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最近のEUおよび英国における糖業事情ならびにISOセミナーの概要について

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最終更新日:2010年3月6日

砂糖類ホームページ/国内情報

機構から
[2005年2月]

 平成16年11月23・24日にロンドンで開催されたISOセミナーに出席するとともに、EUおよび英国の糖業事情について調査する機会を得たので、その概要を報告する。

理事   和田 宗利
調査情報部調査情報3課 北村 徹弥


1.糖業調査
I. これまでのEUの砂糖政策
 最近のEU砂糖政策の概略について整理すると以下の通りになる。なお、既に砂糖類情報でEUの砂糖政策についてはレポートしているので、重複する点については極力割愛した。従って、既刊の砂糖類情報も併せて参照されたい。

1 生産割当
 EUではクォーター制に基づく生産割当が行われている。
 割当には、地域内消費量に基づいて算出されるA割当と、不作時および生産性の向上を目的とするB割当があるが、B割当は、消費量よりどれだけ多く生産されているかによって設定されている。従って、ドイツ、デンマーク、フランスなどの生産量の多い国では、B割当の割合が高くなっている。
 しかし、実際には、A、B割当についてはそれほど意識されておらず、A、B割当を合計した生産量(最大割当数量)から地域内で消費される量を差し引いたものが補助金(輸出払戻金)付きで輸出に回されていると理解するのが現実的のようである。
 クォーター制については5年に一度見直されることとなっているが、A割当については、20年前の消費量に基づいて計算されており、また、その後の新規加盟国については、その都度加盟国の消費量見合いで計算されている。
 現在、A割当が81.45%、B割当が18.55%となっており、これを基に表9(P28参照)の国別の割当比率が決められている。しかし、この数字には政治的な意味合いが強く、一度決まれば変更するのは難しいとのことであった。
 また、2004年5月のEU新規加盟10カ国については、次の分類で割当が行われた。
[1] 生産が供給を上回る4カ国(チェコ、ハンガリー、リトニア、ポーランド)
[2] 生産が消費を下回る3カ国(ラトビア、スロバキア、スベロニア)
[3] 砂糖を生産していない国(キプロス、エストニア、マルタ):割当なし。
 最大割当数量を超えて生産された砂糖がC糖である。EUの砂糖制度においてC糖は、補助金なしで国際市場に輸出するか、翌年に繰り越さなければならないこととなっており、繰り越した場合は、A割当相当数量が削減されることになる。
 C糖は補助金なしとされているが、A、B糖には価格支持による手厚い保護がなされていることから、ブラジル、オーストラリア、タイの3カ国から、結果的に補助金を受けているのと同じではないかとWTO提訴を受けている。
 ただし、EUにおける輸出量の推移は横ばいもしくは減少傾向にあるのに対し、ブラジルは急速に輸出量を伸ばしてきており、国際市場価格引き下げの大きな要因となっている。このため、特にブラジルに対してはいずれの訪問先関係者からも強い反発が感じられた。
表1 EUの砂糖需給

2 価格支持
 EU砂糖制度の根幹を成すものとして、生産割当と並んで価格支持がある。支持価格としては指標価格(target price)、介入価格(intervention price)、てん菜の基準価格(basic price)、最低生産者価格(minimum beet price)、派生介入価格(derived intervention price)、製造経費(refining cost)、輸送費(transport cost)、生産者賦課金(producer levies)などが細かく規定されている。その内容は前述したように砂糖類情報平成14年10月号に掲載されているので本稿では割愛するが、これまでの調査でやや不明であった点を中心に、あらためて聞き取り調査を行ったものについて報告する。

(1)指標価格と介入価格
表2 白糖介入価格の内訳

 まず、指標価格と介入価格との関係についてである。
 もともと指標価格は自由競争が行われる市場において予想される価格とされ、地域内の価格支持の基本と位置付けられていたが、現在では全く機能しておらず、意味を持たないものとなっている。従って現在では、価格支持は介入価格が基本ということになる。
 介入価格の1968/69年度から2003/04年度までの推移を表10(P29参照)に示したが、制度発足当初は別として、ここ25年をみると、介入措置が発動されたのは1986年の1回だけである。これは関税や在庫数量の規制などの手段により、域内の市場価格が介入価格よりも10〜15%高く設定されてきたことによるものである。
 介入価格は原料費、ビート輸送費、製造経費の合計から糖蜜販売収益を控除されたものであるが、製造経費などの内訳は公表されていない。なお、介入価格のうち原料費(生産者の取り分)は58%(366ユーロ)、製糖企業の取り分は42%(265ユーロ、輸送費を含む)に分配される。
 この介入価格からビートの生産者価格が算出されるが、その算定は次の通り。
 366.7ユーロ×13%=47.67ユーロ(ビートのショ糖含有率の基準は16%であるが、これに工場でのロスを勘案して13%が設定されている)。
 生産農家への支払いはショ糖含有率16%を基準にして、ショ糖含有率の実績値により調整されることとなっている。(調整率については、砂糖類情報平成15年10月号に掲載)

