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第5回さとうきび・甘蔗糖関係検討会の開催について

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最終更新日:2010年3月6日

砂糖類ホームページ/国内情報

機構から
[2005年12月]

調査情報部

  平成17年10月27日、当機構は、鹿児島県市町村自治会館ホール(鹿児島市)において、第5回さとうきび・甘蔗糖関係検討会を開催した。
 当機構の和田総括理事と鹿児島県の山田農政部長による開会挨拶に続き、和田総括理事から、鹿児島県と沖縄県におけるさとうきびの生産目標と実績および検討課題に関する現状と課題への取り組みについて、両県作成の資料に基づき概要説明を行った後、和田総括理事の議事進行で、両県、両県の農業試験場、両県の農業協同組合中央会、学識者、製糖業者などによる検討が行われた。
 続いて、独立行政法人種苗管理センターの野村理事長から、さとうきび原原種の配布実績の報告とともに、安定生産のため防風ネットの設置を計画していることや側枝苗を増殖体系に取り入れるとともに原原種としての配布を検討していること、原原種の品質、生産力の向上、省力化およびコストの削減を図り、効率的な生産・配布体制を構築していくことなどの話があった。
 その後、農林水産省生産局の松島特産振興課長から、平成18年産畑作物価格関連対策、さとうきび増産プロジェクト会議、砂糖の制度改正に係る検討事項、WTO農業交渉の状況について、資料に沿って説明があり、それらに関して質疑応答が行われた。
 以下においてその概要を紹介する。 


1 基本計画の達成に向けた取り組みについて

(1) さとうきびの生産目標と実績
 17年度は、鹿児島、沖縄両県とも、さとうきびの収穫面積、生産量および10a当たり収量は、目標値を下回ると見込んでおり、これらの原因である台風、干ばつなどの状況についての分析が両県などから報告された。また、10a当たり生産費は、収穫作業の機械化により下がってきていることが報告された。

(2) 課題への具体的取り組み
(1) 担い手農家の育成
ア 農業生産法人・農作業受託組織の育成
(機構)鹿児島県の地域担い手総合支援協議会について、具体的な活動の内容や現地での評価は。
(鹿児島県)認定農業者の確保・育成、あるいは、農業経営の法人化、集落営農の組織化などを地域の実情に沿ったかたちで進めていく。活動を始めたばかりのところで、成果についてはこれから出てくるだろう。
(機構)生産者の組織化は、単収アップ・品質向上にどう結びつくのか。
(鹿児島県)ハーベスタを中心とした機械化が県内平均で6割まで進んできた。しかし、残念ながら、ハーベスタによる収穫後の株出管理が遅れ、その結果、株出の株がなかなか立たず、茎数が不足して、収量の低下に結びついているという実態がある。組織化を図ることによって、収穫後すぐの株出管理という機械化体系がうまく機能すれば、ハーベスタによる踏圧も株出管理機で耕耘でき、株出の株の一斉萌芽となり、最終的には、単収を上げる方向に繋がっていく。ハーベスタと株出管理機をセットとして、組織がうまく動き、収穫面積の確保や単収アップに繋がっていくことを期待している。
(製糖関係者)一定規模の人数で、役割分担をした組織であれば、ハーベスタの飛散ロスを回収することも可能である。
(鹿児島県)確かに、ハーベスタによって原料茎まで飛ばしてしまっている場合でも、フォローする人がいれば、ある程度回収することができ、結果的にロスを2、3%内で収めることができる。フォローする人がいないと、全部ロスになり、結果的に1割以上のロスになる。
(機構)受託組織あるいは生産法人などで、鹿児島県の場合は組織化がだいぶ進んできているということだが、面的なカバー率は。
(鹿児島県)ハーベスタだけでもう6割になっており、その大半が組織で担っているので、面積は4千から5千ヘクタールの間で、カバー率は半分ぐらいであると思う。
(機構)沖縄県のさとうきび生産法人の平均単収が3.6tというのは、だいぶ低いのではないか。
(沖縄県)いちばん大きい要因は去年の台風であるが、それ以外の要因としては、一部の農家では、単収がいい土地は自分でやり、低い土地は生産法人に任せるというような状況がある。生産法人の経営面積は、自作地より借地のウエイトが高いので、そうなると、生産法人の単収は若干低くなる。今後、単収を上げるために、収穫後の管理作業についてしっかりやる必要があるが、ただ、その場合、収穫作業と管理作業がどうしても競合するので、生産法人は収穫作業に専念し、別の機械銀行が管理作業を行うなど作業分担をすることによって株出管理がしっかりできれば、少し単収が上がってくると思う。

