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インドの砂糖産業の概要
最終更新日:2010年3月6日
[2006年3月]
インドは、さとうきびの収穫量が年間約2億8,000万トンを超え、ブラジルに次ぐ世界第2位の生産国である。しかし、砂糖(白糖)の生産に使われるのは、約60%で、残りは、グルおよびカンサリと呼ばれる伝統的なオープン・パン(開いた鍋)による砂糖の製造などに用いられている。
こうしたインドの砂糖産業の概要について、英国の調査会社LMC社からの報告などをもとに、まとめたので紹介する。
生産状況
需給バランス
インドにおける砂糖の需給は、消費量、生産量ともに概ね増加基調にある。ただし、インドでは元来、砂糖の生産量が周期的に増減を繰り返すため、砂糖の輸入国と輸出国の間を行ったり来たりする傾向が見られる。こうした傾向は、2002/03年度に生産量が過去最高を記録した後、2003/04年度から2年続けて干ばつによる影響で不作になるなど、ここ数年特に目立つ。このような状況を受けて、2002/03年度には純輸出量が180万トンを超えたものの、2003/04年度になると国内生産量の不足を補うため、逆に輸入量が輸出量を20万トン上回り、2004/05年度には純輸入量が160万トンに達した。しかし、2005/06年度には、砂糖の生産量が回復し、およそ1,900万トンを上るものと予想される。
また、グルおよびカンサリと呼ばれる伝統的なオープン・パン(開いた鍋)で作られる砂糖が分蜜糖とは別に1,100万トン程度作られている。
さとうきびの生産
インドにおけるさとうきびの生産は、1999/00年度以降の栽培面積が平均で約420万ha、収穫量が年平均で約2億8,000万トン、平均単収は、1ha当たり約67トンとなっている。さとうきびの経済への貢献度は農業生産全体の約2.9%であるが、収穫量が15%以上減少した2003/04年度には1.9%にまで落ち込んだ。
さとうきびの栽培地は北部の亜熱帯地方と南部の熱帯地方に集中している。北部の亜熱帯地方とは、インド最大のさとうきび栽培面積を誇るUttar Pradesh州に加え、Punjab州、Haryana州、Bihar州の4州である。
Uttar Pradesh州では、かんがいをはじめとする農業資材が未整備であり、さとうきびの平均単収は約58トンと全国平均を大幅に下回っている。また、気温が低いことから株出しは1〜2回しか行われない。
南部の熱帯地方は、西に位置するGujarat州とMaharashtra州から南のKarnataka州、そして、Tamil Nadu州とKerala州にまで広がる一帯である。
Maharashtra州では、過去5ヵ年の平均単収は73トンで、全国平均を上回っているが、多くの地域の栽培農家がかんがい施設を利用できるにもかかわらず、単収が大幅に低下する傾向も窺える。
Tamil Nadu州は、豊富な水とさとうきびに適した気候に恵まれ、インドにおいて最も単収が高く105トンを超え、収穫量も国全体の10%ほどを占めている。有利な生育条件を活かして、株出しを2〜3回行っている。また、良好な生育条件に恵まれたMaharashtra州とTamil
Nadu州では、砂糖の歩留まりが全国平均(約6トン/ha)よりもはるかに高い。
このように、インドにおけるさとうきびの主産地はUttar Pradesh州と、Maharashtra州、Tamil Nadu州で、この3州の収穫量を合わせるとインド全体の65%を超える。
表1 砂糖の需給バランス (単位:1,000トン、粗糖換算)
注:1:04/05年度は概算値、2:05/06年度は予測値
資料:ISO、LMC概算値
表2 砂糖およびグル/カンサリ生産内訳の推移 (単位:1,000トン、粗糖換算)
注:精製糖は概算値
資料:ISO、LMC予想
表3 さとうきび生産状況の推移
注:1.さとうきびの生産額は、各年の砂糖生産に使われるさとうきびの数量に、農家が受け取る、砂糖に加工され
るさとうきび1トン当たりの価格を乗じて求める。
2.A/B比率は、一般の砂糖の製造に使用したさとうきびだけが対象。
資料:インド砂糖ジャーナル、インド砂糖技術者協会、LMC予想、IMF
