ホーム > 砂糖 > 機構から > WTO農業交渉の現状と今後の展望〜機構主催の講演会から〜
最終更新日:2010年3月6日
調 査 情 報 部 |
(1) 新制度における対象要件などについて
(1) サービス事業体
(学識者)経営安定対策の対象要件として、「一定の作業規模を有する受託組織・サービス事業体に基幹作業を委託している者」とあるが、ほ場を耕起・整地するとき、建設業者に委託することもあると思う。それも対象となるのか。
(特産振興課)「サービス事業体」には、一定の収穫作業規模を有する建設業者も含まれ得る。建設業者のほか、市町村、農協などによる公社やハーベスタを持っている畜産農家に委託する場合も、それらが一定の収穫作業規模を有していれば対象になる。
つまり、トラクターでもっぱら耕起・整地だけ行っている者に委託しても対象にならない。なお、「サービス事業体」の収穫作業規模の水準は4.5haと設定されている。
(沖縄県中央会)耕起・整地を建設業者に委託する場合、その建設業者には、受託者として「一定の収穫作業規模を有する」という要件が求められ、その建設業者は、「一定の収穫作業規模」を証明しなければならないが、手続き的に非常に難しい。
(特産振興課)経営安定対策は公的資金による支援であるので、当然、4.5haの規模を持っているということの証明、受委託を行っているということの証明の書類は、必要。
(2) 申請手続き
(沖縄県中央会)手続き上、収穫作業規模の証明などの書類が必要とのことだが、農家では対応できない。農協が代理申請するとしても難しい部分がある。いま、農家にこうした手続きを説明したら混乱を招く。手続きについては、今後さらに詰めなければならないと思っている。
(特産振興課)できるだけ簡便な手続きの仕組みを、いま、機構とともに鋭意検討しているところ。しかし、証明書類なしに申請書に数値を書いただけで交付決定とすることは難しい。
(JA沖縄さとうきび生産振興本部)新しい制度の円滑な導入とその定着のため、手続きは、できるだけ簡素化していただきたい。手続きが煩わしいと、われわれは、農家に説明しにくい。
(機構)機構も農林水産省と共同で作業しているが、まだ完成したわけではないので、これから完成に向けて、皆さんのご意見を踏まえ、努力していきたい。
(3) 環境規範
(製糖関係者)対象要件の「環境規範を遵守すること」は、具体的にどういうことか。
(特産振興課)環境規範の遵守については、糖価調整法施行規則に基づきチェックシートが告示されている。具体的には、(1)土づくりの励行、(2)適切で効果的・効率的な施肥、(3)効果的・効率的で適正な防除、(4)廃棄物の適正な処理・利用、(5)エネルギーの節減、(6)新たな知見・情報の収集、(7)生産に係る情報の保存、という七つのポイントについて、できたかできなかったか、できなかった場合はどんな理由かをチェックする仕組み。
(製糖関係者)これは、農家が自分で行うのか。
(特産振興課)各農家において取り組んでいただくことが必要。
(4) 税制上の支援
(鹿児島県中央会)全中の情報によると、農林水産省において、認定農業者等に対する税制上の支援として新たな措置が検討されているが、対象は品目横断的経営安定対策における認定農業者等のみとのこと。品目横断であろうと品目別であろうと同じ認定農業者等であるので、品目別経営安定対策における認定農業者等についてもご検討いただきたい。
(特産振興課)税制を担当している経営局と調整したいと思う。
(2) 対豪FTA交渉について
(鹿児島県中央会)19年度から新しい制度がスタートするが、これを定着させ、増産にしっかり結びつけ、また、担い手づくりを進めていくため、今後、産地ではあらゆる努力を重ねていかなければならないと考えているが、外的要因による懸念がある。
ここにきて、対豪FTA交渉がクローズアップされている。オーストラリアの輸出品目の大きな柱のひとつである砂糖が関税撤廃ということになると、調整金を徴収し、それをさとうきび生産者や国内産糖製造事業者の政策支援の財源とするという制度の根幹が揺らぐ。いまは政府間共同研究の段階だが、場合によっては、レベルアップして政府間交渉に入るのではないかという情報もあり、非常に心配している。
(特産振興課)対豪FTA交渉に当たっては、当然、特別な扱いがなければ、糖価調整制度自身が維持できないという状況になると認識しており、別途の扱いが必要であると考えている。
検討会の会場の模様 |
ページのトップへ |
(1) 収穫面積、単収等について
(機構)鹿児島県の収穫面積の15年と17年の差の1,136haは、現在どうなっているのか。放置されているのか、他のものに代わってしまったのか。
(鹿児島県)種子島の場合は、焼酎用のでん粉需要によりさつまいもが増えて、さとうきびが減ったということ、奄美大島の場合は、飼料作物や他の作物が増えたことがかなり大きい。
(機構)鹿児島県の収穫面積の目標値は、18年は9,040ha、22年は9,410haと設定されているが、いまの話を踏まえると、かつての9,885haには戻らないということか。
(鹿児島県)増産計画は、島ごとに、過去10年の最高、最低、平均の数字を見つつ、各島から上がってきた数字について、高過ぎるのではないか、低過ぎるのではないかという検証を行った。これだけがんばりますと上がってきたものについても、過去の実績から見て、ちょっと無理があるのではないかというところは、地元にそういう意見をつけて返して、調整していただいた。収穫面積、生産量は、増産計画といっても、極端に伸びるような状況にはないことから、やはり、現実を見た上での目標値を持つことに主眼を置いた。
