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平成18年度加糖調製品(ソルビトール調製品、加糖あん)調査結果

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最終更新日:2010年3月6日

砂糖類ホームページ/国内情報

機構から
[2007年8月]


調査情報部


近年、加糖調製品の輸入増加により砂糖の需要量は減少傾向にあることから、加糖調製品の中でも砂糖に対する直接の代替品として使用されているソルビトール調製品および輸入の増加が著しい加糖あん(調製した豆)について、ユーザーの協力を得て、需要実態などについて調査を行ったので概要を紹介する。

Ⅰ.ソルビトール調製品調査結果

1.調査概要


(1) 調査品目 
  (1)ソルビトール調製品とは、砂糖とソルビトールを混合したもので、ショ糖含有率が全重量の50%以上85%未満のもの。
  (2)関税番号 2106.90−510
  (3)関税 基本税率30%、協定税率29.8%
   ※平成13年1月より下記のとおり関税分類が改正された。
    2106.90−289
    「その他の調製品」
 
      ↓

   2106.90−510(砂糖を除く各成分のうちソルビトールの重量が最大のもの)
   2106.90−590(その他)

 輸出元の国、生産企業を問わず、配合比率は、ソルビトール17%、グラニュー糖83%で一定している。これは、1%程度の誤差が生じてもグラニュー糖が85%未満を維持できるぎりぎりの水準で、リスク管理の結果と見られる。ただし、ユーザーの要望に応じてメッシュと粒度分布などのスペックが異なっている。

(2) 調査内容
  平成18年1〜12月のソルビトール調製品輸入量は、対前年比2.7%増加の99,158トンであったが、本調査対象となったユーザーの年間仕入れ量は24,799トンで、全輸入量の25.0%をカバーしている。

2.日本への輸入状況

  平成18年の輸入は、ほぼ全量が韓国およびタイを原産とするものであり、平成18年における韓国からの輸入数量は31,728トンで全体の約32%を占め、タイからは66,436トンで全体の約67%を占めた。
  平成18年における韓国からの輸入価格(CIF価格)は73円/kg、タイからの輸入価格(同)は71円/kgと、ともに前年に比べて5割近くの増加となっている。

3.ソルビトール調製品のユーザー

  ソルビトール調製品は、菓子類(グミ、団子、せんべいなど)、パン類(蒸しケーキ、菓子パンなど)、調味料類、漬物、佃煮・煮豆、水産練製品など多岐にわたる分野で使用され、使用可能な分野にはほぼ浸透している。

資料:日本貿易月表
注:2000年までの数量と単価は、「その他調製品」(2106.90−289)の数値
2001年以降の数量は、「ソルビトール調製品」(2106.90−510)と「その他」
(2106.90−590、2101.20−246、2106.90−282、2106.10.219)の数値
2001年以降の単価は、「ソルビトール調製品」(2106.90−510)の数値
図1 「ソルビトール調製品及びその他調製品」の輸入動向

資料:日本貿易月表
注:図1の脚注に同じ
図2 「ソルビトール調製品及びその他の調製品」の韓国及びタイからの輸入動向

4.取扱傾向の全体像

  原産国のうち、タイでは日系企業、韓国では精糖企業3社が対日輸出向けに生産している。なお、平成17年度後半には、中国向けグラニュー糖の輸出量を拡大するため、ソルビトール調製品の製造ラインを止め、対日輸出から一時的に撤退した韓国の有力精糖企業があり、日本国内における需給バランスが崩れたため、サプライヤーからユーザーへの数量割り当て、卸店に対する供給先ユーザーと製造用途の事前申告や、サプライヤーの強力な推奨によって、ソルビトール調製品からマルチトール調製品への需要シフトが生じたが、タイと韓国の3社で増産体制が整った平成18年度後半には、需給バランスも前年度の水準に戻った。

  ユーザーのうち、海外工場として現地法人を置いているのは、製菓業界大手と製パン業界に限られ、アジアでは古くからシンガポールと香港に現地法人があったが、近年では、中国とインドネシアにも合弁先や生産子会社を設置しているほか、北米への進出もみられる。

  調査結果では、平成18年度の仕入量が前年度並みだった企業数が28%、増加した企業は45%あった反面、減少した企業も27%あり、増減した企業数では拮抗している。しかし全輸入量の25%を占めている調査対象企業の仕入総量は、全輸入量の増加率2.7%を大幅に上回る前年比7%の増加となっており、これら企業の砂糖仕入量は前年比95%まで大きく減少している。

