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最終更新日:2010年3月6日
平成21年度沖縄県さとうきび生産法人講話・
意見交換会及び現地検討会が宮古島市で開催される
那覇事務所 |
平成21年11月12、13日の両日において社団法人沖縄県糖業振興協会の主催による沖縄県さとうきび生産法人講話・意見交換会および現地検討会が宮古島市のJAおきなわ宮古地区本部大ホールで沖縄総合事務局、沖縄県、さとうきび生産法人、JA、製糖企業など関係者多数が出席して開催された。
この会は、さとうきび農業経営の担い手として地域のリーダーとなるであろう農業生産法人の経営知識や新品種の特性などの講話を通じて、農業生産法人の経営安定への方策、さとうきびの生産振興について探るものである。
図1 大城浩明氏の講演
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同法人は、果樹を中心とした農産物の生産から販売、加工を一貫して行うとともに、農業体験、新規就農研修の受け入れなどを行っている。約1ヘクタールのパパイヤ農園をはじめとしてバナナ園、マンゴー園を自社で保有している。
法人化のメリットとしては、経営体として確立されることによって、経営が合理的に運用されることなどを挙げ、デメリットとしては面積が一定規模以上の条件が必要となることなどが示された。
また、農業生産法人は地域農家のリーダー的な存在であり、地域づくりを担っている自負心を持ってもらいたいとしたうえで、さとうきびの単収を向上させるだけではなく、複合型土地利用への転換を図ることが重要であると発言された。
図2 新垣恒明氏の講演
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同法人は、さとうきびの栽培面積が9.8ヘクタールで作型は春植え・夏植え・株出しである。なお、平成20/21の生産実績は520トンである。
経営の特徴として養豚農家から1日20トン無償で豚尿を提供してもらい、さとうきびへかん水するとともに施肥を行っている。最近においては、化学肥料の価格が高騰しているため、豚糞尿を肥料に混合させて肥料経費を節減することによって、経営の安定につながっていることが示された。
また、今後の目標として、生産量700トン、豚糞尿の利用を1,500トン、栽培面積を12ヘクタールまで増やしたいと発言された。
図3 宮城克浩氏の講演
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宮古地域のさとうきびの作型は、夏植えが中心となっている。品種は、早期高糖で収量が多い宮古1号が多いが、脱葉性が悪いことが欠点であった。このことに対処する、九州沖縄農業センターバイオマス資源作物開発チームで育成、沖縄農業研究センターで交配された新品種Ni27の特性について紹介があった。
〈Ni27の特徴〉
【短所】
意見交換会では、農業経営にあたって農産物の生産一辺倒では無理があるとして、地域の資源を有効に活用し付加価値を高めていくこと、つまり、さとうきびを用いた加工食品の開発や畜産農家との耕畜連携による生産コスト低減に向けた取り組みなど、多面的に農業経営を考えていくことが重要であるとの意見が出された。
また、農業の担い手育成のための課題の一つである農地集積を効率的に行っていく必要があるが、そのための優良事例の発表など、情報の収集・公開の機会をこの会において担っていくことが提案された。
図4 意見交換会において質疑応答
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参加者は翌日の13日、沖縄県農業研究センター宮古島支所、辺土名豊一氏と川満長英氏のさとうきびほ場などを訪れ、品種の育成や栽培技術の学習並びにさとうきびの生育について意見交換を行った。
図5 沖縄農業研究センター宮古島支所で品種育成について聞く
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図6 川満長英氏の夏植えのほ場(昨年植え付け)
面積は145アールで新品種であるNi27も育成している |
品目別経営安定政策では、地域の担い手を中心とした生産組織や農作業の受委託組織の育成、法人化の推進を促進していくこととしており、地域農家のリーダー的存在である農業生産法人の果たす役割は極めて重要である。
一方、農業者の高齢化による担い手の減少など課題は多く残っていることから、このような機会を通じて、糖業関係者が共通の認識を持ち、沖縄県のさとうきび増産へと繋がることに期待したい。
札幌市で地域情報交換会を開催
札幌事務所 |
平成21年11月6日(金)、札幌市中央区の第2水産ビルにおいて、機構札幌事務所主催の下、行政関係者など30名が参加し、地域情報交換会を開催した。
これまで地域情報交換会のテーマは、砂糖およびでん粉について行ってきたところであるが、今年度から分野横断的な情報収集・提供業務として、畜産と野菜にも拡げて開催することとし、第2回目となる同交換会は、今年度調査情報部が実施した野菜と砂糖の海外調査の結果報告を講演会形式で開催した。
野菜関係では輸出野菜の主要産地である山東省・江蘇省を調査対象に、訪問先の紹介や中国の野菜産地における最新状況についての報告があった。砂糖関係ではユタ州で行われたASA(American Sugar Alliance:米国砂糖連盟)シンポジウムの内容を中心に米国の新農業法や最近の甘味事情についての報告があった。
(報告者:調査情報部調査課 平石課長補佐)
中国での野菜生産概況として、野菜作付面積が1万7329ヘクタールと日本の約30倍、生産量が5億6452万トンで、そのうち山東省が15%(中国1位)、江蘇省が6%(4位)であること、輸出量が817万トンと生産量に占める割合が1.4%で、日本の生産量の約2/3であることなどが紹介された。(中国野菜関連指標は2007年度の数値)
わが国における野菜の輸入動向については、2008年の冷凍餃子事件などの影響により、全輸入量は減少傾向であることや、味付ごぼう千切り、冷凍やきなすなどの各種加工済野菜の事例を挙げ、日本向けに多様な種類の製品を生産していることが報告された。
また、CIQ(中国国家質量監督検査検疫総局)による安全対策では、輸出野菜産地の指定と出荷時の検査が主に行われており、その役割や安全施策の概要説明や、今後の課題として、冷凍野菜工場における保存方法等について栄養価を下げない管理に取り組むべきであるとした。
最後に、今後の見通しとして、わが国は中国にとって最大の輸出先わであることから、同国はきめ細かい対応を行っていくとの見方を示した。
(報告者:調査情報部情報課 宇敷課長)
2008年に施行された米国の新農業法の特徴として、農業政策の基本路線は変えず、固定払い、不足払い、融資不足払いの3本の柱を基本とし、中でも、わが国のように一定額を製糖事業者へ支給するのではなく、条件によって融資を通して価格支持を行う仕組み(ノンリコースローンプログラム)や国内販売割当方式(アロットメントシステム)の変更により、米国における消費の85%の生産を確保していること、さらに米国内における緊急策として関税割当(TRQ)の運用緩和策の説明があった。
米国の09/10年度の需給見込みでは、国内消費量はやや減少傾向にあるものの、飲料向け消費量が34万トンと2006年から2008年にかけて急激な伸びを示していることや、現オバマ政権下の医療保険制度改革法案の審議の背景を紹介し、飲料・菓子業界が厳しい局面に立たされている旨の説明があった。
次に実際に調査を行ったアイダホ州におけるてん菜事情について説明があり、同州の2007年における生産量は574万5000ショートトンとミネソタ州に次いで第2位で、全米生産量の18%を占めること、てん菜は米国最大のアマルガメイテッドシュガー社で製造されていること、収穫作業や同州における病害とその対策などが紹介された。
また、米国砂糖協会から一般消費者に対するキャンペーン方法として、「ナチュラル」をキーワードとした宣伝が有効であり、砂糖が自然で安全な食品であることが認知され、それにより砂糖を好む風潮が増加したことなども紹介された。