(機構)確かに、いちど減少した収穫面積の拡大には無理があるということは分かるが、単収の目標値がかつての実績値を下回る数値から出発しようというのは、どういう考え方か。単収であれば、単純に、またがんばればできるのではないかと思う。
(鹿児島県)さとうきびの場合、適度に雨が降り、台風もなくて平年の1、2割増という年もあるし、逆に、台風と干ばつの影響により7、8割減という年もある。このように、収穫してみないと分からないという面があり、増産計画は、製糖会社の合理化計画、操業計画につながるので、過去7トンの実績があるから7トンを目標にするという計画は危ないと考えた。
(機構)沖縄県の単収について、右肩下がりになっている要因と増産計画が6トンから出発するとした理由は何か。
(沖縄県)地力が下がってきている。それから、農家の経営意欲が高齢化に伴って多少減退してきている。16年の4.9トンは、非常に台風が多かったためだ。
単収は、異常年を除いて平均的に見て、おおむね6トンが妥当な線ではないかと考え、そこから漸増する計画とした。
(製糖関係者)鹿児島県の収穫面積と単収の目標値は随分右肩上がりになっているが、こうなれば本当にありがたいが、よくなるという具体的な対策があまり明確でないため、もっと悪くなるのではないかと思っている。
さとうきびの栽培面積をいま以上に増やすことは、困難だろう。さとうきびという作物は確かに基幹作物で、台風、干ばつに強い作物ではあるけれども、収益性という面から見れば、野菜、果物、あるいは、牧草と比べると必ずしもベストではないので、ある程度そういったものに栽培面積を食われざるを得ない。そういうことであれは、あとは、いかにして栽培面積に対する収穫面積をキープするかが課題で、島によって事情は異なるが、夏植えから株出しへの移行を進めなければならない。
単収についても、非常に悪くなってきているが、いまのような状況で、格別に大きく単収を上げるという具体的な対策が見えない。
(鹿児島県)喜界島では、地下ダムの事業が進んでおり、現在、さとうきびの収穫面積の45%ぐらいをカバーしている。そういう事業の進捗を勘案して、単収の伸びを見込んでいる。
(九州沖縄農業研究センター)基本的には、栽培面積を増やすということには限界があるはずである。収穫面積の目標の立て方については、実績から積み上げるのではなく、地域全体の振興計画の中で、トン当たり約2万円のさとうきびをどのくらいつくったら地域がどのくらい儲かるのかという、他の作物との比較により総体的な戦略を策定し、その積上げの中から収穫面積の目標が出てこないと、これはやはり、本当に実行できるのかという疑問が生ずる。
さとうきびの生産だけでは、ある地域の限られた面積の中では、当然、トータルとして地域に入るお金には限界があるし、さとうきびの振興だけを考えているのでは、逆にさとうきびは衰退するだろう。大変皮肉なことだが、製糖工場が閉鎖になった伊江島、さとうきびの生産では大変苦しい状況にある沖永良部島の農業生産額が低いかというと、そうでもない。
地域の振興という立場で、いかに地域の総体的な売上高を増やすかという観点から、すなわち、その島で何名の人口を涵養できるかという観点から、さとうきびのことを考える必要がある。
地域全体の生産額を上げていく中では、さとうきびの生産量を落とさず、さとうきびの位置付けをしっかり確保する必要がある。さとうきびは、控えめな基幹作物であるというところに生き延びる道があるのではないか。
(製糖関係者)いま、面積を増やすということには限界があるとの話だった。しかし、沖永良部島の場合、現状の収穫面積・生産量ではもう会社はやっていけない。会社の立場では、もう面積は増えないだろうと放っておくことはできない。
(九州沖縄農業研究センター)それぞれの地域で総体的に考えていく必要があるのではないか。
われわれの技術開発のあり方は、多様な、個別の条件に沿うような技術をつくるということ。さとうきびが寡占状態にある地域には相応の技術があり、また、沖永良部島のように主な収益源が園芸や花卉である地域には、そのコンパニオンクロップとしてのさとうきび、ここでのさとうきびは控えめな基幹作物という位置付けがあるはずだが、それに相応しい技術がある。技術というものは実はそういうものであるとご理解いただきたい。
また、現実のひとつひとつの事例を丹念に取り上げていかないと、増産計画というのはうまくいかないだろう。例えば、現象としては栽培管理がされていないというひとつの事実に対しても、その内容には管理ができないという場合や、管理をできるがしないという行為などいろいろある。農業技術は、それぞれ個別の事例に全て対応し得る状況にならないと、現在の社会に見合うものにはなり得ない。
(学識者)さとうきびの単収というのは気象条件によってだいぶ変動するが、全体的に見ると低下傾向にあることは間違いない。規模拡大した生産者の単収が低いという傾向も確かにある。
日本のハーベスタは世界的な水準にあるが、やはり、南西諸島の環境条件にマッチしているのだろうかという疑問がある。奄美では、土壌が柔粘で、収穫期に季節風が降雨をもたらすので、立派な機能を持ったハーベスタが満足に稼働できないという状況がある。無理して作業をするが、延び延びになって遅れることが単収増加の阻害要因ではないかと考えている。
天気さえよければいまのハーベスタは完全に稼働するが、かなり重いので、雨が降ると畑に入れない。降雨の後でも簡単に入れるような、もう少し機能的に単純化した軽い機械を導入できないかと考える。