  よって、ソルビトール調製品の仕入量が、「使用ブランドの売れ行き如何で年度ごとで大きくぶれる」ことが大半の個別企業にとっての利用実態であったとしても、ユーザー全体の傾向としては、ソルビトール調製品の仕入が、購買力に勝る上位ユーザーに集中する傾向が出てきたこと、ソルビトール調製品が高騰し供給がひっ迫していた平成18年度にあってもいまだ砂糖からの代替が進行していること、現在の上位ユーザー砂糖使用量が極めて多いことからすると、ソルビトール調製品等への代替が中長期的にはまだまだ続く可能性が高いと予想される。

  用途別の傾向としては、製菓業界ではグミキャンディー以外の需要増大用途は少ないのが特徴で、主力用途といえるスポンジケーキや蒸しパン、佃煮・煮豆では需要の微減傾向が続いている。前年調査では、らっきょう用途で激増している例が見られたが、漬物用途全般としては、ソルビトール調製品の需要減退傾向が明確になりつつある。

5.ソルビトール調製品の使用理由・使用基準

  ソルビトール調製品の使用理由は、砂糖単体利用と比較した低コスト性とソルビトールの機能要因とに二分される。機能要因では、わらび餅の透明度を高める機能や、みたらし団子のタレなどの照り出し、素材の保湿性向上など、和生菓子用途とグミキャンディー用途での理由が目立ち、機能要因が採用理由のユーザーでは、「上白糖以上に値上がりしても使い続ける」との回答が多い。

  また、砂糖とソルビトールを別々に調達する方法に戻す場合には、既に撤去してしまった生産工程の復元などのために、キロ当たり20円から70円価格が安くならなければならないという意見があった。
  ソルビトール調製品の購入は、為替レートも関わってくるが、年間の使用量が予測できる場合には加糖調製品の価格は1年間や半年間固定で契約されるため、短期的な為替変動は加糖調製品の需要シフト要因にはなりにくい。逆に、長期契約のリスクや在庫負担を忌避したがるユーザーの場合には、為替変動が調達コストに与える影響は大きくなるが、為替変動は同時に砂糖の調達価格にも連動しているので、結果的に、為替レートのみを要因とした減量シフトは起こりにくい。

6.ソルビトール調製品の企業別仕入コストの動向

  ソルビトール調製品の仕入価格について、今年度調査の最大の特徴は、約8割もの企業において仕入価格が大幅に上昇したと回答していることである。

  前年度の調査では、ソルビトール調製品の供給が不足したことも上昇の一因であったが、今年度の調査では、砂糖の相場価格が1年間で20円前後上昇したということが、ソルビトール調製品の価格にも大きく影響したと見られる。

  また、ソルビトール調製品と砂糖の価格差については、コストメリットが拡大またはコストデメリットが縮小(以下コストメリットが拡大と記す)と回答した企業が27.6%(前年度82.1%)、変わらないと回答した企業が6.9%(3.6%)、コストメリットが縮小またはコストデメリットが拡大(以下コストメリットが縮小と記す)と回答した企業が65.5%(14.3%)となった。

  コストメリットが拡大したとする企業が大幅に減り、その分コストメリットが縮小したとする企業が大幅に増えた。そのほとんどが、ソルビトール調製品の価格上昇が要因となっている。ソルビトール調製品が値上げされた企業でも、砂糖の価格上昇よりも影響が小さい範囲に収まった企業も見られた。
  価格の満足度合いを見ると、「とても満足」「満足」「やや満足」が13.8%(前年度75.0%)と大幅に下落したのに対し、「やや不満」「不満」「とても不満」が82.8%(前年度21.4%)と大幅に上昇、「どちらでもない」が3.4%(前年度3.6%)となった。
  8割以上の企業が「やや不満」「不満」「とても不満」と回答しているが、仕入れ価格が大幅に上昇し、コストメリットが縮小している企業が大半なので、この結果は当然の帰結といえる。

