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WTO及びFTA交渉を理解するための基礎知識

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最終更新日:2010年3月6日

砂糖類ホームページ/国内情報


農林水産省から
[2003年8月]


 現在、我が国の将来にとって重要な意味を持つ二つの貿易交渉が併行して行われている。ひとつは多国間貿易のルール作りであるWTO交渉であり、もうひとつは二国間での関税撤廃を目指すFTA(Free Trade Agreement)交渉である。これらの交渉は日々新たな動きがあるし、また交渉中の内容の多くは外交上の秘密扱いになり紹介しづらいので、ここではWTOやFTAに関する報道を理解する上で役立つ交渉の歴史、背景や用語を中心に、私見を交えながらできる限りわかりやすく解説したい。

農林水産省生産局 前国際室長   塩谷 和正


1 WTO交渉
  (1) 関税引き下げ方式から見たWTO交渉の歴史
(2) 現交渉における関税引き下げ方式の提案
(3) 農業交渉における関税引き下げ以外の要素
(4) 農業交渉の今後の見通し
2 FTA交渉
  (1) FTAに対する日本の考え方
(2) WTOにおけるFTAの位置付け
(3) FTAの影響


1 WTO交渉

(1) 関税引き下げ方式から見たWTO交渉の歴史
 現在のWTO交渉は、その前身であるGATT下の交渉(鉱工業品の関税引き下げが主体であったケネディ・ラウンド、非関税障壁が初めて取り上げられた東京ラウンド、農業分野やサービスなども交渉の対象に加えた上、WHO設立に合意したウルグアイ・ラウンド(1994年まで)など)から数えて9回目に当たる。今回の交渉は正式にはラウンドとは呼ばれず、交渉開始が決定されたドーハ閣僚会合(2001年11月)にちなんで、DDA(Doha Development Agenda)と呼ばれることが多い。
 交渉の仕方をみると、第5回までは各国が関心国に関税引き下げのリクエストを出し、2国間で交渉を行い、その結果を他の加盟国にも適用するという、2国間交渉積み上げ方式が採られていた。また交渉の結果は、現在と同様、関係国の合意なしには引き上げが認められない税率である譲許税率(Bound Rate)として登録された。
 なお、譲許税率を上限に各国は税率を定めることができるが、実際に適用されている税率を実行税率(Applied Rate)と言う。例えば牛肉の譲許税率は50%であるが、通常の実行税率は38.5%(輸入が急増すればこれを50%に引き上げることとなっている)である。
 第6回のケネディ・ラウンドからは、一定のルールの下での引き下げが行われるようになり、ケネディ・ラウンドでは一括引き下げ方式が、第7回の東京ラウンドでは関税率の高いものほど大きな引き下げが行われるハーモニゼーション方式が採られた。
 この結果、先進国における工業品の関税は、一部の例外を除き問題にならない程度まで低下し、貿易交渉の関心は農産品やモノ以外のサービス、知的所有権といった分野に拡大していくこととなる。
 このような分野を初めて扱う包括的な交渉となったのが、交渉期限を3年過ぎてようやくまとまった第8回のウルグアイ・ラウンド交渉である。このうち農業交渉は、主に、国境措置(関税その他の輸入を制限する制度のこと)、国内支持(国内農業を支える補助金などのこと)、輸出補助金(輸出促進のための補助金)についてのルール作りが行われたが、この中の国境措置については、全品目の関税化(譲許の義務付け)と合わせて、平均36%、最低でも15%の引き下げを義務付ける方式(これは「ウルグアイ・ラウンド(UR)方式」と呼ばれる。現交渉で我が国やEUはこの方式を提案している。)が採られた。
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(2) 現交渉における関税引き下げ方式の提案
1) 農業交渉
 UR農業交渉の結果作られたルールは、農業協定(各国の譲許表(関税削減の約束)もその一部)としてまとめられたが、合わせて、今後も改革を継続するために「新たな交渉」を行うことが協定に明記された。これは、予定が組み込まれているという意味でビルト・イン・アジェンダと呼ばれている。
 この「新たな交渉」が現在行われている交渉(DDA)で、交渉の基本的な構図はウルグアイラウンド合意をベース(国境措置、国内支持、輸出補助金)にしており、これをどこまでどうやって削減するかというのが主な論点となっている。
 我が国やEUは、関税引き下げの方式としてUR方式を提案しているが、これはウルグアイ・ラウンド合意の延長線上に現交渉があるという経緯も踏まえてのことであり、加盟国の約半数がこれを支持しているのも納得できよう。
 一方、ケアンズ・米国は、柔軟性が高く高関税品目の税率の大幅削減につながらないUR方式に反対し、一定の数式により各国の高い関税率を例外なく一定水準以下にするスイス・フォーミュラ方式を主張、両者の主張は大きく異なっている。なお、スイス・フォーミュラは東京ラウンドで工業品の関税削減方式としてスイスが提案したものなのでこう呼ばれているが、スイスは一貫して国内農業を重んじUR方式を支持している国である。
 このような両者の主張を埋めるために、WTO農業委員会のハービンソン議長が今年2月と3月に提案したのが、議長モダリティ提案である(この「モダリティ」というのもWTO交渉独特の表現で、字義は「形式」だが、実際は「譲許表作成に当たってのルール」という意味で使われる)。その関税引き下げ部分はバンド・アプローチと呼ばれ、関税の水準の帯(バンド)に従って関税率の削減幅に差を設けて高関税の削減を促すもので、スイス・フォーミュラとUR方式の折衷案と言える方式である。

