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地域だより[2008年9月]

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最終更新日:2010年3月6日

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砂糖類情報
[2008年9月]




那覇事務所



沖縄本島南部地区において地域情報交換会を開催
〜杉本明氏らを招き講演会および優良農家の事例発表


 平成20年7月18日(金)、沖縄本島南部地区に位置する南城市の「南城市佐敷文化センター・シュガーホール」において、農畜産業振興機構那覇事務所および南部・中部・北部各さとうきび生産振興対策協議会との4団体共催により、さとうきび生産者の栽培技術向上と生産意欲の高揚を目的とした地域情報交換会を開催した。

 同交換会は、沖縄本島の北部・中部・南部から各1名の優良農家を招いて、自らの栽培内容を紹介する事例発表と、独立行政法人国際農林水産業研究センターの杉本明氏による講演会の2部構成で開催した。

[開催概要]

1.優良農家事例発表

○山内 英昇氏(中部地区代表 読谷村在住)

<経歴>
 さとうきび栽培歴44年。紅いもとの輪作。
 平成16/17年期沖縄県さとうきび競作会において、農林水産大臣賞を受賞。

<栽培の特徴>
 新植前には、たい肥を10アール当たり20トン投入。新植時には苗を一晩水に漬け、2条植えで密植する。欠株対策の補植と干ばつ時のかん水を徹底して行う。
 「最初は失敗を繰り返してきた。今では、きび作りくらいにおもしろい物はないと思っている。」


○喜納 博文氏(北部地区代表 名護市在住)

<経歴>
 名護市羽地地区さとうきび生産組合の役員を長年務め、組合組織の育成に貢献。
 平成19/20年期沖縄県さとうきび競作会において、沖縄県糖業振興協会理事長賞を受賞。

<栽培の特徴>
 バガスたい肥、苦土石灰を用いて土づくり。植え付けには側枝苗を使用。定期的なかん水補植による欠株対策、除草、害虫防除の徹底。倒伏防止パイプによる台風対策。
 「きびづくりはやる気が大切。きび作りは毎日が楽しい。相手は生き物。可愛がれば可愛がった分だけ成果として返ってくる。」


○大城 善徳(南部地区代表 南城市在住)

<経歴>
 2年前に会社を退職し、中学生の頃からの手伝いを通して親しみがあったさとうきびの栽培を始める。平成19/20年期沖縄県さとうきび競作会において、農林水産大臣賞を受賞。

<経営の特徴>
 新植時の種苗選別を慎重に行い、多量の健全苗の投入により密植を徹底。新植時のかん水は後の株出に影響するため、十分な量を使用。収穫後は1週間以内に枯葉を畝間に移し、雑草の発生を抑制。株出時には耕耘機で根切りを行い、除草剤散布を徹底する。
 「きび作りは子育てと一緒。成長段階に併せて適切な量の水や栄養分を与えることが大切。」


2.講演会

講師 杉本 明氏
(独立行政法人国際農林水産業研究センター熱帯育種素材研究管理担当)

演題「南の島のみどりの宝・さとうきびを知る」

 長年さとうきびの育種などに携わってきた杉本氏の経験を基に、国内外におけるさとうきびの栽培事情や、さとうきびが本来持っている基本的な特性、さとうきびの将来展望などについて、分かりやすく丁寧な語り口で解説した。

(1) 世界と日本のさとうきび
 さとうきびは世界の各地で栽培され、ブラジル、コロンビア、オーストラリアなどでは、大規模は生産が行われている。
 一方で、フィリピン・ピナツボ火山火砕流体積地やタイ東北部の小雨地域、パキスタンなどの塩類集積地など、さとうきび栽培にとって非常に厳しい気象・土壌条件の地においても、人々の努力によって生産されている。
 日本におけるさとうきび生産は、地理的な条件により小規模で、高齢化などの影響にもあり、さらに縮小傾向にある。
 単収についても、さとうきび栽培に係る労働時間の短縮に伴って低下。
 →これをいかに克服するかが研究者に課せられた仕事


