砂糖 砂糖分野の各種業務の情報、情報誌「砂糖類情報」の記事、統計資料など

ホーム > 砂糖 > 行政情報 その他、白書の概要など > 平成11年度食料・農業・農村白書の概要

平成11年度食料・農業・農村白書の概要

印刷ページ

最終更新日:2010年3月6日

砂糖類ホームページ/国内情報


農林水産省から
[2000年7月]
「平成11年度食料・農業・農村の動向に関する年次報告」(食料・農業・農村白書)は、平成12年4月4日に閣議決定のうえ、国会に提出、公表されました。
 本年度の白書は、昨年7月に成立した食料・農業・農村基本法に基づく最初の白書であり、この基本法の下での新しい政策の展開方向や具体的な施策について、広く国民各層の理解と指示が得られるよう、その素材を提供することを基本としました。
 本年度白書は、食料・農業・農村のそれぞれをテーマとした3章で構成されており、以下、各章のポイントについてご紹介します。

農林水産大臣官房調査課 計量分析係長 市川可幸


1.食料の安定供給確保(第・章)
2.農業の持続的な発展(第・章)
3.農村の振興と農業の有する多面的機能の発揮(第・章)


1.食料の安定供給確保(第・章)

(1)我が国の食料消費・食生活
 女性の社会進出や単身世帯の増加、生活スタイルの多様化等を背景に、中食や外食への支出が増加するなど消費者の食に対する意識は変化しています。こうした中で、栄養バランスの崩れや、食料ロス等が問題化しています。食生活の見直しが、国民的な運動となるよう、国、関係機関をあげた支援が必要となっています。
 特に、子ども達の食生活の乱れ等の改善が緊急な課題であり、食習慣の形成期から適正な栄養摂取・食生活を心掛けられるよう食と農に関する教育の充実が必要です。

(2)食料自給率と食料安全保障
 我が国の食料自給率は低下を続け、10年度は供給熱量ベースで40%となりました(表1)。食料自給率の低下要因は、長期的には米の消費減と畜産物、油脂類の消費増等、食生活の変化、短期的には国内生産の減少にあります(図1)。
 食料の安定供給確保のためには、国内農業生産の増大を図ることを基本に、安定的な輸入の確保と適正な備蓄の実施が不可欠です。また、凶作や輸入の途絶等の不測の事態に備えた危機管理体制の整備が必要です。

(3)食料の安定供給を支える食品産業と安全・良質な食料の供給
 飲食料の最終消費の内訳をみると、加工食品や外食の占める割合が上昇傾向にあります。我が国農業としても食品産業が求める原料農産物の生産・供給体制の整備が重要であり、食品産業と農業の連携を積極的に推進していくための総合的な支援が必要です(図2)。
 また、食品産業における廃棄物の減量化、リサイクルの推進等、事業活動に伴う環境負荷の軽減のための仕組みづくりが必要になっています。
 食品の安全性と品質への関心の高まりを背景に、食品表示の充実強化や有機食品の検査認証・表示制度の創設等が進められています。また、遺伝子組換え食品の表示が13年度から実施される予定です。

(4)世界の穀物需要と農産物貿易の動向
 世界の穀物需給は、1996/97年度以降緩和傾向で推移していますが、開発途上国を中心とする人口増加と畜産物消費の拡大や農用地の面的拡大の制約等から、世界の食料需給は中長期的にはひっ迫する可能性があります。
 近年の農産物貿易の動向をみると、米国等先進輸出国からアジア等開発途上国への輸出が大きく増加するとともに、南米を除く開発途上国の農産物貿易収支が悪化しています。

(5)WTO をめぐる動き
 現行 WTO 農業協定は、輸入国と輸出国、先進国と開発途上国との間での公平・公正な貿易ルールという見地からは不十分と言えます。WTO 農業交渉では農業の多面的機能等新たな基本法の理念や施策が正当に位置づけられるよう国際世論の形成に努めることが重要です。

2.農業の持続的な発展(第・章)


(1)我が国農業の特質
 我が国では、高温多雨な夏に適した水田農業が広く展開され、農業用水の管理・利用等を通じて形成された農業集積を単位とする営農形態が発達しました。

(2)我が国農業を支える基盤
 農業労働力の減少と高齢化は、農業の持続的な発展にとり深刻な問題であり、幅広い担い手確保が重要です(図3)。新規就農者数は増加傾向にありますが、その確保のためには多様な就農経路等に応じて、行政、関係団体等が連携した支援が必要です。
 農地は、非農業的土地需要への転用や耕作放棄等により年々減少しており、計画的土地利用と耕作放棄防止の取組みが重要です(図4)。
 農業用水は、農業生産に供されるだけでなく、生活に密着した 「地域の水」 として地域用水機能等多面的な役割を発揮しており、適切な整備・更新と維持管理が必要です。
 研究開発については、現場を支える技術と、バイオテクノロジー等農業技術の革新が期待される基礎的な技術に、今後の重点がおかれています。