イ 遊休地の農地利用の推進
(機構)耕作放棄地については、鹿児島県全体が増加傾向にある中、奄美地域が若干減少しているが、いちばん効果のあった対策は。
(鹿児島)7年の割合が16.5%で、これはあまりに多すぎる、何とかしなければという背景があり、さとうきび作付と結びつけて、耕作放棄地を少しでも減らしていくというかたちで動いた結果である。やはり、解消にいちばん手っ取り早く結びつけられる品目は、園芸作物より労働時間が短くて済む土地利用型のさとうきびとなる。
(沖縄県)沖縄県は、さとうきび・糖業再活性化事業によって、全体で704haの遊休地の解消を行ったので、地域によってはかなり改善をしている。

(2) 地域の実情に即した機械化体系の確立
(機構)鹿児島県の10a当たり労働時間を12年と16年で比較すると、収穫は37.4と24.5で、13時間の減だが、全労働時間は68.5と59.2で、9時間しか減っていない。収穫作業時間の減少分をそれ以外の作業が食っているような感じだが、どう見ればいいのか。
(鹿児島県)その点は詳しく分析していないが、いずれにせよ、今後、株揃え、根切り排土、施肥、除草剤散布の一連の作業を一行程でできる株出管理機の導入が進めば、全労働時間はかなり減ってくると思われる。
(機構)株出管理機の普及状況はどう見込まれているか。
(鹿児島県)株出管理機の導入は15年度からなので、普及はこれからである。今後の労働時間の減少は、この普及にかかっている。
(機構)株出管理機は、品種の普及と同様、農家の認知度を高めることが大切だと思う。
(製糖関係者)株出管理機は、非常にすばらしい機械だが、少し勾配があるような圃場では使いづらい。株揃機は、株揃えだけを行うが、1時間に株出管理機の3〜4倍稼働できる。茎数確保には、とにかく収穫直後の株揃え作業がいちばん大事だということで、株出管理機ができる圃場は株出管理機、そうでないところは株揃機でというように、両方でやっている。
(機構)沖縄県も、鹿児島県同様、収穫の機械化がだいぶ進んできて、機械収穫率は37.2%まで増加してきている。収穫以外の機械化、あるいは、労働時間の減少の見通しは。
(沖縄県)労働時間は、植付、定植の部分が、全茎の植付機の導入や地域によっては側枝苗の使用によって、減少してきている。
(機構)株出管理機の現在の普及状況はどれくらいか。
(沖縄県)補助事業で30台ぐらい入れた。いま、株出管理の効果をPRしているところだが、今後、株出管理をしっかりやっていくとなると、もっと台数が必要になってくる。