7.今後の見通し

  個別企業の動向としては、たった1年で倍増させた大手ユーザーがあった反面、仕入規模が小さい業界の場合には、サプライヤーからの推奨でソルビトール調製品からマルチトール調製品に切り替えるケースや、ソルビトール調製品等、原料価格高騰から製品売上自体を落としてしまったケースが前年度同様に見られた。
  なお、マルチトール調製品への切り替えに伴う「ソルビット」から「水あめ」への表記の変更により、成分への消費者からの問い合わせが減るなど、マルチトールは安心感を与えるとの認識も生まれている。
  よって、ソルビトール調製品によって育成された市場の一部がマルチトール調製品市場を新たに形成し、「その他調製品」の輸入増を招く可能性がある一方、ソルビトール調製品も、今年度は上位集中という形で大口ユーザー中心に需要が拡大していたものが、今後は、砂糖需要の減少と一体化してソルビトール調製品の市場が拡大してゆくことが予想される。
  ただし、サプライヤーが韓国企業2社と国内企業1社の計3社に限られている現状では、市場規模の拡大によって、サプライヤーの発言力がさらに高まることや、逆に、どこまで生産投資を継続するか、日本市場の優先度が今後も変わる恐れが無いのかなど、各社の企業戦略に今後の市場性が大きく左右されることとなり、不透明感も強い。

Ⅱ.加糖あん調査結果

1.調査概要

(1) 調査品目
  (1)加糖あんとは、さやを除いたささげ・いんげんまめ属の豆に砂糖を加えて調製したもの。ただし、気密容器入り、冷凍のものを除く。
  (2)関税番号 2005.51−190
  (3)関税 基本税率24%・協定税率23.8%
  加糖あんの製品スペックは、小豆が40〜50%、砂糖が50%前後で糖度50%前後のものが主流である。

(2) 調査内容
  平成18年1〜12月の加糖あんの輸入量は、昨対比0.6%増加の91,807トンであったが、本調査対象となったユーザーの年間仕入量は55,481トンで、全輸入量の60.4%をカバーしている。

2.日本への輸入状況

  輸入数量のほとんどが中国を原産とするものであり、平成18年における中国からの輸入数量は88,353トンで全体の約97%を占める。他には、フィリピン、台湾などから輸入された。
  平成18年における中国からの輸入価格(CIF価格)は、93円/kgとなっている。

3.使用開始時期

  加糖あんの導入時期は’90年代半ばが多く、国内のデフレ不況に伴う低価格圧力を背景に、メーカーはコスト削減の一環として使用に踏み切ったことがうかがえる。

4.取扱傾向の全体像

  原産地は主に中国で、日本国内までの輸送中に品質が劣化するのを防ぐため、国内産あんに比べて砂糖の量が多く、糖度が高い。
  平成18年と平成17年の仕入量を比較して、平成18年の仕入量が増加した企業は37.5%、横ばいは25.0%、減少は37.5%で、増加した企業と減少した企業の数だけをみると拮抗しているが、調査対象企業の仕入量の総計をみると、4,000トンと昨対比7.8%もの増加であった。

  仕入量の増減の要因は、製パン業界ではほとんどの企業が「商品の売行き(製造量)によるもの」としている。増減ともに大幅なものはなく小幅なものに留まっていて、製パン企業の平成18年仕入量の合計は前年比99.2%とほぼ横ばいである。主に使用されている「あんパン」の需要減退が主要な要因として挙げられている。しかし、廉価設定の商品について、収益面から、作り手自らが製造を控えるケースも少なからず出てきたのも事実である。

  一方、菓子業界では、製あん企業が供給する輸入加糖あんの価格対品質評価が上昇しており、製あん企業からの供給量が大きく伸びているが、今後とも増加基調が続くと見られる。

  また、年々、品揃えの強化と品質向上が認められ、菓子業界では、「つぶあん」「白あん」を採用した製品がヒットする例も出てきており、個別にみると仕入量を大きく増やしている企業も増えている。
  さらに、菓子業界のなかには、和菓子を半製品にまで加工度を上げて中国から輸入する動きが強まっており、加糖あん単体の輸入減少要因となっている。半製品の工場建設、ライン増設の動きは、日中双方の資本下で活発化しており、今後は、加糖あんの輸入実態を不透明化させる可能性もある。

  なお、一方では、中国での人件費高騰等、将来に予見される事業リスクを回避するため、輸入量を減らし、自社工場での加糖あん生産量を増やし始めた企業が、2000年以降の調査ではじめて現われた。

資料:日本貿易月表
図3 「加糖あん」(2005.51−190)の輸入動向

5.現地自社工場の有無

  国内の大手製あんメーカーは、中国に協力工場を持ち、日本から技術者を派遣するなどして品質は年々高まっているが、このため輸入加糖あんの需要を拡大させているとの見方もある。中国に協力工場を持つ日本の製あん企業では、人件費の高騰や小豆や砂糖などの原材料の安定供給の面で不安を抱いており、中国以外の小豆の産地開拓を目指す企業が出てきた。
  大手サプライヤー各社では、ユーザーの低価格志向は強く、加糖あんの価格は国産あんの3分の1から2分の1程度であることから、加糖あんの需要は今後も増大すると予想されている。しかし、加糖あんのサプライヤーは、加糖あんよりも国産あんの販売を伸ばしたいという意向があるようである。

