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最終更新日:2010年3月6日
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(緒方 芳明) |
さとうきびの生産技術及び経営改善の面で創意工夫により地域の模範となる生産農家の成績を広く紹介し、沖縄糖業発展の一助となることを目的とした「沖縄県さとうきび競作会」の第32回表彰式が平成20年4月24日に那覇市内で開催された。
1.記念講演
表彰式に先立ち、以下の2名による記念講演が行われた
(1)伊禮 信 氏(沖縄県農業研究センター作物班 研究員) 「近年の育成品種と次期品種候補」
○さとうきびの位置づけ
・加工原材料の提供 → 砂糖の原料
・産業資材の提供 → 肥料、飼料 ・環境保全、維持 → 景観形成、土砂流出防止ほか ○品種開発を通して安定生産を実現
育種ネットワークを形成し、各島々の栽培条件に適した品種を開発
・昨年の育成品種 農林25号 宮古地域向け (早期高糖性、耐干性良) 農林26号 南北大東地域向け (早期高糖性、茎数多、F161の代替品種、株出し収量多) ○次期品種候補など
・RK97-6049 早期高糖性、株出し収量多
・RK97-7020 早期高糖性、新植・株出し収量多 ・「安定多収化」、「高収益化」、「省力化」が育種のキーワード |
(2)伊志嶺 敏彦氏(石垣島 さとうきび多量生産農家) 「石垣島における私の農業経営」
○伊志嶺 敏彦氏 経営概況など
・認定農家
・さとうきび、パイナップル・水稲との複合経営 ・沖縄県さとうきび競作会奨励賞受賞(平成6年) ・石垣市さとうきび生産振興対策室より優秀農家の受賞 ・19/20年期実績 収量450トン、収穫面積 6ha、単収7.5トン
○規模拡大
・就農当初は1.5ha程度。「さとうきびは儲かる」という信念のもと少しずつ農地面積を拡大し、現在に至る。
○苗作り
・春植え用苗 6〜7月植え付け
・夏植え用苗 3月頃植え付け ・苗の収穫前に剥葉を行うことで発芽率が向上。 ・植え付け前の苗を薬剤に浸し、病害虫のない健全な苗を使用することにより欠株の発生を抑える。 ○土づくり
・知り合いの畜産農家より堆肥を無償で入手。
・緑肥(クロタラリア)を使用。 ○除草
・雑草の発生を防ぐことにより収量が増加。
・植え付け後、分げつが始まる頃に除草剤を使用。
○作型
・従来の夏植え1作型から、最近では春植えを極力導入。
・石垣島では、台風被害のリスクから春植えを敬遠する傾向にあるが、共済制度への加入によってリスクをカバーし、土地の利用効率を高める。 |
2.表彰式
19/20年期は、一部地域において台風による被害や日照不足などによる影響があったが、全県的には気象条件に恵まれ、対前年比約15%増の約84万9千トンと、4年ぶりに80万トン台を上回り、収量の多い年になった。
そのような状況の下、栽培技術の面で工夫をこらし高品質・高単収をあげた農家の方々が表彰された。
大城 善徳氏(南部地区代表 南城市) (1) 栽培品種 農林15号 (2) 作型 株出し (3) 甘蔗糖度 16.3度 (4) 甘蔗糖重量 2.789トン/10a (5) 蔗茎重量 12.64トン/10a (6) 経営の特徴 さとうきび栽培面積43a。
(7) 今後の計画など収穫方法は手刈り。 さとうきびのほか、らっきょう、マンゴーを栽培。 土壌に合った品種を栽培し、単収の向上に努めたい。
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山城 正喜氏(南部地区代表 糸満市)
(1) 栽培品種 農林8号 (2) 作型 夏植え (3) 甘蔗糖度 14.5度 (4) 甘蔗糖重量 2.699トン/10a (5) 蔗茎重量 18.66トン/10a (6) 経営の特徴 さとうきび栽培面積60a。
(7) 今後の計画など植え付けを早期に行い、植え付け後には10日に1回約30トンずつ散水 散水を多く実施。施肥を3回実施。夏植後の株出しは2回行う。 農林8号を中心に、農林17号等や新品種の栽培にも取り組んで行きたい
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新垣 仁栄氏(中部地区代表 中城村)
(1) 栽培品種 農林15号 (2) 作型 夏植え (3) 甘蔗糖度 15.2度 (4) 甘蔗糖重量 2.573トン/10a (5) 蔗茎重量 16.9トン/10a (6) 経営の特徴 さとうきび栽培面積56.6a。