従価税相当で90%超品目
  :平均60% 最低45%削減
従価税相当で90%〜15%超品目
  :平均50% 最低35%削減
従価税相当で15%以下品目
  :平均40% 最低25%削減

 これは、機械的に個々の品目の税率が決まってしまうスイス・フォーミュラよりは柔軟性はあるものの、その削減幅は大きく、各国が守りたいので高い関税を張っている品目の関税の大幅削減を求められるという実質的にケアンズ寄りの案になっている。このため、我が国、EUなどはこれに反対し、交渉のベースにならないとしているが、ケアンズ・米国も、多分に交渉戦術もあると思われるが、「野心が足りない」として反対した結果、交渉のベースとはならないという否定的な整理がされた(6月の非公式閣僚会合では、ケアンズ・米国は、「交渉のベースにはなる」と発言)。

2) 非農産品交渉
 5月には、非農産品(林産物・水産物を含む)交渉でも、「モダリティの要素」として具体的な数字の入らない議長案が提案されたが、その関税削減方式は国内の全般的な関税水準が高い国ほど削減率が小さくなる一方、国内の一部に高関税の品目がある場合にこれが大きく削減され、関税率の平準化が図られるという数式(フォーミュラ)である。全般的に低関税の国は国際競争力があるのだから大幅に関税を下げるべきであり、関税率の高い国は、競争力がないのだから関税をあまり下げなくてもいいという発想は、各国間の関税を揃えるという従来のハーモニゼーションの考え方に沿わないものであるが、米国やEUなど交渉のベースとして評価する国も多い。我が国にとってみると、数次にわたる関税引き下げの結果、我が国の工業品の関税水準は世界でも最も低い水準となっているが、その努力がまったく報われないこととなる上、非農産品というくくりの中に分類上は入ってしまう水産品など関税が比較的高いことから、これら分野は特に大幅な関税引き下げが求められることとなる。さらに、非農産品の議長提案には、途上国の求める皮革、靴、水産品など特定のセクター(分野)の関税撤廃提案が含まれている。我が国は、強く反対しているが、残念ながらこれをベースに議論することに反対する国は少ない状況にある。
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(3) 農業交渉における関税引き下げ以外の要素
1) 国内支持
 ウルグアイ・ラウンド交渉では、貿易歪曲性の程度によって、国内支持政策を、緑、青、黄色に分け、価格支持政策など黄色の政策の合計額であるトータルAMS(Aggregate Measure of Support)の2割削減が合意された。現交渉では、AMSを大幅(6割)削減する、青の政策も削減対象とする、品目別のAMSを導入するといった提案が行われている。我が国に影響が大きいのは品目別のAMSで、これが導入されると、補助金等に実質的な上限が設けられ、政策選択の幅が狭まることとなる。

2) 輸出補助金
 WTOの協定のひとつに補助金協定と呼ばれるものがあり、これは、国によるダンピング輸出とも考えられる輸出補助金の支出を禁止している。だたし、農業に関する輸出補助金だけは、農業協定に特別の規定が設けられた結果、例外として認められている。輸出補助金はEU、米国など先進国が主に余剰農産物を処理するために支出されており、このため、途上国の市場が奪われる、国際相場が低落し途上国の農業者の経営を圧迫するといった深刻な影響が指摘されている。現交渉では、撤廃が提案されているが、世界の輸出補助金の9割を占めるEUなどは反対している。日本には輸出補助金はなく、今後も行わないことを約束している。
 なお、輸出補助金に関連して、輸出信用、食料援助といった輸出補助金と同等の効果が懸念されるものや、輸出国への義務として輸出規制、輸出税も議論されている。

