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平成13年度食料・農業・農村白書の概要

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最終更新日:2010年3月6日

砂糖類ホームページ/国内情報


農林水産省から
[2002年7月]
 去る5月17日、「平成13年度食料・農業・農村の動向に関する年次報告」(食料・農業・農村白書)が閣議決定を経て、国会に提出、公表されました。以下、平成13年度白書の概要について紹介します。

農林水産省大臣官房評価課 調査第二係長 井出 宏典


第I章 食料の安定供給システムの構築
  1 BSE等我が国の 「食」 が直面する課題
2 諸外国の農政動向
3 食料自給率と食料安全保障
4 世界の農産物需給と我が国の農産物貿易の動向等
5 WTOをめぐる動き
第II章 構造改革を通じた農業の持続的な発展
  1 我が国農業の生産構造の現状と改革
2 農産物需給の動向
3 農業技術の開発・普及の推進
第III章 農村と都市との共生・対流による循環型社会の実現
  1 農業の自然循環機能の維持増進
2 農業の有する多面的機能の発揮
3 農村の現状
4 循環型社会の実現に向けた農村の総合的な振興


第I章 食料の安定供給システムの構築

1 BSE等我が国の「食」が直面する課題
(「食」 の安全性に対する信頼を揺るがしたBSE問題)
 平成13年9月、我が国で初めてBSE(牛海綿状脳症)が発生しました。当初、関係機関の連絡体制が十分機能せず、感染牛の処理情報が誤って伝えられるなど対応が混乱しました。こうした経緯が行政に対する不信を生じさせるとともに、「食」の安全性に対する信頼を大きく揺るがす結果となり、多くの消費者が牛肉の消費を控えたことから、多くの肉用牛肥育経営等の収益性の悪化や酪農経営の悪化を招きました。
 このため、関係府省との緊密な連携のもと、平成13年10月からと畜場におけるBSE全頭検査体制を確立するなど各般の措置を講じました。同体制の確立後は、家庭での牛肉の購入量も上向くなど牛肉消費の回復に向けた動きは確かなものとなりつつあり、今後ともBSEに関する正確な情報伝達、正しい知識の普及・啓発が求められます。(図1)
図1 BSEの疑いのない安全な畜産物の供給体制の構築
図1
資料:農林水産省作成
(消費者サイドへ軸足の移動が求められる農林水産政策)
 BSE発生の対応について種々の問題が指摘されたことを受け、農林水産及び厚生労働両大臣の私的諮問機関「BSE問題に関する調査検討委員会」が設置され、これまでの行政対応上の問題の検証及び今後の畜産・食品衛生行政のあり方が調査・検討されました。そして、平成14年4月に同委員会報告が取りまとめられ、食品の安全性を確保するための包括的な法律の制定や新たな行政組織の構築が提言されました。(報告書全文は農林水産省並びに厚生労働省ホームページで参照可能)
 今後は同報告を尊重し、「食」の安全と安心を確保するため、農林水産政策の軸足を消費者サイドに大きく移し、食品安全行政の大胆な見直し・改革を行っていくことが必要です。
(「食」の安全性確保と食品表示の課題)
 最近、BSE問題以外にも食品の安全性にかかわる出来事が相次ぎ、消費者の食品の安全性に対する関心は増大しています。これら消費者の不安・不信に対応し、信頼を回復するためには、食品の生産から消費に至る各段階間での連携と一貫した安全性の確保が必要となっています。
 食品の安全性確保については、国際的に注目されている「リスク分析」の手法を応用することを検討し、これにより消費者との相互理解に努めていくことが必要です。
 こうしたなかで食品事故発生時の追跡調査や回収を容易にすること、また生産情報等を消費者に提供して「消費者と生産者の顔の見える関係」の確立による信頼確保を図る観点から、食品の履歴情報を遡及して確認可能なトレーサビリティ・システムが期待されており、今後、同システムの導入に向けて取り組んでいくことが重要です。(図2)
図2 トレーサビリティ・システムのイメージ
図2
(「食」と「農」の距離の拡大)
 生活スタイルの多様化等から、食料費支出に占める「外食」及び「中食」の割合は3割近くに達しています。こうしたなか、食料や農業に関する知識等の低下等の「食」と「農」の距離の拡大を認識している人は6割以上に達しています。このため、消費者と生産者の情報の疎通や子ども達への「食」や「農」に関する教育、農業体験等の推進により、「食」と「農」の一体化を図ることが求められています。
 白書では、地域の伝統的な野菜を学校農園で復活する事例(東京都練馬区の「練馬大根」栽培の取組み)や「オール地場産学校給食の日」の設定による「食と農」に関する教育と地産地消の取組事例(富山県黒部市)を紹介しています。