6.使用製品

  加糖あんは、つい近年までは、製パン企業に集中的に採用されており、用途も安価グレードの「あんぱん」用途が中心であったが、中国産の加糖あんが急速に品質を高めており、現在では、アイスクリーム、たい焼き、大判焼きから、大福、おはぎといった用途にまで広範に広がったのが特徴である。この背景には、小豆の日本固有種が中国でも栽培されるようになったことや、中国製あん企業や日系工場による小豆生産者との契約栽培への進出があると指摘されており、中国産加糖あんの品質向上が著しく、「つぶあん」「しろあん」などの品揃えの多様化が進んでいる。

7.加糖あんの使用理由と使用基準

  自社で製あん設備を持たないユーザーでは、国産あんとコスト比較をして輸入加糖あんの調達を行っているケースが多く、コストを理由とした国産からのシフトが続くと思われているが、今年度調査では、製あん設備を有する企業にあって、リスク回避から、はじめて国産を増やし輸入を減らす「国産シフト」の事例が見られた。
  製あん大手各社では、国産あんのコスト削減のために中国やその他の地域から小豆を仕入れ、ソルビトール調製品やマルチトール調製品を使用してコスト差の縮小に努めているが、人件費など諸費用も中国が安く、国産あんは中国産あんの2倍から3倍の価格であり、コスト面では中国産のほうが圧倒的に競争力が高い。
  また、価格の面だけでなく輸入加糖あんは糖度が高く、常温保存できる点を評価して扱う場合もあり、冷暗所で保管する必要がある糖度の低い国産あんは価格も高いため使用されるケースは少ない。

8.輸入加糖あんの評価

  輸入加糖あんは、品質改善と技術力の向上が急速に進んでおり、製造能力に対する評価が今年度もさらに高まっているが、重量単価が安く付加価値が低いため低温コンテナが使えず、常温での海上輸送時の品質保持のため、高糖度設計となっているものの、糖度が高すぎて日本の消費者ニーズからずれ始めているとの意見が強まってきた。
  また、前年度調査で危惧されたポジティブリスト制の導入に伴う安全対策への対応を懸念する向きがあるものの、ユーザー全般としては、現段階でこの点を問題視しようとの動きは見当たらず、引き続きコストメリットが大きい反面、ユーザーやサプライヤーの品質も含めた総合評価では、今年度調査で、はじめて、満足度が大きく下がった。

9.加糖あん調製品の企業別仕入コストの動向

  加糖あんの仕入価格について、前年同様に安定しているとの回答であった。これは、砂糖価格は上昇しているものの成分構成の高い天津産小豆の価格が下がったためだと見られる。
  ところが、今年度調査ではコストメリットが拡大またはコストデメリットが縮小したと回答した企業が37.5%、変わらないと回答した企業が0%、コストメリットが縮小またはコストデメリットが拡大したと回答した企業が62.5%となっており、前年度調査で、すべての企業でコストメリットが拡大またはコストデメリットが縮小したと答えた状況からは一変しており、仕入れ価格が安定する一方で、事業環境に変化が起こっていることが伺われる。
  主力用途のパンや和菓子では、小売店の低価格要請を受け、価格訴求品で中国産の加糖あんを使用している。国内産のあんを使用するのは売価が高めでコストを追求しない商品に限られ、コストメリットを追求した商品では、中国産の加糖あんから原料を変更することは考えられない。
  しかしながら、中国産加糖あんのサプライヤーのなかには、人件費増等によるコスト増や、円安による為替リスクを吸収することが難しくなってきたとして、輸入価格や国内流通価格への転嫁(値上げ)が進まないと、年々向上させてきた現在の品質を維持できなくなると危惧する向きも出てきた。

10.今後の見通し

  加糖あんを使った和菓子の半製品輸入が急激に増大して、お土産用途など日持ちのする和菓子産業が空洞化する恐れが出てきた半面、加糖あんそのものについては、商品設計上、糖度が高すぎる点や、輸入あんの魅力が価格に集中しているだけにユーザーからは容易に値上げを受け入れる素地は見当たらず、現地生産コストの高騰や円安等の輸入コスト増大分を輸入業者やサプライヤー、あるいは輸出企業が吸収しつづけられるのか、不安定要因があり、加糖あん単体の輸入量については、将来的に不透明であると言える。


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