(2)生産者賦課金
 生産者賦課金として、まずA糖、B糖ともに2%(12.6ユーロ)の賦課金が課せられている。
 これに加えB糖については、さらに最高37.5%(237ユーロ)が課せられ、これを財源として輸出払戻金(輸出補助金)が支払われている。なお国際価格の下落により輸出払戻金の水準が高騰した場合にはさらに賦課金が追加され、徴収されることになっている(1990年以降は2年に1回の割合)。
 年度別生産者賦課金の推移は表3通りとなっている。
表3 賦課金の推移

 賦課金の徴収は、製糖会社(英国ではBritish Sugar)が行い、各国政府を通じてEU本部(ブリュッセル)に集められる。この資金の管理は、EUの砂糖管理委員会が行っており、毎週一回ブリュッセルにおいて委員会が開催されている。また、賦課金の水準については、生産、輸入および輸出の状況を踏まえEU委員会で毎年9月に決定されており、その後各製糖会社が農家分も含めて支払を行っている。
 なお、農家の負担分については、製糖会社がビートを買い付けた際、その代金の中から差し引いた形で、徴収することになっている。ちなみに、賦課金の負担割合は、製糖会社42%、生産農家58%である。なお、追加賦課金については、各事業者が均等に負担することとなっている。
 EU 委員会が生産者に保証しているのは、この賦課金を控除した最低生産者価格(A糖:46.70ユーロ/トン、B糖:29.70ユーロ/トン、加重平均:43.75ユーロ/トン)である。
 一時期、生産過剰により、賦課金の総額は800〜900百万ユーロにも達したが、加盟国のうちのイタリア、ギリシャにおける生産減、割当削減の可能性の浮上などにより生産過剰が縮小し、賦課金も低減してきている。02/03年度におけるB糖については、賦課金は20%(ただし、03/04年度は39.5%)に設定されており、総額も350万ユーロをわずかに超える程度となっている。
 なお、この賦課金は輸出払戻金以外に使われているかとの質問については、そのようなことは行われていないとの回答であった。
表4 1990年〜2002年の平均賦課金


(3)輸出払戻金
 EUにおいては、割当内で生産された砂糖のうち、域内の消費量を上回った分について輸出した際、輸出払戻金(export refunds)の支払いを受けることができる。これは市場の共同機構(COM)が設立された時に導入された制度である。
 この払戻金はフランス海外県(DOM)を含むEU域内で収穫されたビート、さとうきび由来の砂糖のほか、ACP諸国、インドから輸入された砂糖、域内で生産された異性化糖およびイヌリン・シロップにも適用されている。また、これら払戻金は粗糖および一定の砂糖を使った加工品にも交付されている。
 輸出払戻金の対象には3つのタイプがある。
[1] 白糖
 輸出払戻金の交付対象となる白糖数量は入札制度の下、毎年210万トンから250万トン程度となっており、金額はトン当たり01/02年度は443ユーロ、02/03年度は485ユーロ、03/04年度は512ユーロとなっている。従って、平均輸出価格が02/03年度ではトン当たり223ユーロとなっている(01/02年度では280ユーロ)ことから、域内砂糖価格は実質トン当たり700ユーロを超える水準で輸出されていることになる。
[2] そのほかの砂糖など
 また、入札に係らなかったわずかな数量(marginal quantities)の白糖に加え、粗糖、液糖、異性化糖、イヌリンにも輸出払戻金が支払われている。その数量は、約10万トンとなっている。
[3] 加工品に含まれる砂糖
 さらに、WTO協定に記載されていない食料品を中心とした製品に使用されている砂糖に対しても、輸出払戻金が支払われている。これは域内の砂糖価格が高いため、加工品の輸出業者が国際市場において不利な立場になることを防ぐことを目的としている。

(4)輸出払戻金に対するWTO上の規制
 輸出払戻金についても、WTO協定において上限が設けられている。数量で127万3,000トン、金額で4億9千9百万ユーロとなっており、砂糖、異性化糖、イヌリン・シロップおよび野菜、果実の加糖調製品がその制限枠の対象となっている。
 EUにはこの枠とは別に、ACP諸国およびインドからの輸入に見合う輸出枠160万トンがある。従って、WTOの制限枠4億9,900万ユーロに相当する100万トンとこの160万トンを加えた260万トンが輸出払戻金の対象となっている。
 砂糖部門の払戻金付き輸出量が制限枠を超えそうな場合には、対象となる砂糖などの生産割当を削減してC糖へ振り替えて対応することとなっているが、これまでの実績は以下の通り。
表5 生産割当の削減数量の推移