10アール当たりの単収(トン)
ブラジル 7.4
オーストラリア 8.9
日本 5.6

(2) さとうきびの役割
(ア) 砂糖の原料
(イ) 地域経済への貢献 →経済波及効果 4.3倍(沖縄県)
(ウ) 緑地形成・景観維持・観光資源
(エ) 防風垣
(オ) 工芸品・砂糖以外の食品の素材
(カ) たい肥などの有機資源


(3) さとうきびの栽培について
(ア)多収実現の方程式

○新植多収 =茎数(出芽×生存×分げつ)×伸長・肥大
×気象・生物災害による減収率
○株出多収=新植多収×萌芽率(茎数減又は増) ×生育期間増による伸長・肥大増加率
×株上がりによる伸長・肥大減少率
×気象・生物災害による減収率

 上記方程式のとおり、新植、株出ともに、多収実現には茎数を確保することは特に重要。その点で、先に紹介した優良農家事例の3人は、いずれも植え付け時の苗の量や質を重視し、補植も徹底して行うことにより茎数を確保するという共通の特徴を持ち、理にかなった栽培方法を実践している。多収を実現するためには、さとうきびの生育状況を正確に把握し、何を改善すれば良いのかを現場で考えることが重要。

 
(例)干ばつ被害 →3つの要素が不足して起こる
   
(対策)
(1) 降雨 かん水の実施。
(2) ほ場の保水力 たい肥を投入し、土壌の保水力を高める
(3) さとうきび自身の吸水力 適期管理により、干ばつの時期までにさとうきびを大きく育てることで、根の吸水力を確保。
夏植え 根を十分に発達させられ、梅雨の降雨を十分に吸収。
培土 根の伸長促進のために重要。

 干ばつ被害の要因を考える際、単に降雨不足に対してのみに焦点を当てることは問題。
 限られた水をいかに上手に利用するかを考えることが重要。

(イ)作型の理想としての「夏植秋収穫」

春植え 気象条件の影響を受けやすく、収量が低い。
夏植え 気象条件の影響をあまりうけずに収量が安定。
反面、土地利用効率の面で2年1作は非効率。

「夏植え秋収穫」  夏植の長所を生かし、短所を改善。
(夏植え新植→秋収穫→株出しで実現)

 さとうきびの品種開発面においては、糖度上昇面での課題に関して、11月収穫は実用水準に到達。(農林20・22・24号など)

(4) さとうきびにおける今後の展望

  • 不良環境に強く多収性に富む近縁植物との種属間交雑によって高バイオマス量さとうきびの開発中。
  • [高バイオマス量さとうきびの利用展開]

    (ア)飼料用さとうきび
    • 多収性飼料作物である飼料用さとうきびを導入することで、飼料畑面積の節約が可能
      (畜産の頭数が同数であれば、飼料畑面積が減少し、さとうきびの面積が増加。飼料畑面積を維持すれば、畜産頭数増によるたい肥増に伴って地力が向上)→いずれの場合もさとうきびが増収。


    • 製糖用さとうきびの収穫コストが低下
    (ハーベスターの稼働日数の増加に伴い、利用料金の低下を実現)

    (イ) 砂糖+エタノールなどへの利用拡大
    • 高バイオマス量さとうきびを用いて、効率的な「砂糖+エタノール」の複合生産

    砂糖産業から糖質複合産業へ

    1.二酸化炭素排出削減への貢献
    2.化石エネルギー代替資源の削減
    3.農地を競合する飼料畑との関係改善
    4.産業領域と雇用の拡大

     今回の地域情報交換会には、さとうきび生産者をはじめ約350名が出席した。優良農家が語ったさとうきび作に対する情熱や喜び、杉本明氏が語ったさとうきびが本来持つ植物としての特性や、将来に向けたさとうきびの多面的な活用などの発言に、出席者は熱心に耳を傾けていた。
     出席者からのアンケートの回答には、優良農家の事例発表に対しては、「生産現場でのリアルな話が聞けた」、「今後のさとうきび栽培への意欲につながった」など、杉本明氏の講演に対しては、「さとうきびに対する視野が広がった」、「これまでの講演会にはなかったことを学べた」といった感想が多く見られ、「これからもこのような講演会を開催してもらいたい」といった要望が多数寄せられた。
     今後もさとうきび生産者の要望に沿った内容の講演会などを開催し、さとうきびの生産振興に貢献していきたい。

    (緒方)






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