(機構)二重の機械化体系ということか。
(学識者)果たして、一般農産物と異なる条件下で栽培されているさとうきびの場合、それは効率的だろうか。新たな機械の導入は、当然それだけコストアップにつながってくる。もちろん、そういう機械も今後研究していく必要があると思うが、いまの最大目標はコスト低減だということも忘れてはならない。
(学識者)単収は、極端な落ち込みは別として、漸減傾向にあることは間違いない。それは、ひとつは生産現場が高齢化や規模拡大・機械化に十分対応しきれていないことが大きい。いい品種が出ており、また、栽培技術の体系もできているが、高齢化と規模拡大・機械化においては、それらをきめ細かく活用できないので、どうしても栽培が粗放になる。
しかし、規模拡大・機械化の方向に向かうとすると、機械化に向いた品種改良、さらに、例えば、初期生育が早く、雑草が生え出す前にある程度成長しているというような粗放化に対応する品種改良という視点も必要になってくると思う。
(九州沖縄農業研究センター)育種ということは、単純な品種改良という意味ではなく、栽培技術の根幹における品種特性の改良と考えている。また、優良品種と一口に言うが、本当に優良な品種というのはあるのかどうか。優良な使い方があって初めて、そこに優良な品種が出てくると考えている。例えば、われわれが12月に収穫できる品種を出したというときに、ハーベスタの移動距離が過度に膨らまない範囲で団地化をして、そこに12月収穫用品種を植えなければ、現実に12月収穫ができない。これまで、こういう具体論が欠けていた。
さとうきびは、その生産から集荷、栽培技術自体が高度に地域のシステムとして成立している作物であると思う。新しい技術の導入に際しては、地域のシステムとしてそれにどう対応するかという観点から具体的な検討をお願いしたい。
発言の様子 |
(2) インセンティブについて
(製糖関係者)実際にほ場を見て回ると、単収10トンはいくだろうというすばらしいほ場と、どう見ても2、3トンだろうというひどいほ場とがある。適期にしっかりした栽培管理をすれば、作型にかかわらず相当な単収になるはずだが、必ずしもそうなっていない。
しっかりした管理をしてくださいといくら言っても、個々の農家のやる気に大きく左右されるので、なかなか単収は上がらない。そういうことであれば、インセンティブの働くような仕組みを考えざるを得ないのではないか。
例えば、株出しを増やすため、または、単収を向上させるため、株出しにより収穫されたさとうきびや単収が非常に良好な農家のさとうきびにはプレミアムを付けるといった対策が、糖度向上のインセンティブとは別に取れないか。
また、いま非常に懸念しているのは、大規模農家ほど単収がよくないという傾向が明らかに出てきていること。農家の都合からすると、単収は悪くても面積でさとうきびの量を確保すればいいということになる。ところが、島という限られた面積しかないところで、単収はよくないが大きな経営面積を所有する農家が支配的になると、島におけるトータルの量が減ってしまう。そうなると、メーカーとしては非常に困る。
新しい制度は、担い手の育成を基本方向としているが、担い手個々の栽培管理がなおざりにされると、せっかくの新しい改革が裏切られるということになるので、それを非常に懸念している。
(製糖関係者)単収は、やはり気象条件によって相当大きく違ってくる。
(鹿児島県)生産者と糖業者の間の取り決めにインセンティブを導入できる可能性はあるのではないかと思う。ただし、県段階におけるガイドラインの協議において、そういう議論はなかった。
(学識者)株出し栽培によるさとうきびには、インセンティブを導入して支援水準を高めた方がいいのではないか。
(特産振興課)さとうきび代や支援水準が同じであったとしても、適切に管理された株出し栽培においては、農家の所得が向上するという効果があるはず。まずは、そのことを農家に正しく情報提供して、株出し栽培が選択されるようにすることが重要。
(3) 格差について
(製糖関係者)沖縄のさとうきびを測るとき、尺度は1つではない。沖縄県においては、本島に2工場、離島に8工場あって、10の工場が稼働しているが、本島と離島との格差、そして、離島と離島との格差がある。
気象条件も違う、気象災害も違う、栽培についても、植付から収穫までの作業において、各島においてそれぞれ異なったやり方をしている。収穫では、100%大型機械が入るところ、小型ハーベスタでもだめで全茎で収穫しているところなどがある。
沖縄のさとうきびは尺度を三つぐらい持たないと測れないと思うが、本日の資料では、本島と離島という区分だけの説明だった。それでは、各島でさとうきびの置かれた状況を説明できない。例えば、甘しゃ糖企業の操業率について、県全体の平均は54%とのことだが、いいところは70%、悪いところは30%であって、平均で論じられると、非常に厳しいところは取り残されてしまう。
また、南北大東島では、この3年続いた干ばつにより、水をかけたくても水がないという大変厳しい状況に置かれているが、平均で論じられると、その厳しさが伝わっていかない。
(製糖関係者)格差は、普段ひしひしと感じている。沖永良部島という条件の不利な地域の責任を負っている者としては、本当に苦しい。種子島のように水がある地域と沖永良部島のように干ばつを受けている地域では、さとうきびの節間が数十センチ違ってくる。これは、農家の努力などという問題ではない。
かんがい施設率については、沖永良部島は、与論島と並んで鹿児島県でいちばん低いところ。水が豊富にあるところとないところという格差がある。