3 精製糖企業に対する支援
 ビート糖の製糖企業に対し精製糖企業が対抗できるよう、1986年から導入されたもので、製糖企業と精製糖企業の間で生じる製造経費の差額を補填する内容となっている。なぜこうした差が生じるかということであるが、英国の精製糖企業Tate&Lyleにおいて次表に基づいて説明を受けた。要するに、原料経費が甘しゃ糖とビート糖では相当の開きがあり、これが甘しゃ糖企業に対しビート糖企業が収益性(表中の制度上のマージンの欄を参照)で劣る原因となっているとのことであった。
 このほか、企業への支援としては、DOMで生産される甘しゃ糖に対して、DOMから欧州の精製糖工場までの距離的なハンディを補うため売却助成金(disposal aid)がある。
 助成の内容は、[1] DOMから欧州までの輸送経費相当の66ユーロ/トンがDOMの精製糖会社に支払われるものと、[2] 品質が標準から外れることによって生じるACP 諸国産の砂糖との価格差を補うため、欧州の精製糖会社に支払われる精製助成金(8.1ユーロ/トン)の二つから成っている。
表6 ビート糖と甘しゃ糖の製糖経費の比較


4 化学製品に対する生産払戻金
 砂糖を使って製品を生産する化学、医薬品メーカーに対して生産補助金が支払われている。
  この措置は、これらメーカーが食品メーカーと異なり、加糖調製品に対しての関税による保護措置による恩恵を受けていないことから設けられたものである。また、こうした業界が、国際価格見合いで砂糖を調達できるようになっており、払い戻される金額は、入札によって決まった払戻金の平均値から、船賃などに見合うトン当り64.5ユーロを差し引いた額に基づいて毎月決定されている。
 この措置により、40万トンの砂糖および異性化糖が生産払戻金の対象となっており、これに要する経費として1億7,000万ユーロが支出されている。

5 EU の砂糖関連予算
 2004年度EU砂糖部門の予算総額の見通しは17億2,100万ユーロとなっており、その内訳は次の通り。

輸出払戻金(ACP産砂糖160万トン見合いの8億200万ユーロを含む)
12億8,500万ユーロ
生産払戻金(化学産業向け)
1億9,400万ユーロ
精製糖企業補助金
4,100万ユーロ
CAP対象外品目の輸出補助金
1億8,300万ユーロ
粗糖処分のための補助金(海外部門の砂糖)
1億1,800万ユーロ

 EUの砂糖政策は、生産者賦課金からの資金を基本に成り立っていることから、政府の負担の少ない自己採算性の強い政策といわれている。しかしながら輸出払戻金のうち、甘しゃ糖に係るものは生産者賦課金を財源としておらず、また、精製糖企業への補助金などもあることからみれば、必ずしも自己採算性が強いとはいえないのではないかと考えられる。この点について環境・食糧・農村地域省(DEFRA)に確認したところ、彼ら自身は自己採算という言葉は使っていないとのことであった。
 なお、最近の予算総額の推移は次の通り。
表7 予算総額の推移

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II 英国のビート生産農家
 生産農家については、ロンドンの北、約140キロ程のところにあるピーターバラ(ビート主産地)の農家を訪問し、砂糖制度が農家でどのように運用されているかを調査した。

1 ビートに対する代金の支払い
 ビートを出荷後2〜3週間のうちに中間支払い(31.60ポンド/トン)が行われ、翌秋A、B糖の清算による追加支払いが行われる(2.00ポンド/トン)。さらにその翌年にC糖分(1〜2ポンド/トン)の追加支払が行われる場合がある。
A糖、B糖の別は、農家段階では意識されておらず、この点についてビート糖の製糖会社British Sugar社において聞き取り調査をしたところ、A、B糖については加重平均された単価に基づいて農家に支払っているとのことであった。また、C糖として処理されたビート代金については農家からの出荷18カ月後に支払われているが、その配分はC糖販売代金の6割が農家、残り4割が会社ということになっている。

2 農家への生産割当
 農家段階でのA、B糖別の配分は行われていないが、A、B糖合わせた生産量の割当は行われている。この枠については、域内の加盟国段階と同じで、枠を割り込むと当該農家の生産割当が削減されることになっている。このため農家は生産割当よりも、多めに作付を行ってり、通常枠を割り込むことはないとのことであった。ただし、なんらかの事情により、生産が不振であった場合には公には認められていないものの、農家間においてビートのやりとりが行われている模様であった。
 C糖の輸出について、WTO 提訴がなされていることなど批判があることへの感想を求めたところ、農家の立場からすれば、C糖として安く売らなければならないこと自体が不満のようで、「ビートは価格が安定していて有利な作物で、経営の中での重点作物である。しかし、C糖を作ろうと思って作っているわけではなく、生産割当を維持するためには過剰にならざるを得ない。一生懸命作っているのにC糖になるのは残念である。」との返事が返ってきた。

