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奄美大島における今後のハリガネムシ防除について

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最終更新日:2010年3月6日

砂糖類ホームページ/国内情報

機構から
[2007年05月]

宮崎出張所 所長 寺西 徹能


 奄美大島におけるさとうきび増産計画の主要な課題は、収穫面積の拡大と単収の向上であり、そのためには、作付面積に占める株出し面積の割合を高め、適期の株出し管理が求められている。

 しかし、生産者や関係者の努力によって株出し面積が拡大し、適期の株出し管理が行われても、ハリガネムシに地下茎が食害されてしまえば、増産には結びつかない。収穫面積の拡大と単収の向上で増産を図るためには、ハリガネムシ対策が必要である。このハリガネムシとその対策について、甘しゃ糖メーカー、関係機関等で概要を聞きとったので、報告する。


1 ハリガネムシの特徴

 オキナワカンシャクシコメツキ、サキシマカンシャクシコメツキの幼虫(写真1)は、針金に似た形をしているためハリガネムシと呼ばれている。成虫(写真2)は地中で羽化し、3〜6月に地上に出現して生育ステージが進み、すでに繁茂状態にある夏植えのさとうきびに集まり交尾を行い、地中に1頭当たり約500粒程産卵する。その後、ふ化したハリガネムシは、成虫になるまで地中に2〜3年生息する。十分成長したハリガネムシは暗褐色で体長は30〜35mm程度で、その間地中でさとうきびの芽の部分の繊維質だけを残し食害する。

 成虫は、夏植えさとうきびに集まるため、その収穫後の株出し栽培ほ場において不萌芽の被害が多くなる。

写真1 幼虫
写真2 成虫

2.ハリガネムシ防除対策の現状と課題

 図1のとおり、奄美大島においては、昭和末期から平成にかけてハリガネムシ被害による株出し不萌芽が表面化して以降、株出し面積が減少し、平成元年産では収穫総面積に対して株出し面積割合は約60%、夏植え面積は約20%であったが、平成10年産では株出し面積の割合は約38%、夏植え面積は約47%と、夏植え面積の増加が顕著になった。

図1 栽培型別面積構成(奄美大島)

 なお、ハリガネムシ被害の少ない与論島では、図2のとおり、この間の収穫総面積に対する株出し面積の割合は約80%で推移している。

図2 栽培型別面積構成(与論島)

 このような状況の中で鹿児島県では、株出し移行率を高め収穫面積の拡大を図るため、平成8年度からハリガネムシ防除緊急対策事業を立ち上げ、奄美群島全域にフェロモントラップの一斉設置を行った。なお、この事業は平成14年度からはさとうきび栽培技術高度化事業に移管された。

 フェロモントラップの設置は、さとうきび栽培面積1.5haあたり1基とし、奄美大島には、687基設置された。設置当初は水盤式トラップであったが、平成13年度からは誘殺率の高い乾式トラップが設置された。

 また、耕種的防除として、作付けを更新するほ場では、耕耘回数を多くし、地中のハリガネムシを日光にさらし死滅させる方法が取られている。

 毎年3月から6月に行われる捕虫状況調査によると、誘殺虫数は減少してきており、成虫総数は減っていると見られる(図3)。しかし、依然として欠株が多く、株出し萌芽性は明らかに好転しておらず、株出しの単収は低いままである。

図3 島別誘殺虫数の推移(平成9〜17年)

 薬剤防除として、植付け時にアドバンテージ等の施用を行い、また生育期の夏植えの6月頃(幼虫ふ化期〜若齢幼虫期)にトクチオン乳剤を株元にかん注する手法もあるものの、酷暑の中での水運搬および調合作業、また成長したさとうきびの中でのホースを移動しながらのかん注作業は過酷で、現実的に困難である。

写真3 フェロモントラップ

写真4・写真5 株元かん注作業

3.今後の対応

 奄美大島においては、春植え株出しによる収穫面積の拡大には限界がある。これは、春植えの植付け時期に、収穫作業との労働競合が発生することや、降雨で奄美大島特有の粘板岩土壌のほ場に大型作業機械が入れなくなることによる。

 このことから、奄美大島では、夏植え株出しによる収穫面積の拡大を目指している。そのためには、ハリガネムシ防除を行って夏植えの株出し萌芽性を向上させ、茎数を確保することが重要である。

 夏植え株出しのハリガネムシ対策として効果的な手法は、フェロモントラップ防除を基本とし、比較的作業しやすい時期に、夏植えさとうきびの比較的背の低い立毛状態での薬剤散布による幼虫ふ化期〜若齢幼虫期のハリガネムシ防除が有効であると考えられている。

 その薬剤としていま期待されているのが、ベイト剤である(写真6・7)。これはハリガネムシの好む穀物粉砕物で作られているため、地中のハリガネムシを誘引する。これを摂取したハリガネムシは興奮状態の抑制が効かず死亡する。また、根から吸収された有効成分がさとうきびの成長と共に植物全体に分布することにより、茎に侵入加害するハマキムシやイネヨウト等にも防除効果がある。

写真6 ベイト剤の容器
写真7 ベイト剤

 その他のこの薬剤の特長としては、粒剤に染みこませる有効成分の量が普通の農薬は5%程度であるのに対し0.5%と低いため、単位面積当たりの有効成分投下量が少なくてすむことと、株植付け時に1回処理するだけで、長期間優れた防除効果を発揮することである。

 しかし、この薬剤の農薬登録は、植付け時の施用と限定されており、夏植えの立毛状態での施用はできない。現在、鹿児島県農業開発センター大島支場、大島農業改良普及センター、製糖工場において、夏植えの立毛状態での薬剤散布効果や残留農薬等の検証を行っている。

4.おわりに

 今後、ベイト剤が夏植えの立毛状態での施用が可能になれば、長期間の防除効果を生かして、4〜5月上旬の梅雨前に施用することができる。この時期の適当な気温下で茎長が短い立毛状態では、ベイト剤の散布作業もしやすい。これによりハリガネムシを防除できれば、夏植えの株出し萌芽性が向上し、株出し移行率も高くなるので、収穫面積の拡大につながる。また、欠株数の少ない適正な茎数確保による株出しが可能となり、株出しほ場での単収向上にもつながり、さとうきびの増産が期待できる。

<参考文献>
「さとうきび糖業再活性化事業」 社団法人鹿児島糖業振興協会
「さとうきび栽培指針」(H11.8) 社団法人鹿児島糖業振興協会
「奄美の農業害虫」 瀬戸口脩
「さとうきび及び甘しゃ糖生産実績」鹿児島県農産園芸課資料
平成17年度 第2回さとうきび生産振興対策検討会資料

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