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砂糖の役割、消費に関する意見交換会の概要

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最終更新日:2010年3月6日

砂糖類ホームページ/国内情報

機構から
[2005年2月]

総括調整役  角 智就


1 開催の趣旨
 農畜産業振興機構では、砂糖、蚕糸、畜産、野菜の各分野において、その生産、流通、消費をめぐる消費者の関心事項について、消費者代表と生産流通関係者との間で双方向・同時的に情報や意見の交換を行うことにより、消費者、生産流通関係者の一層の相互理解の促進が図られることと、その結果を当機構の業務に反映させることを目的に「消費者代表との意見交換会」を開催しています。
 平成16年度における砂糖に関する消費者代表との意見交換会は、「砂糖の役割、消費」をテーマに開催しました。以下、その概要を紹介します。

2 開催の日時および場所
平成16年12月7日(火)
 午後2時から4時30分
 東京都港区麻布台2−2−1 麻布台ビル北館4階地方競馬全国協会会議室

3 出席者
本意見交換会には、次の11名の方々の出席をいただきました。

  阿南  久   日本生活協同組合連合会理事
鈴木美根子 消費科学連合会企画委員
高野ひろみ 全国消費者団体連絡会事務局
山根 香織 主婦連合会常任委員
武智 文男 社団法人糖業協会理事長
久野 修慈 精糖工業会会長
高柳 康夫 日本ビート糖業協会会長
太田 正孝 日本甘蔗糖工業会会長
国吉 政和 日本分蜜糖工業会専務理事
奥野 和夫 全日本菓子協会専務理事
橋本  仁 社団法人糖業協会理事、砂糖を科学する会副代表

 また、農林水産省生産局からは佐藤特産振興課長、中野砂糖類調整官ほか担当官が、当機構からは山本理事長、菱沼副理事長、米田総括理事、和田理事、津崎理事ほか関係役職員が出席しました。
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4 意見交換の概要
 意見交換会は、山本理事長、佐藤特産振興課長の挨拶に続いて、砂糖の効用や誤解に対する普及啓発活動に中心的に取り組まれている「砂糖を科学する会」の橋本副代表から砂糖の役割・効用や砂糖と健康の関係などについて説明していただいた上で進められました。その主な内容は次のとおりです。

(1)砂糖への誤解について
 橋本氏から「砂糖は、お米や麦と同じ糖質(炭水化物)であり、1グラム当たり4kcalで、特別に人を肥満にする要因ではない。肥満の原因は、摂取カロリーが消費カロリーを上回ることによるものであり、現在は、20年前と比べ総摂取カロリーは8%、糖質(炭水化物)は18%減少しており、脂肪摂取の増加(4%増加)や運動不足にその原因がある。糖尿病の原因は、摂取カロリー過多のほか、運動不足やストレスによって血液中のブドウ糖が体細胞内に入りにくくなることから高血糖の状態が持続することによっても引き起こされるものであり、砂糖が直接の原因ではない。」との説明がありました。
 この説明に対して消費者からは、「今では砂糖に対する誤解はほぼ解消している。」との発言がありました。

(2)砂糖の効用について
 橋本氏から「うつの状態は、脳にセロトニンが不足している状況である。セロトニンは、肉から得られるトリプトファンから得られるが、脳に入るためには砂糖が必要である。従って、うつ病の予防、治療には肉と砂糖を同時に摂ることが効果的である。脳は摂取カロリーの約20%を消費するが、そのエネルギーはブドウ糖からしか得られない。このため、砂糖は脳にとって即効性のあるエネルギーを供給する重要な食品であると言える。さらに、砂糖は、記憶力の向上やアルツハイマー病の予防治療、情緒の安定化、免疫機能の活性化、過食のコントロール、アルコール性肝障害の予防に効果があり、頭と心の安定には砂糖が必要である。」との説明がありました。
 この説明に対して消費者からは、「砂糖の良い点ばかりでなく、リスクとベネフィットを明確に提示することが必要である。」との発言がありました。

(3)砂糖の内外価格差、調整金制度の透明性の確保について
 消費者から「私たちは、国内の砂糖生産に必要な原料作物を作っている農家を支援したいと考えているが、砂糖の内外価格差の実態や調整金徴収の仕組みなど砂糖の価格調整制度について知らされていないし、とても分かりにくい。日本の農業が納得できる補助を通じて進められていくことが必要であり、そのためには、分かりやすい仕組みの下で透明性を持った形で進められたい。」との意見がありました。
 この意見に対して砂糖業界関係者からは、「砂糖の生産コストは、栽培面積規模や太陽エネルギーに大きな相違があるため、海外と比べ割高になるのはやむを得ない面がある。特に甘しゃ糖の生産コストが海外と比べて約10倍と高いのは、島ごとにさとうきびを収穫して粗糖を生産せざるを得ないことなどが挙げられる。鹿児島県や沖縄県は、台風や干ばつの常襲地帯であるため、さとうきびが基幹作物とならざるを得ない。このさとうきび生産は島全体で約4倍の経済波及効果があり、また、さとうきび生産を通じて国境を守っているという考え方もあり、助成が必要と理解していただきたい。てん菜糖についてはできるだけ内外価格差を縮小するよう努力してまいりたい。砂糖業界は、明治以降、砂糖消費税、関税、調整金と長年多額の公租公課の負担を消費者にお願いしてきたが、国民には理解されてこなかった。このため、砂糖特別税として外税で徴収するべきではないかと考えている。国は内外価格差が生じる理由や農業補助金の必要性や金額についてもっとオープンにすべきである。」との説明・発言がありました。
 また、当機構からは、「砂糖は、輸入糖(全体の3分の2で、タイとオーストラリアでほぼ半々)から調整金を徴収することによって、内外価格差を緩和して、最終的には国内の農家に国の税金(全体の約1割)と合わせ交付金を交付する仕組みを通じて、国内の砂糖生産を維持している。砂糖の小売価格についてはキログラム当たりでみると、日本は181円で、タイは31円と安いが、アメリカの103円、イギリスの134円、パリの183円と比べるとそれほど高くない。」との説明がありました。