3 そのほか技術的な事項
(1)作付体系
 4年輪作
 小麦2回、ビート、バレイショ(最近はバレイショの価格が低いので、グリーンピースに変えている)
(2)病害虫対策
 ビートの播種(2月ごろ)の2〜3週間前に麦をカバークロップとして播種されている。
 なお、英国でのビート作は直播栽培である。
(3)作業委託
 収穫作業および原料集積地までの輸送を委託する農家はあるが、耕起、播種および肥培管理は自家作業となっている。
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III British Sugar社
 British Sugar社については、これまで何回かレポートされているので、今回は、その設立の経緯を中心に調査した。
 英国におけるビートの製糖は、1912年オランダ資本で1社設立されたのが最初であった。しかし、その後の経営不振で撤退を余儀なくなれた。1925年まではビート糖の製糖企業は英国にはなく、植民地からの甘しゃ糖(精製糖企業としては1921年創業のTate & Lyle社)がもっぱらであった。
 1925年から26年にかけて政府出資により、英国各地に5社のビート製糖会社が設立されたが、いずれの会社も経営不振に陥り、1936年に破綻した。同年、政府は砂糖業界再編法を制定、製糖会社の再編に乗り出し、設立されたのがBritish Sugar社である。
 1982年に政府が所有していた株(全株数の36%)の全てを売却し、British Sugar社はBI社に譲渡された。さらにその後、ABF 社に売却され(売却額8億8千万ポンド)、現在に至っている。
 なお、ABF社は穀物会社(アライドグレインカンパニー)、飼料会社、麦芽飲料のトワイニング・ライブイーター社など幅広い分野の会社を経営しているが、British Sugar社はその中でも、優良企業とされている。
表8 EU15の主要製糖企業の生産シェア

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IV 業界団体
 砂糖関係の業界団体は、例えば英国のビート生産者の団体(NFV)のように、EU 加盟各国にも存在するようであるが、砂糖制度がEU の共通政策を基本としていることから、政策に関わるようなロビー活動は各国別には行われておらず、EU全体の団体であるCIBE(生産者団体)およびCEFS(製糖企業団体)がこうした活動を行っているとのことであった。  活動の内容は、情報の収集伝達ということになっているが、具体的には、EU委員会などへの働きかけおよび加盟各国の理解醸成のための活動を行っている。  ちなみに、政策決定への影響力について質問してみたところ、これまで砂糖制度が変わらなかったことから考えると、相当の影響力があったのではないかというのが関係者の証言であった。  なお、これら団体の資金は、各国の企業レベルでの負担金によって賄われている。
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V EUにおける砂糖制度見直しの動き
 これまでみてきたように、EU砂糖政策の基本は、域内諸国に対する生産者価格の保証、生産割当および関税から成り立っており、これに加え、旧植民地諸国など発展途上国を中心とした海外の各国、各地域との諸協定に基づき、特恵関税による輸入が行われている。
 しかし、EUの砂糖政策は、1968年共同市場機構が設立されて以来、基本的にはほとんど変更が加えられておらず、1992年の共同農業政策(CAP)改革プロセスから除外されている唯一の部門といわれている。
 EUのラッセル・ミルドン氏は、ISOセミナーにおいてこのような現状を次のように説明している。
 「現在の砂糖制度はこの40年間ほとんど変化していない。しかしながら、現状維持は困難であり、特にEBA協定の下、砂糖産業を開発途上国からの免税輸入の増加に耐えられるよう競争力をつけていかなければならない。」
 現在、EUでは、その共通政策の見直しが提案されているが、DEFRAなどからの聞き取りから、その背景について詳述すると次のようになる。
1  WTOに対しブラジル、オーストラリア、タイから以下のような提訴が行われている(現在のWTO裁定はEUが違法と判断されている)。
 [1] C糖の輸出も割当糖の恩恵を受けており、間接的に補助金を受けているのと同じ。
 [2] 優遇措置で輸入されている粗糖を精製し、再輸出するのは不当。
2  生産の増加により、WTO交渉で合意した輸出補助金の枠を超過する恐れ。
3  EBA(Everything But Arms)協定により開発途上国から無税による輸入が増加の見込み。
4  EUの拡大に伴い、従来の政策では対応できなくなっている(ポーランドなど加盟国の増加により生産過剰になる恐れ)。
5  砂糖の価格が不必要に高いことから、ヨーロッパの飲料業界が競争力を失い、廃業もしくは海外への移転を迫られている。
6  意思決定システムが不透明(決定するには25カ国の農業省の合意が必要)。
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VI EU砂糖制度の改革の方向
 現段階でEUが提示している改革の方向は次の通り。

1 価格支持
(1)  介入価格を廃止し、基準価格を新設する
(2)  基準価格を2段階に分けて2/3に引き下げる(現在632ユーロ、05/06年度 506ユーロ、07/08年度421ユーロ)

2 供給管理
(1)  域内における価格を維持するために粗糖の一部を民間で保管させ(民間在庫制度)、貯蔵に要する費用を助成する。貯蔵している砂糖の放出時期については、基準価格に基づき決定する。
(2)  ACP砂糖協定およびインド砂糖協定は存続させるが、保証価格は引き下げる。また、粗糖の輸入価格が下がるので、精製糖企業に対する精製助成金は必要なくなる。(助成金からの脱却を求める声も根強いとのことであるが、英国では大きな打撃を受けるのではと危惧されている。)