(3) 収穫面積の増大
(機構)鹿児島県においては、15年度まで収穫面積が伸びていたが、それは、春植・株出の結果か。16年度に収穫面積がガクンと落ちているが、これは、春植・株出した農地で、台風、干ばつなどの被害が顕著に現れたせいなのか。
(鹿児島県)春植・株出体系の推進をうたっているが、いまの段階では必ずしもそのように意識の統一がなされていない。現実的には、島や地域ごとにかなり取り組みが違う。農家によっては、単収がいいから手にするお金が大きいという理由で夏植をする方も結構いる。土地の利用を考えると、2年1作で7トンか8トン穫るのと、1年1作で6トンを確実に穫るのと、どちらが本当にいいのかという経営的な試算を踏まえた上で、今後地域としてどのようにしていくのか、具体的に検討していく必要があると思う。
(機構)災害との関係はいかがか。
(鹿児島県)従来から、夏植は、台風災害をうまくクリアできるということでやっていたが、最近のように台風の発生が早い時期から遅い時期まであるという状況になると、どこで植えてもどこかで引っかかってくる。また、植付時期に長雨にかかったり、あるいは、干ばつに引っかかったりすると、どうしても適期がずれてしまい、実質、秋植になるところもある。秋植でも9月までに植えなければならないのに、10月に入ってもまだ植えざるを得ない場合もある。本当に、どういうかたちが安定しているのか、もっと具体的に検討しないといけない。
(機構)農家にいちばん理解していただけるのは、春植・株出と夏植とでどれくらい収益の差があるかということだろう。それは単年というよりも、例えば、3年なら3年、あるいは、5年なら5年のタームで見たときに、手取りでこれだけ収益に差が出るなど、そういう訴え方がいちばんアピールするのではないか。
(製糖関係者)沖永良部では、製糖期は3月までである。それが終わってから春植をすると、どうしても4月、あるいは連休前までかかる。昨年の例は、3月中旬以降、4月いっぱいで植えたものが、5月、6月と伸びてきたら、6月10日頃の台風により塩害を受けた。葉が全部枯れて、やっと新しい葉が出てきたと思ったら、6月の下旬から大干ばつが来たということで、春植・株出がほとんど伸びない。そして、今年も同じような干ばつということで、そうなると、夏植なら6月、7月頃にかなり伸びているので、所得については、春植・株出よりは、夏植の方が多い。これがここ3年くらいの実績である。雨があればこれは変わってくる。同じ鹿児島県でも地域によって相当差があるのが実態である。
(製糖関係者)夏植の多い大島本島、株出の多い与論島と、この二つを見ているが、与論島は夏植をしても株は完全に立つ。ところが、大島本島は夏植でもなかなか株は立たない。幾らかあっても、いい株出の圃場ではない。無理して株を出しているということで、やはり生産性が非常に低い。この原因は、ハリガネムシ。春植をして株を立てたいが、春は収穫時期と重なったり、雨が多くてなかなか圃場の準備ができなかったり、いろいろな問題があって非常に苦労している。ハリガネムシがもし少なければ、夏植でも株は立つ。そうすれば、必然的に株出の面積は多くなる。夏植は少なくて済むということになっていく。

(3) 台風・干ばつ被害軽減のための取り組みの現状と今後の方策
(機構)鹿児島県南西諸島、沖縄県は、台風が来て被害が起きやすいが、それに耐え得る農作物というのはさとうきびしかないということで、地域の重要な基幹作物として維持されている。ところが、単収が下がると、台風が来たから駄目だったということになるが、若干矛盾を感じるところがある。台風対策というものを何かこの際考えられないものか。
(沖縄県糖業振興協会)さとうきび糖業の歴史は非常に長いが、栽培技術が機械化されて、基本的な部分がおろそかにされている面があり、そのため、台風に弱くなっているのではないかと思う。株出管理機も含めて機械の性能は非常によくなってきているので、それを農家がどう生かしていくか。植付時期、肥培管理の仕方、台風対策としての防風林の整備と併せて、その部分に取り組まなければいけない。
(機構)鹿児島県では、台風対策として、どのようなことを実施しているのか。
(鹿児島県)いかに台風に強いさとうきびといえども、防風対策として、防風林や防風帯を設置しないと、毎年、台風に伴う収量の変動が非常に大きく出てくるだろう。機会あるごとに、圃場整備に併せて、防風対策というのも確実にやっていきたい。

(4) その他
(機構)農家においては、価格が保証されている、あるいは、保護政策を講じられているということについて、どの程度認識されているのか。おそらく、そういうものに対する認識が、これから、農家のさとうきび生産に対する意欲に繋がってくるのではないかと思う。
(沖縄県中央会)農家において、保護されているという感覚は、多少弱いのかなと思う。あくまでも経済活動によりさとうきびを買ってもらっているという感覚が強い。沖縄県は非常に多くの離島を抱えているが、その離島で、例えば、園芸作物を作っていく状況を考えると、輸送コストが大きなネックになってくる。そういう点から考えると、やはり、さとうきびが基幹作物だと言える。例えば、南大東島でも20,470円という価格で買ってもらえる。19年産からの新制度における政策支援については、国から守られているのだという部分をもっと強調していく必要があると思う。現段階での最低生産者価格の受けとめ方とは、若干違ってくるのかなという気がする。
(機構)機構は、納税者に対して、法制度について理解の促進を図るということは一生懸命やってきたが、生産者に対しては、増収のための技術のアピールなどで、法制度や政策面については少し欠けていたかも知れない。日頃から、こういう体制の中で、国際情勢も非常に厳しい中で、肝心の生産者があまり制度についての理解がないということになると、生き残っていくのは非常に厳しくなるのではないかと思う。ところで、来年度からは、増産ということが大きなテーマになる。機構は、単収アップ・品質向上のため、機構のビデオやパンフレットなどの啓発資料を作成し、配布してきたところだが、どのような活用状況になっているかチェックをし、来年ご報告いただきたい。
(種苗管理センター)春先、株出の萌芽の時期になると畑が非常に寂しい。というのは、管理の悪い畑では4割ぐらいしか萌芽しない。そういう畑は、補植作業もしない。するとしても年配のご婦人が細々とするような状況で、単収が上がるわけがない。そして、そういう畑を掘ってみると、ほとんど根が張っていない。残っているさとうきびが肥培管理で大きくなっていくが、根の発達が悪いので、台風、干ばつというときに非常にダメージが大きい。実は、さとうきびの基本的な栽培技術は、かつてはどこの農家も全部持っていた。ところが最近、農家は、基本的な技術を知っているけれども、どんどん手を抜いている。それが、いわゆる不健康なさとうきびをつくっているのではないか、不健康な土にしているのではないかと思う。農家も、いまさら元には戻れないので、管理作業は、どこかが分担しなければならない。そのためには、受託機関を整備して、それを農家が利用するようなかたちにならなければならない。しかし、委託料はかかるので、農家は、経営面からするとなかなか頼まないということも出てくる。
 いろいろな資料を配って見てもらうのも非常にいいことだが、やはり、農家の方たちと顔を合わせて、一緒に膝を突き合わせて、啓蒙活動をしなければならないと思う。そのための機会と活動費をきちんと手当てしなければならない。



