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平成17年度食料・農業・農村白書の概要

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最終更新日:2010年3月6日

砂糖類ホームページ/国内情報

農林水産省から
[2006年8月]
農林水産省大臣官房情報課情報分析室

年次報告班 金子 宜正



第1章 望ましい食生活の実現と食料の安定供給システムの確立
第2章 地域農業の構造改革と国産の強みを活かした生産の展開
第3章 農村の地域資源の保全・活用と活力ある農村の創造

 「平成17年度食料・農業・農村の動向」(食料・農業・農村白書)は、平成18年6月6日に閣議決定され、国会に提出、公表されました。

 17年度白書は、経済のグローバル化の一層の進展や人口減少局面への移行等経済社会の転換期を迎えるなかで、新たな「食料・農業・農村基本計画」(17年3月)に基づく農政改革の初年度(17年度)の主要施策の取組と課題を整理することにより、農政改革について、国民の関心と理解が一層深まることをねらいとして記述しています。

 また、白書冒頭に、最近の特徴的な取組や動きとして、
(1)基本計画に基づく農政改革の加速化
(2)WTO農業交渉への取組
(3)知的財産の活用と革新的技術の開発
(4)農産物輸出の促進
(5)原油高騰への対応とバイオマス等の利活用の促進
(6)少子高齢化・人口減少局面での食料・農業・農村の動向〜団塊世代に着目〜
 をトピックスとして紹介しています。

 以下、平成17年度白書の概要について紹介します。

第1章 望ましい食生活の実現と食料の安定供給システムの確立

1 食の安全及び消費者の信頼の確保の取組
(食の安全確保に向けた取組と課題)
 近年、国内外でのBSEの発生、腸管出血性大腸菌O157やノロウイルスによる食中毒等の食品の安全に関する問題や、高病原性鳥インフルエンザの発生、食品の偽装表示等を契機として国民の食の安全に対する関心が高まっており、生産から消費までの各段階における食品の安全確保の施策や家畜衛生対策・植物防疫対策等「食の安全」を確保するための施策を幅広く講じていくことが重要です。

(BSE、高病原性鳥インフルエンザ問題への対応)
 BSEについては、食の安全・安心を大前提に科学的知見に基づき対策を講じるとともに、情報提供やリスクコミュニケーションに努めることが必要です。
 また、高病原性鳥インフルエンザ対策は、発生予防等の徹底と国際連携が重要です。

(消費者の信頼の確保の取組)
 食に対する消費者の信頼確保に向けて、トレーサビリティ・システムの導入や食品表示の適正化、生産者や食品企業の法令遵守の徹底、消費者と生産者の顔の見える関係づくり等の取組を進め、消費者が食に対して安心できるようにすることが重要です。

図1 農林水産省の「食の安全と消費者の信頼の確保」に関する施策
資料:農林水産省作成。


2 食生活の現状と食料自給率向上の取組
(食料消費の動向と食生活の現状)
 食料消費の動向には、年齢や収入階層、世帯構成や就業形態等のさまざまな要因が影響しています。特に、わが国の人口に占める中高年層の割合の高まり等を背景として、わが国全体の食料消費支出の過半が55歳以上層で占められています。今後、団塊世代の高齢世代への移行も踏まえると、わが国の食料消費の動向に与える高齢世代の影響力はさらに強まる見込みであり、消費者の志向やニーズ等への一層きめ細やかな対応が重要となります。
 また、わが国の食生活は、脂質過多等の栄養の偏り、食習慣の乱れ、過度のやせ志向や欠食の広がり、大量の食品ロスの発生、食に関する知識不足等の問題が生じています。

図2 我が国の食料消費支出における世帯主の年齢階層別構成比
資料:総務省「家計調査」、厚生労働省「国民生活基礎調査」を基に農林水産省で試算。
  注:「家計調査」の世帯主の年齢階層別の1世帯当たり食料消費支出(農林漁家を除く2人以上
   の全世帯)に「国民生活基礎調査」の世帯数を乗じて算出した額を割合に換算した。