それから、塩害は、同じ島内でも、台風13号で被害を受けたのは太平洋岸で、反対側は全然受けていない。島内においても格差がある。また、面積が小さい島なので、被害率は非常に高くなるが、面積が大きい島だと、その率は低くなる。
こういう自然的な条件、地理的な条件による格差はなかなか、口で訴えてもなかなか理解されにくい。
(4) 気象災害について
(機構)さとうきびにとっての気象災害は、台風と干ばつ。しかし、さとうきびというのはもともと気象災害に強いと言われている。だから当地域にさとうきびがあるので、さとうきびをなくせば地域の産業は崩壊する。そのことが砂糖制度の保護政策の大きな論拠になっているが、毎年気象災害があるので収量が上がらないという説明は、気象災害に強いという説明と矛盾してくるという気がする。
収量が上がらないのは、本当に気象災害だけに起因するのか。確かにどうにもならないという年はあると思うが、ただ、それにしても、気象災害に少し責任をかぶせ過ぎている感じする。
(学識者)台風とか干ばつとか、他の作物では収穫が皆無になるような条件でも、平年に比べて8割以上の単収があるということで、さとうきびが沖縄や南西諸島では、なくてはならない作物であるということに変わりはない。
(製糖関係者)気象災害としては、塩害と干ばつ。塩害を受けると糖度が2度も低くなる。そうなると歩留にも当然影響してくる。新聞に「炭素イオン線照射で塩害に強いイネを開発」という記事があった。さとうきびにも、塩害にも強い品種というものがあれば、増産意欲が起きてくるのかなと思う。
(JA沖縄さとうきび生産振興本部)南北大東島は、干ばつで相当被害を受けそうだ。6月、7月が干ばつぎみで、8月にはまとまった雨が降って何とか持ち直したが、9月以降ほとんど降っていない状況で、さとうきびは茶色になっている。台風が近づかなくなっている。台風が来ないと水がない。農家は一生懸命水をかけようとするが、肝心の水がない。
(学識者)単収アップのためには、気象災害をどうにかして防いでいくことが必要。自然災害と言っているが、何の手立てもしないのであれば、人災と言っても言い過ぎではない。
(5) ハリガネムシ対策について
(製糖関係者)沖永良部の株出し率は30%で、鹿児島県でいちばん低い。この原因はハリガネムシ。
(製糖関係者)奄美大島は、夏植えが多い地域だが、数年前から春植え・株出しへの移行に取り組んでおり、また、株出しの面積拡大・単収向上は、増産計画の主要課題でもある。
ところが、春植え・株出しに移行したほ場では、適期に管理を実施しても、ハリガネムシにより地中の芽が食害されてしまえば欠株率が高くなってしまい、単収向上につながらない。株出しの面積拡大・単収向上のためには、ハリガネムシ対策が絶対に必要。
これまで約10年間にわたって、フェロモントラップによる防除を実施し、ある程度の成果を収めてハリガネムシ生息数は減少傾向にあるものの、フェロモントラップ単独による防除には限界感がある。また、薬剤防除との併用でも、この防除方法はトクチオン乳剤による土壌かん注で、10アール当たり約1,500リットルを必要とする上、酷暑に繁茂したさとうきび畑の中でホース操作等を行うのは、現実的には困難。
幸い、ハリガネムシ防除の新しい農薬が登録されたと聞いており、非常に期待している。しかし、今の段階では植付け時処理のみの登録とのことだが、立毛の状態のときにも使えると、ふ化した幼虫をたたくことができるので、次の株出しにつなげることができると思う。これができれば、奄美本島は絶対変わってくる。
発言の様子 |
(沖縄県農業研究センター)さとうきびの増産は、どのようにして株出し面積を増やすか、この一点に尽きる。農家経営にとっても、株出し栽培というのがいちばん安定的で、いちばん楽。
しかし、例えば、宮古島、石垣島では、株出し面積は、70年代初期は65%くらいあったが、今ではたったの3%というレベル。ハリガネムシの発生が多く、春植え・株出し体系を組もうと思っても株が立たないので、夏植え一辺倒になっている。
ベイト剤について紹介するが、これによりハリガネムシの防除は大きく変わるだろう。
ベイト剤は、ハリガネムシ(幼虫)が好む穀物粉砕物にフィプロニルという農薬を染み込ませ、粒剤にしたもの。染み込ませる量は、普通の農薬は5%程度だが、このベイト剤の場合は0.5%とごくわずか。
宮古島で春植え植付け時に処理した結果は、翌年にアドバンテージ処理区でもトクチオン処理区でも株は立っていないのに、ベイト剤処理区でだけ青々と株が立っている。
春植えの萌芽数を見ると、ベイト剤処理区はアドバンテージ処理区の2倍。また、生存芽子数を見ても、アドバンテージ処理区はわずか32%だが、ベイト剤処理区は6kg処理で77%、9kg処理で82%。このことから、ベイト剤処理により、宮古島のようなハリガネムシの多い地域で春植えしても、ちゃんと株が立つということが分かった。
ベイト剤は、いまのところ、植付け時処理でだけ農薬登録が取れている。いま、メーカーとも調整して、株出しでも農薬登録が取れるよう準備を進めているところ。
オキナワカンシャクコメツキ(成虫)防除については、南大東島で取り組んでいる交信かく乱という方法が有効である。フェロモントラップを使って防除するよりも、フェロモンによる交信かく乱の方がはるかに防除効果が高い。
南大東島で、交信かく乱による成虫防除を実施したところ、防除を重ねるに従って、モニタリングトラップと手捕りでの捕獲数は共に急速に減少していった。それくらい防除効果が確実なもの。