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2 砂糖・甘味資源作物政策をめぐる情勢について

(1) 新制度について
(鹿児島県中央会)19年産以降は、農家が工場から受け取るさとうきび代が4分の1、政策支援が4分の3となるが、その政策支援がいつ農家に支払われるかということは極めて重要である。いまは、農家が刈り取って収穫し、工場に搬入すれば、数日後に収入となる。しかし、これが、すべての収穫、出荷などが終わった後で、農畜産業振興機構に対し実績などに基づき交付申請をするということであれば、支払いまでに数カ月の時間が経過することになる。南西諸島においては、農家収入に占めるさとうきび収入の割合は大きく、営農面でも生活面でもいろいろな支障が出てくるので、早期の支払いについてご配慮いただきたい。
(特産振興課長)政策支援を早期に農家に支払うべきという要望があることは認識している。確かに、物の売買であれば、同時に支払われるのが当然である。しかし、政策支援となると、頻度が高まれば高まるほど、それに対するコストがかかる。具体的な仕組みはこれから詰めるが、これまでの支払いのタイミングなども考慮しながら、いかに効率的に支払うか今後検討したい。
(鹿児島県中央会)昨日、農水省から、品目横断のてん菜について、支援水準として10a当たり42,800円という試算値が示されたが、さとうきびの支援水準の試算値は、どのくらいになるのか。
(特産振興課長)昨日示したてん菜の試算値は、考え方を示したものなので、来年、単収や生産費の数値が変わると変動するものである。さとうきびについては、現在計算中である。
 生産条件格差是正水準がいくらになるかは、農家にとって大変大きな問題であるということは十分認識している。試算は示したいが、まず、どういう考え方で生産コストを算定するのかということを決めていくことが重要である。
(沖縄県中央会)農家手取りは絶対に確保するというものがなければ、農家に対して説明できない。手取りを確保するので、頑張ってくださいとは言えるが、手取りが下がりますが、頑張ってくださいとは言えない。努力した農家はきちんと手取りが確保できるような施策に持っていっていただきたい。
(特産振興課長)新制度を導入するに当たっては、農家の末端まで理解を深めていただくためにも、できるだけ早く全体像を示せるよう努力したい。手取りについては、制度の仕組上、生産コストを賄える水準はきちんと支援する。その水準については、来年夏では遅いという指摘もあるが、試算値というかたちではもっと早く示したい。最終的な生産コストは、統計データが出ないと決まらないが、その考え方は、もっと早い時期に示すこととしたい。
(学識者)生産コストを賄える水準を支援するとのことだが、ある資料を見ると、生産コストは1トン当たり2万5千円以上となっており、いまの最低生産者価格では生産コストを補っていない。
(特産振興課長)その生産コストとは、零細規模の農家も含めた全体の生産コストであるのではないか。これからは、安定的な生産を担っていく農家を想定し、そのコストを賄うような支援を行っていく必要がある。
(製糖関係者)担い手の育成とは、大規模農家の育成を図り、1人当たりの生産性を上げ、国際競争力をつけるということだと思うが、では、これが、さとうきびの増産に本当にすぐ結びつくのだろうか。日本の農業全体に言えることと思うが、かなりの部分、兼業農家に支えられている。農業所得は少ないが、給与所得があって、1戸当たりの可処分所得は結構多い。そういう部分に農業自体も支えられている面がかなりあるのではないか。一方、大規模な北海道の農家は、農業の専業者として非常に豊かな状態になっているだろうか。必ずしもそうとは言い切れないだろう。また、アメリカでも、200ha規模の農家は、確かに生産性はいいが、経営的には苦しく、離農も珍しくない。こういう実態を考えると、大規模化が、果たして目の前のさとうきびの増産に繋がるのかどうか。むしろ、大規模化によって、いままで中小零細規模の農家に支えられてきた部分がなくなるだけに終わるのではないか。確かに、生産性が上がって、安いさとうきびは実現するかも知れない。糖業にとって、将来的に、安いさとうきびが供給されるというのは極めて大事だが、いまの経営状態からすると、目の前のさとうきびの量というのが大変大きなファクターである。安いさとうきびと原料の確保というバランスを踏まえた上で、新制度の詳細を詰めていっていただきたい。
(特産振興課長)担い手とは、無味乾燥に言えば、効率的かつ安定的な経営を行っていく者と言える。効率的というのは、生産性が高いということで、安定的というのは、所得が一定水準あって、5年、10年、20年と生産を担っていくことである。現在、確かに、さとうきびの生産は、零細規模の方々も相当いて、そういった方々に支えられている部分もあると思うが、そういった方々が果たして、5年、10年、20年と生産を担っていけるのだろうか。いまの生産者の方々の年齢構成を見ても、このまま放置しておけば、だんだんと高齢者の方々は離農するし、受け皿がなければ、耕作放棄地になってしまう。それで本当にいいのか。
 確かに、都市部の農業においては、農業経営所得が5%程度で、そのほかの所得の方が多いという方もたくさんいる。では、所得のうちの5%しか農業から得ていない人たちに対して国税を投入して支援するということが国民から理解を得られるのか。そうではなく、5%の所得を得ている人たちの農地を、将来的に農業を担っていく人たちに集めて、そこに支援するということであれば、理解を得られるかも知れない。
 しかし、さとうきび生産において、零細規模の方々がたくさんいて、その方々が相当量を供給しているということは現実であり、そういった方々をいきなり政策支援の対象から全て外すということは考えていない。また、さとうきびは、てん菜の品目横断的政策とは構造が違うので、直ちに一定規模以上の農家しか対象としないということではない。
 いま、さとうきび生産を将来的にどういう方々が担っていくのかを明確に意識した上で、そういう方々を育成するために、どういう政策支援のあり方がいいのかを考えていくときなのではないか。そして、将来のさとうきび生産のあるべき姿を目指す方法として、新制度を位置付けていただきたい。