3 生産割当
(1)  生産割当の仕組みは維持する。仮に割当が撤廃されると、需要の大部分を異性化糖に奪われてしまう恐れがある。
(2)  割当は削減する。05/06の初年度は130万トンの削減。次の3年間に毎年50万トンずつ、合計で280万トンの削減になる。
(3)  割当数量の国家間での譲渡を認める(生産性の高い国への集約化)。
(4)  競争に耐えられない企業が工場を閉鎖する場合には、トン当たり最大250ユーロが支払われる。(250ユーロの根拠は明確になっていないが、解雇の補償、工場の解体経費、社員の再教育の経費がその内容と考えられている。)

4 ビート生産農家
 ビート生産農家の所得減の60%はデカップル単一農家給付金により保証される。

5 その他
 西バルカン諸国に対し、関税割当を適用する。

6 今後のEU改革(予定)
  2005年春   WTO小委員会に対するEU控訴の結果判明
砂糖改革の詳細な法律提案
2006年7月 新砂糖制度の発足
EBA関税20%削減
2006年10月 CAPの次期予算年度の開始(2013年まで続く)
2007年7月 EBA関税50%削減
2007年 ブルガリアとルーマニアがEUに加盟(年間60万トンの粗糖生産の条件付き)
2008年7月 EBA関税80%削減
2009年7月 EBAの完全アクセス
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VII EU砂糖制度改革への反応
 EU砂糖政策の改革については、WTOの最終判断が下されていない段階であり、改革内容も具体的に提示されていないが、現段階でも改革の方向については、各方面からさまざまな意見が出されている。   接触できた関係者からの反応を整理すると、次のようになる。

1 EU自身の改革に対する見解
 競争力、市場性の向上、貿易上の歪みの是正により、EUの砂糖産業は維持可能な以下のような長期的展望を持つことができる。
(1)  EU域内の住民は消費者としては砂糖価格の引き下げ、納税者としてはEU砂糖産業の競争力の向上による負担軽減という恩恵を受けることができる。
(2)  EUにおける砂糖生産は継続され、ビート農家はデカップリングされた直接支払いにより、一定の減収部分は補償されるとともに、他作物への転換という選択も可能となる。
(3)  製糖および精製糖企業が生産の合理化を図るか、EUの資金援助により砂糖からにより転換を図るかの選択を通じて、高い競争力と生産レベルを維持することができる。
(4)  ACP諸国は輸入特恵が維持されることから、EUという魅力ある輸出市場を維持することができる。また、新しい砂糖システムに適合できるよう特定の援助提供のためのACP諸国との対話を開く。

2 ACP 諸国などの反応
 改革に対して最も反対しているのが、ACP 諸国といわれている。
 ACP 諸国にとってEUは極めて重要な市場であり、協定下において高い保証価格と輸出割当によりEU砂糖制度の恩恵を受けてきた。今回の改革により、大幅な保証価格の引き下げが行われれば、各国の雇用、所得に多大の影響が生じると考えられており、EU域内のビート農家並みの補償を要求しているとのことであった。
 ただし、関係者の間では、こうした国々をこの改革で敵に回すと、WTO交渉において支持が得られなくなるのではないかとの懸念も持たれている。
 また、新規加盟国からも反発が出ていた。ISOセミナーでは、ポーランドから生産割当の削減と価格の引き下げは、ポーランドのビート生産農家にとって大変な打撃になるとし、特にブリュッセルのEU 官僚に対し強い調子での批判(彼らは現場を知らない)があった。
 一方、フランスやドイツなどは、削減率が高く、生産効率の良い国ほど多く削減しなければならないといった矛盾点も指摘されており、これら主要生産国からは生産割当の削減よりも価格の引き下げに重点を置くべきではないかとの意見も出ている。
 生産割当が国家間で譲渡される仕組みが改革の中で提案されているが、ギリシャ、スペイン、イタリア、フィンランド、ポルトガルからフランス、ドイツ、英国に流れるのではないかと予測されている。
 DEFRAにおいて、英国内での反応を聞いてみたが、英国政府はこの改革を支持していると明言していた。ただし、英国内における意見には次のようなものがある。
・ 粗糖輸入者は安い原料を調達できることから歓迎。
・ ビート生産農家はビートがこれまで最も収益性の高い作物であったことから、改革の方向に懸念。
・ 精製糖企業はその中間で、英国の精製糖企業はEUの中で最も効率良いメーカーであり、自分たちが集約化の担い手になると考えている。
表9 A、B糖の国別配分比率
出展:Zucker Industrie129 (2004年1月)

表10 介入価格の推移
(注) 1トン当たりの単位は、1968/69年〜1978/79年は計算単位、1979/80年〜1998/99年はエキュー、1999/2000年〜2003/04年はユーロを使用