白書では、地域の伝統的な野菜を学校農園で復活する事例(東京都練馬区の「練馬大根」栽培の取組み)や「オール地場産学校給食の日」の設定による「食と農」に関する教育と地産地消の取組事例(富山県黒部市)を紹介しています。

(食生活の現状と「食生活指針」の推進)
 我が国の食生活は、近年脂質を上昇させる形で欧米型に近づく傾向にあります。こうしたなかで、脂肪の過剰摂取等をはじめとする栄養バランスの崩れが発生しており、米飯を中心にして必要な栄養素をバランスよく摂取していくことが必要です。
 さらに、「欠食」等の食生活の乱れや生産から消費に至る各段階で生じる「食料ロス」等への対応も課題となっています。
 これらの課題の解決のため、平成13年度に「食生活指針」の一層の浸透・実践に向けた普及活動を実践するための「食生活指針ガイド」が作成されました。学校教育の場をはじめ、家庭、職場、地域等における国民的な運動として取り組んでいくことが必要です。
(食品産業の動向)
 日本経済が緩やかなデフレの状態に入るなかで外食産業における企業間の競争が激化しており、業界各社の人件費や仕入コスト等の削減努力は食材の流通・生産段階にまで影響しつつあります。
 また、食品小売業は、コンビニエンス・ストア等の店舗数・年間販売額が増加し、従来型の食料品専門店が減少するなど業態に変化がみられ、こうしたなかで食品の流通経路は多様化しています。

2 諸外国の農政動向
(食品安全行政をめぐる動き)
 世界規模で「食」の安全性に関する消費者の意識が高まり、国際的な議論も活発化しています。近年では、リスク評価、リスク管理、リスクコミュニケーションからなる「リスク分析」の手法を食品の安全性確保に応用することが国際的な潮流となっており、フランス等の食品安全行政の再編の基本的な考え方として「リスク評価とリスク管理の 機能的分離」(物理的分離ではない)が重要になっています。
また、リスク管理の手法としては、トレーサビリティ・システムの導入のように「食卓から農場まで」を対象とする施策の展開が主流となっています。
(中国のWTO加盟をめぐる動き)
 2001年12月、中国がWTOに加盟しました。加盟に際して、「対中セーフガード」創設等の条件が付されていましたが、今後、中国が加盟条件を確実に履行した場合、同国による穀物や大豆油等の輸入の大幅な増加が見込まれます。また、野菜等の労働集約的作物については、対日輸出攻勢が引き続き強まる可能性が強いと考えられます。  また、中国はWTO加盟後も当面は現行の為替管理制度を維持していくものとみられますが、今後、国際的な公平性を確保する観点からも、人民元の為替レートの適正化の議論も惹起されていくものと考えられます。

3 食料自給率と食料安全保障
 我が国の食料自給率は、昭和40年度から 平成12年度の間に73%から40%に大きく低下しました。(図3)
 これは米の消費が減少する一方で、畜産物等の消費の増加に伴う飼料作物の輸入の増加が一因となっています。平成12年度の自給率は3年連続の40%となっていますが、自給率の長期的な低下傾向に歯止めがかかったと判断するのは時期尚早であり、自給率向上に向けて生産・消費の関係者が一体となったさらなる取組みが重要です。
図3 供給熱量の構成の変化と品目別供給熱量
図3 図3