(2) 砂糖生産振興資金について
(鹿児島県中央会)調整金収支の累積赤字について、これを何とかしなければならないということは分かるし、砂糖振興資金をもって埋めていくというのもひとつの方法とも考えるが、この資金は大事に残して欲しい。ぜひ、ご配慮いただきたい。
(特産振興課長)生産振興資金は非常に大切な資金であり、重要性は十分認識している。新しいさとうきび増産プロジェクト事業の財源でもあり、守りたい気持ちは大きい。他方、糖価調整制度というのは、基本的には、おおむね収支均衡するという仕組みであり、それが大きな借金を抱えたまま新制度に移行するということになると、新制度において支出の削減等の議論を呼ぶ可能性もあり、そうしたデメリットも考慮する必要がある。


説明をする松島特産振興課長

(3) WTO農業交渉について
(鹿児島県中央会)新制度に移行するというところで、WTO農業交渉において、上限関税が設定され、砂糖がセンシティブ品目に入らなかった場合、調整金収入が減額されることになるが、そのときに必要な財源の確保はできるのか。交渉の結果によっては、新たなさとうきび品目別政策の枠組みなどの見直しも必要になってくる場面もあるのではないか。
(特産振興課長)上限関税の設定等により、いま支出している額の財源が確保できなくなるという可能性はある。ただ、新たなさとうきびの品目別政策の仕組みの基本は、農家に対して、生産コストを保証するということなので、そこは守れるようにしていきたい。また、それが守れるよう交渉に当たっていきたい。