(食育の推進)
 市町村や学校、地域グループ等が食育に取り組む動きが広がっており、今後は、食育基本法(17年6月)や食育推進基本計画(18年3月)に基づく国民運動としての食育の推進、「食生活指針」や「食事バランスガイド」等を活用した「日本型食生活」の実践が重要です。

表1 食料自給率向上に向けた行動計画の主な取組実績(平成17年度)
資料:農林水産省作成。


(地産地消の推進)
 消費者と生産者の顔が見える関係づくりに関心が高まり、各地で地産地消の取組が広がっています。その取組は、地場農産物の直売所での販売、学校給食での利用等多様な形態で進展しており、今後、直売施設等の環境整備への支援、人材の育成等に取り組むことが重要です。

(食料産業の動向)
 国内総生産(GDP)の1割を占める食料産業は、食の簡便化等を反映して飲食費の最終消費額(80兆円)に占める加工品と外食の割合が8割まで上昇しています。今後は、食品産業の国際競争力の強化、消費者が納得する価格での安全で良質な国産食料品の提供等の促進を図るために、フードシステム全体のコスト削減と食品産業と農業の連携強化の取組が重要です。

(農産物輸入の動向)
 わが国は、食生活の多様化等を背景に、農産物輸入の質・量がともに変化しており、世界最大の農産物純輸入国となっています。農産物輸入の多くを特定国に依存しているため、輸入先国の生産動向や国際的な市況の変動等の影響を受けやすい輸入構造となっています。

(食料自給率向上の取組)
 畜産物や油脂類等の消費の増加など食生活が大きく変化したこと等を背景として、供給熱量ベースの食料自給率は、長期的に低下しています。食料自給率の目標は、食料消費と農業生産両面にわたる国民参加型の取組指針としての意義があり、その向上に向けて、17年4月に、政府、地方公共団体、農業者・農業団体、食品産業事業者、消費者・消費者団体等の関係者からなる「食料自給率向上協議会」が設立され、現在、行動計画に基づき、関係者の適切な役割分担のもと、食料消費・農業生産の両面にわたるさまざまな取組が推進されています。

3 世界の農産物需給と農産物貿易交渉の動向
(世界の農産物需給の動向)
 2030年には世界の人口が82億人に達すると予想されるなかで、世界の食料需給は、水資源の不足、地球温暖化の影響等中長期的に多くの不安定要因があります。特に、水資源については、開発途上国の経済発展等に伴う工業利用や生活利用との競合、地下水位の低下などにより、食料生産上の制約要因となる可能性を有しています。(農産物貿易交渉の動向)

 WTO農業交渉は、第6回WTO閣僚会議において、2005年12月に香港閣僚宣言を採択しました。その後、2006年4月末にモダリティを確立すべく交渉が続けられましたが、各国の意見の収れんはみられませんでした。今後とも、2006年中の最終合意に向け、「多様な農業の共存」を基本理念とし、輸出国と輸入国のバランスがとれた貿易ルールの確立を目指し、わが国の主張が最大限反映されるよう、積極的に交渉に取り組みます。

図3 WTO農業交渉の流れ
資料:農林水産省作成。

 

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第2章 地域農業の構造改革と国産の強みを活かした生産の展開

1 農業経済の動向
(相次ぐ気象災害)
 17年12月以降の記録的な大雪(「平成18年豪雪」)により農業関連施設等の被害が発生しました。さらに、原油価格の高騰によりA重油価格が大幅に上昇し、施設園芸農家への影響もみられます。今後、エネルギー利用効率化等の促進が重要です。

(農業労働力の動向)
 農業就業人口は、333万8千人(17年)で、12年から14.2%減少しており、農家戸数と同様長期的に減少傾向にあります。地域では、新たな就農支援体制を整備する動きがあり、今後、意欲と能力のある人材を幅広く確保することが重要です。