(7) 今後の計画など耕起、砕土、畦立てなどの作業は地域のオペレーターへ委託し、その他の肥培管理作業は人力。収穫作業は主に家族内の手刈り作業で行っている。 現状の栽培面積を維持しながら、高糖性品種の導入にも取り組み、品質向上・単収アップに努めたい。
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宜保 芳孝氏
(1) さとうきび生産量 1,255トン (2) 今期の収穫面積 17ha (3) 甘蔗糖度 13.5度 (4) 経営の特徴 かん水が可能な14haに点滴かん水を実施。
(5) 今後の計画など単収確保のため、新植の補植を徹底。状況により株出しでも補植を実施。 規模を拡大して2,000トンを目指したい。
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農業生産法人(有)サザンドリーム
(1) さとうきび生産量 1,101トン (2) 今期の収穫面積 17ha (3) 甘蔗糖度 13.7度 (4) 経営の特徴 点滴かん水を実施。新植の補植を徹底。株出しの回数は1回まで。
(5) 今後の計画など法人の経営が安定後、規模拡大を目指したい。
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(新田 京子) |
沖縄県では、毎年4月の第4日曜日を「さとうきびの日」としている。この「さとうきびの日」にちなみ、沖縄県内ではさとうきびに対する啓蒙、啓発を図り、さとうきびの重要性についての認識と理解を深めるための様々な行事が各地域で行われる。
ここでは、本年4月30日に沖縄本島の南部地区で行われたパレードについて紹介する。
さとうきびの栽培面積は沖縄本島の南部地区においても減少傾向にあり、肥培管理の不足や粗放化などから単収も伸び悩んでいる。19年産の収穫量については、沖縄県全体では約84万9千トンと前年を15%上回ったのに対し、南部地区においては前年並の実績となっている。
そのような中、地域の生産農家の生産意欲を高め、関係機関の連携を深めて、さらにさとうきびが沖縄経済を支える基幹作物であることを広くアピールし、増産につなげようと、沖縄県南部農業改良普及センターと南部地区さとうきび生産振興対策協議会の主催で関係者によるパレードが実施された。
出発式の様子 |
4月30日(水)9時30分、曇り空だが雨の心配のない天気の下、那覇市内の農協会館前に農家を中心とした関係者が集合した。
出発式では、JA沖縄中央会の大城会長が「関係者が一体となり、近い将来100万トンの生産量を目指して欲しい。沖縄の観光にも役立つさとうきびを地域全体で頑張ってアピールして欲しい。」と参加者を激励し、JAおきなわの伊波理事長の号砲を合図にパレードがスタートした。
コースは、JA会館からゴールとなる豊見城市内の翔南製糖までの約3.3kmのパレードを行った。「さとうきびは島の宝」などの横断幕を貼った先導車を先頭に、総勢100名ほどの参加者は各々のぼりやさとうきびを手にして肥培管理の徹底や適期の植え付けの重要性や、さとうきびが地域経済の活力源であることなどをアピールした。自作の衣装を身に着けてアピールをしている参加者もおり、また列の後方にはトラクターも動員するなどしてパレードをより一層盛り上げた。
パレードの様子 | |
のぼりを手に歩く参加者 | トラクターも動員 |
ゴール地点となった翔南製糖で式典が執り行われ、総勢150名の関係者が集まった。
主催者である南部農業改良普及センターの本村所長と南部地区さとうきび生産振興対策協議会の中村会長が挨拶し、本村所長は「さとうきびはまさに沖縄の宝。新政策の下で一層の推進と今後の増産に大きく寄与することを期待する。」と述べた。続いて中村会長は、「沖縄県唯一の甘味資源であるさとうきびは、様々な波及効果がある。生産意欲を高めて行こう。」と述べた。
各機関から激励の挨拶があった後、農家を代表して津嘉山地区の生産組合の大城組合長が決意表明を行い、「株出し管理の根切りと施肥は早く行い、7年ぶりに回復した84万トン台を今後も維持するために努力する。」と力強く述べた。
最後に、南部地区さとうきび生産振興対策協議会の掛け声で、参加者全員でガンバロー三唱を行い、式典が締めくくられた。
式典の様子 | 決意表明 |
さとうきびを守っていこう! |
さとうきびの日の関連行事において、パレードの実施は南部地区では初めての取り組みであったが、参加者からは「楽しかった」「もっと長い距離でもよかった」などの声が聞かれ評判は上々のようであった。道行く人々の注目をかなり集め、関係者のみで開催されるイベントよりも、広く一般市民にもアピールできるという面で大きな効果があったのではないかと思われる。来年以降の取についても大いに期待されるところである。