表4 州別さとうきび単収および砂糖歩留まりの推移 (単位:トン/ha)
資料:インド製糖業者協会(ISMA),LMC概算値
製糖産業
インドには2003/04年度で約420ヵ所の製糖工場があり、特徴は平均して処理能力が低いことである。これは、政府がかつて導入していた許認可制度で、処理能力が1日当たり最高2,500トンまでの工場の新設や、設備拡張に奨励金を支払う反面、これを超える能力の増強に対しては奨励金を支払わないという仕組みにあった。この制度が1998年9月に撤廃されたことで、新たに建設された工場の処理能力はこれよりも格段に高く、また、以前からある工場も設備の拡張を図っているため、工場の平均能力はここ数年、上昇傾向を示している。また、新設工場は既存の工場から15キロ以上離れている所にしか建設することができないが、これが現在、工場新設を対象に引き続き講じられている唯一の規制措置である
インドでは製糖工場の所有形態を、民間と協同組合、公営の3つに分けることができる。協同組合工場の場合、栽培農家は組合員として、その工場の各年度の利益を基に支払いを受ける。また、工場が収穫作業とさとうきびの工場搬入の両方の手配を行い、その料金を農家に請求する。Maharashtra州では、特に協同組合部門の影響力が強い。
民間工場は、Uttar Pradesh州と、Karnataka州やTamil Nadu州など南部の州に多い。複数の工場を所有する民間グループも少数ながらある。公営工場の数が最も多いのは、Uttar
Pradesh州とBihar州である。このなかには、民間工場であったが、業績の悪化によって、州政府が経営を引き継いだケースも少なくない。
インドには精製糖専門の工場が1ヵ所もないため、耕地白糖(砂糖の原料作物から白糖までの一貫した生産工程で作る砂糖)のみ生産されている。白糖は品質(色価)と粒子のサイズ(小、中、大)で、それぞれ3つの等級に分類され、最も多く生産されているのは色価が100〜150
ICUMSA(国際砂糖分析法統一委員会)単位の等級30である。等級29は最も品質が低く、再び溶解して、品質の向上を図る工場が多い。
色価100 ICUMSA未満の質の高い砂糖(等級31)を生産できる能力を持つ工場は、7ヵ所ある。さとうきびの絞り汁から不純物の除去をともなう手法を採用して、60〜80
ICUMSA単位の砂糖を生産できる工場はインドに5ヵ所ある。また、再溶解あるいはイオン交換技術によって、それぞれ25〜60 ICUMSA単位あるいは10〜60
ICUMSA単位といった低い色価を実現している工場もある。
わずかに生産される質の高い精製糖は、ごく一部が輸出される他は、5つ星ホテルや航空会社に販売されており、ほとんどの白糖は粒子のサイズが小である。
表5 さとうきび工場の主な技術的指標の推移
資料:インド砂糖ジャーナル、インド砂糖技術者協会、LMC概算値
表6 糖蜜およびエタノール生産の推移
資料:F, O, Licht, LMC予想
表7 代替甘味料消費の推移 (単位:1,000トン、白糖換算)
資料:LMC概算値
糖蜜・エタノール産業
インドで生産される糖蜜の90%程度がアルコールの生産に用いられ、このうち約50%が飲料用、残りが産業用である。動物用飼料などに使われる糖蜜はわずかである。
インド政府はエタノールの生産拡大に力を入れており、2003年1月に一部の地域でガソリンにエタノールを5%混合することを義務付けることを発表した。その後2004年末までにこれを全国に広げる予定であったが、2003/04年度と2004/05年度にさとうきびが不作であったため、糖蜜の供給量が大幅に減り、エタノールの生産拡大にブレーキがかかった。このためインドは糖蜜の輸入を余儀なくされ、やむをえず2004/05年度には60万トンの輸入を行った。
エタノールの混合比率は今後、10%に引き上げられることが予想される。その一方で、エタノール混合の義務付けが燃料価格に影響を与えるのではないかとの懸念から、エタノールが割高になる時には、エタノールの混合を取り止めることができる法律が制定された。インドには現在、燃料エタノールの製造所がおよそ50ヵ所あり、その生産能力は年間46万Kリットルを超える。
表8 砂糖消費内訳の推移 (単位:1,000トン、粗糖換算)
資料:LMC概算値