(4) 農務部門のJA、市町村等への移管等について
(沖縄県糖業振興協会)10年、20年の経験を通じて、農家をよく知り、気象災害をよく知っている本当のさとうきびの栽培技術のプロは、製糖工場の農務部門にいる。さとうきび栽培の基本技術が農家にまだまだ浸透していない状況で、さとうきびの増産や品質向上を図るためには、農務部門は、継続して製糖工場で確保すべきだ。農務部門の移管は、操業度の確保や歩留まりの向上と相反することになるのではないかと危惧する。
(特産振興課長)農務については、技術指導なり営農指導ということがさとうきびの増産を図っていく上で大変重要な業務であることは認識している。しかし、それをどこが担うかということが問題。今後、糖業が一層の合理化を求められる中で、基本的に、国が支援すべき対象は、糖業の甘しゃ糖の製造コストである。製造以外の付加的なサービスについては極力合理化を図っていただきたい。本州の営農指導は、JAの職員や県の農業改良普及員が行っている。もちろん、現在糖業の農務部門の専門家の知見を活用することは大事である。
(沖縄県中央会)農務部門の移管については反対である。単に、農務部門を製糖工場から抜いてJAにつけるとなると、工場の経費は下がるが、JAの経費がかさむことになる。こういう経費の付替えはしないということではなかったか。いま、工場の農務部門は、工場にとっては生命線であるので、ぜひとも工場の農務部門を残しつつ、そことJAがどう一致して増産対策に向かえるか、それが課題である。これまで、必ずしもJAと工場が友好的にものごとを進めてきたということではないが、新制度の下では、どちらも生きていかないといけないので、工場のこの部分をJAが取りなさいという単なる経費の付替えではなく、お互いどう努力できるのかということについて、県も含め、必要であれば、農林水産省も交えて協議をしていきたい。行政、工場、JAの三者一体となった組織づくりを目指しながら、農務という部分を考えていく必要がある。
(特産振興課長)単純な経費の付替えではなく、それをどこが負担するのがいいのかという観点、そして、国が糖業に対する支援をしていく上で、どこまでを対象として支援するのがいいのかという観点から、農務部門の必要性や工場の効率化を考える必要があるのではないか。また、同じJAでも、鹿児島はさとうきび以外の農産物も抱えているが、さとうきび以外のJAの営農指導に対して国は支援を行っていないように、公平性ということも念頭に置いて、糖業、JA、市町村等とで、ぜひ、ご議論いただきたい。
(製糖関係者)農務について、各島の地元では、自分たちのためだという意識が非常に少なく、会社のためだというような意識がある。やはり、JAや地元行政が、その島のさとうきびをどうするのか考えていただきたい。工場が成り立っていく操業率を維持できるさとうきびの生産量を確保するために、JAや地元行政がバックアップするかたちにならないと将来はないと思う。
(学識者)いま、さとうきび栽培技術はある程度確立されているが、それが末端にまで浸透していないということが大きな問題である。浸透させるためには、やはり営農部門を強化する必要がある。しかし、いま、工場が困っており、営農指導をする人を自分の会社で雇用できないということであれば、沖縄県糖業振興協会のアドバイザーのように、試験場を定年退官したノウハウを持った方をJAが雇用して、その方に、栽培技術について農家と膝を交えて話し合ってもらうことも可能だろう。JAの普及員との関係などデリケートな問題はあるかと思うが、可能な範囲で、そういうアドバイザーも少し増やしていくなどして、末端に栽培技術を浸透させていくという方向もあるのではないか。その結果、生産力が上がってくれば、JA、工場の両方ともプラスになる。
(沖縄県中央会)JAの営農体制が弱いという認識は持ちつつあるので、増産プロジェクトに対応して、営農体制の強化をしていかなければならないと考えている。
(製糖関係者)営農指導という業務は、お客さんである農家と接することになるので、営業的なセンスのある人でなければいけないと思う。島には、非常に農家から信頼され、喜んでもらえた普及センターの方がいる。しかし、会社でその方を雇用するという財政的な余裕がないので、そういう方は、できれば、増産プロジェクトの中の営農指導という部分で活用することも必要かと思う。
(学識者)営農指導に適した人を、1工場で雇用するというのは非常に大変だと思うので、工場でも幾らか負担しつつ行政も援助するとか、あるいは、例えば糖業振興協会が雇うとか、あるいは、それを全県単位でやるとか、そういう方向を考えていく必要があるのではないか。そうすることによって、単収のアップにかなり結びついてくる部分があると思う。
(特産振興課長)さとうきび増産プロジェクトということをあえて提唱したのは、個々の施策はみんなこれまでもやってきたことだが、これらが本当に地域として共通の目標を持ってやってきたのかというと、必ずしもそうではないのではないか、運動論というと語弊があるかも知れないが、いろいろな分野の方の意識を変えていただく必要があるのではないか、と考えたからである。そういう面で、地域でさとうきびの栽培技術について、知識、知見、経験のある方々も参画していただき、プロジェクトに貢献していただくということは大変有意義なことであると思う。
(鹿児島県糖業振興協会)糖振協の運営は大変厳しくなっているものの、沖縄県のアドバイザー制度のような制度は、資金があればやりたいとつくづく考えている。プロジェクトの中で何か方法があるのであれば、ぜひ、検討すべき事項ではないかと思う。