これからのハリガネムシ防除は、まず成虫を交信かく乱で防除し、それから、幼虫をベイト剤でたたいて、幼虫の密度を圧倒的に減らし、さらにもう1回成虫を交信かく乱でたたく。そうすると、ハリガネムシの被害そのものが急激に減少していくと考えられる。
(製糖関係者)夏植えの場合、トクチオンは、立毛の状態で、6月の梅雨明けに散布しているが、ベイト剤はその代わりにこれを使えるのか。
また、株出しの場合、収穫後のまだ早い時期の3月ごろに使えるのか。
(沖縄県農業研究センター)まだ株出しでは農薬登録が取れてないので、はっきりとしたことは言えないが、技術的には4月、5月ぐらいの立毛の時期に処理するということでも、たぶん大丈夫だろう。これは、収穫からどのくらいの期間前に処理したら安全かという作物残留の問題だけなので、少なくとも春植えの試験では5月ごろに処理して収穫期の作物残留調査では問題がなかったので、おそらく株出しについてもその時期くらいまでなら問題にならないと思う。
(6) 運動論について
(機構)そもそも増産プロジェクトの発想は、運動論的要素が強かった。
運動論的に今後どう展開していくのか。農家の方に直接訴えていくということについて、どういうことに取り組んでいるか、または、今後どう取り組んでいこうとしているのか、お伺いしたい。増産計画では、担い手の育成というところで出てきているが、むしろ、生産基盤の強化、あるいは、技術対策の中で運動論的な部分をもう少し打ち出せないか。これには、メーカー側も期待しているのではないかと思う。それに応えることが、砂糖制度を維持していく上で大切ではないかと思う。
(鹿児島県)増産計画は、さとうきびの生産の状況とその背景が各島で異なるので、各島において具体的にどうするかということをまとめていただいたものだが、いま、各島では、その実現を図るべく、大会を開催するとか集落ごとに座談会をするとか、工夫をしながら取り組んでいるところ。
県の段階では、今年度から各種さとうきび関係の会議開催に取り組む。増産計画をテーマにして、どうやって実践していくかということを関係者全員で議論して、気持ちを盛り上げていきたい。
それから、春植えと夏植えの時期、それぞれの途中経過の時点で、ぜひ計画を達成してくださいという意味で、また、計画をつくったはいいが、あとは忘れてしまうというのがいちばん困るので、煩わしく感じさせるほどに各島から報告をいただいている。
(沖縄県)9月から各地で、時期に応じた植付けをしてもらうことと栽培管理を再度理解してもらうことを目的に、推進大会を開催している。
また、増産となるよう株出しの面積を拡大することを目的に、5地区に株出し栽培の地域モデル展示ほを設置し、株出管理機の導入と併せて、1月から3月の間に株出し管理の実演会を開催する予定。
そのほか、島ごとの優良事例についてJAの広報誌に載せてもらうなど全県的に取り組んでいく。
(九州沖縄農業研究センター)現時点での運動論の目的はと言えば、平均値主義からの脱却、平均値から総合的にイメージされた個別事例へ、だと考えている。
「栽培の基本技術」パンフレット・ビデオをつくったときは、基本的に高位平準化ということだった。しかし、生産者にいくら、「単収を上げましょう」、「株出し管理をちゃんとしましょう」と言っても、それだけでは、これらは生産者にとって精神論に過ぎない。そこで、何に発展させなければいけないかと考えた結果が、パンフレット中の「こんなときにどうする?」というワンポイントアドバイスだった。
ところで、さとうきびには、技術対策として現段階で改善しなければならないことがたいへん多いのだが、それらが高度に統合化されていない。総合的にイメージされた個別技術・技術対策になっていないということで、これが日本のさとうきび技術陣の大きな欠点だと思っている。
それから、技術対策を運動論として盛り上げていく中で、われわれが生産者と接点を持ったとき、栽培管理や品種の普及などについて、われわれは、生産者の関心にきちんと対応した提案ができるだろうか、できないと思う。
一口に生産者といっても、生産者一人一人が多様な立場にいるのだから、実は悩みの引き出しがすごく多い。同じ株出し管理ひとつとっても悩みは100通りも1,000通りもある。そのときわれわれに、総合化という箪笥の中に提案の引出しがいくつあるか、実は、それがない。だから、ワンポイントアドバイスが基本的にはできていない。
例えば、「株揃えをしても萌芽がよくならない」と言われるが、そもそも株揃えは、萌芽したさとうきびの一茎重を数年間にわたりしっかり保つための、株上がり防止の技術であって、萌芽数を増やすための技術ではない。
また、「株出しが悪い」と言っても、その中味には、欠株が多くて萌芽茎数が少ない場合、一株当たりの萌芽数が少なくて萌芽茎数が少ない場合、萌芽した茎の生長が不良な場合があり、それぞれ必要な手当てが異なるはずである。こういったことがトータルにきちんと生産現場まで下ろされていない。
われわれの側にこうした大きな問題がある。
今後、運動論的にどう発展させるかは、平均値から総合的にイメージされた個別対応という形にいかに推移できるかにかかっていると思う。実は、パンフレットを作りながら、次のステージは個別対応だという理解をしていたが、パンフレットができてから2年半ほど経つが、いまのところ、その方法に関する議論ができていない。
増産プロジェクトの中で、平均値的には一生懸命やろうという機運が盛り上がってきた。また、今回、増産プロジェクトの中で、また、制度改正により、たくさんの生産組織ができてくるので、そこで、ぜひ技術というものの総合的イメージづくりとそこから出てくる個別対応の議論をしていきたい。