3) 関税割当の運用規律強化
 我が国を始め多くの国はUR交渉の結果、関税化を行いTQ(関税割当)制度を導入したが、低関税である1次枠での輸入が枠を満たしていない(消化率が低い)ことの原因が用途指定(例えば、用途を飼料用に限っているもの)や抱き合わせ(例えば、輸入の条件として一定量の国産品のブレンドを義務付け)であるとして現交渉で問題になっており、その規律の強化が議論されている。論点としては小さいように見えるが、乳製品などに実質的に大きな影響を与えかねないため、我が国にとっては大きな関心事項になっている。

4) その他
 EUが強く主張しているのが、GI(地理的表示)の保護問題である。これは、パルマハムやゴルゴンゾーラチーズといった地名を含む名称は伝統的な価値を持っているので、その地域で作られたもの以外にこれら名称を使うことを禁止しようというもの(EU内では既に制度化されている)である。現交渉で域内各国に示せる成果(メリット)があまりないEUとしては、これを国内の説得材料にしようと考えているようであるが、各国の受け入れるところとはなっていない。
 また、多くの分野で途上国に対する特別な配慮を求められており、これをどこまで認めるかが大きな論点となっている。
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(4) 農業交渉の今後の見通し
 前述のドーハ閣僚会合で決められたスケジュールによれば、(1) 今年の3月末までにモダリティが作られ、(2) これに基づいて今年9月のメキシコ国カンクーンでの閣僚会合までに各国が譲許表案を作成・提出、(3) 個別交渉を経て2004年末までにすべての交渉を終了することとなっているが、現在までのところ、(1) のモダリティの目途が立っておらず、野心的な米国・ケアンズと現実的なEU・日本の間、先進国と途上国の間で、お互いに従来からの主張を繰り返している。このため、日本は合意形成に引き続き努力しているものの、今のような状況が続くのであれば、残念ながら9月のカンクーン閣僚会合ではせいぜい今後の行程表(作業の進め方)に合意が得られればいい方ではないかとの見方をする者が多い。
 実際、カンクーンまでに交渉を進める動きがどこまで具体化するかは、7月末に予定されているモントリオール閣僚会合での進展を注視する必要があるが、これに影響を与えそうな最近の動きを紹介する。
 肯定的な動きとしては、EUのCAP(共通農業政策)改革が6月末にまとまり、削減対象となっている「黄」の政策の支持価格水準を一部品目ではあるが下げることになったことや、今交渉で削減を求められている「青」の政策である不足払いの相当程度を、生産要素と結びつかない「緑」の政策である支払い(デカップリング)に変えることとなったことがあげられる(図参照)。これらの結果、国内支持に関しては、EUはハービンソン案の削減水準を飲みやすくなったとも言われているが、詳しい検証が行われていないので、正確なところはまだ明らかになっていない。また、CAP改革は直接的には国内支持にしか関係しないことから、このあとEUがハービンソン案に替わる新たな包括的な提案を行うかどうかは不明(米国はEUが提案を行うべきと主張)であるが、今後は今まで交渉を遅らせているとしてEUを非難していた米国(実は、国内支持の大幅削減には相当の困難が伴う)が守勢に立たされる場面も想定され、現実的な対応を模索する動きにつながる可能性もある。
 また、6月の非公式閣僚会合では、交渉を進めるためには、新たな提案を用意すべきであるとの一応のとりまとめが行われたが、ハービンソン案が否定された後、加盟国から何ら方向性が示されない中、事務局が新たな案を作ることはできないのではないかとの見方もある。
 否定的な動きとしては、中国とインドが二国間の協力関係を構築する努力を始めたことがあげられる。過去の経緯を考えれば、両国の関係改善は相当の困難を伴うと思われるが、途上国を代表する両大国が一致してWTOの中での途上国の特別扱いを主張すると、先進国と途上国との対立をさらに深める可能性がある。
 ウルグアイ・ラウンド(UR)で交渉の帰趨を決定したのは、米国とEUの二国間協議の結果であったが、その後その密室性が批判された。現交渉では、途上国の参加が促された結果その発言力が増し、URとは違う形で交渉が進むと言う見方もあるが、現在のように主張が食い違い議論がまとまらない状況が続くと、現実論として大人数の場での決着を図ることは、困難な感が強く、今後、米・EUに期待する声が高まる可能性がある。このため、我が国の主張を交渉結果に反映させるためには、今後、米・EUの国内及び両国間の動きに注目しておく必要がある。
 特に、米国は国際交渉では強気の発言を行っているが、米国内の農業団体は、URの時に比べて自由貿易に対して懐疑的となっていると言われており(輸出促進が所得の増に結びつかないとの不満)、国内の補助金に対する期待が高くなっている。このような中、来年の大統領選も考えれば、米国がどこまで本気で交渉をまとめようとするか、注目しておく必要があろう。
実施共通農業政策の改革(穀物の場合)
実施共通農業政策の改革
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2 FTA交渉