(5) 干ばつなどの被害について
(製糖関係者)現在、鹿児島県では企業間格差が相当あるのが実態であり、また、弱い企業がある島が、いま干ばつなどの被害を受けている。今後、干ばつなどの大きな被害を受けて、もし、地元を含めて努力しても、糖業として最終的にやっていけなくなった場合について、どう考えているか。
(特産振興課長)島ごとに環境が違うので、同じように努力しても収益構造が違ってくるということはある。現在でも国内産糖交付金の単価については、島ごとに一定の差を設けており、こういった仕組みは、糖業に対する政策支援の中で続けていく必要があるのではないかと考えている。制度上は、生産コストを超えて支援することは難しいので、産糖量の変動が一定程度あるのはさとうきびの宿命であるとして、企業経営の中でそういう変動に対応するため一定の蓄積をするとか、災害リスクを回避できるような内部留保の充実などをすることが大事ではないかと思う。
会場の模様
討議の模様

(6) さとうきび増産プロジェクトについて
(製糖関係者)現在、島ごとの中長期的な生産見通しを立てているが、増産プロジェクトは、これにプラスアルファするものなのか、あるいは、増産プロジェクトを踏まえて、生産見通しを組み替えるべきなのか。
(特産振興課長)いまある島ごとの計画については、本当に実現の可能性があるものなのか、増産を目指す上で本当に必要な手法なのかということを十分検証し、島によっては、抜本的な見直しをすることになるかも知れない。新たに、さとうきび増産プロジェクトという新しい枠組みの中で、もう一度、島ごとの中長期的な増産目標を見直すことが大事である。
(沖縄県糖業振興協会)増産プロジェクトのイメージに、技術対策として「ハーベスタ改良」とある。ハーベスタは、鹿児島県と沖縄県だけなので、販売台数が非常に少なく、コスト高になっている。オーストラリアは、東南アジアや中南米に小型ハーベスタを輸出している。日本のハーベスタは、農家に使わせながら、ようやく機能的には一人前になってきた。今後は、東南アジアへの輸出も見据えて、大きな企業を起こすなどして、ハーベスタのコストを下げていくことが、担い手が育ついちばんの条件なのではないかと思う。増産プロジェクトの中で、ハーベスタのコストの低減も検討いただきたい。
(特産振興課長)ハーベスタは、日本のさとうきび生産に合うように、3社が改良を重ねて、やっといいものができた。しかし、非常に高価であるということは、問題点として十分認識している。しかし、輸出については、結局、オーストラリアのメーカーとの競争になるだけなので、むしろ、ハーベスタのコストを下げるという点では、いま、各営農集団や公社が持っているハーベスタの利用率を上げることがいちばん近道だろう。
(沖縄県糖業振興協会)経営基盤の強化として「農地利用集積」とある。農地の集積がなかなか進まないことが問題で、増産プロジェクトの中で、この部分について力強い支援があれば、いますぐにでも独立しそうな人はかなりいる。
(特産振興課長)一足飛びに農地の所有権移転や利用権設定ということではなく、当面は、作業受委託で営農集団の稼働率を上げていけば、受託料も下がるだろうし、将来的な担い手の育成にも繋がっていく。また、機械のコストの削減ということも併せて実現できるのではないかと思う。本州では、転作などを契機として作業受託が進み、それを通じて集落営農というのも相当実現してきている。種子島には、農業公社等の先進的な事例もある。そういった事例が各地に広がって、全体として底上げできればいいと思う。