2 担い手の育成・確保と地域農業の構造改革の加速化
(担い手をめぐる動向)
 認定農業者(18年3月)は20万1千経営体で増加傾向にありますが、今後、「品目横断的経営安定対策」の導入に向け、制度の運用改善や認定農業者の育成・確保の加速化が重要です。また、集落営農(17年)は1万で、作物別にみると、水稲・陸稲に主として取り組む集落営農は減少する一方、麦類、雑穀・いも類・豆類に取り組む集落営農は大きく増加しています。今後、19年産から導入される「品目横断的経営安定対策」においても、一定の要件を備える集落営農組織を担い手と位置づけ支援することとしています。

図4 年齢階層別にみた農家世帯員数(平成17年、男女計)
資料:農林水産省「農林業センサス」


図5 集落営農の組織化・法人化に当たっての問題点(複数回答)
資料:農林水産省「集落の農業の将来展望に関する意向調査」(17年6月公表)
 注:集落営農がない集落の代表者1,500名を対象として実施(回収率97.9%)。


図6 品目横断的経営安定対策への移行のイメージ


(農業構造の動向)
 担い手農家は規模拡大や経営の多角化を進めていますが、経営規模の大きな農家を中心に規模拡大の動きが引き続きみられる一方で、水田農業への経営資源等の集中に遅れがみられ、高齢者主体による農業労働力のぜい弱化が懸念されています。今後、効率的かつ安定的な経営体の育成・確保が喫緊の課題です。

(品目横断的経営安定対策の導入)
 農業の構造改革の加速化等を図るため、これまでの価格政策等による全農家を対象に品目ごとの生産量を確保する手法を見直し、土地利用型農業について、担い手に対象を絞り、経営全体に着目した政策に転換する「品目横断的経営安定対策」の具体的な仕組みが、17年10月に経営所得安定対策等大綱において決定されました。

 この対策は、諸外国との生産条件の格差を是正するための直接支払い対策(麦、大豆、てん菜、でん粉原料用ばれいしょの4品目)と、販売収入の変動が経営に及ぼす影響を緩和するための対策(米、麦、大豆、てん菜、でん粉原料用ばれいしょの5品目)の2つの対策で構成され、今後、19年産からの導入に向け、説明会や集落座談会等を通じた対策の内容・効果等の周知や、対象者要件を満たす担い手の育成・確保の取り組みの一層の推進が重要です。

3 国産の強みを活かした農業生産の展開
(農業生産をめぐる情勢)
 わが国は、農業生産・食料消費の両面において大きな転換期にあり、これまで以上に国民のさまざまなニーズや志向を大切にすることが重要となっています。特に、消費者は、輸入品と比べて、旬や鮮度、産地と消費者の近さ等の点で国産農産物を評価しており、国産の強みを活かした生産の展開が重要です。

(食品の安全及び消費者の信頼確保の取組)
 食品の安全確保等の取組は、国産農産物の安全性の向上だけではなく生産者・産地の意識改革、ブランド化・差別化の契機となる可能性があり、その積極的な推進が重要です。

(地域ブランド化の取組)
 消費者における農産物の認知度や信頼性を高める地域ブランドの取組については、食品企業の関心も高く、農業と食品産業の連携を図るうえでも重要となっています。各地域では、地域ブランドの確立に向けてさまざまな取組が進められる一方で、安定的な生産や商品開発、ブランドの管理手法や地域イメージや販売戦略の構築等が課題となっています。

図7 地域ブランドへの食品企業の関心とそのメリット
資料:(財)食品産業センター「平成16年度地域食品ブランド確立事業動向調査アンケート」
  (17年3月公表)
 注:全国食品産業協議会会員の420企業を対象として実施(回収率78.3%)。


(技術の革新・開発・普及の取組)
 農業・食品産業の競争力の強化、新たな需要の創出・拡大を図るため、革新的な技術の開発と普及が重要であり、現在、栄養・機能性成分を多く含む品種の育成等に取り組んでいます。今後も産学官が連携を図りつつ、生産現場や消費者のニーズに直結した取組が必要です。

(農産物輸出の取組の推進)
 わが国の農産物輸出は、世界的に日本食がブームとなっていることや東アジアの経済発展に伴う高額所得者層の拡大等を背景に近年、増加傾向にあります。農産物輸出の拡大は、わが国の「攻めの農政」の柱として、その経済効果にとどまらず、国内の農業者や産地の生産意欲の向上、日本食を通じた日本文化の発信などさまざまな効果をもたらしています。