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4 世界の農産物需給と我が国の農産物貿易の動向等
(世界の穀物需給等)
 世界の穀物等の需給動向は、緩和基調で推移しています。  しかし、将来は、人口増加や都市化によるライフスタイルの変化等に伴い食用及び飼料用穀物の需要が増加することが見込まれます。一方、単収の伸びに鈍化傾向がみられるとともに、水資源の枯渇等の環境制約が指摘されており、不確実性が増大するなかで世界の食料需給は中長期的にはひっ迫する可能性も指摘されています。
(我が国の農産物貿易の動向)
 近年の食料輸入は、数量ベースでは増加基調にあります。最近では、生鮮野菜の輸入量が過去5年間に1.5倍に増加しており、なかでも中国からの輸入が急増しています。(図4)
図4 供給熱量の構成の変化と品目別供給熱量
図4
資料:財務省 「貿易統計」
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5 WTOをめぐる動き
新ラウンドに先立ち開始されている農業交渉は、今後の世界の農産物貿易ルールの方向を決定する重要な交渉であり、我が国は「多様な農業の共存」を基本哲学とする「WTO農業交渉日本提案」をWTO事務局に提出し、説明を行ってきました。
新ラウンドでは、農業交渉も他の分野とともに一括して合意されるべきものとして位置付けられました。
今後、EU等多面的機能フレンズ諸国と連携し、開発途上国の賛同を得つつ、農産物輸出国に対して粘り強い交渉を行っていくことが必要です。

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第II章 構造改革を通じた農業の持続的な発展

1 我が国農業の生産構造の現状と改革
(農業の生産構造の現状と今後の方向)
 平成12年の農業産出額に占める主業農家の割合は、米では他作目を大きく下回っています。(図5)
 また、稲作農家の規模拡大も十分でなく、米を中心に構造改革が遅れています。こうしたなかで意欲と能力のある経営が経営規模の拡大や作物転換等の経営の革新に取り組むことができる環境を整備し、農業の構造改革を推進することが重要かつ緊急の課題となっています。
図5 農業産出額の農家類型別のシェア
図5
(農家戸数と農業労働力等の状況)
 平成13年の総農家戸数は307万戸で、このうち販売農家は229万戸となっています。主副業別にみると主業農家や準主業農家が減少傾向にあり、副業的農家はほぼ横ばいで推移しています。
 また、定年帰農や新規就農者が増加傾向(平成12年は7.7万人)にあり、農業労働力の量的減少に歯止めがかかりつつありますが、高齢化は著しく進行しています。(図6)
図6 平成7〜12年の間の農家の分化
図6
(効率的かつ安定的な農業経営の育成・確保等)
 農業生産法人は有限会社形態を中心に増加(平成13年1月現在6,213経営体)しています。さらに、農地法の一部改正により株式会社形態をとるものも増加のきざし(平成14年5月現在25経営体)がみられます。
 稲作農家等の大規模経営では、効率的で生産性の高い経営を実現していますが、近年の農産物価格の変動等による農業所得の増減が農家総所得に大きく影響しており、これらの変動を緩和し、「育成すべき農業経営」の経営規模の拡大等への積極的な取組みを可能とするセーフティネットの整備が求められています。
(農地等の確保と有効利用)
 耕地面積は昭和36年の609万haから平成13年には479万haとなり、耕作放棄を主因に減少しています。(図7)
 こうしたなか、農地の大規模層への利用集積の水準はまだ不十分であり、その促進のためには良好な営農条件を備えた農地の確保や水田の汎用化の推進も重要です。
図7 耕地面積及び拡張・かい廃面積の推移
図7