表11 EUにおける生産割当数量の推移
(注) 2004年の総計は、C糖の推定値を含む。
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2.第13回ISO(International Sugar Organization)セミナーの概要について

ISOセミナーのポイント
1.  WTOなどの国際機関関係者、砂糖産業、生産者代表、金融、メディアなど60カ国から約300人が参加した。
2.  バルラ議長は、2010年までに、現在は脇役であるエタノールが砂糖と並んでさとうきび産業の主要産品になると予想した。この背景には、原油価格の上昇および中東やそのほか主要産油地域の政治的不透明性があるとしている。
3.  2010年までには世界における需給事情に変化がみられ、アジア地域において砂糖の構造的な供給不足時代を迎えると予想されている。これは [1] インドにおける生産不足が700万トンとなり、再び輸出国に転じるのは8年を要すること [2] タイでは来年から燃料エタノール政策に着手するとともに関連産業の促進を図っていくこと [3] 中国における消費量の大幅な増加が予想されていることなどが、その要因と考えられている。また、世界市場における砂糖およびエタノールの需要予測については、いずれも今後拡大していくとの楽観的な意見が大半を占め、特にアジア市場での成長が見込めるとした。
4.  EUからは、本年7月のEU委員会において提案された砂糖制度改革案の説明が行われるとともに、ブラジルらによるWTO提訴問題でWTOの判断を不服とし、確実に上訴を行うため、砂糖改革に遅れが生じる可能性が高いとの発言があった。
5.  ブラジルは、今後砂糖だけではなく、エタノールの生産拡大も見込めるとし、世界市場への輸入増を見込んでいる。また、ブラジル国内におけるエタノールの用途は、フレックスフューエルカー(ガソリン、エタノールをいかなる混合割合にしても対応可能な自動車)の燃料向けの需要が増大している。
6.  中国は、2010年までに砂糖需要が大幅に増加するとの予測を示した。また、生産能力については1,400万トン、砂糖消費量については、これを上回るものと予測している。
7.  タイは、さとうきびからのエタノール生産や燃料エタノール生産に向けた政策転換のための法案が昨年閣議決定されたことを受けて、来年から燃料エタノールの生産を開始するとの方針を示した。またこれまでの石油エネルギーの依存を改める方針も併せて明らかにした。

全体概要
(“Sugar 2010−Hopes and Frustrations”=2010年までの希望と挫折)
 以下、各国の発言者(砂糖産業、生産者の代表者など)の報告要旨を紹介する。
(1)アメリカ
  現在アメリカの砂糖政策は、
 [1] 輸入関税割当(40カ国に粗糖を110万トン以上割当)
 [2] 価格支持ローンプログラム(粗糖18セント/ポンド、ビート白糖22.9セント/ポンド)
 [3] 販売割当制度(2002年発効)による製糖業者ごとへの販売量割当
の3つに基づいて行われている。
 割当は調整されるが、増加が通例となっているものの、異性化糖が1980年代に清涼飲料市場で砂糖の代替となって以来、砂糖需要は長期的に低迷している。USDAの予測では、2003年は4年連続で一人当たりの甘味料出荷量が減少するとしている。
 需要の伸びがみられないにもかかわらず、国内生産が拡大してきている現状は、大きな問題である。
 現在、アメリカでは111万7,195トンの甘しゃ糖と2万2,000トンの精製糖を輸入する義務があるものの、今後は粗糖の輸入は増加すると予想されている。こうした要素が結局、アメリカ砂糖体制の変化につながる。このような変化が徐々に進展していくのか、あるいは急激な不均衡が生じてプログラムが内部から崩壊していくのか、今後の動向が注目される。
 また、今後下院議会において以下の事項が検討される予定となっている。
[1] 2005年に財政赤字の縮小検討
 (これが実現されれば、農業プログラム自体の縮小につながる。)
[2] 貿易法における砂糖政策変更の可能性
[3] 2007年からの砂糖政策の検討
 (これは、砂糖プログラムのほとんどが2007年に失効されるためであり、新法案に向けての作業については、2006年から始まるものとみられている。)
また、中米5カ国およびドミニカ共和国と自由貿易協定が2005年に締結、さらに、アンデス諸国(コロンビア、エクアドル、ペルー)、パナマ、タイ、南アフリカ同盟(スワジランドと南アフリカの2カ国は主要な砂糖輸出国)と自由貿易協定合意の予定がある。特にパナマとアンデス諸国との合意は2005年に行われる可能性がある。