異性化糖およびその他の甘味料
砂糖の消費量は、甘味料全体の97%近くを占めている。代替甘味料で唯一消費量が多いのはサッカリンであるが、それでも全体の2.5%ほどに過ぎない。他に、アスパルテームとアセスルファムK、ソルビトールなども少量ながら消費されている。インドでは異性化糖(HFS)は、生産も消費もしていない。
砂糖の消費
砂糖の消費量は2000/01年度から2004/05年度の5年間で、約10%増加している。また、家庭用と業務用の比率は、それぞれ29%と71%のままで変わってない。
業務用で消費量が最も多いのは飲料部門で、業務用全体の3分の1ほどを占めており、これに菓子類とパン類が続く。
砂糖の国民一人当たりの年間消費量は、2000/01年度の17.2kgから約5%増え、18.1kgに達した。これとは対照的に、グル/カンサリの一人当たりの消費量は減少し、2003/04年度には10.6kg程度にとどまっている。こうした傾向は、インド国民が豊かになっている現状を反映したものと言える。
砂糖制度の概要
砂糖制度の現状
インド政府は、各砂糖工場に生産した砂糖の10%を、市場価格を下回る水準に設定された価格で、「徴収砂糖(levy sugar)」として売ることを義務付けている。この徴収砂糖は、消費者を保護することを目的とした「公共流通制度(public
distribution system - PDS)」を通じて政府所有の配給店に置かれ販売される。徴収砂糖の比率は砂糖販売自由化政策の一環として、2000年の40%から徐々に引き下げられており、2003/04年度の徴収砂糖の平均価格は1トン当たり1万3,059ルピーであった。残りの90%の砂糖は自由販売砂糖に分類され、国内市場で、工場によって直接販売されるか、協同組合工場の場合には、全国協同組合砂糖工場連盟(National
Federation of Co-operative Sugar Factories - NFCSF)を通じて市場価格で販売される。
また、政府は、自由市場で販売できる砂糖の数量を、毎月の割当で制限する流通量管理制度によって、価格の安定を図っている。この割当数量は、生産量および在庫量に基づいて各工場に案分され、工場は、割当数量分の砂糖をその月中に販売しなければならず、売れ残ったものは徴収砂糖になる。ただし現在では、この割当量は毎月ではなく、4半期に一度発表されるようになった。当初、流通量管理制度と徴収義務が2005年10月に撤廃されるのではないかと見られたが、農業省は、価格がおよそ1kg16ルピーまで下がり、継続するまでメカニズムは依然として有効であると語った。
砂糖産業とは対照的に、グルとカンサリの生産業者は比較的自由に市場で販売ができる。この背景には、これら業者が伝統的に、非常に小規模にしか製造を行ってこなかったことがある。このため、生産した製品を所定の価格で政府に販売する必要も、所定の価格でさとうきびを購入する必要もなく、また、砂糖工場から5キロ以上離れてさえいれば、新たな工場を自由に開業できる。
砂糖の輸出入
輸出では白糖が圧倒的多数を占めるのに対して、輸入の場合には、粗糖として入荷後、収穫期中あるいは端境期に加工される。これは、白糖を輸入するよりも、粗糖として輸入し、国内の処理能力を活用したいとインド政府が考えているためである。粗糖が輸入されるようになったのは最近のことである。
砂糖は、国内の平均卸売価格が国際市場価格と比べて高いため、輸出意欲が極めて低い。唯一例外となるのは、欧州連合(EU)および米国との特恵協定に基づく輸出である。この対象として輸出される砂糖は年間2万7,000トンほどであるが、高い特恵価格の適用を受けている。
表9 99/00〜03/04年度のさとうきびおよび砂糖の平均価格 (単位:米ドル/トン)
さとうきび生産に関する政策
さとうきびの栽培に対する政府の規制は一切ない。逆に、肥料や水、電気など主要な農業投入資材への助成金と、高水準な保証価格など、さとうきび栽培農家を対象とした優遇措置が数多く講じられている。