今後の運動論的な展開において、技術に携わる者としては、こういう形に発展させることができるとありがたい。
(JA沖縄さとうきび生産振興本部)沖縄県内で、生産組織を立ち上げたところに、ワンポイントアドバイスをしに出かけている。
夏植えであれば、中耕を我慢して12月までに分げつさせたいところだが、雑草防除のため早めに中耕してしまったほ場と我慢しているほ場とを見せて、早めの中耕はマイナスと指摘するなど、適期植付け、緑肥のすき込み、深耕、土づくり、肥料について、ワンポイントアドバイスをして歩いている。
春植えをして株出しを3回、4回しているほ場の農家は、だいたい70歳から80歳のさとうきびの技術をよく分かっている方。こういう方たちは単収が高いので、わたしは、どこへ行っても、「担い手は70代、80代。80代はあと5年ぐらい、70代は10年ぐらい単収を落とさないようにがんばりましょう」という話をする。また、経済波及効果についても話すと、気分が燃えてきて、立ち上がってくる人がいる。
(機構)いま、ワンポイントアドバイスから個別対応に進めていくなど、各現場の力強い話を聞いて、非常に心強く思った。みなさんに期待したいと思うのと同時に、われわれも情報提供という業務を持っているので、その中でどの程度対応できるのか、必要な材料は何かなど考えて参りたい。
運動論については、どうしても抽象論になるきらいがあるが、これからは、島ごとの個別具体論をどうやって農家の段階まできちんと下ろしていくのか考えることが大事であると思う。
また、運動論において、農家の方にさとうきびがどういう作物であるかということをよく理解していただく必要があるのではないかと思う。ひとつは、国の政策に基づいて、国民の負担により手厚く保護されているということ、もうひとつは、さとうきびは、単にさとうきびをつくっているというだけではなく、関係の企業も含めて、いろいろな関係者のもとに成り立っているということ。こうした理解をしていただければ、合理化、または、生産性の向上といったところに農家の方の目が向いていくのではないかと思う。
ページのトップへ |
(機構)当検討会の開催については、このまま継続して行うというのもひとつの方法であるが、何か具体的な成果を求められたときに、いまの段階でこれ以上の成果というのは見えにくいので、継続して行うとしても、少し視点を変えた方がいいと思う。また、テーマを絞ることも必要かと思う。例えば、きょう、格差やインセンティブなどの話があったが、こういったことに焦点を絞るという方法もある。
われわれも業務の見直しを控えており、この検討会についても見直しが必要になると思う。そこで、今後のこの検討会のあり方について、ご意見をお聞かせ願いたい。
(製糖関係者)昨日のさとうきび研究会は、各論的な、いわば技術的な研究発表が主体であり、こうしたことはたいへん大事で必要なこと。同時に、さとうきび産業をどうするかという最大の問題について、技術論のみならず、総合的なものの見方で見ていかなければならない。その意味で、この検討会は、やめるどころか、テーマを絞るなどあっても、ぜひ、ますます発展的に開催していただきたい。
それから、さとうきびのパンフレットは、非常によくできたもので、現場では随分活用されているが、実際の各論になると、なかなかこれだけでは十分説明し切れない、あるいは、質問に答えられないということもある。機構が仲介の労をとって、各島にベテランの先生に来てもらい、さとうきび栽培に関する質疑応答の機会を作るといったことも積極的にやっていただきたい。
(製糖関係者)沖縄県の製糖工場が30数年ぶりに年内操業を行って、それがうまくいったという話を聞いたが、そのような成功例について、検討会の場で、どういう点がよかったかなど話題として提供していただきたい。
(製糖関係者)地域の市町村長たちは、さとうきび産業を消してはいけないとよく言うが、こうした検討会で、さとうきび産業のため、われわれが必死になって議論をしていることを分かっているのかどうか。検討会のメンバーに、市町村長やさとうきび生産にかかわる地域の担当の皆さんに加わってもらい、真剣に議論をしていったら、もっともっと効果的ではないか。
(鹿児島県中央会)最近、生産振興大会などで情勢等の報告をする機会がある。そのとき農家の皆さんには、今年と特認期間3年の4年間で、皆さんがなすべきことはふたつしかないと言っている。一つ目は何といっても増産。2つ目は対象要件の上位へのステップアップ。こうした取組をするときのひとつのパワーになるものは生産組織だと思っており、組織づくりを進めている。支援対象とするために組織をつくっているのではない。
商品作物の野菜、果樹他の品目は、産地化をして、それからブランド化をして、そして面積等を維持拡大してきたが、その取組の核となっていたのは、産地の品目別の生産組織。しかし、さとうきびは、商品作物というよりは原料作物だということで、その必要性がなかった。
鹿児島県の場合、組織づくりでは種子島が優良事例になるが、中核は、さとうきび振興会という部会。部会の活動の中で、共励会、現地検討会、研修会などの実績を積み上げてきている。いま、両県では組織づくりを進めているが、そういう組織にどうつくり上げていくかが課題となっている。
組織づくりについては、まず種子島という優良事例があるので、そこにおける組織づくりや活動の事例に学ぶということが必要ではないか。また、関係者が笛吹けど踊らずという現実がある中、いかに農家に自らの問題として意識してもらうか、農家の自主的な組織として、いかに増産に向けた活動をしてもらうか、これらに関して、各島では、それぞれの事情で、それぞれすばらしい取組をしている。