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3 まとめ

  この検討会も第5回を迎えた。本検討会では、目標に対し、具体的な数値で達成状況を確認し、その背景を検証することを目的としているが、今年も、台風の度重なる襲来があったことから、収量や糖度の向上という点で見れば十分な効果が上がっていないのが実情である。特に単収については、依然として低水準である。また、これまで取り組んできた中で収穫面にかかる労働時間の減少については、確実に数字として出てきているが、単収の低下もあり、1トン当たりの生産費で見ると、生産コストの低減がなかなか進んでいないという実態があった。
 昨年は、土地利用についての専門家である農業委員会などの活用や農協、普及センターなどの相談窓口の一本化、いわゆるワンストップ化など現場の指導体制についての意見が多く出されたが、鹿児島県では、17年度から地域担い手総合支援協議会が設置されており、本検討会での論議がひとつの成果を生み出したと言えるであろう。
 本年3月に新たな食料・農業・農村基本計画が閣議決定され、さとうきびについても、労働時間・生産コストの低減等に積極的に取り組み、国内生産の安定的な拡大を図っていくことが求められている。
 しかしながら、現在のところ、単収は低迷かつ不安定、収穫面積も減少している状況にある。
 従って、今後とも、こうした検討会等の場を通じてさとうきび生産に係る問題点を明らかにしつつ、担い手の生産規模の拡大、技術対策の徹底等に対する関係者の取り組みを一層促進していくことが重要と思われた。
 また、19年度からは、さとうきびの新たな品目別政策が導入される予定であるが、現状においても、砂糖制度に関する生産者の理解は必ずしも十分とは言えないことから、新制度の導入に向けて、砂糖およびさとうきびをめぐる事情と制度改正の方向について、生産者の理解を深め、納税者の納得を得られるかたちでどのようにさとうきびの生産振興を図っていくか、生産者自らにも考えていただくことが今後の課題であると考えられた。


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4 参集範囲

  農林水産省生産局、農林水産省農林水産技術会議事務局、農林水産省九州農政局、内閣府沖縄総合事務局農林水産部、鹿児島県農政部、沖縄県農林水産部、鹿児島県農業試験場、沖縄県農業試験場、社団法人鹿児島県糖業振興協会、社団法人沖縄県糖業振興協会、社団法人鹿児島県農業・農村振興協会、鹿児島県農業協同組合中央会、沖縄県農業協同組合中央会、国立大学法人鹿児島大学、国立大学法人琉球大学、独立行政法人種苗管理センター、日本甘蔗糖工業会、日本分蜜糖工業会、独立行政法人農業・生物系特定産業技術研究機構九州沖縄農業研究センター、独立行政法人農畜産業振興機構


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5 第5回さとうきび研究会

  本検討会に先立ち、10月26日、独立行政法人農業・生物系特定産業技術研究機構九州沖縄農業研究センターにより開催された第5回さとうきび研究会においては、次の議事のとおり、報告、講演などがあり、また、活発な討論が行われた。
(1) さとうきび研究を巡る諸状況
 杉本明(九州沖縄農業研究センター作物機能開発部長)
(2) 昨年度検討課題のその後の進捗状況報告:各機関
(3) 南西諸島における持続的なさとうきび産業展開のための生産技術開発の方向
 ─技術開発の方向を再点検する─

ア 基調講演:サトウキビの生理・生態的特性と南西諸島の自然環境条件
 ─植物学的にみた技術開発研究の方向─
 野瀬昭博(佐賀大学農学部教授)

イ 各機関からの活動報告:品種育成、栽培技術開発の方向
(1) サトウキビの安定多収生産および収穫期間拡張に向けた技術開発の現状─2005年版
 松岡 誠(九州沖縄農業研究センターさとうきび育種研究室長)
(2) 鹿児島県におけるさとうきび生産の現状、問題解決のための技術開発の方向
 白澤繁清(鹿児島県農業試験場徳之島支場作物研究室長)
(3) 沖縄県農試における品種育成の方向
 宮城克浩(沖縄県農業試験場さとうきび育種研究室長)
(4) 品種育成、栽培技術の方向─製糖工場の現場から─
 日高 昇(日本甘蔗糖工業会農務委員、新光糖業株式会社農務部長)

ウ 各機関からの活動報告:利用加工の方向
(5) サトウキビの加工利用研究の現状と今後の課題
 吉元 誠(九州沖縄農業研究センター畑作研究部上席研究官)
(6) さとうきびバイオマス活用に関する実証研究
 上野正実(琉球大学農学部教授)



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