対しては現時点では十分な効果が上がっていないのが実情である。特に単収については右肩下がりで下がってきている。また、労働時間の縮減という目標に対しては収穫作業を中心にして、確実に数字として出てきているが、トン当りの生産費で見ると、台風等の災害による収量変動という事情はあるが、コスト削減という目標に対し、成果に結びつくというところまで行っていないのが実態であった。 砂糖制度は、手厚い保護のもとに成り立っているが、これまでの実績で見ると、果たして農家をはじめとしてさとうきび産業界自身の努力というものが外から見て十分にうかがうことができるのか懸念されるところである。これは砂糖だけではなく、あらゆる作物について言えることで、特に構造改革と言われている時代に、目に見える数字で努力というものがあらわせないと、国民なり納税者の支援、支持というものは得られないのではないかとの危惧がある。各関係者のなお一層の努力が必要であることを痛感した。 今回の検討会で、(1) 担い手農家の育成、(2) 機械化一貫体系の確立、(3) 収穫面積の増大、(4) 低収量・低糖分地域における栽培技術の高位平準化への取組みの4つの課題について、様々な角度から検討され、地域の実情に即した技術体系のあり方等、今後に期待の持てる改善策が示された。 この検討会の成果が活かされ、両県のさとうきびの振興に貢献できるよう、機構としても努力してまいりたい。 来年の検討会ではこれから一年間の努力について定量的に点検評価を行い、さらに将来の具体的取組み方向について議論することが重要である。 |
(1) | 南西諸島農業の気象資源とさとうきび生産の基本方向 野瀬昭博 (佐賀大学農学部教授) |
(2) | 鹿児島県下の少収・低糖度地域・圃場の栽培改善に有効な肥培管理と品種の利用 神門達也 (鹿児島県農試 徳之島支場 作物研究室長) |
(3) | 沖縄県下の少収・低糖度地域・圃場の栽培改善に有効な肥培管理と品種の利用 宮城克浩 (沖縄県農試・さとうきび育種研究室長) |
(4) | 夏植型1年栽培の導入と極多収性さとうきびの開発による生産改善の方向 杉本 明 (九沖農研・さとうきび育種研究室長) |
(5) | 南西諸島の持続的農業における基幹作物としてのさとうきび生産のあり方 −さとうきびのバイオマス利用による産業構造の強化と環境保全− 上野正実 (琉球大学農学部教授) |
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