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第4回 WTO 閣僚会議の結果と今後の農業交渉

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最終更新日:2010年3月6日

砂糖類ホームページ/国内情報


農林水産省から
[2002年1月]

 去る11月9日から14日に、中東カタールのドーハで第4回 WTO 閣僚会議が開催されました。その結果と今後の農業交渉について紹介していただきました。

農林水産省国際経済課 国際専門官 鶴崎 一郎


1. 第4回閣僚会議まで  2. カタール閣僚会議
3. 閣僚宣言農業部分のポイント  4. 今後の農業交渉


1. 第4回閣僚会議まで

 ドーハからちょうど2年前、米国西海岸のシアトルにおいて、第3回 WTO 閣僚会議が開催されました。しかし、ご記憶のある方も多いのではないかと思いますが、同会議では、交渉対象分野や交渉の進め方等に関する各国間の大きな立場の違いを埋めることができず、また、運営の透明性に関する途上国の不満もあり、新ラウンドを立ち上げることができませんでした。
 その後、農業分野とサービス分野については 「合意済み課題」 として既に交渉開始が合意されていたため、2000年始めから交渉が開始されましたが、我が国は、ダンピング防止や投資、競争等他の分野も含む幅広い新ラウンドの立ち上げを一貫して目指してきました。(注:「ラウンド」 とは一般的に、ガット/WTO における多角的貿易交渉のことを指します。)

会議場
会議場
会場周辺
会場周辺
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2. カタール閣僚会議

 我が国は、武部農林水産大臣、平沼経済産業大臣をはじめ各省から多数の代表団をドーハに送り込み、連日精力的に交渉、調整を行いました。武部大臣は、全体会議への出席だけでなく、米国のベネマン農務長官、ゼーリック通商代表、EU のフィシュラー農業委員 (農業大臣) 等各国の要人と精力的に二者会談を行い、我が国の主張をアピールしました。
 閣僚宣言の文言調整プロセスは、EU が 「輸出補助金の段階的撤廃」 の表現を修正することに最後までこだわったことと、一部途上国が実施問題 (途上国はウルグアイラウンドで合意された義務の緩和や技術支援を要求) を強く主張したり、投資、競争等の新分野を交渉対象とすることに反対したことから、最終日は徹夜折衝となるなど終盤ややもつれましたが、結局会期を一日延長し、14日の現地時間夕刻、全ての加盟国合意のもと、閣僚宣言を採択することができました。
 閣僚宣言により、我が国が最大の目標としていた WTO における新たな多角的貿易交渉が開始されることになりました。いわゆる “新ラウンドの立ち上げ” です。交渉対象分野は、実施問題、農業、サービス、非農産品市場アクセス、投資、競争、WTO ルール (ダンピング防止等)、貿易と環境等幅広いものとなっており、我が国の主張が概ね取り入れられています。農業も新ラウンドの一環として位置付けられました。
 本会議が成功裏に終結した要因としては、一般理事会議長による閣僚宣言案が非常にバランスのとれたものであり、閣僚会議前の文言調整プロセスがシアトル前に比べはるかにスムーズに進められたこと、及び、閣僚宣言の随所に途上国への配慮が盛り込まれるなど途上国に対しても最大限配慮がなされたこと、が考えられます。また、米国で起きた同時多発テロが、逆に 「今、世界が結束力を示し、不透明さを増している世界経済に活力と安定を与えるために新ラウンドを立ち上げなければ」 という推進力になった、とも指摘されています。



3. 閣僚宣言農業部分のポイント

 宣言の農業部分につき我が国は概ね肯定的な評価をしています。農業についてどのような内容が決まったのか見てみましょう。
 まず、ケアンズ・グループ (豪、NZ を中心とした農産物輸出国グループ) が主張していた 「農工一体論」 は我が国等の反対により、盛り込まれませんでした。「農工一体論」 とは、農業の特殊性を認めず、農産物に鉱工業品と同じ貿易ルールを当てはめるべきという主張です。
 また、非貿易的関心事項が交渉において考慮されることが確認されました。これに関して、“貿易を歪曲しない措置による” といった我が国が反対していた限定条件は盛り込まれませんでした。
 更に、輸出補助金、市場アクセス、国内支持の3分野の記述全体について 「交渉の結果を予断せず」 との文言が加えられました。この部分についても、閣僚宣言の段階で交渉結果の先取りはできないという我が国の主張が受け入れられた形となりました。
 このように、農業テキストについてもかなりの部分我が国の主張が反映されています。