(2)EU
 EU砂糖制度は40年間変化がなかった。しかしながらEBA協定に基づくLDC諸国からの特恵輸入の増加により、需給バランスを調整するため、EUは生産割当、価格、域外輸出量および輸出補助金の削減などの改革を行い、砂糖産業の体質強化を図ることとした。
 そこで以下のEU砂糖制度の改革を行うことを提案する。
[1]  EU域内支持価格である介入価格を3分の1削減するとともに、介入価格を廃止し、代わりに参考価格を設定する。さらに、支持価格を3分の1引き下げる。価格引下げ期間については3年にわたり、2段階で実施される。
[2]  価格引下げに伴うビート生産農家の収入減の部分的補償措置として、デカップルされた直接支払制度の導入を行う。これにより、推定所得減少分の60%が補償されることとなる。
[3]  市場価格が参考価格を下回った際に、EU委員会が一般競争入札を行うことにより、市場から在庫を隔離する民間在庫制度の導入を行う。
[4]  EU域内における生産余剰構造を改革するため、05/06年度から生産割当を130万トン削減し、その後3段階を経て50万トンずつ削減する。合計で280万トン削減することとする。
 そのほかの改革案として、EU加盟国間での生産割当の譲渡が認められることとなることや異性化糖の生産割当を60% 増やすことが提案されている。
 EUとしては、ACP砂糖協定(コトヌおよびEPA)とインド砂糖協定を遵守する考えである。EUはACPおよびLDC諸国から砂糖を輸入し続けることになるため、最大供給上限数量(MSN)はもはや意味がなくなるものと考えている。さらに、西バルカン諸国からの輸入量を維持するために適切な関税率が設定されることになる。
 ブラジルやタイのような競争力のある砂糖輸出国が、EUの砂糖輸出量が削減された分を獲得することができると考えられている。特に、ブラジルは低コスト生産国であることから、ブラジル産糖が世界市場に出回るものとみられている。
 EU砂糖政策の改革により、消費者および消費産業は砂糖価格が引き下げられることから恩恵を受けることが考えられる。

(3)ACPおよびLDC
 LDC(後発開発途上国)は世界に49カ国あり、そのうち34カ国はアフリカ大陸にあり、そのうち砂糖生産国は27カ国である。さらにそのうちの11カ国(アフリカ9カ国、アジア2カ国)は定期的に砂糖を生産しており、今後砂糖産業が成長していくものと期待されている。
 スーダンでは合計7〜8千人が砂糖産業で雇用されており、重要な産業として位置づけられている。また、スーダンでは供給過剰気味であることから、将来は世界市場において有望な砂糖生産国になる可能性もあるとみられている。
 このほかにエチオピア、ザンビア、モザンビークなどの国で砂糖が生産されており、製糖工場の稼働率は約90%となっている。生産量および稼働率をさらに増加させるためには、砂糖産業への投資が必要不可欠と考えられている。
 LDCの生産量は年々右肩上がりとなっている。特にモザンビークではこの3年間で目覚しい発展を遂げており、タンザニアでも安定した生産を行っている。これは、EBA協定下のEUへの輸出メリットの恩恵を受けているためと考えられている。
 2010年に向けてLDCに求められているのは、生産能力の拡大はもとより、生産圃場の拡大も必要となる。
 スーダン、エチオピアにおいて砂糖生産量がさらに増加し、生産余剰分が生じる可能性がある。ただし、これは生産能力の増強が前提となる。また、エチオピアでは人口の増加、景気の上向きにより1人当たりの年間砂糖消費量は現在の4.2/kgから2%ずつ増加していくのではないかと予想されている。エチオピア国内では80%が直接消費向け、20%がユーザー向けとなっているが、今後はユーザー向けの使用量が増加すると考えられている。
 また、消費量の増加が予想されていることや総生産能力拡大を図るために、新工場が設立される予定となっている。マライ、コンゴでは2010年までに毎年砂糖生産量が10%ずつ増加すると予想されている。
 LDCは、EU制度改革と密接な関係がある。これはLDC諸国がEU砂糖制度改革内容によって、生き残れるかそうでなくなるかの分かれ道となるためである。現在LDCからEUへは粗糖の輸出しか認められていないが、2006年までに関税率の撤廃、2009年までに完全アクセスが約束されたことから、粗糖だけではなく精製糖も輸出されることが予想される。
 さらに、2010年までにEUはLDCから300万トン輸入することが予想されている。
 砂糖産業は雇用を生み出すことから、同地域における重要な産業として位置づけられている。しかし、EUが短期間で大幅な価格削減を行うことは、LDC諸国における砂糖産業の成長に影響を及ぼすものと予想されており、EU砂糖制度改革の影響は世界最貧国のLDCにも波及するものと考えられている。