(4)砂糖の製造方法に関連して
 消費者から「砂糖の製造過程に関連して、なぜ煮詰めていくと色がついていくのか。そのプロセスをさらに知りたい。」との質問がありました。
 この質問に対して橋本氏から「砂糖の製造法は、基本的には絞った汁からショ糖分を抽出することであり、砂糖が白いのは漂白しているのではなく、無色透明のショ糖分の結晶が乱反射するため白く見える。粗糖の分みつ工程を経て、最初に抽出されるものがグラニュー糖や上白糖などの高品質の砂糖である。その後、残った糖液を煮詰めていくと砂糖の一部がカラメルとなって付着し、三温糖など色のついた砂糖ができる。なお、三温糖の色合いを統一するためにカラメル分を加えるケースもある。」との説明がありました。

(5)砂糖の安心・安全や原産地表示に係る情報について
 消費者から「消費者が今求めている情報は、砂糖についても、安心・安全や原産地表示への取り組みである。国内の砂糖は差別化できると考えており、消費拡大には重要である。例えば、種子島のかおり糖、波照間島の黒砂糖、北海道の十勝産てんさい糖は多少高くても良く売れている。」との意見がありました。
 この意見に対して橋本氏と砂糖業界関係者から、「砂糖に関するリスクを示す文献はない。また、砂糖は結晶であるため、腐るとか微生物汚染の原因ということはありえない。てん菜糖については、生産履歴やトレーサビリティ、原産地表示への取り組みを実施している。なお、現在、原産地表示を行っている砂糖は量的には少ない状況である。」との説明がありました。

(6)消費者への情報提供の進め方などについて
 橋本氏からは「砂糖シンポジウムや砂糖地方セミナー、オピニオンリーダーの育成などの砂糖消費拡大推進事業の今後のより効果的な展開方法」、消費者からは「セミナーなどに参加した後、参加者の意識にどのような変化があったのか。」についてそれぞれ質問がありました。
 この質問に対して消費者からは、「消費者は、生産現場から食卓までの経路が複雑でよく分からない。今回配布されたパンフレットなどを通じて時間をかけて理解してもらうしかないと思う。沖縄や北海道に全員が行くのは無理でも、やはり現地の生産状況をみるのは大切である。消費者は輸入に頼らざるを得ないことも含めよく分かっていない。このことについては、消費者にも責任があるが、生産者やメーカーの方々からの正しい情報発信をお願いしたい。オピニオンリーダーをはじめ多くの正しい知識を持つ人を増やして、その方々が一般の消費者の方々を啓発して、正しい食の知識を身につけて欲しいと考えている。子どもたちには、栄養士や家庭科の先生に正しい情報提供の窓口になってもらえれば良いのでは。」との発言がありました。
 また、橋本氏と砂糖業界関係者からは、「砂糖シンポジウムでは、砂糖は漂白されているものではないこと、沖縄ではなく北海道が国内最大の生産地であること、砂糖は野菜(てん菜)からも取れることを知らない方が多い。北海道では、小学生の勉強のため工場見学に取り組んだり、副読本にてん菜糖に関する資料を組み入れていただいている。島に訪れる観光客に対してさとうきびのPRをしてこなかったため、今後は市町村やJAなどに協力を求めていきたい。」との発言がありました。

(7)その他の発言など
 消費者から「糖尿病の人は日本酒を飲まないようにとの話を聞いたがどうか。」との質問に対して、橋本氏から「お酒を多く飲むと糖尿病になる確立は高くなるが、日本酒とビールと焼酎の関係は分からない。」との説明がありました。
 消費者から「北海道と東京で同じ砂糖(グラニュー糖)でも価格が大きく異なるのはなぜなのか。」との質問に対して、砂糖業界関係者から「目玉商品として販売されたとも考えられるが、今後とも何かありましたら情報提供願いたい。」との回答がありました。
 砂糖業界関係者から「塩水港精糖株式会社では、砂糖の生産について子どもたちに見せるため、「横浜さとうふるさと館」を設けた。当初地元から反対があったが5年間で16万人の来場者があった。このほど経費の問題のため、やめたらなぜやめるのかといわれた。」との紹介に対して、消費者などから「取りやめたのは残念である。」との発言がありました。
 砂糖業界関係者から「砂糖は、地震が発生した場合などの非常事態用の食料として貴重なものであることがなかなか理解していただけない。」との発言がありました。
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