(1) FTAに対する日本の考え方
 最近、注目を集めている貿易交渉にFTA(自由貿易協定)がある(FTAは、単に関税の相互撤廃協定のことであるが、日本が結ぼうとしているのは、実は投資の自由化、知的所有権問題などを含む幅の広い経済連携協定(EPA)である。ここではわかりやすくFTAを使う)。
 日本は従来、WTO(多数国の枠組み)を重視する姿勢を取り、二国間での関税同盟には否定的であったが、多くの先進国がNAFTA(北米自由貿易協定)を始めとするFTAを結ぶようになってきたこと(現在、世界で170を超えるFTAが結ばれている)への対抗や、海外に進出した日本企業がFTAを結んでいないことによる不利益を受ける場合もみられること(メキシコの場合)から、我が国も積極的にFTA交渉に取り組むようになった(表参照)。WTOに代表されるマルチの会合に比べ合意形成が容易なことや、お互いがFTAを進めようという基本的な合意があることから、FTAの締結は比較的短期間で行われる場合が多い。また、その影響は後述するようにWTOを上回る場合もあることに、留意しておかなければならない。なお、WTO交渉が停滞するような事態になれば、先進国は合意の容易なFTAにさらに傾斜すると言われている。日本としては、14年1月にシンガポールと結んだFTAが第1号であるが、シンガポールは農業セクターがほとんどないことから、農業の実質的な関税撤廃を伴う可能性のあるFTAとしては、現在、政府間協議を行っているメキシコが、第1号となろう。
 実は、日本の工業品の関税は既に多数の品目でゼロになっていることから、実質的なメリットとして相手国が農産物貿易の拡大を期待している場合が多いが、日本の農産品は国際競争力をほとんど持っていないことから、農業セクターにとっては一方的に輸入の拡大を求められるのに等しいという、苦しい状況にある。
FTAの各国との議論の状況
FTAの各国との議論の状況
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(2) WTOにおけるFTAの位置付け
 FTAは、加盟国には同じ関税率を適用するというWTOの最も基本的な原則である最恵国待遇の考え方からはずれるものであることから、GATT24条で一定の制限が設けられている(ただし、途上国間のFTAには実質的に制限がほとんどない)。この一定の制限は、「両国の貿易額の90%以上の関税の撤廃を含むものであって、10年以内にこれを達成しなければいけない」と説明される場合が多い。他の国のFTAを見ると、都合のいいところだけのつまみぐいは認めないが、総じて関税の撤廃が成されていれば、例外品目を認め合っており、撤廃までの年数も品目ごとに任意に決めているようである。これは、例外なく関税化し撤廃までの年限も決められるWTOの農業協定と比べると、格段に自由度が高いと言えよう。また、FTAが結ばれるとWTOの委員会に報告することとなっているが、過去、その内容が紛争案件となったことはなく、この点からも協定内容の自由度は高いと考えられる。

(3) FTAの影響
 FTAは関税の削減ではなく撤廃を二国間で合意するものなので、品目の選択や相手国の生産能力によっては、国内農業にWTOをはるかに超える影響を与えかねない。また、特定の国に関してのみ関税を撤廃すれば、国ごとの輸入割合を大きく変える可能性があり、シェアを失う国からクレームが予想される。さらに言えば、関税を撤廃すれば相手国は輸出の拡大を期待するので、日本が輸出が拡大しないよう国内対策を講じ、国内産業を守ろうとすれば、相手国から非難されることになろう。すなわち、WTOのようなマルチのルールへの対応に比べて、国内対策が講じにくい面がある。
 このため、FTAを結ぶに当たっては、個々の品目ごとに国内外への影響を慎重に検討する必要がある。
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