両県がお互い学ぶために、組織づくりなどの優良事例をピックアップすることも、この検討会のいいテーマになるのではないか。そういうテーマもぜひ取り上げていただき、検討会は引き続き開催していただきたい。
発言の様子 |
(製糖関係者)いま石垣島は、観光で脚光を浴び過ぎており、さとうきび産業は、危機感を感じている。特に、さとうきび畑があったところに空港が建設されることになり、その分の面積が消えてしまう。
限られたこの島の面積の中で、何とかもう少し遊休地を使えないかと考える。遊休地は、相続とか借金とか様々な問題を抱えているわけだが、ほ場として使えるような工夫はできないものか。また、企業の買収した土地が、優良地にもかかわらずジャングル化しているが、こうした土地を使えないものか。検討会においては、こうした遊休地の活用というテーマもいいかと思う。
(沖縄県)こういうメンバーが集まる機会というのは他にないので、やはり、1年に1回は情報交換のため、開催していただきたい。横断的な共通の課題と、それから、各地域の個別具体的な課題を取り上げて、関係者の中で議論する場にして欲しい。
(鹿児島県)さとうきびの方向については、昨年12月にさとうきび増産プロジェクトの基本方針の中にまとめられている。これからは、それをどう実践するかの時期。具体的には、効率的かつ安定的な生産体制をつくるという命題があるので、事例の紹介を含めて、受委託組織を3年でどうつくり上げていくかについての議論の場が欲しい。そうなると、各島でさとうきびの増産計画を実践している方が参加しやすいような工夫が必要かと考える。
鹿児島県としても、そういう場を設けながら取り組んでいくつもりでいるが、議論の場というよりも実践の場にしていきたい。
また、来年は鹿児島県での開催するなら、これまでは鹿児島市内で開催していたが、優良事例のある種子島か奄美大島で開催するということも考えられる。沖縄の方は参加しにくいが、そうしたことも含めて工夫が必要かなと感じている。
(機構)ありがとうございました。
引き続き実施すべきとのご意見をいただいたので、今後の検討会については、ただいまのご意見を参考にさせていただき、両県とも協議し、検討させていただきたい。決まったら早急に連絡する。
ページのトップへ |
当検討会は、平成13年にスタートし、今年で6回めを迎えた。当検討会では、さとうきび・砂糖産業の発展に資するため、鹿児島県と沖縄県の生産者団体、糖業者、研究者、行政などの幅広い関係者が一堂に会して、情報交換や意見交換を行ってきた。
その中でも単収アップに焦点を当てて議論を展開してきたが、生産性の低い層に焦点を当てて高位平準化を図ることになり、その結果、「栽培の基本技術」のパンフレットとビデオの作製につながった。このことは、この検討会の成果のひとつと言えるだろう。また、今回は、ハリガネムシの防除法について具体的な議論が展開された。
しかしながら、一方で多方面の関係者が参画する会議であったことや幅広いテーマについて議論してきたために、テーマによっては議論が煮詰まらなかったものも少なくなく、必ずしも具体的成果を十分に提示できる段階にまで至っていないと認識している。
このため、今回の検討会において、「検討会のあり方」について議論したが、現在進められている増産プロジェクトが実践段階に入っており、これに資する検討会とする必要性について認識を共有したところ。その上で、参加者やテーマの内容についても、各島で増産計画を実践している方の参加や効率的な生産体制をつくっているなどの優良事例の紹介が有益ではないかとの意見が出された。
当機構としては、今回出された意見を踏まえ、この検討会の具体的成果が示せるよう、テーマの選定や参集範囲については、検討段階から参加者の積極的な参加が必要と考えている。今後のより一層の関係者のご協力をお願いしたい。
ページのトップへ |
「第4回さとうきび増産プロジェクト会議」において報告された増産計画に基づき、現在、増産に向けた取組が行われており、主な取組は次のとおり。
【鹿児島県】
1.経営基盤の強化
ク 担い手の育成
○ 担い手育成に関する地域の話し合いを進めるため、各島に生産組織を立ち上げることとし、これまで10組織(西之表地域、中種子地域、南種子地域、奄美大島龍郷地域、喜界島喜界地域、徳之島徳之島地域、徳之島天城地域、沖永良部和泊地域、沖永良部知名地域、与論島与論地域)を設立。
○ 奄美大島の宇宿地区において、本年7月30日、受委託作業の調整を行う集落営農組織「宇宿さとうきび管理組合」を設立。
○ 与論島において、本年8月14日、JAが中心となって農協さとうきび部会を設立したほか、那間集落において集落営農組織「なまから」を設立。
ケ 共済加入の促進
○ 奄美大島、喜界島において、平成19年産から組合員等別危険段階共済掛金率を導入することについて、県共済組合連合会、県、大島事務組合で打合せを実施、8月に開催した奄美大島地区の生産振興大会において、生産農家に対し、導入に関する説明を実施。
2.生産基盤の強化
ク 株出管理の徹底
○ 全島で、株出管理機(株揃機)による株出管理を行うことを前提にハーベスタ委託を受けるシステムを導入すべく検討中(本年度、株出管理機又は株揃機を39台導入予定)。
ケ 気象災害に強い生産基盤づくり
○ 与論島において、ボーリングの実施による簡易な水源の確保を計画中(受益面積2.9ha)。
3.技術対策
ク 栽培技術の実証、優良品種への転換