政府は毎年、さとうきびの最低価格である「法定最低価格(Statutory Minimum Price−SMP)」を決める。このSMPの水準は、さとうきびと代替農作物の生産コストによって決まる。また、この水準の決定にあたっては、さとうきびの十分な供給量の確保も、重要ポイントとなる。SMPは、工場の基準歩留まり率8.5%と連動していて、2004/05年度が1トン当たり745ルピーであった。歩留まり率が8.5%を超えると、0.1ポイント毎に、1トン当たり8.80ルピーのプレミアムが上乗せされる。
一方、州政府も「州勧告価格(State Advised Price−SAP)」を定めており、影響力のある農業圧力団体を念頭に、主として政治的要因によってSMPよりも高い水準に設定するため、SAPが優先されることが少なくない。
Uttar Pradesh州の州勧告価格は現在、1トン当たり1,120〜1,170ルピー(約25〜26米ドル)の間を推移している。この価格は、Haryana/Punjab地方で1,100〜1,200ルピー(約25〜27米ドル)であるのに対して、南部の州では745〜1,106ルピー(約17〜25米ドル)と幅がある。
ただし、すべての州が州勧告価格を設定しているわけではない。州勧告価格を設定する州政府の権利に対して、全国各地のさとうきび工場が異議を申し立て、その申し立てが認められている。現在、州勧告価格を発表しているのは、さとうきびの栽培が盛んな北部のUttar
Pradesh州とHaryana州、Bihar州、Uttaranchal州、Punjab州の5州に過ぎない。
砂糖工場が受け取る徴収砂糖の価格は、その工場がある区域によって異なるが、平均価格が政府によって決められている。これは、工場が法定最低価格でさとうきびを購入するとの前提に立って設定されているものの、実際には、それよりも高い州勧告価格を支払っている工場が多々あるため、徴収砂糖の価格が工場の生産コストと同じレベルとなってしまうことも少なくない。
各工場へのさとうきびの納入は引き続き区域指定システムによって管理されている。州当局者「通常はさとうきび監督官(Cane Commissioner)」が州内のさとうきび栽培地域をいくつかの生産区域に分割し、これを州政府が各工場に割り当てる。各工場には自らの区域内でさとうきびの供給を独占的に受ける権利があるため、砂糖工場間でさとうきびの供給を巡る競争は生じない。一方、砂糖工場とグル・カンサリ製造業者の間の競争に関しては、砂糖工場の半径5キロ以内に、遠心分離機を用いない砂糖の製造所を設けてはならないとする規定が原則としてあるものの、政府はこれを規制する取り組みをしていない。
農家と製糖業者の関係
さとうきびの価格は各工場の業態によって決まる。協同組合工場がその工場全体の実績を基に決める価格をさとうきび栽培農家に支払うのに対して、それ以外の工場は法定最低価格か、州勧告価格を適用している。
Uttar Pradesh州をはじめとする5つの州では、栽培農家が州勧告価格を受け取っているが、これは一律に決められた価格で、砂糖の歩留まり率に応じた調整が行われない。Maharashtra州やTamil
Nadu州など南部の州で農家に支払われる法定最低価格は、政府によって決められる。この価格は、歩留まり率の基準を8.5%として算定されており、その州、あるいは州の主要な生産区域の実績に応じて調整される。
さとうきびの代金は、その重量に基づいて支払われることから、栽培農家の意欲を高め、品質あるいは砂糖含有率の向上を促すことができないため、工場が奨励策を講じているのが現状である。例えばTamil
Nadu州では、さとうきびの砂糖含有率が極めて低いため、砂糖含有率の高い品種の苗を工場が無償で農家に提供している。また、化学肥料や、自らの現場で作った圧縮堆肥などの生物肥料を農家に与える工場もある。農家の負担なしに、植え付け前に農地に除草剤を散布するところもある。
Maharashtra州とTamil Nadu州では、さとうきびの輸送を工場が行い、農家は輸送費としてごく小額の料金を支払う。Maharashtra州の協同組合工場では、さとうきび代金から輸送費を差し引いた金額を農家に支払っている。Uttar
Pradesh州の場合、これとは異なり、さとうきび協会が工場への輸送業務を担い、さとうきび価格の一定割合を輸送費として農家に請求する仕組みである。
貿易政策