(4)タイ
 タイは粗糖の生産効率がほかの生産国に比べて悪く、世界で最低レベルの国のうちの一つである。しかし、2010年までには、生産量は770万トン(うち国内消費向けには240万トン)、輸出は520万トンになり、いずれも現在より増加すると予想されている。
 タイでは燃料としてさとうきびからエタノールの生産を重視しているため、05/06年度からエタノール生産が開始される見込みとなっている。現在原油価格が高騰している状況下にある。
 1バレル当たり40ドルを超えたこともあり、今後はさらに堅調に推移し、60ドルを越えることが懸念されている。このため、エタノールが原油に取って代わるものと期待されている。国内18製糖工場で搾汁液および糖蜜を使って生産される予定で、現在認可申請中である。エタノール産業は、石油の輸入量を減少させるとともに雇用を創出し、さらに農家へ収入をもたらすことにつながる。
 エタノール生産量については、初年度の1,500リットルから2010年までには10億リットルへ拡大すると予想されている。さとうきび生産量は、04/05年度の5,840万トンから10/11年度には8,260万トンとなり、このうち1,430万トンがエタノール生産向けに必要となるとされている。
 またエタノール生産については、国内消費向けを確保することが第一で、輸出向けは次の課題であると言える。
 現在、タイでは1984年に制定されたケーンシュガー法(The Cane and Sugar Act B.E.2527)の改革が求められている。同法は砂糖産業の多様化を図るとともに関連産業の促進を図ろうとするものであり、燃料エタノールへの政策転換を図るためである。

(5)中国
 中国は、2010年までに主要生産国になっているだけではなく、世界市場において主要な消費国あるいは輸入国となる可能性があり、GDPの上昇にあわせて消費も増加すると予想されている。
 2010年までには、1,400万トンの砂糖を生産するとともに年間200万トンを輸入し、アジア最大の輸入国になると考えられている。また、中国ではわが国同様てん菜およびさとうきびが生産されている。2003年の生産量は、それぞれ97万トン、1,046万トンと1:10の比率となっており、今後もさらにさとうきびの生産量が増加するとみられている。
 一人当たりの消費量は8kgとなっており、今後も都市部へ人口の流入が予想されていることから、消費量の増大が期待されている。中国国内において、砂糖産業の成長はGDPの上昇にも大きく貢献している。当然のことながら、これは砂糖消費の下支えが行われていることによるものとされている。
 以前中国ではサッカリンの生産を奨励していたが、砂糖生産量の増大の影響により、サッカリンの消費量は減少している。今後中国砂糖協会は、国内では3,500トンが販売用、6,000トンが工業用と輸出向けに生産されるものの、サッカリンの制限措置により、砂糖消費量はさらに増大すると予想されている。
 また、中国ではエタノール産業の強化が図られている。WTOでは中国の砂糖市場の解放が求められており、中国のスタンスとしては、この要求を受け入れ、世界市場への貢献を果たそうとしている。

(6)ブラジル
 ブラジルは世界最大の粗糖輸出国であるとともに世界最大のエタノール生産国である。砂糖については、「クリスタル」と呼ばれる高品質粗糖の輸出が増えてきている。これは、10年前とは状況が異なり、世界市場において高品質の粗糖および白糖が求められているためである。ブラジルでは低コスト・高品質でありながら価格の上昇はみられない。また、サバンナ(2億400ヘクタール)でも農業ができるようになったため、1980年からさとうきびの生産が行われている。同地域では適度な降雨や乾燥があり、さとうきび生産に適している。ブラジル中西部ではブラジル全体の5,000万トンの生産量の20%となるさとうきびが生産されている。栽培面積中1,000ヘクタールが砂糖生産向けとなっている。
 現在、ブラジル国内に新工場が建設中であることやEU砂糖制度改革による輸出量削減の影響により、砂糖生産量の増大が予想されている。
 エタノールについては、主にアメリカ、インドなどへ燃料として4,000万リットル輸出されている。(今年度は、年間155億リットルのエタノールが生産される予定)ブラジルの自動車メーカーが、ガソリン、エタノールのいかなる割合での混合燃料にも対応可能なフレックスフューエルカーを販売したため、消費者としては、ガソリンとエタノール価格の変動に応じて燃料を変更できる利点がある。ブラジル国内では既に25万台生産されており、今後は30万台市場を目指している。
 今後の成長要因としては、コスト削減が挙げられ、ブラジル国内における輸送体制の整備が考えられる。現在はトラックによる輸送が主に行われているが、鉄道網が整備され、貨車による輸送が行われればコストはさらに削減できるものと考えられている。さらに、将来は自動車にだけではなく航空機の燃料としても使われることが予想されており、今後さらなるエタノール需要の増大が期待され、世界市場におけるブラジルの将来は極めて明るいものと予想されている。

(7)その他
 カンクン以降のWTOの動きについて、最も重要な展開は2004年8月1日のWTO理事会による7月の包括的枠組の採択である。この枠組みは、前回のラウンドと比べて新しい方針である特定産品別基準による削減約束を要求している。これは国内支持、輸出論争、市場アクセスの全てに適用される。しかしながら多くの未解決問題は、2005年12月中旬香港で行われるWTO閣僚会合で交渉されることになる。  砂糖は最も保護されている農業セクターであると言われているため、WTOにおける特定産品別交渉では、AMS(国内助成措置)の削減およびAMSの上限設定を余儀なくされるとの見方があるなど前回ラウンドの時よりも影響が大きくなるものと考えられる。このため、砂糖産業関係者は、2005年のWTO交渉について注意を払う必要がある。
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