○ 奄美地域において、早期高糖で12月収穫も可能な品種Ni22(KY96−189)及び各作型で多収、干ばつにも強い品種Ni23(KY96T−537)への転換を目指し、各島に原苗ほを設置。
ケ 土壌害虫防除
○ ハリガネムシ防除対策としてフェロモントラップの設置を推進(本年度、14,870ha分のトラップの設置を計画)。
【沖縄県】
1.経営基盤の強化
ク 担い手の育成
○ 担い手育成に関する地域の話し合いを進めるため、各島に生産組織を立ち上げることとし、これまで34組織(伊是名村、糸満市、石垣市等)を設立(10月20日現在)。今年中に全県で56生産組織を立ち上げる予定。
○ さとうきび生産組織の育成に向けて、先進地である富山県の取り組みについて講師を招聘して講演会の開催(8月24日)。
ケ 生産法人の育成
○ 平成11年度から中核的なさとうきび生産の担い手育成に取り組み、昨年 度は新たに4法人が設立され、現在43法人となっている。
コ 共済加入の促進
○ 伊江村、南大東村、宮古島市(城辺)、石垣市において、平成19年産から組合員等別危険段階共済掛金率導入を決定した。各農業共済組合ではでは、7月からの夏植え農家から当該制度で加入を推進している。
各さとうきび増産プロジェクト会議において制度及び導入に対して説明を実施。
○ 農業共済や増産対策の取り組みについて、農業共済団体と県とで意見交換会を開催(9月13日)。
2.生産基盤の強化
ク 株出管理の徹底
○ 株出の生産性向上を図るため、株出管理機(株揃機)による適期株出管理を推進するため、株出管理機を導入(本年度、株出管理機又9台導入予定)。
ケ 防災農業の確立
○ 台風等の自然災害から農作物の被害防止を図るため防風・防潮林整備の重要性を広く県民に認識してもらい、防災農業の確立による農業生産性の向上の推進に取り組む予定。
3.技術対策
ク 夏植え生産性向上を推進するため、発芽率の向上、灌水対策、欠株補植等の基本栽培技出等の励行を目的に推進大会を開催
○ 南部地区(糸満市於):平成18年9月5日
主な内容:点滴チューブを活用した灌水、植付け等の実演会
○ 北部地区(宜野座村於):平成18年10月10日
主な内容:欠株補植を中心とした実演会
○ 中部地区(うるま市宮城島):平成18年10月31日予定
主な内容:夏植えの培土・除草等の適期管理実演会
ケ 株出栽培の地域モデル展示ほの設置
○ 収穫面積の拡大を図るため、株出栽培の5地域モデル展示のを設置し、灌水、土づくり、株出管理機を導入による適期肥培管理の励行等により単収向上の普及・啓発活動を推進する。
コ 栽培技術の高位標準化対策
○ 各地域から優良農家の栽培技術等を掘り起こしを行い、優良事例として啓発活動を行う。
○ 栽培基本技術の普及・啓蒙として改訂さとうきび栽培指針の作成と普及推進を図っている。
○ 高位栽培技術についてJA広報誌を活用して普及・啓発を行っている。
サ 土壌害虫防除
○ 南大東島において土壌害虫であるハリガネムシ防除対策としてフェロモントラップの設置を推進(本年度、127万本分フェロモンチューブ設置を計画)。
○ アオドガネ防除対策として平成18年度「さとうきび土壌害虫防除確立支援事業」で移動式誘殺灯を宮古地域に導入し、本格的な防除に向けて取組中である。
ページのトップへ |
農林水産省生産局特産振興課、農林水産省大臣官房地方課、農林水産省農林水産技術会議事務局、農林水産省九州農政局、内閣府沖縄総合事務局農林水産部、鹿児島県農政部、沖縄県農林水産部、鹿児島県農業開発総合センター、沖縄県農業研究センター、国立大学法人鹿児島大学農学部、国立大学法人琉球大学農学部、鹿児島県農業協同組合中央会、沖縄県農業協同組合中央会、独立行政法人種苗管理センター、独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構九州沖縄農業研究センター、社団法人鹿児島県糖業振興協会、社団法人沖縄県糖業振興協会、日本甘蔗糖工業会、日本分蜜糖工業会、独立行政法人農畜産業振興機構
ページのトップへ |
本検討会に先立ち、10月23日、独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構九州沖縄農業研究センターにより開催された九州沖縄農業試験研究推進会議畑作推進部会の第6回さとうきび研究会においては、次の議事のとおり、報告、講演などがあり、また、活発な討論が行われた。
ク さとうきび研究を巡る諸状況
松岡誠 九州沖縄農業研究センターさとうきび育種ユニット長
ケ 昨年度検討課題の推捗状況報告
松岡誠 九州沖縄農業研究センターさとうきび育種ユニット長
白澤繁清 鹿児島県農業開発総合センター徳之島支場作物研究室長
宮城克浩 沖縄県農業研究センター作物班指定試験主任
吉本誠 九州沖縄農業研究センター機能性利用研究チーム長
コ 南西諸島における持続的なさとうきび産業展開のための生産技術開発の方向―バイオマス原料としてのさとうきび、利用技術開発の現状と課題―(講演、質疑)
(1) 高バイオマス量サトウキビの育成とその利用可能性
寺島義文 九州沖縄農業研究センター研究員
(2) 伊江島における高バイオマス量サトウキビを用いた砂糖・エタノールの効率的生産プロセス実証試験
小原聡 アサヒビール株式会社技術開発研究所主任研究員
(3) 沖縄産糖蜜からの燃料用エタノール生産プロセス開発及びE3等実証試験
奥島憲二 株式会社りゅうせきバイオエタノールプロジェクト推進室長
(4) 宮古島におけるサトウキビバイオマス利用実証研究
上野正美 琉球大学農学部教授
サ 総合討論
ページのトップへ |