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4. 今後の農業交渉

 それでは、カタール閣僚会議を受け、農業交渉は今後どのように進展していくのでしょうか。
 まず、上でも述べたように農業交渉は先行して始まっていましたが、今回新ラウンドの一環として位置付けられたことにより、“おしり (終着点)” が決まりました。他の交渉分野と一緒に、2005年1月1日に終結し、一括して受諾されることとなりました (「シングルアンダーテイキング」 と言います。)。すなわち、残された交渉期間はほぼ3年です。
 また、それに至るまでのスケジュールも同時に決定されました。
 まず、モダリティの策定は2003年3月末とされています。「モダリティ」 とは各国に共通に適用されるルールを指し、例えば 「関税を6年間で平均36%削減する」 といったことです。
 続いて、改訂譲許表案を2003年末までに開催される見込みの第5回閣僚会議までに各国が提出することが決められました。譲許表とは、例えば 「ぶどう糖の関税を35%から30%に引き下げる」 といった個別品目毎の 「約束」 を表にしたものです。既に UR の時に合意したものがあるのですが、新しいモダリティに合わせて改訂したものを第5回閣僚会議までに提出する、ということになりました。
 モダリティを決定するにも、輸出国と輸入国、あるいは先進国と途上国ではそれぞれ思惑が違いますし、譲許表はもちろん個々の品目毎に数値を作成するわけですから、膨大な作業となります。したがってこれらを作成していくスケジュールは相当忙しいものになります。
 更に、各国から改訂譲許表案が提出された後、個々の品目毎に関心国間の協議を経て、最終的に譲許表が確定することになりますが、それを2005年1月1日を目指して行っていくわけです。
 我が国は2000年12月に WTO に提出した、“多様な農業の共存”を基本哲学とする日本提案をベースに、非貿易的関心事項を十分に反映させるべく交渉に臨んでいきます。もちろん、大幅な貿易自由化を主張する輸出国からの巻き返しもあり、“甘くはない” でしょう。カタール閣僚会議を受け、本格的な交渉がまさにこれからスタートします。
 (WTO 農業交渉については、農林水産省のホームページ 『WTO 農業交渉コーナー』 (http://www.maff.go.jp/) において、今後も随時情報を提供していきます。是非ご覧下さい。)



(参考)
ドーハ閣僚宣言農業部分
(農林水産省仮訳)
○農 業
・我々は、計121ヶ国から提出された数多くの交渉提案を含む、農業協定20条の下で2000年初から開始された交渉の中で既に行われている作業について認識する。我々は、世界の農産物市場における制限と歪曲の是正・防止のため、支持及び保護についての強化された規律と具体的な約束を含む根本的改革のプログラムを通じて、公正で市場指向型の貿易体制を確立するという、農業協定に言及された長期目標を想起する。我々は、このプログラムへの約束を再確認する。我々は、これまでに実施してきた作業を基礎として、また交渉結果を予断することなく、市場アクセスの実質的な改善、全ての形態の輸出補助の段階的撤廃を目指した削減、及び貿易歪曲的な国内支持の実質的な削減を目的とした、包括的な交渉を約束する。我々は、開発途上国に対する特別かつ異なる待遇は、交渉における全ての要素の不可分の一部でなければならないことに合意する。また、特別かつ異なる待遇は、それが運用上効果的であり、途上国が食料安全保障や農村地域開発を含む開発上のニーズを効果的に勘案できるように、譲許表に、また適切な場合にはルール及び規律に、体現されなければならないことに合意する。我々は、加盟国から提出された交渉提案に反映された非貿易的関心事項に留意するとともに、非貿易的関心事項が農業協定で規定されているとおり交渉において考慮されることを確認する。
・特別かつ異なる待遇に関する規定を含む更なる約束に関するモダリティーは、2003年3月31日までに定められなければならない。これらのモダリティーに基づき、参加国は、包括的な譲許表の案を第5回閣僚会議の日までに提出しなければならない。ルールや規律に関する事項、関連する法的文書を含め、交渉は、交渉議題全てが終結する日に、その一部として終結しなければならない。

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