インドの関税率は、世界貿易機関(WTO)交渉で決定した関税に関連する約束の移行期間が終わった現在、粗糖、白糖ともに60%で、最終関税率の150%よりも低い。しかし、輸入砂糖には、1トン当たり850ルピー(19.50米ドル)の相殺関税がかけられることに加えて、1999年12月に再び導入された輸入流通量管理制度が適用され、中央政府が出す引渡指図書(release
order)がなければ、輸入砂糖を国内市場で販売することはできない。また、2002年2月からは、輸入砂糖にも徴収義務が課せられることになった。
事前許認可制度(Advanced Licensing Scheme−ALS)によって、将来的に輸出することを条件に輸入された粗糖の関税はゼロになる。粗糖を輸入すると、1.05トンに付き、1トンの精製糖を、定められた期間内に再輸出しなければならない。最近の砂糖不足を受けて、中央政府は2004年9月に、この期間を1年間から2年間に延長した。
輸出割当は撤廃されたが、EUおよび米国の特恵市場向け輸出に対して、砂糖委員会が数量規制を加えることはできる。砂糖工場と砂糖輸出業者は、砂糖委員会から輸出引渡指図書(export
release order)の交付を受けなければ、輸出することができない。
中央政府は輸出振興のため、2002年6月21日からの2年間、引渡指図書の交付を受けて輸出される砂糖を対象に、国内の輸送費および運賃、流通経費、取扱手数料の払い戻しを行っていた。
表10 輸出入関税
注:関税に加えて、輸入砂糖には1トン当たり850ルピーの相殺関税も課せられる。
資料:LMC
砂糖産業の現在の問題
中央政府は2001年5月に、砂糖の先物取引を認めるとの通達を出した。その後、先物取引はムンバイ(Esugarindia Ltd)とアーマダバード(National
Multi Commodity Exchange of India Ltd)において開始され、近い将来には、ニューデリーで3番目の取引所(E-Commodities
Ltd)でも取引が始まる予定である。また、ハイデラーバード(Universal Exchange Ltd)も営業許可の申請を出しており、現在、審査が進められている。
政府は、現行の砂糖販売制度の規制緩和を熱心に進め、徴収砂糖の比率の段階的な縮減や、割当の発表の4半期に一度への変更、砂糖先物取引の営業許可の付与などを行ってきた。しかし、政府は2003年3月末で流通量管理制度を撤廃することを2002年2月に決めたが、さとうきび代金の未払いの続出と価格の下落を受けて、砂糖産業の統制解除を先送りした。その後、流通量管理制度は今年度が終わる2005年9月までしか運用されないと見られてきたが、2005年10月以降も統制解除されていない。また、国の燃料エタノール・プログラムは、糖蜜不足の影響で、2004年中旬に一時中断されたが、再開が期待される。
このような中で、砂糖産業が直面する問題を把握し、産業振興のための提言をまとめるため、業界および政府を含めたすべての関係者から構成される、砂糖産業再活性化に関する委員会が2004年3月に設置された。この委員会が2004年12月に発表した報告書で示されている主な提言事項は、
1.自由販売できる砂糖を対象とした流通量管理制度を2005年10月1日付けで撤廃する。
2.Indian Sugar Exim Corporation (ISEC)が中心となって、必要に応じて粗糖の輸入を促進する。
3.既存の工場と新設工場の間隔の制限を、半径25キロ以上に拡大する。
4.干ばつや洪水の被害を被った州のさとうきび栽培農家に対する援助を拡充する。
5.業績の悪化した協同組合工場の再建を助ける組織を設立する。
6.砂糖開発基金(Sugar Development Fund−SDF)の融資の金利を、銀行の実勢金利を2ポイント下回る水準に固定させる。
7.SDFからの援助を受けて、廃液処理システムやバガス用ろ過装置、高性能洗浄装置、電気集じん装置など、廃棄物および排出に係わる新たな基準を満たすために必要な技術を砂糖工場に導入する。
8.エタノール混合に向けた長期的政策や、「グリーン」電力が占める比率の義務付け、コジェネ技術で生まれた電力への特恵関税の適用、ガソリンへの酸素添加の義務付け、助成金などの奨励策など、砂糖の製造工程で生まれる副産物の有効活用を促す対策を政府が講じる。
となっている。