 2005年4月に「農林水産物等輸出促進全国協議会」が設立され、民と官が一体となった取組を強力に推進しています。政府は、展示・商談会の開催、輸出阻害要因の是正等、民間が輸出に取り組みやすい環境づくりを総合的に支援しています。

表2 我が国の主な農産物の輸出拡大品目(2005年)


図8 農業集落の生産調整活動への取組割合(平成12年、年間寄り合い開催回数別)
資料:農林水産省「農林業センサス」(組替集計)


4 環境保全を重視した農業生産の推進
(環境保全を重視した農業生産の推進)
 環境保全型農業への消費者等の関心が高まるなか、農家の取組が広がりつつあります。今後、農業環境規範の実践や「農地・水・環境保全向上対策(仮称)」により環境負荷を大幅に低減する先進的な取組を加速化することが重要です。

5 需要に即した生産の促進
(米、麦、大豆、野菜、果実、畜産)
 米は、19年産からを目指す農業者・農業者団体の主体的な需給調整システムへの移行、「米政策改革推進対策」の円滑な実施が重要です。麦、大豆、野菜、果実、畜産は、既存制度の見直しを進め、担い手の経営安定、生産性及び品質の向上、産地の構造改革等の推進が重要です。


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第3章 農村の地域資源の保全・活用と活力ある農村の創造

1 農業集落の動向
(農業集落の変化と活動の現状)
 農業集落は、農業生産や住民の相互扶助等の面でさまざまな役割を担っていますが、農家戸数の減少や過疎化・高齢化等の進行により大きく変貌しています。農業集落での寄り合い開催回数が少なくなると、生産調整活動の取組も低下するなど影響を与えています。

2 農村の地域資源の現状と課題
(農村の多様な資源の現状と多面的機能)
 農村には、多様な地域資源があり、特に、農地や農業用水等は食料の安定供給、多面的機能の発揮に不可欠な社会共通資本です。しかしながら、農業生産活動の停滞や集落機能の低下により、多面的機能の発揮に支障を生じることが懸念されています。

図9 農地・水・環境保全向上対策(仮称)の概要
資料:農林水産省作成。


(農村の地域資源の保全管理の動向)
 農家主体の農村資源の保全管理が困難となっていること等を踏まえ、多様な主体が参画した地域活動を促すため、新たな地域振興政策として地域ぐるみで効果の高い共同活動と農業者ぐるみでの先進的な営農活動を総合的かつ一体的に実施する活動を支援する「農地・水・環境保全向上対策(仮称)」が19年度から導入されます。今後、施策の普及、推進体制の整備の促進が必要です。

(バイオマスの利活用の促進)
 持続可能な循環型社会の形成や化石資源に過度に依存しない社会を構築するうえで、バイオマスの利活用が重要となっており、バイオエタノールやバイオディーゼル燃料等の利活用・実証の取組が進められています。今後、新たなバイオマス・ニッポン総合戦略(18年3月)を踏まえ、行政や大学、環境NPO等が一体となった取組の推進が重要です。

バイオエタノール混合ガソリンの
実証試験車への給油の様子(沖縄県伊江村)


3 活力ある農村の創造
(地域資源を活用した農村経済の活性化)
 農業と食品産業等が連携した食料産業クラスターの形成等による地域経済活性化の取組が各地で進展しています。今後、関連産業や異業種も加わった新製品の開発や地域ブランドの育成、地域資源の掘り起こしやリーダーとなる人材の育成等が重要です。

図10 地域内での異業種連携の取組例(香川県小豆島町)


(都市と農村の共生・対流の一層の促進)
 地域が活力を取り戻し、その役割を十分に発揮するためには、都市と農村の間で「人・もの・情報」が絶えず循環する共生・対流社会の実現が重要です。この取組を進めていくためには、情報の受発信、都市農村交流活動やグリーン・ツーリズムにおける魅力的な体験プログラムの提供、人材の育成等都市と農村の多様な主体が参画できる環境整備が重要です。


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