2 農産物需給の動向
(農業の交易条件)
 生産者段階の農産物と生産資材価格の相対的な関係を示す農業の交易条件指数は、農業生産資材価格の下方硬直的な傾向のため、悪化が続いています。(図8)
 資材供給面からの交易条件の改善には、農業生産資材の流通等の合理化とコスト低減が必要です。特に、流通の大宗を担う農協系統の取組みが重要となっています。
図8 交易条件指数の推移
図8
(米の需給動向と米政策の見直し方向の決定)
 平成13年度産水稲の生産は、作付け面積170万3千ha,作況指数103(やや良)、生産量904万8千トンとなり、米の需給は緩和基調で推移しています。
 平成13年度の生産調整規模は過去最大の101万ha(転作率38%)となり、生産現場では生産調整への限界感や不公平感の増大がみられ、また、自主流通米価格の低迷が続いています。 これらの課題に対応するため、13年11月に「米政策の見直しと当面の需給安定のための取組について」を決定しました。今後は、これらの検討結果を踏まえ、生産者団体・行政が一体となり、生産現場における理解と納得を基礎に着実かつ実効のある改革を実施していくことが必要です。
(耕畜連携等を通じた畜産の発展)
 BSEの発生による牛肉消費の大幅な減退から、枝肉生産量の減少、価格低下を招き、多くの肉用牛肥育経営等の収益性は悪化しています。また、酪農経営も廃用牛等の販売収入が減少しています。
 安全な粗飼料確保による畜産経営の安定化や食料自給率の向上のためには、自給飼料増産が求められており、水田を有効に活用できる稲発酵粗飼料の作付けが近年増加しています。今後、稲作農家をはじめとする耕種農家と畜産農家の連携強化が期待されます。


3 農業技術の開発・普及の推進
 遺伝子組換え農作物の安全性に不安をいだいている消費者がみられる一方、同技術には、重金属吸収作物の開発による環境問題の解決等への貢献が期待されています。
 遺伝子組換え農作物の開発・実用化の際には関係省が連携して安全性評価を実施しています。



第III章 農村と都市との共生・対流による循環型社会の実現

1 農業の自然循環機能の維持増進
 太陽エネルギーや水・空気等を利用し、自然の循環過程のなかで営まれる農業は環境と相互に影響し合っています。例えば焼畑農法の不適切な実施によって、森林が破壊され地球温暖化が助長されるなど、農業は環境に影響を及ぼします。
 地球環境問題の解決のためにも、環境と調和した持続的な農業の展開を通じた循環型社会の構築が重要となっています。(図9)
図9 食料や農業生産に由来する有機物等に循環と施策
図9
資料:農林水産省作成

2 農業の有する多面的機能の発揮
農林水産省は、農業等の有する多面的機能について日本学術会議に諮問を行い、平成13年11月に、農業及び森林の多面的な機能の評価に関する答申を受けました。答申では、多面的機能の具体的な内容や一部の機能について試算した定量的評価結果についても言及されました。
多面的機能のうち情操かん養機能を活用した子ども達の農業体験は、豊かな心を育み、人格形成に大きな効果があるものとして教育の面からも期待されています。

3 農村の現状
我が国の経済成長にともなって、都市の過密等による生活環境の悪化や農村の過疎化・高齢化等の課題が「20世紀の負の遺産」として残りました。これらの課題の解決のため、地域間格差や東京一極集中等の是正に取り組むことが重要です。
特に、農村では少子化・高齢化が急速に進行し、中山間地域を始めとする過疎地域では人口減少等により集落の維持が困難となり、集落機能の再編を必要とする地域も増加しています。

4 循環型社会の実現に向けた農村の総合的な振興
国民の意識が「心の豊かさ」重視に転換しているなかで、都市では都市だけでは充足できない「おいしい水」等の享受や、「ふるさと」の実現を可能とする農村の役割が増しています。また、過疎化や高齢化が進む農村の活性化のためには都市側からの支援を求めていくことも必要となっています。こうしたことから、お互いの魅力が享受できる環境と調和した循環型社会の実現を目標にした農村振興が期待されています。

白書では以下の多様な形態での共生・対流の主な取組事例を紹介しています。
ワーキングホリデー(長野県飯田市等)
 都市住民が休暇を利用して農作業のボランティアに参加している事例。
ボラバイト
 報酬より体験を求めて、都会の若者が、ボランティア感覚で農家等の仕事を手伝っている事例。
福祉農園の開設(園芸療法) (福岡県福岡市等)
 市民農園等において農作業により障害者等の機能回復を図る園芸療法の場を開設している事例。



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