(3)多様な担い手の確保と農業経営
 我が国の農業生産は、地域の実情に応じた多様な担い手に支えられています。認定農業者のような効率的かつ安定的な農業経営の育成確保を進めるとともに、集落営農、サービス事業体、第3セクター等の担い手を育成し、相互に補完し合う仕組みづくりが必要です。
 市町村においては、認定後おおむね5年を経た認定農業者の現況を踏まえ、さらなる改善が図られるよう、再認定に向けた取組みが重要な課題となっています。
 農業法人の経営発展には、マーケティング能力の向上が課題であり、異業種交流も含めた幅広いネットワークづくりが重要です。

(4)我が国の農産物需給の動向と水田を中心とした土地利用型農業の発展
 最近の自主流通米の価格は、市場評価や需給動向を反映して敏感に反応する傾向にあり、今後は需要に応じた計画的生産が一層重要です。土地利用型農業の活性化を図るには、市場ニーズに即応し農産物の安定供給等を進めるとともに、米と他作物とを組み合わせた収益性の高い水田農業経営の確立が必要です。
 消費者・実需者のニーズに的確に対応した生産・供給を促進するため、米以外の作物でも市場原理を一層重視した価格形成の仕組みの導入が進みつつあります。また、価格の大幅な変動が農業経営に及ぼす影響を緩和するための経営安定対策の導入も進められています。
 てん菜及びさとうきびについては、11年9月に策定された 「新たな砂糖・甘味資源作物政策大綱」 に基づき、最低生産者価格制度を維持しつつ、需給事情等が価格に適切に反映されるよう算定方式を見直すこととなっています。

(5)農業の自然循環機能の維持増進
 環境保全型農業は、農産物の販売価格等の面で有利な点がある一方、収量や労力の面で問題もあり、現場に十分浸透していません。一層の推進のためには、関連技術の開発・普及や全国的な認証方式の確立等が重要です。

ページのトップへ

3.農村の振興と農業の有する多面的機能の発揮(第・章)


(1)農村の現状
 農村では、中山間地域を中心にした人口の減少傾向や、混住化が進行しています(図5)。農村における定住を図るには、農業や地場産業の振興等による就業機会の確保、生活環境の整備、周辺地方都市との交通条件の改善等が必要です。また、農村では、高齢化が進行しており、高齢者が生涯現役として地域活動を続けていくための条件整備や、要介護高齢者を地域ぐるみで支える福祉体制の充実等が課題です。

(2)農業の有する多面的機能の発揮
 農村で適切な農業生産活動が行われることにより生じる多面的機能は、国土の保全、水源のかん養、自然環境の保全、良好な景観の形成、文化の伝承等多様で、国民生活・国民経済の安定にとって重要な役割を担っています。
 一般に河川の上流にある中山間地域は、多面的機能の発揮を通じ、下流域の住民の生活基盤を守る防波堤としての役割を果たしています。平地に比べ条件が不利なため生じやすい中山間地域の耕作放棄を防止するため、農業の維持に要する費用を支援する直接支払が導入されます。

3)農村の総合的な振興
 農村の整備については、農村の景観や自然環境の保全、地域資源の循環利用等に配慮しつつ、農業生産基盤と生活環境を総合的に整備する必要があります。住みよい農村とするうえで、行政機関の役割分担の明確化、地域住民等多様な主体の参加の促進、行政と地域住民等を含めた地域の合意形成等を通じ、効率的・効果的な生活環境の改善を図ることが必要です。
 農村の活性化を図るためには、創意工夫を図りつつ地域振興に資する多様な取組みを進めることが必要です。農村には、農業に由来する多様な伝統文化があり、地域住民を主体とする伝承活動は、農村の活性化に貢献している一方で、伝統文化の担い手不足も大きな問題となっており、伝承に対する支援も必要です。また、農村における情報化は、農業経営の活性化や都市への情報発信による交流の促進等にもつながる効果的な手段です。
 都市と農村の交流については、農業・農村に対する国民の理解を深め、健康的でゆとりのある生活を実現する取組みとして、長期的な視点に立った活動が必要です。都市住民のニーズを踏まえ、ソフト・ハード両面からの条件整備が必要です。
 人格形成期にある子ども達の自然体験は、豊かな心を育み、道徳観・正義感を身に付けさせるものとして、教育の場でも注目されています(図6)。農業体験は、貴重な自然体験となるとともに、子ども達の農業への理解の醸成や将来の担い手確保の観点からも重要です。

ページのトップへ


BACK ISSUES